shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Past Masters Vol. 2 / The Beatles

2009-10-03 | The Beatles
 昨日のVol. 1に続き、今日は「パスト・マスターズ」のVol. 2である。アルバムで言えばちょうど65年末の「ラバー・ソウル」から70年の「レット・イット・ビー」までの間にリリースされたもののオリジナル・アルバムには収録されなかった全15曲がヴァージョン違い(⑨⑬⑭)も含め、すべて収められている。
 ①「デイ・トリッパー」は②「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」と両A面扱いでリリースされたシングルで、何とアルバム「ラバー・ソウル」と同日発売という大盤振る舞いだ。それにしても①のイントロのソリッドなギター・リフには唸るなぁ...(^.^) 曲自体は持ち上げるだけ持ち上げておいてオトシマエを付けないような不思議な旋律で出来ているのだが、とにかくこの曲は唯一無比なギター・リフの波状攻撃がすべてだろう。それに対し、②の方はポールが作った曲にジョンがミドルのパートを書きくわえて完成させたという、数少ない “レノン=マッカートニー” 作品で、その個性が絶妙に溶け合って見事な一体感を生み出しているところが感動的だ。アメリカではこちらをA面にしたというのも頷ける大傑作だと思う。③「ペイパーバック・ライター」は私の超愛聴曲で、それまでになかった発想の歌詞といい、激しくロックを感じさせる強靭なサウンドといい、耳に残る不思議なコーラスといい、もう言うことなしだ。特にポールのベースは凄いの一言に尽きると思う。ブライアン・ウィルソンがこの曲に触発されて「グッド・ヴァイヴレイション」を書いたという話を聞いたことがあるが、何となく分かる気がする。そういえば日本公演初日(6/30)のステージでこの曲を歌っている時、マイク・スタンドがグラグラ揺れてポールがムッとしながら何度も手でマイクの向きを直してたっけ。ジョンの④「レイン」はアルバム「リヴォルヴァー」のサイケな内容を濃縮還元したようなめちゃくちゃカッコ良い曲で、ジョンのドラッグ体験がスベッただの、テープの逆回転がコロンだだのと云々されるが、何よりも聴くべきはリンゴの驚異のドラミングであり、ポールの自由自在に動き回るベース・ラインだ。ヴォーカル、演奏、ブッ飛んだ曲想... そのすべてが圧倒的に素晴らしい、エポックメイキングなナンバーだと思う。それにしてもこんな③④みたいな大傑作をアルバムに入れずに単なるシングルでポンと出して涼しい顔のビートルズってホンマに凄いグループやわ(≧▽≦)
 ⑤「レディ・マドンナ」はエルヴィスと化したポールが歌う古き良き時代のロックンロール風ナンバーで、イントロから大活躍のブギウギ風ピアノ、暴れ回るサックス、そしてユニークな響きを添えるバック・コーラスと、細部にわたるまで綿密に練り上げられたアレンジはまさにプロの技。それでいて出来上がったものはそういったワザをそれとは感じさせない完全無欠な3分間ポップスだ。これはポール・マッカートニーという音楽家の懐の深さをまざまざと見せつける1曲だと思う。⑥「ジ・インナー・ライト」はインド音楽としてはよく出来てるのかもしれないが、シタール曲を聴きたければラヴィ・シャンカールを聴けばいいのであって、ビートルズでこんなのを聴きたいとは思わない。
 ⑦「ヘイ・ジュード」はビートルズのシングルの中で最も売れた(そして最も長い)曲で、9週連続全米№1も当然の傑作。この曲の持つ “さぁ、みんなで歌おうぜ!” といった感じの一種共同体的な雰囲気が1968年という時代の空気と化学反応を起こして大ヒットに拍車をかけたのだろう。フェイド・アウト寸前でベースがノッソリと動き出すところが好きだ。⑧「レヴォリューション」は「ホワイト・アルバム」に入っていた「レヴォリューション1」のスロー&アコースティックなアレンジがシングル向きではないとの理由から、一般大衆ウケするようにテンポを上げ、ラウドでノイジーなエレクトリック・サウンドでコーティングされたもの。より深いのはアルバム・ヴァージョンだろうが、ノリノリ・ロックンロール命の私はこっちのド派手なヴァージョンが大好きだ。シングル⑨「ゲット・バック」はジョージ・マーティンのミックスで、ベースになる演奏はアルバムに収録されたスペクター・ヴァージョンと同じアビー・ロード・スタジオでのテイク(1/27録音)が採用されている。演奏に関しては前にも書いた通り、力感漲る素晴らしいロックンロールで、その躍動感はビートルズが第1級のライブ・バンドであったことを示している。⑩「ドント・レット・ミー・ダウン」は「ディグ・ア・ポニー」の親戚みたいなナンバーで、曲としてはやや弱いものの、ジョンのヴォーカルとビリー・プレストンのキーボードで聴かせてしまうチカラワザはさすがという他ない。
 ⑪「ザ・バラッド・オブ・ジョン・アンド・ヨーコ」は当時険悪な仲だったといわれるジョンとポールの二人だけでレコーディングしたというからビックリだ。それにしても何とまあノリの良い曲だろう。メロディーも演奏も実にシンプル&キャッチーで、リンゴが叩いていたら遙かに完成度は上がっただろうが、逆にポールのバラケたドラミングが “ササッと書いてチャチャッとレコーディングしました感” を醸し出しており、これはこれでめっちゃエエ感じなのだ。そのあたりのジョンとポールのセンスはまさに天才的だと思う。ジョージの⑫「オールド・ブラウン・シュー」は可もなく不可もない平凡な曲に聞こえる。だからいくらジョージが選曲したとはいえ、後期ベスト盤である「青盤」に入ってたのにはビックリした。これを入れるんやったら他に入れるべき曲が一杯あるのにと、「赤盤」の選曲及び曲配置が絶妙だっただけに、「青盤」の選曲には不信感を抱いたものだった。
 ⑬「アクロス・ザ・ユニヴァース」は例のバード・ヴァージョンで、オリジナル・アルバムに入っていたスペクター・ヴァージョンとの比較が一興だ。原曲が素晴らしいだけに判断は難しく甲乙付け難いが、鳥の鳴き声はともかく、甲高いコーラスは余計だと思う。前にも書いたが、この曲に関してはスペクターの正規ヴァージョンの方が好きだ。しかし続く⑭「レット・イット・ビー」は同じ音源を加工(?)しているにも関わらず、圧倒的にこのジョージ・マーティン・プロデュースのシングル・ヴァージョンの方がいい。聴き比べてみれば明らかだが、スペクターの方はまったく “ロックの音” がしていない。さすがはビートルズを知り尽くしたマーティンというべきだろう。⑮「ユー・ノウ・マイ・ネーム」を初めて聴いたのは日本盤シングル「レット・イット・ビー」のB面としてで、まだビートルズ・ド素人だった私はA面とのあまりの落差に “コレは一体何なん???” と呆気にとられてしまった。当時は持ってるレコードの数も少なく、ワケが分からんなりに何度も繰り返し聴いていたら、いつの間にか “悪ふざけ” というか “お遊び” 的なこの曲がすっかり気に入ってしまった。例えるならクセになる珍味みたいなものだ(笑)。歌詞はと言えば「私の名前知ってるでしょ。だったら電話番号も調べられますよ~♪」の繰り返しで、演奏も古き良く時代のダンス・バンドが酔っ払ってドンチャン騒ぎをしているかのような面白さ。何度も聴いているうちにきっと私のように中毒症状をきたすだろう。ユーモアに溢れたビートルズの最後っ屁、一度広~い心で聴いてみてくださいな(^o^)丿

The Beatles - You Know My Name (Look up the Number)