レコード祭りで買った「ひと夏の経験」がきっかけで、先日久しぶりに手持ちの山口百恵のシングル盤を一気聴きしてみた。クソ暑かったので冷房をガンガン入れ大音量で聴いたのだが、これがもうめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 特に中期以降の阿木&宇崎作品を歌った “歌謡ロック路線” の諸作は最高だ。ということで今日はそんな彼女のお気に入りシングル盤を大特集します。
①横須賀ストーリー
川瀬泰雄や酒井政利を中心とする制作サイドのアイデアに基づいて阿木燿子が詞を書き、その詞に宇崎竜童がメロディーをつけ、萩田光雄が絶妙なアレンジを施し、阿木マジックによって “大人のオンナ” へと変身した山口百恵が歌うという、まるでシューマッハ時代のフェラーリを想わせるような(?)鉄壁のチーム体制によって生み出された最初の作品がこの「横須賀ストーリー」だ。百恵にとってそれまでの “単なるアイドル歌手” を超えた存在へと駆け上るターニング・ポイントになった重要な曲であり、私が初めてエエなぁと思った彼女のシングルがこの曲だった。緊張感溢れるストリングスの短いイントロに続いて “これっきり これっきり~♪” のリフがインパクト抜群な前サビへとなだれこむパートの切迫感がたまらない(≧▽≦) 疾走感を煽りまくるストリングスのオブリガードや雰囲気抜群のひしゃげたサックスも効果満点だ。“今日も私は 波のように抱かれるのでしょう ここは横須賀~♪” で終わるシュールなエンディングで聴き手にえもいわれぬやるせなさを感じさせる演出もニクイですなぁ...
横須賀ストーリー / 山口百恵
②イミテイション・ゴールド
「横須賀ストーリー」で新境地を切り開いた “ニュー百恵プロジェクト・チーム(?)” がハードボイルドな歌謡ロック路線を更に推し進めたのがこの「イミテイション・ゴールド」だ。まるでエルヴィスの「ハートブレイク・ホテル」を想わせるかのようなブルージーな導入部からテンポアップして疾走開始、一度聴いたら忘れられない“アッ アッ アッ イミテインション・ゴールド~♪” のリフレインを経て “くせが違う 汗が違う 愛が違う 利き腕違う~♪” と一気にたたみかけるスピード感溢れる展開が圧倒的に素晴らしい。この曲がリリースされた1977年という時代を考えれば、当時のこの曲がいかに突出した存在だったか分かろうというものだ。尚、この曲のアルバムヴァージョン(←ロンドン録音の「ゴールデン・フライト」)には何と元キング・クリムゾンのゴードン・ハスケルがベースで参加、アグレッシヴなアレンジによって換骨奪胎され、一瞬“コレがあの「イミテイション・ゴールド」なのか?” と我が耳を疑いたくなるようなゴツゴツした無骨なヴァージョンへと生まれ変わっている。
イミテイション・ゴールド / 山口百恵
③プレイバック part 2
山口百恵のツッパリ歌謡ロック路線の代名詞と言えるのがこの「プレイバック part 2」だ。宇崎竜童は阿木燿子から渡された “緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ~♪” という歌詞を見て、疾走するポルシェのイメージを膨らませてこのスピード感溢れるロック曲を書いたのだろう。周りの景色がどんどん後方へと遠ざかっていくような加速感を見事に表現した萩田アレンジにも唸ってしまう。そしてこのまま快調に飛ばし続けるのかと思いきや、0分58秒あたりで演奏が一瞬止まり、百恵が “馬鹿にしないでよぉ~♪” と啖呵を切って再スタートするという斬新な手法が圧倒的なインパクトを聴き手に与える。中期以降の百恵のシングルにはこういった仕掛けが至る所に散りばめられているから面白い(^o^)丿 更に後半部では “カーラジオから流れてきた素敵な歌” としてジュリーの「勝手にしやがれ」が登場、前年の大ヒット曲の歌詞にある “出て行った女” に自らを重ね合わせるという巧妙な手法に阿木燿子の天才を見る思いがする。
山口百恵_プレイバックPart2(音源編集)
④絶体絶命
いきなり “別れてほしいの 彼と” “そんな事は出来ないわ” “愛しているのよ 彼を” “それはアタシも同じこと” とバチバチ火花を散らす二人のオンナのやり取りで始まるこの曲でも阿木燿子の才気煥発、“夕暮れ迫るカフェテラス” “白いハンカチ” “銀色に輝く指輪” という絶妙な情景描写で聴き手を引きつける匠の技も凄いが(←まるでドラマのワン・シーンを見ているようで、修羅場が目に浮かぶようなリアリティーがありますな...)、何と言ってもたたみかけるような “はっきりカタをつけてよ~♪” 3連発が圧巻! そしてトドメは吐き捨てるように歌われる “やってられないわ~♪”... こんな “やってられない感” を出せる歌い手は彼女以外には考えられない。「プレイバックpart 2」の “バカにしないでよぉ~♪” に比肩する百恵のベスト・フレーズだと断言したい。主人公になりきり、まるで “喋るように歌う” シンガー、百恵の本領発揮といえる1曲だ。
山口百恵 絶体絶命
⑤愛の嵐
この「愛の嵐」という曲はどちらかというと彼女のシングルの中では過小評価されている1枚ではないかと思うのだが、私はこの曲が大好き。大仰なイントロに続くスローな出だしから一転して疾走を始めるところ(←0分50秒あたり)なんか快感そのものだし、百恵のヴォーカルに影のように寄り添うジェフリー・ダウンズみたいなシンセも絶妙な隠し味になっていて緊張感を盛り上げる。“炎と書いてジェラシー♪” のラインなんか何度聴いても鳥肌モノだし、 “storm, storm, storm...♪” の “ストーム10連発” で引きつけておいて “心の貧しい女だわ あぁ~たし~♪” でストンと落とすラインをきっちりと歌いこなせる歌手が他に何人いるだろうか? 最後の最後に自らを “心の貧しい女” と自虐的フレーズで切って捨てる阿木燿子のセンスにも脱帽だ。
愛の嵐 ③【HD】山口百恵
⑥ロックンロール・ウィドウ
この曲も歌詞がブッ飛んでいる。ロックンローラーの彼氏が夜遊びにうつつを抜かして帰ってこないのを “夫はとうに亡くなりました いい人でした~♪” と痛烈に皮肉って「ロックンロール・ウィドウ(未亡人)」へと繋げる発想が実にユニーク。阿木燿子ってホンマに天才やね(≧▽≦) ゼップの「ロックンロール」へのオマージュを表現した “かっこ かっこ かっこ かっこ...♪” のフレーズを一人二重唱でビシッとキメた百恵も凄い。初期のアイドル時代からは想像もつかないバリバリのロック・ヴォーカルだ。咆哮をあげるギター、これでもかとばかりに連打されるピアノ、エンディングで乱入してくるブルースハープと、ハードロックのエッセンスを大量投下して究極の歌謡ロックに仕上げた萩田アレンジも見事という他ない。
山口百恵 ロックンロール・ウィドウ ②
①横須賀ストーリー
川瀬泰雄や酒井政利を中心とする制作サイドのアイデアに基づいて阿木燿子が詞を書き、その詞に宇崎竜童がメロディーをつけ、萩田光雄が絶妙なアレンジを施し、阿木マジックによって “大人のオンナ” へと変身した山口百恵が歌うという、まるでシューマッハ時代のフェラーリを想わせるような(?)鉄壁のチーム体制によって生み出された最初の作品がこの「横須賀ストーリー」だ。百恵にとってそれまでの “単なるアイドル歌手” を超えた存在へと駆け上るターニング・ポイントになった重要な曲であり、私が初めてエエなぁと思った彼女のシングルがこの曲だった。緊張感溢れるストリングスの短いイントロに続いて “これっきり これっきり~♪” のリフがインパクト抜群な前サビへとなだれこむパートの切迫感がたまらない(≧▽≦) 疾走感を煽りまくるストリングスのオブリガードや雰囲気抜群のひしゃげたサックスも効果満点だ。“今日も私は 波のように抱かれるのでしょう ここは横須賀~♪” で終わるシュールなエンディングで聴き手にえもいわれぬやるせなさを感じさせる演出もニクイですなぁ...
横須賀ストーリー / 山口百恵
②イミテイション・ゴールド
「横須賀ストーリー」で新境地を切り開いた “ニュー百恵プロジェクト・チーム(?)” がハードボイルドな歌謡ロック路線を更に推し進めたのがこの「イミテイション・ゴールド」だ。まるでエルヴィスの「ハートブレイク・ホテル」を想わせるかのようなブルージーな導入部からテンポアップして疾走開始、一度聴いたら忘れられない“アッ アッ アッ イミテインション・ゴールド~♪” のリフレインを経て “くせが違う 汗が違う 愛が違う 利き腕違う~♪” と一気にたたみかけるスピード感溢れる展開が圧倒的に素晴らしい。この曲がリリースされた1977年という時代を考えれば、当時のこの曲がいかに突出した存在だったか分かろうというものだ。尚、この曲のアルバムヴァージョン(←ロンドン録音の「ゴールデン・フライト」)には何と元キング・クリムゾンのゴードン・ハスケルがベースで参加、アグレッシヴなアレンジによって換骨奪胎され、一瞬“コレがあの「イミテイション・ゴールド」なのか?” と我が耳を疑いたくなるようなゴツゴツした無骨なヴァージョンへと生まれ変わっている。
イミテイション・ゴールド / 山口百恵
③プレイバック part 2
山口百恵のツッパリ歌謡ロック路線の代名詞と言えるのがこの「プレイバック part 2」だ。宇崎竜童は阿木燿子から渡された “緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ~♪” という歌詞を見て、疾走するポルシェのイメージを膨らませてこのスピード感溢れるロック曲を書いたのだろう。周りの景色がどんどん後方へと遠ざかっていくような加速感を見事に表現した萩田アレンジにも唸ってしまう。そしてこのまま快調に飛ばし続けるのかと思いきや、0分58秒あたりで演奏が一瞬止まり、百恵が “馬鹿にしないでよぉ~♪” と啖呵を切って再スタートするという斬新な手法が圧倒的なインパクトを聴き手に与える。中期以降の百恵のシングルにはこういった仕掛けが至る所に散りばめられているから面白い(^o^)丿 更に後半部では “カーラジオから流れてきた素敵な歌” としてジュリーの「勝手にしやがれ」が登場、前年の大ヒット曲の歌詞にある “出て行った女” に自らを重ね合わせるという巧妙な手法に阿木燿子の天才を見る思いがする。
山口百恵_プレイバックPart2(音源編集)
④絶体絶命
いきなり “別れてほしいの 彼と” “そんな事は出来ないわ” “愛しているのよ 彼を” “それはアタシも同じこと” とバチバチ火花を散らす二人のオンナのやり取りで始まるこの曲でも阿木燿子の才気煥発、“夕暮れ迫るカフェテラス” “白いハンカチ” “銀色に輝く指輪” という絶妙な情景描写で聴き手を引きつける匠の技も凄いが(←まるでドラマのワン・シーンを見ているようで、修羅場が目に浮かぶようなリアリティーがありますな...)、何と言ってもたたみかけるような “はっきりカタをつけてよ~♪” 3連発が圧巻! そしてトドメは吐き捨てるように歌われる “やってられないわ~♪”... こんな “やってられない感” を出せる歌い手は彼女以外には考えられない。「プレイバックpart 2」の “バカにしないでよぉ~♪” に比肩する百恵のベスト・フレーズだと断言したい。主人公になりきり、まるで “喋るように歌う” シンガー、百恵の本領発揮といえる1曲だ。
山口百恵 絶体絶命
⑤愛の嵐
この「愛の嵐」という曲はどちらかというと彼女のシングルの中では過小評価されている1枚ではないかと思うのだが、私はこの曲が大好き。大仰なイントロに続くスローな出だしから一転して疾走を始めるところ(←0分50秒あたり)なんか快感そのものだし、百恵のヴォーカルに影のように寄り添うジェフリー・ダウンズみたいなシンセも絶妙な隠し味になっていて緊張感を盛り上げる。“炎と書いてジェラシー♪” のラインなんか何度聴いても鳥肌モノだし、 “storm, storm, storm...♪” の “ストーム10連発” で引きつけておいて “心の貧しい女だわ あぁ~たし~♪” でストンと落とすラインをきっちりと歌いこなせる歌手が他に何人いるだろうか? 最後の最後に自らを “心の貧しい女” と自虐的フレーズで切って捨てる阿木燿子のセンスにも脱帽だ。
愛の嵐 ③【HD】山口百恵
⑥ロックンロール・ウィドウ
この曲も歌詞がブッ飛んでいる。ロックンローラーの彼氏が夜遊びにうつつを抜かして帰ってこないのを “夫はとうに亡くなりました いい人でした~♪” と痛烈に皮肉って「ロックンロール・ウィドウ(未亡人)」へと繋げる発想が実にユニーク。阿木燿子ってホンマに天才やね(≧▽≦) ゼップの「ロックンロール」へのオマージュを表現した “かっこ かっこ かっこ かっこ...♪” のフレーズを一人二重唱でビシッとキメた百恵も凄い。初期のアイドル時代からは想像もつかないバリバリのロック・ヴォーカルだ。咆哮をあげるギター、これでもかとばかりに連打されるピアノ、エンディングで乱入してくるブルースハープと、ハードロックのエッセンスを大量投下して究極の歌謡ロックに仕上げた萩田アレンジも見事という他ない。
山口百恵 ロックンロール・ウィドウ ②