shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ハリウッドボウル・ライヴ LP 英米対決

2016-08-27 | The Beatles
 私がアナログ・レコードのランオフ・エリアに刻まれているマトリクス・ナンバーに拘るようになったのは今からもう10年以上も前のことで、「ビートルズUKアナログ盤ガイドブック」という本を頼りにUK盤蒐集を始めた時に “ビートルズのUKオリジナル盤はマトリクス番号の枝番(←スタンパーの順番を表す末尾部分の数字のことで、本でいうと “第○刷” みたいなもの)の違いで音圧やミックスが異なるケースが多い” ということを知り、 “一体どれほど違うんやろ?” と興味を持った私は早速かの有名な「ラバー・ソウル」のマト1ラウドカット盤をゲット、A①「ドライヴ・マイ・カー」のイントロのベースがそれまで聞いたことがないような凄まじい音圧でスピーカーから飛び出してきた瞬間に “これは凄いわ!!!” と圧倒され、それ以来アナログ・レコードはマトリクス枝番を調べてから買うようになった。
 この「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」に関しては何故か上記の「UK盤ガイドブック」に初回盤マトリクス・ナンバーが記載されていなかったので仕方なくイーベイで片っ端から枝番を調べ始めたのだが、当時はまだマトリクス・ナンバーまで記載しているセラーは非常に少なく(←今でも決して多いとは言えないが...)、質問欄からメールしても答えが返ってこなかったりとか “何でそんなことを訊くねん?” と不審がられたりとかして結構苦労したのを覚えている。その時に集めたデータは -2/-1, -1/-6, -1/-7, -2/-6, -2/-7, -3U/-4U, -4U/-4U の7種類。両面を足した数字が一番小さいのは -2/-1盤だが、“-1/-6 みたいな「A面マト1盤」があるということはひょっとすると「両面マト1盤」が存在するのではないか...” という疑念を感じた私は一旦UK盤購入を棚上げし、 “元々はキャピトルがレコーディングしたんやからこれはUS盤の方がオリジナルやろ...” と都合の良い解釈をして、ヤフオクで1,000円ぐらいで買ったUS初回盤でお茶を濁していた。
 それから何年が経った去年の夏のこと、“Beatles UK LP 1/1” で eBay検索中に偶然ハリウッド・ボウル・ライヴの両面マト1盤がヒットしてビックリ(゜o゜)  手持ちのガイド本の中では最も詳しい「ビートルズUK盤コンプリート・ガイド」で調べてみても -2/-2 と -1/-6 しか載っていなかったが、そのセラーの商品説明文にはハッキリと “1st pressing -1 -1 stampers” と書いてある。 “やっぱりあったんか!” とコーフンした私は決死の覚悟で $50つけたのだが、それでもアウトビッドされてしまい、めっちゃ悔しい思いをした。
 おさまりがつかない私はよく利用する海外通販サイトの MusicStack でハリウッド・ボウル・ライヴを出品しているイギリスのセラーに片っ端からメールしまくって両面マト1盤を探したところ、ラッキーなことにお目当てのブツを在庫しているレコード店が1軒だけ見つかった。J&L Records というお店なのだが、向こうから返ってきた返事には “It’s YEX 969-1 and 970-1 DOMOU ARIGATOU” と書いてある(笑) しかもそれがたったの $14なのだから笑いが止まらない。 “ドーモ アリガトウ!” と礼を言いたいのはこちらの方だ(^o^)丿
 この「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」はリアルタイムで買ったEAS型番の国内盤をそれこそ擦り切れるほど聴きまくって細部まで知り尽くしているつもりだったが、US盤やUK盤に比べると東芝の国内盤は中低域がスカスカで、そのあまりの音質の差に愕然とさせられる。そしてそのUS盤とUK盤もマスタリングの方向性が異なっており、聴き比べてみると実に面白い。早速 “ハリウッドボウル・ライヴ LP 英米対決” をやってみた。
 まずは何と言っても音圧が全然違う。UK盤の方が2~3割増しぐらい音がデカいのだ。だからUK盤で聴くと、ジョージ・マーティンが “ジェット機の爆音ですら掻き消されてしまうだろう” と表現した1万7千人の金切り声(←当時 “ジェット・ストリーム” をもじって “ジェット・スクリーム” と呼ばれていたというのも大いに納得...)の荒波にもまれながら生でビートルズの演奏を聴いているかのような錯覚を覚えてしまうのに対し、 MASTERED BY CAPITOL 刻印のあるUS盤の方は “レコードとして聴きやすい” ように音を整えてある(←それでも凄まじい嬌声であることに変わりはないが...)ように思える。例えるならUK盤はコンサート会場の最前列、しかもスピーカーの真ん前で聴いている “かぶりつきの音” という感じなのに対し、US盤は中央ブロックの中程の列で聴いているような “バランスの良い音”、と言えば分かりやすいかもしれない。
 音圧以外の “音作り” の面でも大きな違いがある。一番分かりやすいのベースの音で、ポールがラストの「ロング・トール・サリー」の曲紹介を終えてベースを“ボーン”と鳴らしてから演奏が始まる箇所を聴けば両者の違いは明らかで、 国内盤では “ボーン” と聞こえるところをUS盤では “ブルゥ~ン” と切れ味鋭い低音が、そしてUK盤では “ズゥゥ~ン” と地を這うような重低音が楽しめるのだ。言い換えるとグゥ~ンと沈み込む重低音のド迫力で聴く者を圧倒するUK盤に対し、低域の低いところをスパッと潔く切り捨てて “聴感上のスピード感” を取ったUS盤という感じ。常日頃からUK盤至上主義者を公言して憚らない私でもこのUS盤の “スピード感溢れるベースの音” は魅力的だ。特に怒涛の如きブンブン・ベースの波状攻撃に圧倒される「ボーイズ」なんかもうたまらんたまらん(≧▽≦)
 結局この「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」に関してはUS盤とUK盤の両方を買って大正解だった。来月にはいよいよジャイルズ・マーティンが最新のテクノロジーを駆使してリミックスを施したという「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」が新装リリース(←アナログLPは11月発売)される。npr musicというサイトで「ハード・デイズ・ナイト」だけ先行試聴できたが、今まで聞いたことがないようなクリアーで立体的な音にビックリ...(゜o゜)  全編通して聴くのが今から楽しみで仕方がない。
The Beatles - A Hard Day´s Night Live At The Hollywood Bowl

My Bonnie / The Beatles

2016-08-20 | The Beatles
 イギリスでビートルズが “始まった”、いや、始まる “きっかけとなった” 記念すべきレコードは、トニー・シェリダンのバックバンドとしてハンブルグでレコーディングしたこの「マイ・ボニー」だ。 “ポリドール・セッション” と呼ばれるこのレコーディングは昔、安っぽいイラストのジャケットで「ビートルズ1961 ~ロックンロール・フォーエヴァー~」という国内盤LPで出ていたが、リード・ヴォーカルがほとんどトニー・シェリダンだということで触手が伸びず、結局ちゃんと聴いたのは「アンソロジー1」が最初だった。
 入っていたのは3曲で、秀逸なロックンロール・アレンジがインパクト絶大な「マイ・ボニー」、荒ぶるジョンのヴォーカルがたまらない「エイント・シー・スウィート」、ビートルズがシャドウズごっこに興じる珍インスト「クライ・フォー・ア・シャドウ」と、そのどれもが十分傾聴に値する好演で、 “トニー・シェリダン関連の音源もエエやん(^.^)” と、「アンソロジー」CDを聴きながらすっかり満足していた。
 そんな私が「マイ・ボニー」のオリジナル・シングル盤に興味を持ったきっかけは、先々月にビートルズ来日50周年記念としてNHKで放送された「ビートルズをつくった男」というドキュメンタリー番組だった。何でも初回放送は2004年とのことだが、私としては初めて見る番組で、“マネージャーとしてビートルズを支え32歳で死去したブライアン・エプスタインの生涯を劇作家マキノノゾミがたどる” という内容だ。
 この劇作家のオッサンがかなりのビートルズ好きで、アビー・ロードを始めストロベリー・フィールズやペニー・レイン、キャヴァーン・クラブといったビートルズゆかりの地を巡りながらエプスタインに思いを馳せるという流れで進行するのだが、そんな中で一番印象に残ったのが、当時エプスタインの店で「マイ・ボニー」を買ったというファンの女性(←御年60才のごっついオバチャン)宅への訪問だった。
 レコードを買ったのは17才の時だったと回想しながら彼女が取り出したのはオレンジ・スクロール・レーベルのポリドール盤で、ここ1~2年ほどシングル盤にハマってビートルズのUKシングル盤をほぼ手に入れた気になっていた私は思わず身を乗り出して画面に見入ってしまった。“これが当時のファンがリアルタイムで聴いていた「マイ・ボニー」のシングルか…” と思うと感慨深いものがあったし、年季の入ったプッシュアウト・センター型のシングル盤を見た瞬間に “これは絶対凄い音が入ってるやろなぁ... (≧▽≦)” という予感がしたのだ。私は是非とも自分の耳でこのレコードを聴いてみたい、という衝動に駆られた。
 そこで早速イーベイで検索してみたのだが、出品されてるのはアメリカのMGM盤がほとんどで、それ以外はドイツ盤と日本盤ぐらいしかなく、肝心のUK盤は薄っぺらそうなカラー・ビニールの再発盤しかない。アレってそんなにレアやったんか...(゜o゜)  しかも商品説明を読んでみると、「マイ・ボニー」には何と “German Intro” “English Intro” “No Intro” の3種類のヴァージョンが存在するらしい。
 このレコードは元々ドイツ盤(NH24673)がオリジナルなのだが序奏部分の歌詞がドイツ語で歌われている “German Intro” ヴァージョンなんて要らないし、MGM盤(K13213)はスローなイントロ無しでいきなりアップテンポで始まるという無神経な編集が気に入らない。もちろん日本盤やカラー・ビニール盤なんて論外だ。何としてもイントロ部分も英語で歌われている完全版をUK初期プレス盤(NH66833)の野太い音で聴きたい私は毎日イーベイをチェックしながらお目当てのブツが出るのを待った。
 それから10日ほどが経ち、ついにUK盤が出品された。初回盤の証であるオレンジ・スクロール・レーベルだが、何故かプッシュアウト・センター部分が無い。よくよく見ると4曲入りのEP盤(21610)だ。説明を読むと、イギリスへの輸出用にドイツでプレスされたものだという。イギリス用なので当然 English Intro だ。63年リリースの45回転モノラル盤ならさぞかしごっつい音が入ってるだろうし、「マイ・ボニー」だけでなく「暗い方は車道」まで入ってるなんて超お買い得だ。オークションは£15スタートだったが、私は5人のライバルを蹴散らして £24(3,240円)で落札した。
 届いたレコードの音はまさに “若さ溢れるエネルギーの爆発” そのもので、スローから一転アップテンポへと変わる瞬間に “ジャッ ジャッ ジャッ ジャーン!!!” と炸裂するギター・ストロークの何とカッコ良いことよ(^o^)丿  ヴォーカルがジョン・レノンだったらどんなに良かっただろうかとは思うが、「ザ・セインツ」で劣化版エルヴィスみたいな歌声を聞かせるトニー・シェリダンも「マイ・ボニー」では力の限りロックしているし、ビートルズのパンキッシュな演奏が生み出すエネルギーの奔流は聴く者を圧倒する。まさに “これがビートルズだ、文句あるか!” と言いたくなる極めつけのガレージ・ロックンロール。ひょんなきっかけでエエ買い物ができてラッキーラララだ。
The Beatles My Bonnie (mono) English intro

Let It Be (UK 初回盤) / The Beatles

2016-08-13 | The Beatles
 私は政治や経済のことはサッパリ分からないし、そもそも何の興味もない。トランプがスベろーがメルケルが転ぼーが知ったこっちゃない。しかしイギリスのEU離脱だけは話が別で、ポンドとユーロの大暴落による相対的な円高は、私のように海外オークションで細々とレコードを買っている貧乏コレクターにとっては、普段なら高すぎてとても手が出ないような垂涎盤をゲットする千載一遇のチャンスなのだ。
 ビートルズのアナログLP蒐集家にとって、一口に垂涎盤と言っても、金パロやブッチャー・カヴァーといった定番の王道アイテムからシェル・カヴァーやエスキモー・カヴァーといった稀少盤、そしてUKパーロフォンのエクスポート盤のような超マニアックなアイテムに至るまで、ターゲットは人それぞれだろう。
私の場合は「レット・イット・ビー」の写真集付きUK初回版ボックス・セットがまさにそれで、以前からマト枝番 -2U/-2U で裏ジャケがレッド・アップル・ロゴの1stプレス盤を聴いてみたくてたまらなかったのだが、何と言ってもイーベイでの通り相場が $300~$500でユニオンの買い取り価格に至っては10万円という鬼レア・アイテム。所詮は “高嶺の花” と諦め、 -2U/-3U でグリーン・アップル・ロゴの2nd プレス盤で妥協していた。
 しかしイギリスのEU離脱による為替レートの大変動でポンドが暴落すればひょっとしてひょっとするかもしれない。私は万が一に備えて(笑)国民投票の1週間ぐらい前からイーベイをこまめにチェックし始めた。う~ん、やっぱり高いなぁ… 状態の良いブツを安く手に入れるにはかなりツキに恵まれないと厳しそうだ。当然ポンドの暴落はその必須条件である。
 そしていよいよ運命の6月24日がやってきた。午後の仕事を一通り終えてパソコンを開き、ヤフー・ニュースを見ると「イギリス、EU離脱決定」とある。 “やったー!” と小躍りしながら為替レートを確認すると、何と1ポンドが158円から138円まで20円も急落しているではないか! 確か半年前は180円台やったのに... まさに “しめしめ”、である。後はただ、良い出物に巡り合えるのを気長に待つだけだ。
 それから1ヶ月が経ち、ついにお目当ての「レット・イット・ビー」初回盤が £50 スタートで出品された。へ?何でそんなに安いん?と思って説明を読むと、箱が無い上に、写真集はコピーライトの訂正シールを貼った改訂版だから、ということらしい。まぁ由緒正しいコレクターなら間違いなく敬遠するのかもしれないが、箱なんてレコードを聴くのには邪魔なだけなので別にどーでもいいし、箱があればそれだけで値段が数百ポンドにハネ上がってしまうのだから私的には却ってこの方が都合がいい(^.^)  EXコンディションの -2U/-2U盤にこれまた状態の良い写真集が付いてこの値段なのだからコスパ的には最高だ。それからの9日間は値段が上がらないかと気が気ではなかったが、結局強力なライバルは現れず、私はついに念願のレッド・アップル・ロゴ盤をゲット。1ポンド137円で、送料込みでも8,800円だった。
             

 届いた盤はB③のごく一部で数回プチプチ音が入る以外は全く問題ナシで、実に深みのある良い音で鳴ってくれる。これが憧れのUK 1st プレスの音か...(^_^)  調子に乗った私は手持ちのUK 2nd プレス盤、そして Phil+Ronnie 刻印で有名なBell SoundのUS 1st プレス盤と聴き比べをしてみることにした。
 立て続けに3枚聴いての感想としては、まず第一にUK盤とUS盤の音作りの違いが鮮明になったということ。ジョンの「パワー・トゥ・ザ・ピープル」や「イマジン」のUS盤でも顕著だったように、このUS盤「レット・イット・ビー」でも Bell Sound のカッティング・レベルは高く、ハイ上がりで “とっても元気のいい音” なのだが、音空間は狭くてやや平面的に聞こえる。一方、UK盤の方は1stプレス も 2ndプレスも共に中域を中心にバランスよく安定した深みのある音だ。ショボイ音の国内盤を聴いて育った私の耳にはUS盤も決して悪くはないのだが、上には上があるということで、私の好みは断然UK盤の音だ。
 そして一番興味があったのがUK盤の 1stプレス(-2U/-2U) と 2ndプレス(-2U/-3U)の兄弟(?)対決。同じタイトルでマトリクス・ナンバーの違う盤を個人で比較できる機会なんてそうそうあるものではない。A面のマトは同じ -2U なので、枝番が1つ違うB面で -2U vs -3U の聴き比べをしてみることにする。
 同じ曲を数回ずつ繰り返し聴き比べてみたところ(←これって結構疲れます...笑)、やはり -2U盤の方が中低域が太く、各楽器の音の生々しさもめっちゃリアル。まるでビートルズがリスニングルームに出前に来てくれたかのようなリアリティー(←来るかそんなもん!)で、気分はすっかりルーフトップの特等席だ。特にB①ではベースの押し出し感が強烈で腹にズンズン響いてくるし、B②でもポールの極太ベースが演奏全体の躍動感をアップさせていて実に気持ちがイイ(^o^)丿
 ただしこれはあくまでも神経を集中して重箱の隅をつつくようなイビツな聴き方をした結果であり、普段聴きでは -3U盤でも十分すぎるくらいの高音質で、シャープなドラム音のキレ味といい、闊達に動き回るベースのグルーヴ感といい、US盤や国内盤を遥かに凌駕している。聞くところによると、マト枝番 -3UまでのUK初期プレス盤は真空管のアンプを使ってカッティングされていたとのこと。なるほどね(^_^)  今回の聴き比べの率直な感想としては UK 1st > UK 2nd >>> US 1st >>>>> 国内盤、といったところか。
 憧れの「レット・イット・ビー」UK 初回盤をついに手に入れることができ、この音をこれから先ずーっと聴いていけるのかと思うと嬉しくてたまらない。とにかく音に拘るビートルズ・マニアならB面だけでも大枚をはたく価値は十分にあると思うし、UK盤ならではの美麗コーティング・ジャケットを眺めて悦に入る満足感もUS盤や国内盤では決して味わえないものだ。イギリスさん、EUさん、ケンカしてくれて本当にありがとう! せっかくやからもっともっと揉めて £1=100円ぐらいにまで落ち込んでくれたらエエのにな...(笑)
The Let It Be Box Set

Tokyo 1966 Live / The Beatles

2016-08-06 | The Beatles
 長いことブログ更新をお休みしていたが、今日からまたここを再開だ。ブログ休止からしばらくの間はパソコンすら開かない日々が続いたが、6月に入った頃からようやく自分の生活リズムを取り戻し、以前のようにまたネットでビートルズ関係のブツをチェックし始めた。そんな私の目に飛び込んできたのがビートルズ・ブート・マニア御用達のYellow Dog系レーベル、HMCからリリースされたこの「Tokyo 1966 Live」だった。
 今年はビートルズ来日50周年ということで色んな武道館公演関連アイテムがリリースされているが、これまで “現時点での最高画質” という煽り文句に釣られて武道館ライヴDVDを何枚も買い直させられてきた私は、「Tokyo 1966 Live」というタイトルを見て “また武道館のDVDか... どーせ既発とそんなに変わらん画質のパッケージを変えての新装発売やろ...” と、眉に唾をつけながらインフォを読み始めた。なになに? “これまで知られているTV再放送やビデオ映像ではなく、曲目や放送用テロップが一切ありません” だとぉ!? “過去最高の画質クオリティで武道館公演2日間を正真正銘のオリジナル・マスターからコンプリート収録” だとぉ!? これはえらいこっちゃである。
 HMCといえばここのところ「シェアスタジアム」や「レット・イット・ビー」で期待を裏切らない高画質なブートを提供してくれているレーベルで、出荷時のチェックがズサンなのかプレスミスetcの不良品をつかまされることが時々あるのが玉にキズだが、貴重なソースの発掘に関してはかなり信頼できる。そのHMCが “正真正銘のオリジナル・マスター” と断言する以上、巷に氾濫している “自称” 最高画質盤とは一線を画するハイ・クオリティーに違いない。これまで買い込んだ武道館ブートDVDはどれもこれもがどんぐりの背比べというか、似たり寄ったりのビデオダビング画質(←それも3倍速の...)レベルで、パソコンの小さな画面でなら何とか観賞に耐えうるが、ハイビジョンテレビの大画面で見るのはちょっとキツイ。私は久々に体中のアドレナリンがドバーッと出まくるのを感じた。長年待ち望んだ武道館公演の、それも7/1公演のキレイな映像がついに手に入るかもしれないのだ。これでコーフンしなければビートルズ・ファンではない。
 届いたブツは Gazette(新聞、広報の意)という紙冊子形式で、DVDとCDの2枚セットを収録。お目当ては当然DVDの方で、ドキドキしながら早速46インチの大画面で視聴開始… いきなりライト・スーツ・デイの7/1から始まるのだが、これがもう看板に偽りなしの高画質で、確かに今まで見たことがないくらいクッキリ・ハッキリした映像だ。もちろん昨今のハイビジョン映像を見慣れた目には色ムラや走査線の縞ノイズといった粗さが気になるかもしれないが、60年代のテレビ映像としては十分合格点だろう(^_^)
  試しに既発のブートDVDと見比べてみたがその違いは歴然で、今のF1で言えばメルセデスAMGとマクラーレンホンダぐらいの圧倒的なレベル差がある。とにかくクリアーな映像になったおかげで今までよくわからなかったメンバーの表情のディテールまでもが見て取れて実に楽しい。オフィシャルのアンソロジーDVDと見比べてみても遜色のない高画質で、少なくとも私の知る限りでは、大画面でビートルズの武道館公演を見るならコレがベストだと思う。






 あえて短所を挙げれば、6/30公演の映像で肌色が赤みがかっていることと、メニュー画面に「START」しかなくてそこから個々の曲のチャプター選択が出来ないことぐらいか。もちろん「START」からの再生開始後はスキップ・ボタンでチャプターを飛ばして選曲することは可能なので、ファン垂涎の武道館ライヴがこれだけの高画質で楽しめることに比べれば些細な問題に過ぎない。
 それにしてもこれだけの高画質映像がどうやって流出したのか興味をそそられる。この秋に公開予定の映画「EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years-」と何か関係があるのだろうか? まぁそれはともかくとして、最近プラケース仕様の廉価版も出たようだし、バリバリの高音質ライヴCDも付いたこの「Tokyo 1966 Live」はビートルズの武道館公演をストレスなく楽しみたいファンにとってはまさにマストと言ってもいいアイテムだと思う。
(Snippets) The Beatles - Live At The Nippon Budokan Hall - July 1st, 1966 (TV Master)