shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

MonaLisa Twins の「Now And Then」カヴァー

2023-12-29 | Beatles Tribute
 ビートルズ・ファンなら彼らの曲の中で何が一番好きかと聞かれた経験が一度はあると思うが、私の場合、一番好きな曲はその時の気分によって変わるので答えに窮することが少なくない。そのあたりが他のアーティストと決定的に違うところなのだが、「Nowhere Man」という曲はキラ星のごとき名曲名演の数々の中でもひときわ抜きん出た傑作中の傑作だと思っている。
 この前 YouTube でビートルズ関連の動画を見ていた時のこと、画面右側に出てくる関連動画の中に MonaLisa Twins という美人姉妹が歌う「Nowhere Man」があった。このブログを始めた頃はビートルズ・カヴァーの隠れ名演を見つけるのをライフワークにしていたが、この7年ほどはオリジナル盤や各国盤で忙しくてカヴァーどころではなかった。ちょうどスペイン盤蒐集も一段落したので久々にカヴァーを聴いてみようと思い見てみたところ、これがもうめちゃくちゃ素晴らしい。
 いきなりヴァースとコーラスで始まる冒頭部分の力強いハモリの強烈な吸引力には度肝を抜かれたし、 “Nowhere man, please listen~♪” で始まるミドル・エイトのメイン・ヴォーカルとそれをやさしく包み込むようなバック・コーラスのコントラストの妙にも唸ってしまった。MonaLisa Twins のヴァージョンは双子だけあって二人の歌声が織りなすハーモニーが絶妙で、曲の髄を見事に引き出したアレンジによって自分たちのスタイルに昇華させているところが何よりも凄い。彼女たちがビートルズに対して抱いている愛情とリスペクトの想いがビンビン伝わってくる名カヴァーだと思う。
Nowhere man - MonaLisa Twins (The Beatles Cover)


 このモナリザ・ツインズはオーストリア・ウイーン生まれのモナとリサの双子姉妹が結成した音楽ユニットで、音楽一家に育った二人は13歳(!)でライヴCDを出したのを皮切りに音楽活動を開始、ビートルズ好きが高じて21歳の時にリバプールへ移住し、「Play Beatles And More」というカヴァー・アルバムをVol.3まで出したり、キャバーン・クラブでのライヴ盤を出したりしてその筋ではかなり有名な存在らしい。最近では YouTube でビートルズやその他の60年代名曲をカヴァーしたビデオ作品を積極的に発表しているようで、今回の「Nowhere Man」は今のところ未CD化でビデオ・オンリーの作品だ。
 私は早速彼女たちの YouTube チャンネルを登録し、過去の作品を次から次へと見ていったのだが、「Nowhere Man」以外にも印象的なカヴァー作品がいくつもあってすっかり大ファンになってしまった。特にスローからミディアム・テンポのアコースティック系ナンバーを双子ならではの一糸乱れぬコーラス・ハーモニーで聞かせるパターンに名演が多い。CDに入っている曲はまた日を改めてこのブログで取り上げようと思うので、今回は「Nowhere Man」と同じく未CD化作品の中から「Till There Was You」と「Here, There And Everywhere」を選んでみた。この動画を見ればわかるように、彼女たちはヴォーカルだけでなく、ギターやドラムス、ウクレレ、チェロ、フルートなど、様々な楽器をこなせるマルチ・プレイヤーで、そういった音楽的素養の幅広さも彼女たちの音楽に深みを与えているように思われる。論より証拠、とにかくこの2曲のビデオをご覧下さい。
Till There Was You - MonaLisa Twins (The Beatles / 'The Music Man' Cover)

Here, There And Everywhere - MonaLisa Twins (The Beatles Cover)


 そんな彼女たちが先月発表した最新の作品がこの「Now And Then」で、原曲のメロディーの美しさを再認識させてくれる美麗なコーラス・ハーモニーに涙ちょちょぎれる。本家ビートルズのオリジナル・ヴァージョンが世に出てからまだ1ヶ月も経たないうちにこれほどクオリティーの高い作品に仕上げたのも凄いが、目でも楽しめるサイケな映像(←60's の薫り横溢の万華鏡みたいな絵作りがめっちゃエエ感じ... ジョンへの想いがさりげなく伝わってくる丸眼鏡も◎)とのマッチングも見事という他ない。動画には “You all know us. How could we resist covering a new Beatles track...(私たちがビートルズの新曲をカヴァーせずにいられるわけないじゃない!)というメッセージが添えられているが、それにしても仕事が早い... そして実に秀逸だ。ポールとリンゴ、そして天国のジョンもきっと喜んでくれるだろう。
 ビートルズの「Now And Then」のリリースはビートルズ・ファンにとってとてつもないビッグ・プレゼントだった。“ビートルズ最後の新曲” という表現は一抹の寂しさも感じさせるが、その一方で彼女たちのようにビートルズの遺伝子をしっかりと受け継いだアーティストが存在する限り、まだまだ音楽は捨てたもんじゃないと自信を持って言い切れる。ビートルズを愛し、新しい感性でビートルズの素晴らしさを後世に伝えていってくれるであろう MonaLisa Twins の今後に大注目だ。
Now And Then - MonaLisa Twins (The Beatles Cover)


 2023年は定年退職後の新しい仕事がつまらなくてストレスが溜まったり、車・スピーカー・レンジフード・おかんの補聴器とマッサージチェアといった値段の高いモンばかり壊れまくって予定外の出費を強いられたりで散々な1年だったが、肝心の趣味の方はラウドカット三昧やらスペイン盤祭り、そしてビートルズの新曲発表と、相変わらず充実していたように思う。今回のモナリザ・ツインズもそうだが、ビートルズ関連ってホンマにネタが尽きませんな。来年も何やかんや色々楽しめそうです。それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。

スペイン盤特集⑤「Magical Mystery Tour」「Yellow Submarine」

2023-12-24 | The Beatles

 「Magical Mystery Tour」の各国盤は US編集アルバムと同じ形態(黄色ジャケ)で出ている国が大半で、UKに倣った EPフォーマット(薄青色ジャケ)でリリースされている国は少なく、しかもそのモノラル盤となると、ステレオを無理やりモノラルにした “偽モノ” 盤を除けばオーストラリア、ニュージーランドなど片手で足りるくらいしか存在しない。しかし嬉しいことにスペイン盤の「Magical Mystery Tour」は EPフォーマットでモノとステレオの両方が出ており、私は当然モノ盤をチョイス。盤質NMで €30ならお買い得と言えるのではないか。届いたレコードのレーベル面は同時期のアルバムと同じ濃青色で、デッドワックスには UKとは違う字体の独自マトが刻まれていた。
 実際に聴いてみた感想としては、キレイキレイな音が特徴の NZ盤とは好対照をなすラフでドライな音が気持ち良く、その竹を割ったようなストレートアヘッドなサウンドはアッパーなA①「Magical Mystery Tour」やメリハリの効いたC②「Flying」(←これホンマにエグい音です!)にとてもよく合っている。重低音に独特の魅力があるスペイン盤らしくポールのベースが大活躍で、私のようなパワー至上主義者にはたまらん音作りだ。A②「Your Mother Should Know」なんかちょっとベースがデカすぎるんとちゃうかといいたくなるくらい目立っているし、C①「The Fool On The Hill」も一音一音が強すぎて癒しの要素というかリラクセイションに欠けるようにも思えるが、これはこれで私的には楽しめるし、この音作りこそがスペイン盤のアイデンティティーなのだ。
 私のフェイバリット・トラックであるB①「I Am The Walrus」はまさに威風堂々という感じで基本的には UK盤や OZ盤と同傾向のサウンドだが、やはりパワーでゴリゴリ押してくる音作りと言える。特にビシバシきまるリンゴのドラミングが最高に気持ち良くて、リンゴって凄いドラマーやなぁと改めて思い知らされる。まぁ、この曲は低音がスベッたとか倍音がコロンだとかいう次元を超越して、ジョンのサイケな世界に引き込まれてついつい聴き入ってしまうという “理屈を超えた” 名曲名演なので、これ以上あれこれ分析するのは野暮というものだろう。とにかくこのスペイン盤 EPは買って正解だった。
 「Magical Mystery Tour」を手に入れた私が次に狙ったのが「Yellow Submarine」だ。大好きな「Hey Bulldog」をスペイン盤の豪快な音で聴きたいという思いが強く、「Let It Be」(→イエサブの次に買ったけど 1P/1Gにもかかわらず平凡な音だった...)よりもこちらを優先したのだ。早速 Discogsで調べたところ、同一デザインで濃青色と赤色の2種類のレーベルが存在することが判明。どちらが初期プレスなのかわからなかったので、その両方併せた中から一番盤質が良さそうなのを探したところ A面が Ex+でB面が VGという、絶対にA面しか聴かない私にドンピシャの盤があったので喜び勇んでそいつを購入。B面のキズのおかげで €20という安値で買うことができて願ったり叶ったり。実質A面オンリーのイエサブはこのパターンが理想的だ。
 届いた盤はA面のマザー/スタンパーが 1Pで、間違いなく初期プレスだ。音の方も期待を裏切らないもので、細かいことを気にせずにパワーでグイグイ押してくるプリミティヴな音作りが実に気持ち良い。A④「Hey Bulldog」はイントロからもう“最高!!!”と ! を3つも付けたくなるくらい凄まじい勢いでアグレッシヴなブルドッグがスピーカーから飛び出してくる。調子に乗ってアンプのヴォリュームを上げていくと、闊達に躍動するポールのベースを全身で体感できて大満足。スピーカーの上に飾ってあるダース・ベイダーのフィギュアが振動で倒れたくらいだからどれほどの重低音かわかるだろう。シスの暗黒卿をもブッ倒してしまう強靭なブルドッグ... 地響きを立てて迫りくる重戦車のようなサウンドがたまらんたまらん...(≧▽≦)  
 続くA⑤「It's All Too Much」もドッシリとした重心の低い音作りで、高音域のクリアネスも申し分なくキレッキレのサウンドが楽しめる。A②「It's Only A Northern Song」もそうだがジョージの控え目なヴォーカルがこのスペイン盤ではまるでユンケルでも飲んだかのように力強く聞こえるのだから不思議なものだ。とにかくこの時期のビートルズならではのサイケな音空間がまるですべてを飲み込むブラックホールのように強烈な吸引力で襲いかかってくるのが実に気持ち良い。
 私がこのアルバムでブルドッグの次に好きなA③「All Together Now」も最高の仕上がりだ。この曲は何と言ってもザクザク刻むアコギのカッティング音の生々しさを楽しむのが私流なのだが、このスペイン盤はクリアー&クリスプな音で躍動感溢れるトラックに仕上がっており、リズムに乗って思わず身体が動いてしまう。A⑥「All You Need Is Love」も雄大な音場の中でジョンのヴォーカルが力強く響きわたるところが◎。スタンパーの若さやら盤質の良さなど、様々な要因でこれだけの音が聴けるのだろうとは思うが、スペイン盤の「Yellow Submarine」が侮れない存在であることは間違いない。ヴォリューム上げてもう1回ブルドッグ聴こ...

スペイン盤特集④「Abbey Road」2種聴き比べ

2023-12-17 | The Beatles

 ビートルズ中期のスペイン・モノラル盤はB-SELSでゲットした「Revolver」でコンプリートできた。どの盤も入手には苦労したが、その甲斐あって力強い音を聴かせてくれるので大満足だ。改めて “独自マトのスペイン・モノラル盤にハズレ無し” を確信させられた。まぁ盤質の良いブツを見つけるには少々忍耐力が必要だが...
 一方、後期のステレオ盤は「Hey Jude」を除いてすべて手に入れた。このアルバムはUS編集のコンピ盤ということで世間では少し軽く見られているように感じるのだが、後期の重要なシングル曲が一杯入っているこの盤を私は「Yellow Submarine」のA面と「Let It Be」の間を埋める準オリジナル・アルバムとして重要視している。ところがスペイン盤の「Hey Jude」は宗教上の理由とやらで、あろうことか私の大好きな「The Ballad Of John And Yoko」がカットされており、私としてはそんな欠陥品を買う気にはなれなかったのだ。ジョンのキリスト教発言に対するアメリカ人の反応を知った時は “キリスト教徒ってホンマに心の狭い連中やなぁ...” と呆れたものだが、スペインでもこの有り様だ。キリストも草葉の陰で泣いとるで、ホンマに。
 話をスペイン盤に戻そう。後期のステレオ盤で一番音が良かったのは断然「Abbey Road」だ。このレコードは世界中で売れまくっただけあってかなりの数の盤が市場に出ているが、リリースから1年かそこらで濃青レーベルから薄青レーベルへ切り替わったこともあってかリイシュー盤率が異常に高くて要注意だし、何よりも問題になるのはその盤質だ。少々のキズなど笑い飛ばしてしまうモノラル・カートリッジとは違い、ステレオ・カートリッジはどうしてもキズに弱いし、この「Abbey Road」を聴く場合、B①「Here Comes The Sun」の繊細なイントロ部分でチリパチ、ブツブツとノイズが入ってしまうともう雰囲気ブチ壊しなので、盤選びには慎重にならざるを得ない。
 私は数種類の候補の中から NM表記で尚且つセラーの “Pristine condition” という文言を信じて1枚に絞って購入。届いた盤のマザー/スタンパーは 2GM/2R で、スパインには、細字で “Abbey Road The Beatles” とあり、カタログ№ “1J062-04243M” も記されている。盤に針を落とすとA①「Come Together」なんか実にソリッドな音で上々の立ち上がりだったのだが、続くA②「Something」、A③「Maxwell's Silver Hammer」でチリパチが目立ち、A④以降は持ち直したものの、肝心かなめのB①「Here Comes The Sun」でチリパチが再発してガッカリ。見た目は Ex でも実際に聴くと VG という、レコード・コレクターにとっては一番嬉しくないパターンだ。入っている音そのものはキラリと光るものがあるので実に勿体ない。
 私はどうしても諦めきれず、「Abbey Road」のスペイン盤を買い直すことにした。このレコードを聴くたびに要らぬストレスを溜めるくらいなら、数千円の追加出費で気持ちよく聴ける「Abbey Road」を手に入れた方が精神衛生上遥かに良いと思ったからだ。今度はネガティヴ・フィードバックがゼロのセラーが出しているブツの中から厳選し、更に送ってもらった写真を拡大して詳細に分析・比較した上で €50 の VG+盤に決定。さすがに3枚目は考えてないのでこれがラスト・チャンスだ。
 レコードが届いて恐る恐る盤面をチェックすると見た目は文句なしに合格だ。マザー№は 2/1 でスタンパーは刻印されておらず、しかもB面のセンター・レーベルに Her Majesty の表記が無くて、ジャケットの色合いも先に買った盤よりも深みがあってスパインのデザインも違う(←太字の “Abbey Road The Beatles” のみでカタログ№なし)。どうやら今回送られてきた方が正真正銘の 1stプレスのようだ。要するにレーベルの色やデザインばかりに注意が行っていて「Abbey Road」購入時の基本中の基本とでも言うべき Her Majesty 表記の有無の確認を怠っていたのだが、怪我の功名というべきか、そのおかげでスペイン盤「Abbey Road」の 1stプレスと 2ndプレスの聴き比べをすることが可能になった。
 こちらの 1stプレス盤は聴いてて不快に感じるチリパチはほぼ無くて一安心。2ndプレス盤と比較して、盤質の良さを差っ引いても鮮度の高さ故かこちらの 1stプレス盤の方がパワー/クリアネス共に上回っており、結果論になるが、この2枚目アビー・ロードを買って大正解だった。これからスペイン盤「Abbey Road」を買おうかなぁと考えている人は焦らずに盤質の良い Su Majestad(Her Majesty)無しの 1stプレス盤一点狙いがいいと思う。

スペイン盤特集③「Help!」「Revolver」

2023-12-10 | The Beatles

 ビートルズのスペイン・オリジナル盤を探していて感じたのは、後期のステレオ盤がわりとすんなり手に入ったのに対し、「Revolver」以前、すなわち “赤盤イヤーズ” のモノラル盤を探すのは結構大変だということだ。それも初期のアルバムになればなるほど入手困難で、中でも「Please Please Me」「With The Beatles」「A Hard Day's Night」の最初期 “ゴシック・オデオン・ロゴ” 盤に至っては超稀少で滅多に市場に出てこない。
 「Beatles For Sale」以降のいわゆる “ビッグ・オデオン・レーベル” 盤では少しはマシになるものの、盤質の良いブツを見つけるのは難しく、こちらとしてはじっくりと腰を据えて長期戦を覚悟せざるを得ない。そういうワケで前回取り上げた「Beatles For Sale」と「Rubber Soul」の後しばらくは何の成果も得られなかったのだが、1ヶ月ほど粘ってようやく見つけたのが「Help!」だった。盤質表記はVG+で説明文には great copy と書いてあったので早速写真を送ってもらったところ、まごうことなきビッグ・オデオン・レーベルだ。盤面もキレイそうだったので即オーダーしたのだが、裏面にステッカーの剥がし跡があったおかげで €35 というリーズナブルなお値段で買うことが出来た。
 「Help!」というと本来ならば音質最強であるべきUK盤の音がイマイチなので各国盤、特に独自マトの盤を買う時には期待が高まるのだが、このスペイン盤(マザー/スタンパーは1L/1O)ではイタリア盤のような奇跡は起きず、“悪くはないけどそれほど良くもない” という感じのごく普通の「Help!」だった。特にA⑥「You're Going To Lose That Girl」の眠たさは他のUKマザー盤と同じ症状で、B面になると少しマシになるところまで酷似しており、もちろん個体差もあるかもしれないが、「Help!」に関する限りはスペイン盤といえども “目の覚めるような音” とはいかなかった。まぁこればっかりは実際に自分の耳で聴いて確かめるしかないのでしゃーないか。
 このように音の方はともかくとしてやっとのことで「Help!」を手に入れて、「Beatles For Sale」以降はいよいよ残すところあと1タイトルとなったスペイン盤。その残り1枚の未入手盤というのが「Revolver」だったのだが、先月久しぶりにB-SELSに立ち寄ってエサ箱を漁り始めてすぐ、スペイン濃青ビッグ・オデオン・レーベルの「Revolver」を発見! オリジナル・アルバム13タイトルの内、ピンポイントで私が探している盤が置いてあるなんて何たる偶然... こんなこともあるんやねぇ...(-。-)y-゜゜゜
 私はここ20年くらいはほとんどネットでレコードを買ってきたこともあって、このように幸先よくお目当てのレコードを見つけて “誰にも渡さんぞ” とばかりに小脇に抱えながらエサ箱チェックを続けるこのウキウキワクワク感はめっちゃ久しぶりで、実に懐かしく心地良いものだった。先にレコード試聴されていたお客さんが遠くから来られていたこともあって、ジモミンの私は聴かずに買って帰ろうかとも思ったのだが(←B-SELSの盤質表記の正確さはこの私が一番良く知っている...)、Sさんとそのお客さんのご厚意で両面のアタマの数曲だけ聴かせていただくことになった。
 A①「Taxman」から私の予想通り、いやそれ以上の骨太モノラル・サウンドがお店のスピーカーから飛び出してきた。横で一緒に聴いておられたそのお客さんも “スゴイ音ですねぇ...” と感心しておられる。Sさんはいつものアルカイック・スマイルだ。A②「Eleanor Rigby」のストリングスが硬派な響きでグイグイ迫ってくるこの快感は筆舌に尽くし難い。B面ではB②「And Your Bird Can Sing」のジョンのヴォーカルがワイルドでアグレッシヴに前面に出てきて惚れ惚れする。スペイン独自マト、しかも1G/1Rという最初期スタンパーが生み出すこの野太い中域がジョンの翳りのあるシャウト・ヴォイスの魅力を存分に引き出しているのだ。
 試聴はもうこれで十分と判断してB面途中で針を上げてもらい、支払いを済ませて家に飛んで帰って自分のシステムで聴いてみたが、お店で聴いた通りのごっついモノラル・サウンドが楽しめて大満足\(^o^)/ あんまり嬉しかったので、同じ盤を2連続で聴いてしまったほどだ。細かいことを気にせずにパワーでグイグイ押し切るスペイン盤の豪快なモノラル・サウンドは一度ハマったら病み付きになりまっせ... (≧▽≦)

スペイン盤特集②「Beatles For Sale」「Rubber Soul」

2023-12-03 | The Beatles

 私の各国盤蒐集は一旦火が付くと止まらない。これと決めたらありとあらゆる通販/オークション・サイトを調べ上げて一気呵成に根こそぎ買い漁るパターンなのだが、そんな私が今ハマっているのがスペイン盤だ。きっかけは前回ここに書いた「ペパーズ」のモノ盤で、続いて「ホワイト」を首尾よくゲットした後、三匹目(?)のドジョウを狙って eBayで“Beatles, LP, Spain (Spanish)” で検索してみたが、出品されているブツは Light Blue Label(薄青レーベル)、つまり70年代プレスのステレオ盤ばかり。言っちゃ悪いが再発ステレオ盤なんぞに用はない。私が欲しいのは 1stプレス、つまりリアルタイムで60年代にプレスされた爆音モノラル盤だ。まぁ無いものはしゃあないので、ここしばらく絶縁状態だった Discogs を久々にチェックしてみた。
 Discogsは新しいβヴァージョンになって自分的には見にくくなったのだが、プレス国を絞って検索・表示できるようになった点だけは(←日本語表示だとバグるが、英語表示にすると何故か機能する...)各国盤蒐集の観点から言うとめちゃくちゃ助かる。私は1枚につき予算1万円以内で盤質VG+以上のレコードを狙って探すことにした。
 その結果わかったことは、60年代プレスのスペイン・モノ盤って状態の良いものは思いのほか少ないということ、そしてスペイン人のセラーに “写真を送って!” とメールしても返事が返ってくる確率が他国セラーに比べてめちゃくちゃ低いということだ。とにかく “こいつらホンマにヤル気あんのか???” と疑いたくなるぐらい返事が来ない。英語がワカランのか、そういう国民性なのか、それともスマホがそれほど普及してないのか(笑)、とにかくコミュニケーションが取りづらい連中だ。スペイン盤は70年代初めに濃い青色のレーベルから薄青レーベルに変わるのだが、Blue間違いで薄青の再発盤なんぞを送ってこられたらたまったモンじゃないので、写真によるチェックは必須なのだ。
 そんなこんなで苦労しながらまず手に入れたのが「Beatles For Sale」だった。盤質表記は VG+ だったが送られてきた写真を見ると目立ったキズも無さそうだし、excellent sound という説明を信じて即決。届いた盤を目視チェックするとスピンドル・マークがほとんどない極上NM盤で、もちろん独自マト(マザー/スタンパーは1R/1A)である。一体どんな音で鳴るのか興味津々で盤に針を落としたところ、A①「No Reply」のジョンのザラついた声がリスニング・ルームに響き渡り、部屋の空気をジャケット・イメージと同じ黄土色に染め上げた。う~ん、これはエエ感じだ。
 A④「Rock And Roll Music」はギター、ベース、ドラムス、ピアノが混然一体となって凄まじい勢いでドドーっと迫ってくるところが超絶気持ち良いし、その一方でA⑤「I'll Follow The Sun」の温もりを感じさせるヴォーカルにはホッコリさせられる。A⑦「Kansas City」のアーシーな感覚の表現には唸ってしまうし、B⑤「I Don't Want To Spoil The Party」のジョージのギターもキレッキレで言うことナシ。アルバム全編を通してとにかく音の密度感が高いのだ。溝の状態の良さも寄与していると思うが、それも元々の音が良ければこそだ。このレコードを聴いてスペインのモノラル盤に対する私の信頼は確固たるものになった。
 このように幸先良く「Beatles For Sale」のピカピカ盤を手に入れた私がその次にゲットしたのが「Rubber Soul」だ。このレコードも盤質の良い濃青ビッグ・オデオン・レーベル盤は中々出てこずに苦労したが、1ヶ月近く粘って盤質VG+のブツがeBay に出品されて即ゲット。届いた盤に盛大なスピンドル・マークがあって一瞬ヤバいかなとも思ったが、丁寧に聴かれていたのか盤が強いのかその両方なのか、ほとんど問題の無いExレベルの音で鳴ってくれて一安心。もちろんこちらも独自マト(マザー/スタンパーは1GM/1R)である。その音はラウドカットではないものの、他のスペイン・モノラル盤同様の豪放磊落なサウンドで聴いてて実に気持ちが良いのだが、何よりも驚かされたのがその重低音の豊かな響きで、下の下の方まで余裕で出ている感じがする。これはUK盤はもちろんのこと、他のどの各国盤とも違うスペイン盤ならではの長所ではないかと思う。
 いきなりA①「Drive My Car」から腰の据わった低重心サウンドがパワー全開でグイグイ押してくるこの快感... (≧▽≦) A④「Nowhere Man」なんかもう重厚なコーラスに圧倒されて気持ち良いことこの上ない。A⑥「The Word」のギターのシャープな切れ味も格別だし、歪みなしの大音量でA⑦「Michelle」を聴ける喜びを何と表現しよう? B③「I'm Looking Through You」の地の底で蠢くようなおどろおどろしいベースには驚愕させられたし、B④「In My Life」の音のバランスの良さも最高だ。特に赤盤の2023Mixを聴いた後では(←不自然なくらいに強調されたベルの音がうるさすぎて聴くに堪えない糞ミックス...)余計にそう思ってしまう。とにかく細かいことを気にせずにモノラルの爆音で気持ち良くビートルズを聴きたいという人にとって、スペイン盤はピンズドではないかと思う。