shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズのスウェーデン盤特集③「White Album」

2017-11-26 | The Beatles
 「レット・イット・ビー」や「ヘイ・ジュード」といった後期ビートルズのサウンドとスウェーデン・プレスの相性の良さを実感した私は次のターゲットを「ホワイト・アルバム」に絞った。例の “毎日お風呂に入りそうな、清潔な音” というのを聴いてみたかったからだ。早速Discogs で調べてみたが何故かリイシュー盤しか載っていなかったので eBay でチェックしてみると、「アナログ・ミステリー・ツアー」に掲載されていたのと同じ盤が£600(=約88,800円!)というニンピニン価格で出品されていてビックリ(゜o゜)  1976年に出たリイシュー盤も1枚出品されてはいたが、それですら€100(=約13,200円)だ。いくらプレス枚数が少ないとはいえ、なんで「ホワイト・アルバム」のスウェーデン盤にそんな高値が付くのか謎だが、何にせよ1万円超えだなんて興味本位で手を出すにはちょっと高すぎる(>_<)  私はいつものように持久戦を覚悟し、安くて盤質の良いブツが出てくるのを待つことにした。
 それから1ヶ月ほどして、先の£600と同じ盤が eBayに£30で出品された。この価格差は一体何なん?と思わず突っ込みたくなってくるが、商品説明には “TOP COPY”“BOTH DISC IN GREAT CONDITION” とあり、マト枝番も -1/-1/-1/-1 ということで、コレは何としてもゲットせねばと不退転の決意で£70を突っ込んだが結局ライバルは現れず、スタート価格の£30で落札。なんで誰も来ぇへんのやろ?と少々拍子抜けしたが、トップ・コンディションの稀少盤を5,000円弱で手に入れることが出来た喜びの方が遥かに大きい(^.^)
 レコードはイギリスからわずか8日で到着、ロイヤル・メールは相変わらず優秀だ。ジャケットはドイツ製でサイド・ローディング。タイトル・ロゴとシリアル・ナンバー(№802465)はエンボス加工されている。センター・レーベルに記された著作権管理クレジットは北欧圏のncbではなくオランダのSTEMRAで、センター・レーベル右上のカタログ№もオランダの国別コード5Cで始まっていることから考えて、前々回取り上げた「レット・イット・ビー」と同じくこのレコードも “オランダ・マーケット向けのスウェーデン・プレス盤” ということだろう。
 最大の関心事である音の方は贅肉を削ぎ落としたような感じで上の方までキレイに伸びており、音の細部までキメ細やかに描写するタイプ。 “清潔な” 音というのは言い得て妙で(←毎日お風呂に入るかどうかまでは知りません...)、入っている音はすべて出してしまおうといった感じの音作りだ。 “清流の川底の小石を見るような音” と言ってもいいかもしれない。昔オーディオ・フェアで聴いたリンのプレイヤーが確かこんな音で鳴っていたような記憶がある。「ディア・プルーデンス」を始めとするいくつかの曲では “こんな音も入ってたんや...” みたいな新発見があり、それだけでもこの盤を買った甲斐があるというものだ。
 音圧はそれほど高くないが、アンプのヴォリュームを一目盛り上げてやるとカチッとまとまった芯のあるサウンドがスピーカーから飛び出してくる。一番の聴き物は「ブラックバード」や「マザー・ネイチャーズ・サン」、「アイ・ウィル」といったアコースティック系ナンバーで、楽器のリヴァーブ再現がリアルそのものなので音の広がりが豊かに聞こえるのが嬉しい(^.^)  まるで脱脂綿で拭いたかのような清潔な音作りなので「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」や「ヤー・ブルース」といったブルージーなナンバーでは音の混濁感が後退したせいか “髭を剃ってスッキリしたクラプトン” みたいなソロ(?)が愉しめるし、私の手持ちの盤の中で「ハニー・パイ」のジャジーなフィーリングを一番うまく表現しているのが何を隠そうこのスウェーデン盤なのだ。
 惜しむらくは、ややハイ上がりなサウンドのため「バック・イン・ザ・USSR」や「バースデー」といったアッパーな疾走系チューンではスピード感がアップしたように聞こえるものの、中低域がスリムなためにUK盤と比べるとボディーブローのように腹にズンズンくる音の押し出し感が今一歩なところ。もう少しバスドラのドスッという低~い帯域のエネルギー感が欲しい。ただしそれはあくまでもUK初版と比較しての話であって、このレコード単品で聴けば不満の無いレベルだ。去年ハマりまくったデンマーク盤といい、今回特集しているスウェーデン盤といい、ビートルズの北欧プレス盤は侮れませんな。

ビートルズのスウェーデン盤特集②「Hey Jude」

2017-11-19 | The Beatles
 前回取り上げた「レット・イット・ビー」がめっちゃ良かったので “よっしゃ、次はスウェーデン盤いったるぞ!” と張り切ってオークション・サイトを色々チェックしてはみたものの、肝心のブツがほとんど市場に出てこない。The Beatles Bible サイトの DISCOGRAPHIES によると、スウェーデンではリアルタイムで「プリーズ・プリーズ・ミー」から「レット・イット・ビー」までのオリジナル・アルバム12枚に加えて「オールディーズ」や「ヘイ・ジュード」を含めたベスト盤3枚の計15枚がリリースされているはずなのだが、オークションで見かけるのは70年代プレスのリイシュー盤ばかり。
 特に「プリーズ・プリーズ・ミー」から「サージェント・ペパーズ」までの初期~中期アルバムのスウェディッシュ・1stプレスであるイエロー・パーロフォン・レーベル盤はプレス枚数自体が少ないのか、まったくと言っていいほど出てこないし、ごくごくたまに見かけても$300~$500という人をバカにしたような値付けでハナシにならない。
 そんな中、網に引っ掛かってきたのが「ヘイ・ジュード」だ。このレコードは厳密に言えばアメリカ主導のコンピレーション盤ながら、オリジナル・アルバム未収録の重要なシングル曲である「レディ・マドンナ」や「ヘイ・ジュード」、「ジョンとヨーコのバラード」が収録されているし、私が大好きなシングルB面曲「レヴォリューション」や「ドント・レット・ミー・ダウン」も入っているということで、私の中では “「ホワイト・アルバム」と「アビー・ロード」の隙間を埋める準オリジナル・アルバム” という位置付けの好盤なのだ。去年このブログでも手持ちの「ヘイ・ジュード」を9枚ほど特集したので、これで10枚目ということになる。
 この「ヘイ・ジュード」スウェーデン盤はガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」の初回試聴では “おざなりな眠い音” という低評価だったものの、ヴォリュームを適正レベルまで上げて聴いた2度目の試聴では“音圧は低いものの繊細さではかなりのもの” で “ドイツ・マザーながらドイツ初期プレスとはマト枝番が異なり音の傾向も違う” “音圧を稼いでいない分、音の隙間がキレイなのはNZ独自カットを想わせる” という高評価。UK盤だけではなくドイツ盤やNZ盤との聴き比べも面白そうだ。
 私が手に入れた盤は本に載っていた盤とはマトは同じ(1C062-04348-A-1F / B-1F)ながらレーベル面の表記はかなり違っており、私の盤には北欧圏の著作権管理クレジット“ncb”の表記がなくて更にA③が「PAPER BACK WRITER」、A⑥が「REVOLUTIONS」というUK輸出仕様の初期盤にあったのと同じミススペルになっていることから類推すると、コレが 1stプレスである可能性が高い。因みにジャケットは表裏共にキレイにコーティングされており、表面左上と裏面右上に 4E 062-04348 という数字が記されている。盤の重さは 150gだ。
 A①「キャント・バイ・ミー・ラヴ」から聴き始めたが、まず感じたのは “フラットな音” という印象で、低域から中高域にかけて特定の音域が分厚くなるということもなくバランス良くスラーッと伸びている感じ。だからA③「ペイパーバック・ライター」なんかUK盤シングルのガンガンくるアグレッシヴなサウンドに慣れきっている私は最初ちょっと拍子抜けしてしまったが、よくよく考えてみれば音圧を盛って盛ってド迫力サウンドのUK盤シングルに仕上げる前段階の音が楽しめるワケで、コレはコレでアリやなぁと思えてくる。
 だからA④「レイン」なんかUK盤ではグチャグチャなサウンド(笑)の中に埋もれがちだった細かい音まで聞こえてめっちゃ面白いし、A⑤「レディ・マドンナ」やA⑥「レヴォリューション」といったシンプル&ストレートなロックンロール・ナンバーではパワーと繊細さを高い次元で両立したサウンドが楽しめ、スウェーデン盤も中々やるやん!と感心してしまった。
 B①「ヘイ・ジュード」ではベースの音がやや線は細いもののキリリと引き締まって歯切れよく、フェイド・アウト寸前までその動きがクリアに聞き取れる。ベース・ラインが印象的なB④「ジョンとヨーコのバラード」でもそれは同様で、低音域の下の方をスパッと潔く切り捨ててスピード感を取った感じのサウンドが気持ちイイ。前回の「レット・イット・ビー」もそうだったが、他とは一味違うスウェーデン盤独自の音作りは私のようなUKオリジナル盤至上主義者にとっても十分に魅力的でコレクタブルだと思う。

ビートルズのスウェーデン盤特集①「Let It Be」

2017-11-12 | The Beatles
 これまで何度も書いてきたように私を各国盤蒐集という桃源郷に引きずり込んだのは例のガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」だが、ページの半分以上を有象無象の再発盤やUS盤、日本盤に割いているあの本の中で私の興味を引いたのがインド盤とドイツDMM盤(←コレは再発やけどめっちゃ良かった!)、そして今日取り上げるスウェーデン盤だった。
 まず私の目に留まったのが「ホワイト・アルバム」のスウェーデン盤に関する記述で、“毎日お風呂に入りそうな、清潔な音” という表現に興味を抱き、次に「レット・イット・ビー」の “原盤の音情報を忠実に記録する技術力がある”“プレスが非常に丁寧で、NZ盤を彷彿とさせる幽玄な音を聴かせる” という記述に “何かちょっと面白そうやな...(^_^)” と好奇心をそそられ、“他のタイトルに関してもNZ盤のUKマザーといい勝負をするのではないか” “スウェーデン盤は中々市場に出回らず、いざ探そうとすると入手は難しい” という行を読んでコレクター魂に火が付いたというワケだ。
 まず最初にどんな盤が出品されているのか見ようと eBay で検索してみたのだが、ビートルズのスウェーデン盤はワンボックスEMIのシルバー・パーロフォン盤ばかりでガッカリ(*_*) 「ヘイ・ジュード」のUK輸出仕様LP以外の銀パロ盤に用はない。しかし Discogs を見てみると、“幽玄な音” とやらを聴かせるという「レット・イット・ビー」が何枚か出品されていたのでその中から一番盤質が良さそうなのを購入。スウェーデン盤は狙ってる人がまだ少ないせいか、€20で買うことが出来た。
 一口にスウェーデン盤と言ってもアップル・レーベルになって以降はそのヴァリエーションは多岐にわたっており、私が調べた限りでは一体どれが1stプレスなのか、はたまたどれが一番音が良いのかがハッキリしない。私が買った盤はジャケットがドイツ製(←裏ジャケ右上にドイツを表す国別コード 1C が記されている)でレコード本体は Made In Sweden、しかもセンター・レーベル右上にあるカタログ№はオランダを表す国別コード 5C で始まっており(←本に載ってたのはココが PCS 7096 で、多分スウェーデン国内向けプレス)、これはつまりスウェーデンでプレスした盤をドイツ製のジャケットに入れてオランダで販売したということを意味している。ややこしい話が苦手な私は、裏ジャケがレッド・アップルでマトが YEX 773-3U PCS 7096 A/YEX 774-3U PCS 7096 B MA ということで、たぶん初期プレスだろうと判断した。
 このレコードは私にとって初めてのスウェーデン・プレス盤ということで一体どんな音がするのか興味津々だったが、そもそも湯浅氏の言う “幽玄な音” とは一体どんな音なのか、何となく分かったような分からんような曖昧な表現でスッキリしない。「幽玄」を辞書で調べてみても「趣きが深く味わいが尽きないこと」となっていて、趣きや味わいとは無縁の生活をしている私にはいまいちピンとこなかったので、私はレコードが届くのが待ち遠しくて仕方なかった。
 届いたレコードはジャケットも盤もピッカピカで、もうそれだけでテンションが上がってしまう。で、肝心の音だが、ハッキリ言ってコレは「大当たり」!! 一番の特徴は倍音成分が豊かなことで、そのために音に厚みを感じるところが◎  A①のアコギなんかまるで弦の数が増えたかのように豊かな音色で響くし、ジョンやポールのヴォーカルも輪郭がハッキリしていてシャープに聞こえる。A③なんかまさに“幽玄” を絵に描いたようなサウンドだし、B②やB⑤といったストレートアヘッドなロックンロール・ナンバーも軽快で小気味よいノリが満喫できる。UKマザーながら手持ちのどの「レット・イット・ビー」とも一味違う独自のサウンドで、私はめっちゃ気に入った(^.^)  ニュージーランドとオーストラリアも一段落したので、次はスウェーデン盤を狙おうかな...

Help!(SMO 984008)/ The Beatles【Beach Cover】

2017-11-05 | The Beatles
 ビートルズのレコードには発売国独自のオリジナル・ジャケットが存在するケースが少なくない。しかもその多くはジャケットを見ているだけで幸せになれそうな秀逸なデザインのため、各国盤蒐集のモチベーションを大いに高めてくれるのだ。かく言う私もいわゆるひとつの “ディフ・ジャケ” にハマったクチで、1年ほど前に清水の舞台から飛び降りるつもりで買った「エスキモー・カヴァー」で味をしめてからというもの、理性という名のブレーキを失った私は「シェル・カヴァー」「バルーン・カヴァー」「チェア・カヴァー」「ミット・カティスタッド・カヴァー」と、コレクターの間で「○○カヴァー」と呼ばれる逸品を次々とゲットしてきたのだが、中には値段が高すぎて買えなかった盤もある。そんな恨めしいレコードが今日取り上げるエクスポート仕様の「ヘルプ!」で、通称「ビーチ・カヴァー」と呼ばれている1枚だ。
 このレコードの存在を知ったのは半年ほど前のことで、Discogsでドイツ製の輸出仕様盤について調べていた時に偶然見つけたのが事の発端だった。カタログ・ナンバーのアタマがSMOで始まる盤を検索すると、「ヘルプ!」のジャケ左上のodeon/EMIロゴが青色の縁取りの盤、同じ構図でロゴの縁取りが緑色の盤、そしておなじみの手旗信号写真ではなくビーチで佇む4人のショットをフィーチャーした盤の3種類がヒット。ビーチの写真といえば見開き日本盤の裏ジャケやメキシコ盤のものしか知らないが、そのどちらとも違う写真が使われており、柔和なポールの表情とそれを見つめるジョンの屈託のない笑顔、ちょっとお疲れ気味(?)のジョージ、そしてペンキまみれで情けない顔のリンゴという4者4様のコントラストがめっちゃエエ味を出していた。
 すぐに “コレは欲しい!!!” と思って値段を見たのだが、目の玉が飛び出るようなスーパーウルトラ・プレミア価格にビックリ... (゜o゜) ユーロやポンドで4桁行くなんて、とてもじゃないが手を出せる額ではない。ビートルズ関連で10万円を超えるのはステレオ金パロとブッチャー・カヴァー、インドSP盤ぐらいしか知らなかった私には衝撃的な出会いだった。その後、eBayでも網を張ってみたところ半年間で2回出品されたが、どちらも10万円前後で落札され、貧乏コレクターの私はただただ指をくわえて見ているしかなかった。
 このレコードはドイツ製のスイス向け輸出盤(SMO 984008)で、レーベルは珍しいイエロー・オデオン。スイスの Ex Libris というクラブ・イシューで、プレス枚数が極端に少なかったため(←スイスやもんね...)鬼のようなプレミア価格で取り引きされているという。eBay を見てみると “MEGARARE”“MONSTER RARE(笑)”“ULTRA HARD TO FIND” といった煽り文句と共に出品され、大金持ちコレクターによる凄まじい争奪戦が展開されるのだ。
 そういうワケですっかり戦意喪失した私は Discogs に戻って“SMO”の検索を再開したのだが、そこで見つけたのが2000年にリリースされた “ビーチ・カヴァー” のカウンターフィット盤。Discogs では今年の9月からアンオフィシャル・リリース盤、つまりブートレッグの取り扱いを禁止しているが、その時はまだカウンターフィット盤がカタログに載っていて堂々と買うことが出来たのだ。
 もちろん本物を手に入れるに越したことはないが、宝くじでも当たらない限りそれは不可能に近いし、「ビーチ・カヴァー」に関してはあくまでもジャケット目当てなのでカウンターフィットの偽物音質でも気にならない。逆にたったの $25であの魅惑のジャケットが手に入ると思うと居てもたってもいられなくなり、私は即買いを決めた。
 届いたレコードはさすがに偽物だけあってジャケットの造りはそれなりだが、価格差を考えれば致し方の無いところ。魅惑のジャケット・デザインをLPサイズで安く手に入れただけで十分だし、カウンターフィット盤なんて所詮そんなものだろう。将来万が一アブクゼニを手にするようなことがあれば是非とも本物を拝んでみたいものだ。
 音の方はハッキリ言ってゴミ(笑)で、A①「ヘルプ!」なんか例のギターの下降フレーズが聞こえないに等しく、何じゃいこれは???という感じ。これ以上聴いても時間の無駄だと思って針を上げたので残りがどんな音か知らないが、元々目の保養のために買ったレコードなので正直どうでもいい。ただ、センター・レーベルだけはオリジナル盤を細部まで精巧に再現しており、唯一の違いはセンター・レーベル下部の “ST33” の3の字体が丸いかどうかだけというのだから恐れ入る。まぁこのレコードに関してはジャケットだけを壁に飾り、中身の方は隣室の “一生聴かないかもしれないコーナー” 行きなのでレーベル云々は関係ないのだが...