shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Wings Over America」各国盤バトルロイヤル①

2019-06-29 | Paul McCartney
 少し前の話になるが、Discogsでポールのスウェーデン盤を探していた時のこと、あるセラーが盤質NMの「Wings Over America」 をたったの €4.5で出品しているのを見つけ、思わず衝動買い(←こればっかり...)。送料込みでも2,000円するかしないかの値段で稀少なスウェーデン盤が買えたわい... とほくそ笑んでレコードの到着を待った。
 それから10日ほどして荷物が届いた。ワクワクしながらパッケージを解いて中身を取り出すと、ピッカピカにコーティングを施された美麗ジャケットでテンションUP! しかし喜び勇んで盤を取り出してセンター・レーベルを確認すると、そこにはハッキリと Made In Holland の文字が...(゜o゜)  もちろん版権表記も北欧の ncb ではなくドイツ・オランダ系の BIEM/STEMRA となっている。慌ててジャケット裏を見ると Printed In Sweden とあるので中身だけが違っていることになるわけだ。私はセラーに “中身間違えとるで。ちゃんとした盤をすぐに送らんかい!” という趣旨のメールをして返事を待ったのだが、その日がたまたま週末だったこともあって、折角だからこのオランダ盤をSさんと一緒に聴いてみようと思い立ち、B-SELSへ持ち込んだ。
 その日は他に例の「Band On The Run」のニンバス盤も持っていったので当然そちらから試聴スタート。詳細はこの前書いた通りで2人してニンバス盤のスーパーウルトラ高音質に浸っていたのだが、盤を聴き終えていつまでも無音でいるわけにもいかず、Sさんに “次は何にしましょうか?” と聞かれた私は “ほんなら「Over America」のオランダ盤でも聴きましょか。” とこのレコードを差し出した。
 針を落としてA①「Venus And Mars」が始まるとすぐにSさんが“コレ、ちょっと音が変じゃないですか? まるで別のライヴを聴いてるみたいですよ。” と仰った。私もさすがに “別のライヴ” とまでは思わないまでも、確かにこれまで何百回と聴いてきた「Over America」の音ではない。何か無理やり作った人工的な音という感じがして違和感ありありなのだ。Sさんは “自然な音ではないですよね、コレ。歓声だけ聞いても会場キャパが違って聞こえるし、ハードロックっぽい音作りにしようとして失敗したような感じです。” と一刀両断に切って捨てる(笑)
 とても6面全部を聴く気にはなれなかったので “それじゃあ一番ボロが出そうな Side-3 のアコースティック・セットを聴いてみましょう。” と私(←鬼畜やな...)。しかしSide-3を聴き進むにつれ、徐々にアコギ大好きSさんの顔がこわばっていく。そして「Blackbird」が始まったところで “コレはもうお話になりません。ギターの弦の音が安っぽいナイロン製に聞こえますよ。こんなの「Over America」じゃないですね!” とやや怒気を含んだ(笑)声で仰ったので “何か血の通ってないアンドロイドみたいな音作りですよね。この盤はここまでにしましょ。” と、B-SELS聴き比べ史上初の打ち切り(笑)となった。まぁその前に聴いていたのがニンバス盤ということもあって余計に酷く感じたのかもしれないし、この盤は1983年以降に出た再発盤なので(←センター・レーベル上部中央にある惑星ジャグリング・ヴァージョンの MPLロゴで明らか)オランダ盤全部が悪いということではないのかもしれないが、少なくともこのレコードに関する限りは全く論ずるに値しない音質改悪盤だった。
 家に帰ってみるとセラーから謝罪のメールが来ており、当然ながら即返金となったのだが、こーなってくると意地でも本物のスウェーデン盤を聴いてみたくなってくるというもの(でしょ?) 結局別のセラーにメールして、今度は正真正銘のスウェーデン盤であることを事前にしっかりと確認してから購入。前々から Discogsのセラーはエエ加減なのが多かったが、今年に入ってからは特に酷くて半年間で何と10件もの出品エラーによる返金で無駄な時間を浪費させられている。困ったものだ(>_<)
 愚痴はさておき、オーダーから1週間という電光石火の早業でついに本物のスウェーデン盤が届いた。ジャケットは前のヤツ以上にピッカピカで、ほとんどミント状態と言っていい。盤質もEXで、これで$9.99だから超お買い得と言えるのだが、気になるのは音質だ。果たしてオランダ盤と同様のアホバカ盤なのか、それとも... ??? 私は性懲りもなくこの盤を B-SELS に持ち込んでSさんと一緒に徹底検証することにした。 (つづく)

Crazy Rhythm / 江利チエミ

2019-06-27 | Jazz Vocal
 前回に続く “ついに手に入れた垂涎盤特集” 第2弾は江利チエミの痛快無比なジャズ・ヴォーカルが聴ける10インチLP「Crazy Rhythm」だ。私はこれまで何度もこのブログに書いてきたように江利チエミの大ファンで、カヴァー・ポップスであれラテンであれ民謡であれ、その唯一無比な歌声で歌われる彼女の歌はジャンルを超越して素晴らしいと思っているのだが、そんな中でも私がこよなく愛しているのが彼女のジャズ・ヴォーカル・ナンバーであり、特にアップ・テンポの曲における圧倒的なノリは他者の追従を許さないカッコ良さである。
 私がそんな彼女の魅力に開眼したのは “KING RE-JAZZ SWING” という和モノ復刻シリーズの1枚としてリリースされた「Chiemi Sings」という CDで、その1曲目を飾っていたのがこの10インチ盤のタイトル曲「Crazy Rhythm」だった。それまで「テネシー・ワルツ」しか彼女の歌を聴いたことがなかった私は「テネシー・ワルツ」とはまるで別人のように強烈にスイングする彼女のスキャットに完全 KOされ、その時以来彼女のレコードはほとんどすべて買い集めて愛聴しているのだが、そんな中で唯一手に入れることができていなかったのがこの10インチ盤というワケだ。
 江利チエミのレコードなんてヤフオクやメルカリを探せば簡単に入手できそうなものだが、なんだかんだ言っても所詮は和ジャズのヴォーカル・アルバム。しかも60年代モノとくれば市場に出回っている数は圧倒的に少なく、ヤフオクで過去11年の間にたったの2回しかお目にかかっていない(←どっちも2万円つけて負けた...)という超レア盤なのだ。
 しかも今回私がこの盤を見つけたのはヤフオクではなく eBayである。海外オークションならさすがにライバルは少ないだろうし、自動延長がウザいヤフオクとは違ってスナイプが有効な eBayなら多分大丈夫だろうとは思ったが、万が一今回負ければ次のチャンスはいつ巡ってくるか分からない。油断は禁物なのだ。そういうワケで $200という背水スナイプを敢行したら、何とか $163で落札できた。終了直前まで $9だったことを考えると、最後の数秒での戦いが凄まじかったということがよくわかる。2位の奴がおらんかったら$25で獲れてたと思うとムカつくが、まぁコレばっかりはしゃあない。
 ということで2万円近くを出してやっと手に入れたこのレコードはアメリカのコーラスグループ、デルタ・リズム・ボーイズのメンバーだったカール・ジョーンズとのデュエット・ジャズ・アルバムで、相方のカール・ジョーンズの声質は正直って好きではないので(←なんかキモいというか、私が一番苦手なタイプの歌声だ...)彼のソロ・ヴォーカル曲A②B②はいつも飛ばして聴いているのだが、そんなマイナス・ポイントを差し引いてもこのアルバムは素晴らしい。
 私がこのレコードを愛聴している理由は彼女のスインギーなヴォーカルともう一つ、バックを務めている白木秀雄クインテットの演奏の素晴らしさにある。特にA①「Crazy Rhythm」におけるブラッシュの名手白木の変幻自在のプレイは圧巻で、いきなりブラッシュの乱れ打ちで始まるイントロなんかもう最高(≧▽≦)  持てるテクニックを惜しげもなく投入し、秘術の限りを尽くしてチエミを猛プッシュする “和製フィリー・ジョー” 白木秀雄のドラミングは鳥肌モノだ。そんな彼のブラッシュの音をこのオリジナルLPで聴くと、今まで聴いたことがないような生々しい音がスピーカーから飛び出してきて超気持ちイイ(^.^)  やっぱり60年代の録音はオリジナル盤をヴィンテージ・オーディオで聴くのが最高ですわ(≧▽≦)
Chiemi Eri with Carl Jones - Crazy Rhythm


 タイトル曲のA①以外ではB面ラストに置かれた「I Get A Kick Out Of You」が気に入っている。スインギーなA①で始まったにもかかわらずAB両面共に2曲目にカール・ジョーンズのソロ、それも激甘バラッド曲を配置するというクソみたいな構成のせいで、アルバムとして通しで聴くとストレスが溜まる構成になっているが、そんな鬱憤を晴らすかのようにBラスのアッパー・チューンで颯爽とスイングするチエミが素晴らしい。
 尚、レコードでも CDでもA①が原信夫とシャープス・アンド・フラッツでB④が白木秀雄クインテットの演奏という表記になっているが、どこをどう聴いてもスモール・コンボをバックにしたA①が白木クインテットでビッグ・バンドをバックにしたB④がシャープス・アンド・フラッツだと思うのだが...???
Chiemi Eri with Carl Jones - I Get A Kick Out Of You

Kenny Burrell (BLP-1543)

2019-06-25 | Jazz
 私には長いこと探してるのに中々見つからない垂涎盤が何枚かあって、毎日そんなレコードのことばかり考えて過ごしているのだが、そういう入手困難盤を数年越し、ヘタをすれば十数年越しでついに手に入れることができた時の嬉しさはもう筆舌に尽くし難い。つい最近も長いこと欲しくて欲しくてたまらなかったレア盤を一気に何枚か買えて大喜びしたので、今日はその内の1枚を取り上げようと思う。
 そのレコードというのはハードボイルドな音色でカッコ良くスウィングするジャズ・ギタリスト、ケニー・バレルのブルーノート・レーベルにおける2枚目のアルバム(BLP-1543)で、その内容の素晴らしさもさることながら、ポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホルが描いたイラストをフィーチャーしたカッコいいジャケット・アートワークのせいでとてつもないプレミア付きで取り引きされているレコードなのだ。
 アンディ・ウォーホルといえば何と言ってもストーンズの「Sticky Fingers」(←例のジッパー付きジャケットのヤツね...)が断トツで有名だが、他にも同じストーンズの「Love You Live」やルー・リードの「The Velvet Underground & Nico」(←有名なバナナ・ジャケのヤツ)、ビートルズ関連ではジョン・レノンの「Menlove Ave」といったアルバムのジャケット・アートワークを手掛けており、その唯一無比と言えるデザイン・センスでレコード・コレクターの間でも抜群の人気を誇っている。
 このようにウォーホルのデザインしたロック・アルバムのジャケットは主に60年代後半以降のものになるが、それ以前の、ウォーホルがまだ “ごくごく普通のイラストレイター” だった頃に手掛けていたのは50年代ジャスのアルバム・アートワークだ。中でもジョニー・グリフィンの「The Congregation」とケニー・バレルの「Blue Lights Vol. 1」「Blue Lights Vol. 2」、そしてこの BN1543番「Kenny Burrell」(← Goldmine の Price Guide では「Kenny Burrell, Volume 2」となっているが、正式には self-titled abbum だ...)はかなり有名で、もちろん中身の音楽も素晴らしい。
 私はケニー・バレルの大ファンで、彼のアルバムはほとんどすべてオリジナル盤で持っているのだが、そんな中で唯一この1543番(← BNの1500番台は紛らわしいタイトルのアルバムが多いので、レコード№で呼ぶ方がかえってわかりやすいケースがある...)だけがどうしても手に入らなかった。まぁそれもこれもジャズ・レコードゆえのプレス枚数の少なさ、ブルーノート・レーベル人気による価格高騰、そしてそれに輪をかけるウォーホル・プレミアの3つの要因が重なったせいなのだろう。
 そういうワケでこのアルバムは滅多に市場に出てこず、たまに出てきたとしても1957年に出た Lexington Ave. アドレスの1stプレス盤は大体 $1,000~$1,500ぐらいで取り引きされていて全く手が出ないので、それと音がほとんど変わらないであろう New York, USA アドレスの2nd プレス盤(1963年リリース)に的を絞って何とか3万円以内で手に入れたいと思って虎視眈々と狙っていた。思えば私が eBayを始めてから今年でちょうど17年になるのだが、それより前の数年も入れると約20年越しということになる垂涎盤だ。
 そんな New York, USAの1543盤が eBayに出品されたのは先月の半ばで、ちょうどペパーズのニンバス盤の件でモヤモヤしていたこともあって、その鬱憤を晴らしてやろうと不退転の決意でスナイプ、終了直前まで $113だったところに $320を突っ込み(笑)結局 $213で落札できた。送料込みでも25,000円程度でゲットできて大満足だ。
 届いた盤は結構スリキズがあるものの、傷に強い BN盤とオルトフォンのモノ・カートリッジの相乗効果のおかげでチリパチ音が音楽の邪魔をすることはなく、コスパは上々と言えるレベル。演奏内容の方は CDでイヤというほど聴いてきたので隅々まで分かっているつもりだったが、やはりオリジナル・アナログ盤で聴くと音の厚みが段違いだし、ウォーホルのジャケットを見ながら聴くと更に音楽に深みが増すような錯覚すら感じてしまう。CDや配信ではこうはいかない。
 1956年3月に NYで行われたブルーノート・レーベルにおけるバレルの初セッションから5曲(トミフラのピアノ入りカルテットが A④B①の2曲+フランク・フォスターのテナー入りクインテットが B②③④の3曲)、同年5月に行われたデビュー盤「Introducing Kenny Burrell」(BLP-1523)用セッションからキャンディドのコンガが入った A①、ソロでガーシュウィンの名曲を美しくつま弾いた A②、そしてカフェ・ボヘミアでのケニー・ドーハムとのライヴ音源からの A③(←ドーハム名義の「Round Midnight At Cafe Bohemia」に入ってる同曲とは全くの別テイクで、こっちの方は曲の前半部でバレルのソロが大きくフィーチャーされている!)の計8曲で構成されており、様々なフォーマット、メンツの中で粋にスウィングするバレルの魅力が全開だ。
 中でも私が一番気に入ってるのが A④「Moten Swing」で、まさに“間”の芸術としか言いようのない絶妙なテンポ設定でバレルが淡々とこの曲を料理していくところが超カッコイイ(≧▽≦)  オリジナル・モノLPならではの轟音でドスン、ドスンと腹に響くオスカー・ペティフォードのベースに歌心溢れるトミー・フラナガンのピアノと聴き所が満載だ。それにしてもヴァンゲルダー・カッティングの LPはホンマに音がエエなぁ... (≧▽≦)
Moten Swing

「Sgt. Pepper's」の Nimbus盤買った(^o^)丿③

2019-06-20 | The Beatles
 私は手に入れたばかりのニンバス盤ペパーズを B-SELS に持っていき、“Sさん、今日は開店1周年を祝うに相応しいレコードを持ってきました!” と言ってこのレコードを差し出すと、“えっ、コレは...” としばし絶句され、“買わはったんですか!” と目を丸くされた。“今日はこれ1枚を徹底的に聴きましょう!” と私。レコードをターンテーブルにセットする Sさんの後姿からも緊張感が伝わってくる。
 A面がスタートしてしばらくの間、Sさんは目をつむり曲のリズムに合わせて首を縦に振りながら無言で聴いておられたが、その口元は明らかに満足そうに緩んでいる。結局A⑦が終わるまで二人ともほとんど言葉を発することなく聴いていたのだが、A面が終わり針が自動的に上がってしばしの静寂が訪れた後、Sさんが “いやぁ~、素晴らしいです! まるでウチの店が EMIスタジオになったかのようですよ。コレ、ナマ音よりも良いんじゃないですか? これこそまさにビートルズ・ミュージック、いや、ロックの頂点、金字塔と言えるアルバムですよ! 私なら絶対にコレを無人島ディスクにしますね。もうずぅーっと聴いていたいくらいですよ!” と興奮冷めやらぬ様子で熱く語られたのには驚いた。お付き合いさせていただいてからもう半年以上経つが、ここまでコーフンされている Sさんを見るのは初めてだ(^.^)
 盤を裏返してB①「Within You Without You」がスタートしてしばらくすると、Sさんが急に “何故ビートルズがこの曲をB面1曲目にもってきたのか、今日コレを聴いて初めて分かりました。この音を聴かせたかったんですよ! 今までめっちゃ暗い曲やと思ってましたけど(笑)コレを聴くとジョージの声もリラックスしてて楽しそうじゃないですか! あ~、コレは凄いですわ。” と一気呵成にまくしたてられたのだ。
 B②「When I'm Sixty-Four」では “この音、この響き、すごい!” と大コーフン(笑) B③「Lovely Rita」でリンゴのバシン!が炸裂するたびに私と目が合ってニッコリ(^.^)  ビートルマニアに言葉は要らない。B④「Good Morning Good Morning」では “何ですか、これは(≧▽≦)  新たにSEを入れ直したんかと思うぐらい凄いですよ!” と、A面の時とは違ってすっかり饒舌になられている(笑) そしてB⑤「Sgt.Pepper's (Reprise)」~B⑥「A Day In The Life」と続く怒涛のエンディングに圧倒され、先ほどのA面の時と同様に針が上がった後は放心状態で、しばらくしてから “良かったですねぇ~”“最高ですねぇ~”“ビートルズ・ファンでよかった... アナログ・レコード・リスナーで本当によかったですよ...” と2人とも大コーフンだ。そう、私にとっても Sさんにとっても “良い音でビートルズを聴く”... これ以上の喜びは無いのである。尚、その後もう一度AB両面を通しで聴いたのは言うまでもない。
 私は欲どおしい人間なので、こんな凄い「Sgt. Pepper's」を聴いてしまうと “「Revolver」や「White Album」でも Nimbus Supercut盤出してほしかったなぁ... 「Abbey Road」のB面なんかもう最高やろなぁ...” と贅沢極まりない無い物ねだりをしてしまうのだが、私の調べた限りではロック/ポップスのレコードでニンバス盤が出ているのは私が買った「Sgt. Pepper's」と「Band On The Run」以外ではピンク・フロイドの「Wish You Were Here」(←わかる!)とジャクソン・ブラウンの「Runnin' On Empty」(←何でこれなん???)の2枚しかない。それを考えると、ビートルズ関連でニンバス盤を2枚も出してくれたことにむしろ感謝すべきなのかもしれない。
 ニンバスの Sgt.担当エンジニアがビートルズ(特にポール)の音楽をよく理解し、深~い愛情と最高の技術でもって作り上げたこのレコードは、ビートルズが創造した万華鏡のようなカラフルな音楽世界を自然な形で、しかも細やかなニュアンスまでしっかりと音溝に刻み込んでいる。1984年という、アナログ技術が成熟して音楽の世界がアナログ・レコードからCDへと移り変わろうとしていた時期に作られたこのニンバス盤こそ、まさに “究極音質のビートルズ・レコード” の名に相応しい逸品であり、少なくともその音質的価値から言えばあのゴールド・パーロフォン・ステレオ盤さえも軽く凌駕する、全ビートルズ・レコードの頂点に君臨する最強の1枚と言えるだろう。

「Sgt. Pepper's」の Nimbus盤買った(^o^)丿②

2019-06-17 | The Beatles
 そもそもペパーズのニンバス盤というのは1984年にイギリスの Hi-Fi Today というオーディオ専門誌が企画した超高音質盤のことで、同じイギリスにある Nimbus Records というクラシック音楽専門のインディ・レーベルに制作を依頼、カッティング工程から使用するビニールの材質に至るまで徹底的に音質にこだわり抜いて作られ、メールオーダーのみの1,000枚限定で発売されたというビートルズ・コレクター垂涎のレコードだ。発売当初は通販限定ということもあってそれほど話題にも上らなかったようだが、そのスーパーウルトラ高音質ぶりが徐々に評判を呼び、その稀少性と相まって最近ではウン十万円というプレミア価格で取り引きされているようだ。
 さて、ここからが前回の続き。久々に緊張しながら(笑)そのニンバス盤に針を落とすと静寂の中からアルバム・タイトル曲のA①がスタート。おぉ、これは今まで何百回何千回と聴いてきた「ペパーズ」とは明らかに違うサウンドだ。一言で言うと “ビートルズが目の前にいる” のである。このレーベルは自然な音場再生によるナチュラル・サウンドを標榜していたというが、確かにスピーカーの前でリンゴがドラムをバシン!と叩くのが見えるのだ。ヴォーカルもまるで薄皮を剥いだように実にリアルな響きで、A②「With A Little Help From My Friends」なんか “リンゴ、歌うまなったんちゃう?” って思ってしまったし、A③「Lucy In The Sky With Diamonds」ではジョンがスピーカーのすぐ横に “立って” いるのが分かるのだ。これこそまさに、音圧がスベッたとか重低音がコロンだとかいう次元を完全に超越した至高のサウンド。オーディオの世界では “スリー・ディメンション” とか言うらしいが、まさに “んほぉ~、ニンバス盤たまんねぇ~” 状態である(笑)
 A④「Getting Better」のイントロのギターの音がキンキンしていないのにもビックリで、かなりの大音量で聴いていたにもかかわらず、他の盤のように耳に突き刺さってくる感じが全くないのだ。そして更に驚いたのはハイハット・シンバルの音が実にリアルな金属感を表現していることで、シューン!シューン!と空間を立ち昇っていくその鋭利なサウンドには言葉を失う。シンバルの艶、そしてベースの艶... すべてが艶々しい。またまた “んほぉ~” である(笑)
 A⑤「Fixing A Hole」ではハープシコードの音が実にクリアでビックリ(゜o゜)  リンゴのハイハットによるアクセントも実に効果的に響く。一つ一つの楽器の音が屹立すると曲の表情まで変わってくるから不思議である。A⑥「She's Leaving Home」ではジョンとポールのヴォーカルの細やかなニュアンスまでしっかりと表現されていてこれまたビックリ(゜o゜)  ストリングスの響きもさすがクラシック専門レーベルだけあってお見事という他ない。A⑦「Being For The Benefit Of Mr.Kite」は何と言ってもリンゴの変幻自在なプレイが白眉。他のドラマーでは絶対に無理だろうなと思わせるスーパー・ハイ・テクニックを駆使して音楽の根底を支えるリンゴに惚れ惚れする。又、ポールが来日公演の際に “弾きながら歌うのは大変” と言っていたベース・ラインの難しさもコレを聴いて初めて分かった気がした。
 B①「Within You Without You」は、正直言うとコテコテのインド音楽を5分以上も聴くのが耐えられずにこの曲だけ飛ばして聴くことの方が多かったのだが(←「LOVE」に入ってる「Tomorrow Never Knows」との複合リミックスは大好きなんやけどね...)、このニンバス盤では5分を超える演奏時間を忘れて思わず聴き入ってしまった。とにかくシタールやタンブーラの音が生々しいのだ。今まで “冗長で退屈” と思っていたこの曲が全く苦痛に感じなかったのには正直本当に驚いた。
 B②「When I'm Sixty-Four」はクラリネットが他では聞いたことがないような柔らかい音を出しており、ポールが意図したオールド・ジャズ風の音世界を上手く表現するのに一役買っている。とにかくここで聴ける楽器の音色、そしてその響きは特筆モノだ。B③「Lovely Rita」も各楽器の分離が素晴らしくて、音が目の前でクルクルと回転しているかのような錯覚を覚えるほど。この躍動感はハンパない。特にリンゴの一撃必殺バシン!は快感そのものだ。
 B④「Good Morning Good Morning」はジョンの声のリアリティーが段違いで、“ヴォーカルに強いニンバス盤” との思いを強くした。動物たちのSEもリアルそのもので、ニンバス・エンジニアの完全無欠な仕事ぶりに思わず笑ってしまう。B⑤「Sgt. Pepper's (Reprise)」はノリ一発で聴くべきアッパー・チューンだが、音の良さゆえにこの曲のドライヴ感に更なる拍車がかかっており、聴いてて思わず身体が揺れてしまう超絶グルーヴィーな仕上がりになっている。演奏時間は短いが、ロックンロール・バンドとしてのビートルズの凄みがビンビン伝わってくるキラー・チューンだ。
 そしてラストのB⑥「A Day In The Life」はもう圧巻の一言! 例のオーケストラの不協和音パートはこれまで聴いてきた盤の中で一番音楽的な意味を持って耳に響いたし、何よりも凄いのはリンゴのフィルインの生々しさで、先ほども書いたように彼の目立たないスーパー・ハイテクニックを思う存分味わえるのがこのニンバス盤の旨味ではないかと思う。それと “ポールのミドル・パートから後半のジョンのパートへの繋ぎ部分の “ア~♪” を歌っているのはジョンかポールか?” でファンの間でも意見が分かれていたが、これを聴けば声質的にも歌い回し的にも(ジョンに似せて歌っている)ポールだと分かるだろう。
A Day in the Life Multitrack "Ahhhs..." John or Paul?.wmv


 LP両面を聴き終え、そのあまりの素晴らしさのためにその後に続けて他の盤を聴く気になれず、結局2回連続でニンバス盤を聴いてしまった。このレコードは色んな仕掛けというか音が入っている “音のおもちゃ箱” みたいなアルバムなので、何度も繰り返し聴くと頭の中がお花畑状態になってドッと疲れるのだが、ニンバス盤に限っては全くそんなことがなく、何度続けて聴いても疲れるどころか寿命が10年は延びたように感じられた。私はこの感動と興奮をぜひとも Sさんと分かち合いたいと思い、ちょうど開店1周年記念日の1週間ほど前に B-SELS に持っていった。 (つづく)

「Sgt. Pepper's」の Nimbus盤買った(^o^)丿①

2019-06-15 | The Beatles
 先月買った「Band On The Run」のニンバス・スーパーカット盤の高音質ぶりに衝撃を受けてからというもの、私の頭の中はもう1枚のニンバス盤である「Sgt. Pepper's」一色になってしまった。あの「Pepper's」の万華鏡サウンドを是非ともニンバス盤で聴いてみたい... そう考えると居ても立ってもいられなくなり、とてもじゃないが仕事なんか全く手につかない。しかし軽く20万円を超えるプレミア価格(←ディスクユニオンの買取価格が20万円という凄まじさ...)は簡単に手が出せるものではないし、かと言って私にはマグロ船に乗る体力も原発で働く勇気もない(笑) やっぱりニンバス盤ペパーズは夢のまた夢なのか... と悶々としながら自問自答する日々が続いた。
 そんなある日、そろそろこのモヤモヤ状態に決着をつけねばと再度ネット上を徹底検索。eBayには相変わらず£1,750で NM盤が出ていたが、こちらは Import Charges とやらが£132もかかるし eBayの息のかかった Pitney Bowesの送料が£38というボッタクリ価格で、トータル26万円オーバーとなるので論外だ。結局その時点での再安値は Discogsの NM盤 £1,450で、送料も保険込みで£14.50と(←eBayの Import Chargesって何やってん???)超良心的。トータルで約20万円か...(-。-)y-゜゜゜ 為替レートはイギリスの EU離脱ドタバタ劇がカオスに陥ってるおかげでポンドが7年ぶりに136円台まで下落してきており、エルヴィスなら “It's now or never!”、林先生なら “いつ買うか? 今でしょ!” と言うだろう。
 ビートルズのレコード・コレクションという修羅の道を歩む上で我が行く手に立ちはだかる数々の高額稀少盤の中で、その頂点と言える第一の羅将をゴールド・パーロフォンのステレオ盤とすれば、ニンバス盤ペパーズはさしずめ第二の羅将というところ。ビートルズ・レコード・コレクターをオリジナル盤蒐集という名の魔界へと誘うその抗いがたい力を考えればこの例えもそれほど間違ってはいないだろう。
 そんな “雲の上の、そのまた上の存在” として高嶺の花と諦めていたニンバス盤ペパーズをこのオレは買うのか? そんな大それたことが本当にできるのか? 20万円やぞ? と自分に問いかける。私がこれまでに買ったレコードの中での最高値盤は通称 “イントロのペッパー” と呼ばれるジャズの超稀少盤で10万円だったから(→因みに2位が金パロ・モノラル盤で3位がゼップの青ロゴ盤)、ニンバス盤ペパーズ購入となると最高値が一気に倍額更新ということになる。そもそもレコード1枚に20万円なんて、一般ピープルから見れば狂気の沙汰だろう。
 だがしかし、ビートルズに関する限り私は狂気の人なんである。大好きなビートルズを少しでも良い音で聴けるのなら狂気という言葉すら耳に心地良い。それに、世間の女性たちだってヴィトンやエルメスのバッグに大枚を叩くではないか。エルメスのバーキンなんて軽く100万円を超えると聞く。それに比べたらニンバス盤なんてまだまだカワイイもんだろう。それに20万円と言ったって、1万円のレコードを20枚買うと考えれば特に大騒ぎするほどのことでもない(ですよね?)。そもそも私のレコード購入予算額はだいたい月に10万円前後なので、2ヶ月かそこらレコード断食をすれば何とか買える金額だ。それに、買わずに一生後悔するよりは、経済的に苦しくても買って死ぬまで聴き続ける方が良いに決まっている。そう考えると俄然勇気が湧いてきて、勇躍 Discogs の商品ページを開いた私は、ひと思いに “注文する” をクリック。ちょうど土曜日の真夜中だったが、その後はコーフンしすぎて朝方まで寝付けなかった(笑)
 レコードが届いたのは翌週の土曜(←早っ!)の朝だ。土曜はいつも昼過ぎまで寝ていることが多いのだが、その日はなぜか午前中に目が覚め、リビングに降りていくとテーブルの上に届いたばかりのパッケージが無造作に置かれていた。送り元を見るとイギリスからだ。この時点でイギリスのセラーから届く予定なのはニンバス盤しかない。ついに来た!!! 震える手でレコードを取り出すと、ジャケット右上に“Supercut | Mastered and Pressed Exclusively for Readers of HI-FI today BY Nimbus Records” と印刷された黄金色のステッカーが貼られている。う~ん、神々しい...(笑) 続いてそーっと中身のレコードを取り出し、デッドワックス部分を見ると、そこには「Band On The Run」と同じく“NIMBUS ENGLAND” の刻印が刻まれている。う~ん、たまらん...(笑) 盤質はセラーの説明通りの NM盤で、見た目ピッカピカ。スピンドル・マークも皆無と言っていい(^o^)丿 そしていよいよ音出しだ。手を滑らせないように慎重にターンテーブルにレコードをセットし、針を落とした。 (つづく)

「Imagine」のインド盤3種聴き比べ③

2019-06-09 | John Lennon
 何やかんやでこの話もパート3まできてしまった。このブログの読者の中には “何でまた「Imagine」のインド盤にそこまで拘るねん?” と不思議がられる方もおられるかもしれない。私はビートルズに関する限り(もちろんソロも含めて)、少しでも良い音で聴きたいというその一念でレコードを集めており、最初に聴いたインド盤「Imagine」A面に完全 KOされ、インド盤が持つポテンシャルの凄まじさを身をもって体験した私としては、現存する3種類のインド盤「Imagine」を納得いくまで聴いて自分なりのオトシマエをつけようとしているだけなのだ。
それではここで改めてもう一度3種類のインド盤「Imagine」を整理してみよう。

タイプ①:マト枝番 -1U/-RiT1(に見える)、盤の重量は 191g、1stプレス?
 レーベル左側に“An EMI Recording”と 33 1/3(括線は水平)と Made in India、右側に Stereo と PAS 10004 と (YEX 865)と Side One。デッドワックスには手書きで PORKY(A面)と彫ってあるが、B面に PECKOは無し。

タイプ②:マト枝番 -1U/-1U-T1、盤の重量は 166g、2ndプレス?
 レーベル左側に MADE IN INDIA(大文字)と Stereo、右側に 33 1/3(括線は水平)。PASと18004の間にドットあり。デッドワックスには手書きで PORKY(A面)と彫ってあるが、B面に PECKOは無し。

タイプ③:マト枝番 -1/-1、盤の重量は 135g、3rdプレス?
 レーベル左側に STEREO(大文字)と 33 1/3 r.p.m. (括線は斜め)と Side One と “An EMI Recording”、右側に PAS 10004 と (YEX 865)があってその下に28-211という新型番あり。①②③とは違って Made in India表記なし。デッドワックスには機械で 28-211(A面)28-212(B面)と打ってあり、両面ともに PORKYも PECKOも無し。

 そういうワケで、私の調べた限りではインド盤「Imagine」には①② A面のポーキーさんしかおらず、B面のペコちゃんは結局1枚も見つからずだった。しかも B面はローカル・リカットばかりで、B面マト1Uの盤は見つからなかった。Discogsのデータも結構ええかげんやのぉ...(>_<) 
 尚、レーベルのジョンの人相に関して言うと、①はまだマシだが②なんかめっちゃ凶暴そうな顔つきに描かれているし(←殺人犯かよ...)、③に至っては目つきがヤバすぎて(←何となくサイコパスっぽい...)思わず笑ってしまう。そう言えばインド盤「ヘルプ」裏ジャケの “頬紅入りのジョン” も大概だったが、インド人のセンスってこちらの予想の遥か斜め上を行ってますな... 
 ということで、前回の時点では①だけ試聴済みだったが、その後③⇒②の順で無事我が家に到着したのでその感想を書いていこう。
 まず③だが、届いた荷物の梱包を解いてレコードを取り出してビックリ... 何じゃいこのピンク色のジャケットは??? そう言えば別のセラーによる商品説明に “misprinted sleeve colors... mostly in pink” とあったのだが、こういうことか...(>_<)  多分インクの不具合か何かだろうが、これで音が悪かったら最悪やな... と思いながら盤を取り出すと中身はピッカピカのNMで一安心。Discogsではマト枝番なしとなっていたが、この盤は -1/-1 とちゃーんと枝番が打ってある。一体どーなっとるんや??? 実際に聴いてみた感想は評判通りのキレイな音で、これならジャケットがピンクであろうが何色であろうが許せますわ(^.^) ただ、音圧は低めでパンチ力に欠けるので、チューブカット特有のあの濃厚な味わいを楽しみたければアンプのヴォリュームを上げてやる必要がある。どちらかというと冒険をせずに無難にまとめた音、という感じだ。尚、3枚中このレコードだけがコーティング有りだった。
 最後に届いたのは②で、ジャケットはペラペラで発色も薄く60年代キャピトル盤のように写真をペタッと貼り付けただけの簡素な作りになっている。B面のマトは A面とは違う字体でハッキリと YEX 866 - 1U - T1 と打ってあるので①とはやはり別モノのようだ。聴いてみた感想としては、A面は①とマトが同じにもかかわらずスタンパーの若さ(①がAで②がRL)や盤の重量(①が191gで②が166g)の違いが如実に音に影響しているのか、音質面で①より劣っている。一方ローカルリカットの B面はチューブカットの良さがハッキリと音に出ており、特にB③「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」なんかもうめちゃくちゃ粘っこくて説得力に溢れた音になっている。一緒に聴いていた Sさんが “音の重なり方がツェッペリンの「カシミール」みたいな感じですね。レイター・プレス③の方は「カシミール」じゃない。” と仰ったが実に上手い例えである。B面に限って言えば3種のインド盤「Imagine」の中でコレが一番良かった。
 ということでアルバム「Imagine」に関しては、インド盤タイプ①の A面と UK盤(1U PECKO)のB面を貼り合わせてハイブリッド重量盤(笑)を作るのが史上最強という結論に達した。やっぱりインド盤ってオモロイですわ(^_^)

「Imagine」のインド盤3種聴き比べ②

2019-06-05 | John Lennon
 私は Discogsに載っていたレーベル写真をそれぞれプリントアウトし、レコードと一緒に B-SELS に持ち込んだ。開口一番 “ジョンの「Imagine」のインド盤を手に入れたんですけど、興味あります?” と訊くと “そりゃあ、普通にあります(笑)” と Sさん。それではということで持参したレーベル写真をお見せすると “ほぅほぅほぅ...” と好奇心に火がついたご様子だ。次にレコード盤をお見せして私が読めなかった B面マト末尾のアルファベットの解読をお願いしたが “これはちょっと... どうなんでしょうねぇ...” と仰ったきりしばし無言。“Ri にも見えるし、そもそも活字が潰れてませんか、これ?” と私。結局解読不能ということで、今度は実際に音を聴いてもらうことにした。
 まずは A面。微動だにせずにじっと目をつむって聴いておられたが、A①②③と聴き進んで A④に入り、“これは良い音ですねぇ。音の響きがホントにキレイです。曲の途中で針を上げる気になりませんね...”と大絶賛された。 “でしょう? でも問題は B面なんですよ。ぜひ感想を聞かせて下さい。” と私。さぁ、いよいよ問題の B面に突入だ。
 B①「Give Me Some Truth」が始まってじっと無言で聴いておられた Sさんがしばらくして重い口を開かれた。 “あぁ、これはダメですね。音が濁ってる...”。B③「How Do You Sleep」では私がしたのと同様に盤面の埃をチェックされたのを見て “私も家で同じことしましてん。” と大笑い。更に B⑤「Oh Yoko」に至っては “エンジニアがよぉこんな音でOK出しましたね...” と呆れ顔。 “インド人もビックリですわ!”(←わかる人にはわかるネタ...)と私。尚、後日2回目に持っていった時はB面単独で聴いたせいか1回目の時よりはマシに聞こえたものの、それでもやはり平均点以下の音であることに変わりはない。
 両面を聴き終えたところで私が3枚の写真を指して “これ、どういう順番で出たんでしょうね?” と意見を求めると、お店にあったUK盤のレーベル・デザインと比較しながら “最初はUKマザーでしょうから 1U盤のどちらかが 1stプレスでしょうね。印字が潰れてる方の盤は、ひょっとすると予定より多くプレスしすぎたんとちゃいますか? それで音がビリついてるのかもしれませんね。で、最後がこの枝番なしの、新しい番号がついたヤツやと思います。ほら、33 & 1/3 の分数の表記方法がこれだけ違ってるでしょ?” とのこと。う~ん、確かに。さすがは何百枚何千枚というレーベルをチェックしてこられた “レコードのプロ” である。やっぱり目の付け所が違いますわ。
 ということで、プレスされた順番まではほぼ特定できたのだが、気になるのはそれぞれの音である。因みに「アナログ・ミステリー・ツアー」で音を絶賛されていたのは枝番なしのレイター・プレスだ。Sさんが残りの盤を指さされて “全部聴いてみないと何とも言えないですけどね。” と仰ったので “実は2枚とも、もうオーダー済みでして、ちょうど今頃日本に向かって海の上を飛んでるはずですわ。こーなったら徹底的に調べたろ、って思うとりますねん。” と言うと Sさんは目を輝かせながら “届いたら是非聴かせて下さい。” とのこと。そんなん言われんでも持って来ますがな(笑)
 結局この日の「Imagine」研究はこれにて一応終了。家に帰って例の分数の “括線” 表記について手持ちのインド盤を片っ端から調べていったところ、“横線”⇒“斜線” の分水嶺はジョンの「Shaved Fish」とジョージの「The Best Of George Harrison」だったので、上記のレイター・プレス盤はちょうどインド盤のレーベルがイエロー・パーロフォンに切り替わった1976年以降に作られたものだと推測できた。何だか考古学者にでもなったような気分だ(笑)
(つづく)

「Imagine」のインド盤3種聴き比べ①

2019-06-03 | John Lennon
 ジョン・レノン「Imagine」のインド盤といえば、ビートルズの各国盤コレクターならカッと熱くなる珍盤である。例のガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」の中に “インド盤の奥深い世界” というコラムがあって、そこで “レーベルのジョンの顔の人相が悪くなっているが、そんな見かけに反して音は大変に良い。インド盤の特徴である真空管カッティングの効果からか、アンビエンスの出方が他の国のプレスとは全く異なる。” と紹介されているのだ。コレを読んで “聴いてみたいな...” と思わなければビートルズ・ファンではない。
 ちょうどビートルズ・ソロの各国盤蒐集が面白くなってきたところだったので、私はこのインド盤「Imagine」を手に入れてやろうと決意。早速 Discogsで調べてみたのだが、そこでとんでもないことが判明した。何とこのレコードにはマトリクス№の組み合わせが何種類も存在し、しかもそれぞれレーベル・デザインが異なっているのだ。もちろんどれが1stプレスなのか、はたまたどれの一番音が良いのか全く分からない(>_<)
 私はとりあえずローカル・リカットされたマト末尾 “T1” の盤で盤質の良さそうなのを1枚オーダーして聴いてみることにした。本で紹介されたとはいえ、ソロ作品にまで手を伸ばそうという人はそれほどいないらしく、価格設定も全体的に低めで、たったの €5.99 で買うことができた。
 届いたレコードは60年代のインド盤とは違って分厚いカードボード・スリーヴに入っており、表ジャケは印刷の不具合か、インクの色が薄い。センター・レーベルは本に書いてあったようにジョンの人相が少し悪くなっている。う~ん、やっぱりインド盤は色々と面白い(^.^)  盤はずっしりと重く、デッドワックスに刻まれているマトは「-1U / -??T1」(←?? の部分は Ri に見えるのだが、字が潰れていてよく分からない...)で、更にA面にのみ手書きで「PORKY」と彫ってある。DiscogsではB面「PECKO」となっているが、私のレコードにはペコのペの字も無い。
 で、肝心の音の方だが、A面を聴き始めてビックリ(゜o゜)  めちゃくちゃ良い音ではないか! ラウドカットかと思わせるような音圧の高さもあるが、どの曲も1つ1つの楽器の音に温かみを感じるし、正直言って音質がどーのこーのと分析するのがアホらしくなるぐらい音楽に引き込まれてしまうのだ。A①「Imagine」なんかもう天上の世界のような美しさを湛えているし、A②「Crippled Inside」のダイナミック・レンジの広さやA③「Jealous Guy」の音の響きの素晴らしさも特筆モノ。“コレってひょっとすると UK盤よりエエんちゃうか?” と直感した私は B面に行く前に手持ちの UK 1stプレス(マト末尾1U)盤と聴き比べてみたところ、同じ「1U」「PORKY」なのにインド盤の音の方に魅了されたのだ。これはエライコッチャである。
 私は小躍りしながら再び盤をインド盤に取り替えて今度はB面を聴き始めたのだが、何たることか A面の魔法が消え去ってしまったかのようなガサツな音でビックリ(゜o゜)  音圧は高いものの、音場が狭いのが致命的で、例えるならゴミゴミしたインドの街中のようなむさくるしい音とでも言えばいいのか、とにかくデリカシーに欠ける音である。B③「How Do You Sleep」に至っては過大入力なのか音がビリつくような感じでガッカリ(>_<) 思わず盤に埃が付いているんじゃないかと確認したぐらいだ。A面とのこの落差は一体何なのだ? 念のため木工用ボンド・パックでクリーニングしてみたが全く変わらずで、万策尽きた私はいつものように “困った時の B-SELS頼み” ということで、この盤を Sさんに一緒に聴いてもらうことにした。
(つづく)