shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Leave A Light On / Belinda Carlisle

2012-11-30 | George・Ringo
 今日はジョージ・ハリスンの魅力の一つであるスライド・ギターにスポットを当て、他のアーティストのレコーディングにゲストとして参加した作品の中でも出色の出来を誇る「リーヴ・ア・ライト・オン」でいこう。
 彼のスライド・ギターはそのソロ・キャリアを語る上で欠かせない要素であり、70年代初期の「マイ・スウィート・ロード」や「ギヴ・ミー・ラヴ」といったヒット曲においても重要な役割を果たしてきたのだが、そのプレイは年齢を重ねるにつれて更にメロウで芳醇な響きを増していき、ギターの音だけでこれほどまでに豊かな表現が可能なのか... と驚愕させられるような、ザ・ワン・アンド・オンリーな世界を確立していった。特に80年代後半から90年代にかけての彼の滋味あふれるプレイはまさに円熟の極みと言っても過言ではなく、 “楽器を通して歌を歌う” という至高の境地にまで達しているように思う。そういう意味で、彼のスライド・ギターの名演と言えばビートルズ・アンソロジーの「フリー・アズ・ア・バード」やトラベリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ウィズ・ケア」あたりがすぐに思い浮かぶが、ゲスト参加ということもあってか案外知られていないのがこのベリンダ嬢の「リーヴ・ア・ライト・オン」である。
 べリンダ・カーライルは80年代初め頃に活躍したガールズ・ロック・バンド、ゴーゴーズのリード・シンガーで、ソロになってからも「マッド・アバウト・ユー」や「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」といった楽曲に恵まれてヒットを連発しており、私のお気に入りのシンガーの一人だった。この曲は1989年に彼女がリリースした3枚目のソロ・アルバム「ラナウェイ・ホーシズ」からの 1stシングルで、絶妙な多重コーラス効果で思わず一緒に歌いたくなるようなサビの盛り上がり方といい、ガールズ・ポップスの王道をいく分厚いサウンド・プロダクションといい、まさに “これぞ80's!!!” と言いたくなるような超愛聴曲なんである。
 そんな名曲名唱に花を添えるかのように登場するのがジョージのスライド・ギターなのだ。ジョージとベリンダはそれまで何の面識もなかったのだが、煌びやかなガールズ・ポップ・ロック・サウンドを作らせたらこの人の右に出る者はいないと言われる名プロデューサー、リック・ノウェルズがベーシック・トラックを録り終えてプレイバックを聴いていた時に “ここにジョージ・ハリスンみたいなスライド・ギターを入れたら最高やろな...” と閃いてダメ元で(?)ジョージにコンタクトを取ってみるとすんなりとOKの返事が返ってきたので驚いたという。
 このアルバムの場合、ジョージが直接セッションに参加するのではなく、ちょうど「ビート・イット」のエディー・ヴァン・ヘイレンの時と同じように、曲のソロの部分を弾いたテープを送ってもらってそれをオーヴァーダブするというやり方だったらしいが、エディーといい、ジョージといい、テープによる参加ながらその曲の魅力を決定づける素晴らしいソロを弾いているのはもうさすがとしか言いようがない。こういうのを “名人” の仕事というのだろう。
 それにしても3分3秒から炸裂するスライド・ソロの何とカッコ良いことよ... (≧▽≦)  まさに聴く者の魂を揺さぶるかのようなエモーショナルなソロである。ラジオから流れてきたこの曲を初めて聴いた時は “このスライド・ギター、めっちゃジョージに似てるやん!” と思ったのだが、後で本物のジョージが弾いてると知った時はあぁやっぱりと大いに納得したものだ。そういえば確か91年にジョージがクラプトンと一緒に来日した時に出たTV番組「すばらしき仲間」の中でこの曲の話題になり、二人の間で次のようなやり取りがあった;
 EC:彼の演奏スタイルはとてもユニークだから他の人の作品に参加しててもすぐわかるよ... この前ラジオで君のスライドギターにそっくりなのを聞いたけど...
 GH:女性歌手のレコードで弾いたよ... 何ていう名前だっけ... あの赤毛の娘...
 EC:やっぱり君だったのか... 彼女の名前は... そうそう、ベリンダ・カーライルだ。スライドギターでロックンロールを弾けるのはジョージだけだからね。

クラプトンもこの曲をラジオで聞いて我々一般ピープルと同じことを考えとったという微笑ましいエピソードだが、この番組の貴重な映像を YouTube で見つけたので一緒に貼っときます。消される前に楽しんで下さい。

べリンダ・カーライル 輝きのままに Belinda Carlisle Leave A Light On


George Harrison&Eric Clapton3/4(5分50秒あたりからこの曲のエピソードが語られます)


【おまけ】確か銀座ジュエリーマキのCMソングやったと思うけど、この曲もめっちゃ好き(^o^)丿 強烈なサビメロの脳内リフレインが止まりません....
この胸の想い ベリンダ・カーライル/ (WE WANT)THE SAME THING-Belinda Carisle


Difficult To Cure / Rainbow (Pt. 2)

2012-11-26 | Hard Rock
 このアルバムを語る時に避けて通れないのがポップ路線への賛否だが、アメリカン・マーケットを意識したバンドのコマーシャル化路線に対する “魂を売り渡した” といった類の批判に対してリッチーは “俺たちはいつの間にかへヴィでアンダーグラウンドなバンドになりすぎていた。 当時はアバが俺の大のお気に入りで、ああいう風な曲を書きたいと常々思っていた。メロディアスで堂々としたポップ・ソングを演奏したい。一般受けするような曲が欲しかった。みんなが感情移入できるような曲を書かないとダメだと思った。郵便配達人が自転車に乗りながら口笛で吹くような曲をね。” と反論している。言いたいことは分かるけど、ファンとしてはリッチーにはどうしてもパープル~70'sレインボーのハイテンションなブリティッシュ・ハードロックを期待してしまう。
 そんなこちらの気持ちを知ってか知らずか、このアルバムにはめちゃくちゃカッコイイ疾走系ハードロック曲が入っている。それが⑥「キャント・ハプン・ヒア」で、「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」で一時は絶縁を考えた私に “やっぱりリッチーはエエなぁ...(^.^)” と思い直させてくれた、レインボーならではのハイスピード・チューンだ。取って付けた様なユル~いイントロはイマイチだが、「オール・ナイト・ロング」を高速回転させたようなキャッチーなメロディーとディープ・パープルを想わせるようなノリノリの演奏がたまらんたまらん(≧▽≦) レインボーはやっぱりこういうスピード感溢れるリフ・ロックに限るわ! 出来ることならコージーが叩いてやっさんが歌うヴァージョンを聴いてみたかった、というのは欲張り過ぎか...
RAINBOW - Can't Happen Here {THE FINAL CUT 1985}


 軽快なギターのイントロから一気に疾走し始める②「スポットライト・キッド」はリッチー節炸裂のギター・ソロがインパクト絶大で、腹一杯リッチーを聴いた!という満足感を味わえる至福のナンバーだ。これで間奏部の軽薄極まりない音色のキーボード・ソロさえなければ80年代の「キル・キン」になったかもかもしれない。 “いた、便所虫~♪”(1分25秒)の空耳もお忘れなく(^.^)
Rainbow -Spotlight Kid


 ③「ノー・リリース」はちょっと変わった感じの曲で、前半部分は武骨でメタリックな演奏なのだが、3分を過ぎたあたりから手拍子が入り、まるでクイーンの「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」みたいなファンキーな展開に突入、リッチーってこういうファンキーなノリは嫌いやったはずやのに... と訝しく思っていると、後半部でハッと我に返ったかのように疾走し始めるところが何とも可笑しい。決して名曲名演といえる代物ではないが、それでもついつい聴いてしまうんよね...(^.^)
Rainbow - No Release


 ⑨「ディフィカルト・トゥ・キュア」はベートーベンの「第九」をレインボー流ロックンロールにアレンジしたもので、重厚なイントロから一転して軽快な「歓喜の歌」のメロディーが響き渡る。クラシックに疎い私でも知っているキャッチーなテーマを皮切りに次から次へとオリジナルなメロディーを紡ぎ出すリッチーのインプロヴィゼイションは痛快そのものだ(≧▽≦) 更に3分40秒あたりからドン・エイリーにキース・エマーソンが憑依し ELP チックなキーボード・ソロを展開、このままプログレ・ワンダーランドに突入するのかと思っていると再びリッチーが登場し、「第九」のメロディーを奏でてメデタシメデタシ(^o^)丿 エンディングの笑い袋は意味不明だが、これもリッチー流の遊び心か? 因みに邦題は「治療不可」になっているが「Difficult To Cure」なら「治療困難」ですな。
 この後、レインボーは「ストレイト・ビトゥイーン・ジ・アイズ」と「ベント・アウト・オブ・シェイプ」というアルバムを出すのだが、そのどちらでもリッチーはあまり目立っておらず、「デス・アレイ・ドライバー」と「ドリンキング・ウィズ・ザ・デビル」の2曲以外はほとんど印象に残らない平凡な内容だ。そういう意味でもこの「ディフィカルト・トゥ・キュア」でレインボーは終わった、と感じるのは私だけだろうか?
Rainbow - Difficult To Cure (1981)

Difficult To Cure / Rainbow (Pt. 1)

2012-11-23 | Hard Rock
 レインボー祭りもいよいよ80年代に突入だ。ハードロック史に残る名盤「ダウン・トゥ・アース」を作り上げ、リッチー、コージー、やっさんの “新三頭体制” スタートかと思った矢先、レインボー・サウンドの屋台骨を支えてきたコージーがバンドのコマーシャル化に我慢できなくなり脱退、これにすっかりヤル気をなくしたやっさんもニュー・アルバムのリハーサル中にアメリカに帰ってしまいそのまま脱退と、バンドは飛車角抜きの危機的状態に陥るが、オレがオレがオレがのリッチー御大はドラマーにボビー・ロンディネリ、そして3代目ヴォーカリストにジョー・リン・ターナーを迎えて親米コマーシャル化路線を更に推し進め、バンドの転生を図る。その結果生まれたのがこの5thアルバム「ディフィカルト・トゥ・キュア」(邦題は「アイ・サレンダー」)である。
 このアルバムを聴いての第一印象は、メンバー・チェンジによってサウンドがガラッと変わったなぁということ。 “メロディアスでパワフルで緊張感漲るハードロック” というのがそれまでのレインボーの売りだったが、いかんせんコージーとやっさんの抜けた穴は大きく、 “メロディー” は相変わらず健在だったもののハードロックの生命線と言うべき “パワー” と “緊張感” においては明らかに後退しており、ごく普通のアメリカン・ロック・バンドのような聴きやすいサウンドになってしまっている。まぁそれこそがリッチーの狙いだったのだが...
 新ヴォーカリストのジョー・リン・ターナーは “吠え” も “ガナリ” もしないイケメン・シンガーで、リッチーの考える “アメリカ受けするロック” にはピッタリだったが、アンドレややっさんという “キャラが濃い” ヴォーカリストに比べて線の細いジョーではどうしても見劣りがしてしまう。例えるならハミルトンの抜けた後にペレスが入ったマクラーレンみたいなモンで(←F1ファンにしか通じないマニアックな例えですんません...)、 “この曲にはこの声でないと...” という決定的な吸引力に欠けるのは否めない。ということで “三頭体制” から “一頭支配” へと変わってしまったレインボーだが、それでも聞かせてしまうのはひとえにリッチー御大の “唯一無比な” ギターの魅力故だろう。
 ジャケット・デザインはフロイドやゼッペリンで名を馳せたあのヒプノシス。何でも元々はブラック・サバスの「ネバー・セイ・ダイ」用に作られて不採用になったものをレインボーの新作に流用したとのことで、おそらく原題の「Difficult To Cure」に引っ掛けたのだろうが、私的にはちょっとビミョー(>_<) 少なくともジャケットから音が聞こえてくる “ジャケ名盤” からは程遠い安直なデザインだ。
 このアルバムでは前作の「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」に引き続きラス・バラードの作品①「アイ・サレンダー」を取り上げている。これはもう “一体どうすればアメリカで愛されんだぁ???” というリッチーの気持ちの表れ... なワケないか。冗談はさておき、アルバムから 1st シングルとしてカットされたこの曲は当時ラジオから頻繁に流れており、 “アィサレェ~ンダ、アィサレェ~ンダ♪” と執拗に繰り返されるサビメロはしっかりと頭にこびり付いていたが、私的には “「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」よりははるかにマシやけど、レコードを買いたいと思うほどではないな...” というのが正直なところで、まぁ可もなく不可もなしといった感じ。やはりまだ “リッチーといえば「ハイウェイ・スター」や「バーン」...” というようにディープ・パープルの幻影を追っていたのだろう。
 しかしあれから30年以上が経った今の耳で聴くとこれが中々の名曲名演で、ジョー・リン・ターナーの線の細いヴォーカルもかえって適度な哀愁を醸し出していてエエ感じやし、何よりもバックでガンガン響き渡るキーボードの連打がめちゃくちゃ効いている。御大の歌心溢れるギター・ソロも文句ナシで、実に良く出来たパワー・ポップに仕上がっているのだ。尚、この曲はアメリカでは105位止まりと全くヒットしなかったがイギリスでは「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」の6位、「オール・ナイト・ロング」の5位に続いて3位まで上昇、レインボーの親米路線サウンドは何故かイギリスでウケが良いようだ...(笑) (つづく)
RAINBOW [ I SURRENDER ] PROMO-VIDEO.


【おまけ】YouTube で何と西城秀樹ヴァージョンの「アイ・サレンダー」を発見! やっさんの「ナイト・ゲーム」をカヴァーしてるのは知ってたけど、まさかレインボーまでカヴァーしてるとは...(゜o゜)  他にも「オール・ナイト・ロング」とか「アイズ・オブ・ザ・ワールド」とか、やっさん時代のナンバーを中心に何曲か歌っているのだ。きっとレインボー大好きなんやね。面白いので貼っときます。
西城秀樹 アイ・サレンダー ラビィングユー・ベイビー

オールナイトロング 西城秀樹

HIDEKISAIJO アイズ・オブ・ザ・ワールド

Down To Earth / Rainbow (Pt. 2)

2012-11-18 | Hard Rock
 このアルバムは①「オール・ナイト・ロング」で幕を開ける。2代目ヴォーカリスト、グラハム・ボネットの名刺代わりの1曲であり、いきなりイントロの “ウォウゥ ウォウゥ ウゥ~♪” という雄叫びに度肝を抜かれる。まるでロニーの影を振り払うかのように響き渡るドスの効いたヤクザなヴォーカルは唯一無比で、まさにやっさんの魅力全開の名唱である。ドスドスと切り込んでくるコージーの剛力ドラムも実に強烈で “これぞレインボー!” と言うべきハードボイルドなサウンドが楽しめるのだが、メロディーに強烈なフックがあるのでちゃーんと “キャッチーで親しみやすいハードロック” になっているところが凄い。新生レインボーの1曲目にピッタリのナンバーだ。
 しかし歌詞には大きな変化が見られる。ロニーに “中世ファンタジーではなくラヴソングを書け!” と言っていたリッチーの方針通りにここで一気に方向転換、アメリカでウケそうな軽~い内容にシフトしていくのだが、それにしてもエライ変わりようである。少し前までは “バビロンの城門がどーたらこーたら” とか “王を殺せ!” とかいった中世趣味的な内容だったのがココにきていきなり “ねぇ彼女、ワイン飲む? 名前は? 今ひとり?” とたたみかけ、 “君に触れたい... オレのモノにしたい...” と露骨な表現で女性をナンパする歌詞が飛び出してくるのだからその落差にビックリ...(゜o゜) 歌詞を書いたのはロジャー・グローヴァー爺... 老いてますます盛んとはこのことか。
 PV も笑撃のケッサクで、ステージ袖でクネクネ踊ってる金髪のネーチャンをチラ見しながらグラサンに白ジャケット姿で歌うやっさん、いつもの黒衣で黙々とギターを弾く御大、そしてラフなスタジャン姿(?)でドラムを叩きまくるコージーと、見事にメンバーのファッションがバラバラなところが笑える。このビデオ、ホンマにオモロイわ...(^.^)
Rainbow All Night Long High Quality


 これに続く②「アイズ・オブ・ザ・ワールド」も素晴らしい。まるで全盛期のフォリナーのハードな側面だけを抽出して濃縮還元したかのようなキャッチーな歌メロを絶妙に歌いこなすやっさんの、ヴォーカリストとしての懐の深さを満天下に知らしめるナンバーだ。初めてこのアルバムを聴いた時、①②の連続パンチに完全KOされたのを覚えている。
 まずイントロの壮大なキーボードから風雲急を告げるようなムードが立ち込め、コージーの重量級ドラミングが爆裂してテンションは一気にマックスへ。曲を完全に自分のものにしたやっさんの力強いヴォーカル、アグレッシヴに弾きまくる御大のギター・ソロ、この曲の陰のMVPと言ってもいいぐらい変幻自在なプレイを聴かせるドン・エイリーのキーボードと、三頭体制期を想わせるドラマチックな展開が圧巻で、6分40秒という長さを微塵も感じさせない名曲名演だ。ギター・ソロの後にさりげなく入るピアノなんかまさに“音楽を分かっている”者にしか出来ない見事な職人ワザと言えるだろう。
Rainbow - Eyes Of The World


 ③「ノー・タイム・トゥ・ルーズ」は70年代AC/DCを想わせるストレートなロックンロールで、コージーの刻むへヴィーなリズムとリトル・リチャード顔負けのシャウトを聴かせるやっさんのヴォーカル(0分59秒のお茶目な “アハッ♪” にはクソワロタ...)がめっちゃエエ感じ。レインボーには非常に珍しいバック・コーラスもばっちりキマッている。
Rainbow - No Time To Lose


 このアルバム中で私が一番好きなのが⑧「ロスト・イン・ハリウッド」で、私の中では「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」と一二を争うレインボーのベスト曲だ。イントロのコージー怒涛のドラミングから目も眩むようなスピードで繰り広げられるスリリングな演奏はまさに鳥肌モノ! 爆発的な圧力で背後からガンガン煽りまくるコージーのドラムをガッチリと受け止め、 “パワーにはパワーで対抗” するかのように強烈なダミ声でガナりながら凄まじい勢いで突っ走るやっさんに “炎のヴォーカリスト” の真骨頂を見る思いがする。更に絶妙なチェンジ・オブ・ペースになっているドン・エイリーのキーボード・ソロを受けて満を持したかのように御大リッチーが登場、キレキレ状態でめちゃくちゃカッコ良いソロをキメるところがたまらんたまらん(≧▽≦)
 とにかくメンバー全員の鬼気迫るハイテンションなプレイの応酬に圧倒されるこの曲、ちゃんとバック・コーラスで要所要所をシメながらメロディアスに疾走するところなんか80年代HRシーンを先取りしているように思う。これこそまさに “ハードロック桃源郷” である。レッド・ゼッペリンに「ロックンロール」があるなら、レインボーにはこの「ロスト・イン・ハリウッド」がある... そう言い切ってしまいたいぐらいカッコ良いキラー・チューンだ。アルバムのラストを飾るのにこれ以上相応しい曲はないだろう。
Rainbow - Lost In Hollywood


 結局グラハム・ボネットはこの「ダウン・トゥ・アース」1作きりでレインボーを脱退(←仲良しのコージーが辞めてすっかりヤル気を無くしたらしい...)、4オクターブあるといわれるその声を活かしてマイケル・シェンカーやイングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイといったスーパー・ロック・ギタリスト達と共演することになるのだが、その輝かしいキャリアを見れば彼がどれほど素晴らしいヴォーカリストなのかが分かるだろう。軽々しく “やっさん” 呼ばわりしてナメとったら怒るでしかし!
【おまけ】やっさんwww

Down To Earth / Rainbow (Pt. 1)

2012-11-15 | Hard Rock
 ロック・バンドにとってそのイメージを決定づける最も重要な要素の一つがリード・ヴォーカリストの “声” である。たとえギタリストが主役のバンドであってもそれは変わらない。ヴァン・ヘイレンのヴォーカルがデイヴ・リー・ロスからサミー・ヘイガーに変わった時も全く別のバンドに生まれ変わったかのような印象を受けたが、リッチー率いるレインボーもまた同様で、初代ロニー・ジェイムズ・ディオ、2代目グラハム・ボネット、3代目ジョー・リン・ターナーという違ったタイプのヴォーカリストを擁していたこともあって、それぞれの時代によってかなりアルバムの雰囲気が異なるのだ。
 そんなレインボー歴代ヴォーカリスト3人の中で私が断トツに好きなのが2代目のグラハム・ボネットである。三頭体制の中で強烈な個性を誇っていたロニーの後釜というのは並大抵なことでは務まらないが、ロニーに勝るとも劣らない強烈な個性の持ち主であるグラハムの起用はまさに大正解で、さすがは御大!と言いたくなる見事な人選だ。
 グラハム・ボネットの最大の魅力はその声である。ロニーがどちらかと言うと “吠える” タイプのヴォーカリストなのに対し、グラハムは血管がブチ切れんばかりに青筋を立てて “叫ぶ” タイプのパワー・シャウターで、そのハスキー・ヴォイスで強烈なシャウトをぶちかます様はフォリナーのルー・グラムを更にパワー・アップしたような感じ。ビブラートを使わないそのストレートな唱法は当時のリッチーが目指していた “初期アメリカン・ハードロック的なサウンド” にピッタリだ。
 グラハムのもう一つの特徴はそのユニークなファッション・センスである。短髪・リーゼントで派手なスーツかアロハにサングラスというスタイルはどうみても街のチンピラそのもので、故・横山やすし師匠にそっくりなのだ。長髪・皮ジャンが定番のハードロックの世界では異端中の異端であり、ステージでもビデオでも思いっ切り浮いている。私なんかこの時期のレインボーのビデオを見るといつも彼にばかり目が行ってしまい、さすがのリッチーやコージーもやっさんのバックバンドに見えてしまう(笑)
 それはともかく、私はレインボーの歴史の中でこの “グラハム期” のサウンドが一番好きなので彼がアルバム1枚きりで脱退してしまったのが本当に残念だが、そういう意味でもレインボーの全アルバム中で最も愛聴しているのがスタジオ録音アルバム4作目にあたるこの「ダウン・トゥ・アース」なんである。
 アルバムからの第1弾シングル⑤「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」はラス・バラードが書いたポップ・ソングのカヴァーであり、コージー脱退の引き金になったことでも知られるナンバーだ。事の顛末は、まずプロデューサー兼ベーシストのロジャー・グローヴァーがこの曲を気に入り、レインボーをコマーシャル路線に持っていこうとしていたリッチーもこの曲をカヴァーすることに賛成したが、コージーは大反対。彼が言うには “この曲はレインボーには向いていない... ファンは何だこりゃ?と思うだろう... 良い曲であることは間違いないが俺たちはレインボーだろ?... 今まで君臨してきた分野の音楽があるじゃないか... 「スターゲイザー」や「バビロンの城門」みたいな曲をやった後にどうしていきなり「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」なんだよ? 気は確かか? リッチーがそういう方向に行くつもりなら俺は抜けて他の事をやった方がよさそうだと決心したんだ。” とのこと。まったく以てごもっともである。
 結局コージーが折れて “わかった。やるよ。ただし1回しか叩かない。それで終わりだ。” ということになったらしいが、コージーの機嫌を損ねるリスクを考えればそうまでしてこの曲をやる必要があったのかは大いに疑問だ。この曲のヒットとコージーの脱退を天秤にかければ、レインボーが失ったものはあまりにも大きかったと言わざるを得ない。尚、1993年にこの曲をカヴァーしたブライアン・メイのバックでドラムスを叩いていたのが他ならぬコージーというのも考えてみれば面白い巡り合わせであり、この曲のベストと私が信ずるのがそのブライアン・メイ・ヴァージョンなのだ。やはり曲とアーティストの相性というのは大事やなぁと思う。
Russ Ballard - Since You've Been Gone (Supersonic, 1976) FAMILIAR ???

Rainbow - since you've been gone

The Brian May Band - Since You've Been Gone


 不幸なことに私がリアルタイムで初めて聴いたレインボーがこの曲で、ラジオから流れてきたのを聴いて “何じゃいコレは? ホンマにあのリッチーがやってるんかいな...(>_<)” と幻滅したものだった。今ではさすがに寛容になったのか当時ほど抵抗はなくなったが、それでも自分から進んでこの曲を聴こうとはあまり思わない。ボストンとジャーニーとサヴァイヴァーを足して3で割ったようなコテコテのアメリカン・パワー・ポップを何が悲しゅーてブリティッシュ・ハードロックの王道であるレインボーで聴かなアカンのか? 結局この曲で偏見を持ったせいで私はレインボー入門に少し遠回りするハメになってしまったが、もしもあの時ラジオでかかった曲が①「オール・ナイト・ロング」や⑧「ロスト・イン・ハリウッド」だったとしたらその時点で即レインボーの大ファンになっていただろう。
 結局この曲はアメリカでは彼らにとって初のチャートインを果たしたものの57位止まりと振るわなかったのだがイギリスで6位まで上がるスマッシュ・ヒットを記録、アメリカン・マーケットを意識してイギリスで大ヒットというのも考えてみれば皮肉な話である。 (つづく)

Long Live Rock 'n' Roll / Rainbow

2012-11-12 | Hard Rock
 レインボー祭り第2弾の今日は「レインボー・ライジング」に続く 3rdアルバム(←ライヴ盤は除く)でいこう。このアルバムの原題は「ロング・リヴ・ロックンロール」なのだが、世間一般的には「バビロンの城門」という邦題の方が圧倒的に有名だし、黄色がかったベージュをバックにメンバーの顔のイラストが描かれたシックなジャケット(←カラフルな虹をフィーチャーした他のアルバムとは雰囲気全然違うなぁ...)にも単純明快な「ロックンロール万歳」よりは何となく高尚そうな(?)「バビロンの城門」というタイトルの方がしっくりくる。「銀嶺」とか「翔る」とかいう難しい漢字が使われてないこともあって、私もこの邦題の方に馴染んでいる。
 この作品はリッチー、コージー、ロニーのいわゆる “三頭体制” 最後のアルバムであり、初期レインボーが目指していた “攻撃性と芸術性を兼ね備えた様式美ハードロック” の完成形といえる、しっかりとまとまったタイトなバンド・サウンドが楽しめる。バンド名から “ブラックモアズ” が消えてただの“レインボー” 名義になったのも、ちょうど “ポール・マッカートニー&ウイングス” から “ウイングス” に変わったのと同じく、前作の成功で自信を付けたリッチーの “もうワシのワンマン・バンドとちゃうでぇ!” 宣言だろう。
 アルバムは全8曲でサウンドの傾向は前作の延長線上にあって大きくは変わらないが、この頃からリッチーがアメリカン・マーケットを意識し始めたせいか長尺曲は姿を消し、コンパクトにまとまった楽曲を中心に構成されており、 “贅肉を削ぎ落とした切れ味鋭いハードロック” が展開されている。
 アルバム冒頭を飾るタイトル曲①「ロング・リヴ・ロックンロール」はこれまでのレインボーの曲には希薄だったキャッチーなフックを持ったノリの良いロックンロール。キャッチーでありながら決して軽くならないところはレインボーならではで、コージーの叩き出すヘヴィーなシャッフル・ビートに乗って “顔面アンドレ・ザ・ジャイアント” ことロニー・ジェイムズ・ディオがハイテンションなヴォーカルを聴かせてくれる。いやぁ、この曲ホンマにカッコエエわぁ...(≧▽≦)  私なんか “ドカドカドカドカ!!!” とたたみかけるようなドラムのイントロを聴いただけでアドレナリンがドバーッと出まくるし、クルクルと目が回るような御大のギター・ソロも相変わらず冴えわたっていてゾクゾクさせられる。空耳ファンは4分01秒からの “ダメだよ!やめてよ!やめてよ!やめねーよ!” も要チェックだ。
Rainbow - Long Live Rock and Roll - Re-EQ'd


 ライヴ盤「オン・ステージ」の鬼気迫るプレイでもお馴染みの⑤「キル・ザ・キング」も圧倒的に素晴らしい。 “これぞレインボー!” と思わず快哉を叫びたくなるような超絶ハイスピード・チューンで、前作の「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」と同様に “速さ” と “重さ” を見事に両立しており、凄まじいまでのスピード感とスリリングな展開に圧倒される疾走系ロックンロールだ。御大のギターは “クルクル~♪” を通り越して “キュルキュル~♪” (←ベタな擬音ですんません...)と聞こえるぐらいアグレッシヴ。前作は「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」、今作はこの「キル・キン」で決まり!である。疾走せずに何のレインボーか!!!
Rainbow - Kill the King


 アルバムの邦題になった④「ゲイツ・オブ・バビロン」は起承転結のあるドラマチックな構成にアンドレ、じゃなかったロニーの粘りのあるパワフルなヴォーカルがドンピシャにハマった感のあるナンバーで、バビロンというだけあって中近東っぽいミステリアスな薫り横溢のヘヴィー・ロックに仕上がっている。コージーの迫力満点のドラミングが高い緊張感を醸し出しているし、何と言っても御大のギター・ソロが抜群にカッコイイ(^o^)丿 まさにリッチーが目指した中世ヨーロッパ的様式美ここに極まれり!と言いたくなるような名曲名演だ。
Rainbow-Gates of Babylon


 上記の3曲以外では⑥「ザ・シェッド」が好き。ファンの間ではほとんど話題にも上らない不憫な曲なのだが、その重厚でゴリゴリしたサウンドは完全にゼップ系のへヴィー・ロック。私の耳にはヴォーカル以外はあのキングダム・カムそっくりに聞こえるぐらい(笑)ゼップっぽいナンバーだ。イントロのギター・ソロにはゼップの「ハートブレイカー」の薫りが濃厚に立ち込めているし、コージーのドラミングもまるでボンゾが墓場から蘇えってきたかのようだ。私が持っているUKポリドール原盤の音はイマイチで、前作に比べてバスドラの重低音の迫力が不足しているように感じてしまうのだが、ドラムの音をもっと上手く録っていればこの曲の評価もガラッと変わったかもしれない。最新のリマスターCDでも買ってみようかな...
 レインボーはアルバム収録曲の出来不出来のバラつきが大きいバンドだと思うが、①④⑤のような超有名曲以外でこういう隠れ名演を探すのもファンの愉しみの一つだろう。やっぱりレインボーはエエなぁ...(^.^)
Rainbow - The Shed (1978)

Rainbow Rising / Blackmore's Rainbow

2012-11-08 | Hard Rock
 前回はストレスが溜まるとついつい高い買い物をしてしまうという話だったが、いくらなんでもイラッとくるたびにそうそう高いオリジナル盤ばかり買うわけにもいかず、何か他の方法でストレスを解消しなければならない。そんな時に聴きたくなるのがハードロックである。ハードロックと言えば(少なくとも日本では)誰が何と言おうとレッド・ゼッペリンとディープ・パープルという2大バンドにトドメを刺す。オマエの好きなAC/DCはどーした?デフ・レパードはどないしたんや?と言われそうだが、私のように70年代ハードロックの洗礼を受けた世代の人間にとって、ゼップとパープルというのは別格というか、思い入れもひとしおというか、とにかく特別な存在なのだ。
 この両者はたまたま同時期にバンドとしてのピークを迎え、70年代前半のハードロック・ムーヴメントを牽引したということでついつい “ハードロックのパイオニア” として一緒くたにされたり、あるいは “ゼップ派 or パープル派?” という風にライバル関係を喧伝されたりしてきたが、音楽的にはこの両者はかなり違う。頑固一徹ハードロックに徹してその様式美を極めんとしたパープルと、ハードロックの枠を超えた幅広い音楽性で独自の世界を確立していったゼッペリン... 私の場合はどちらかと言うとゼップ派なのだが、ストレス疲れでココ一発の元気が欲しい時に聴きたくなるのは圧倒的にパープルであり、そこから派生したリッチー・ブラックモアのレインボーなんである。ワンパターンと言われようが大仰でウルサイだけと言われようが、あの単純明快な “分かりやすいハードロック” は唯一無比。ということで今日はリッチー御大率いるレインボーの「ライジング」(邦題:「虹を翔る覇者」)にしよう。
 1975年にリリースされたこの 2nd アルバムは地味だった前作からベース、ドラムス、キーボードをメンバー・チェンジ、特にコージー・パウエルというハードロック界屈指の天才ドラマーの加入によりリッチー、ロニー、コージーのいわゆる “三頭体制” がスタート、ロックの荒々しさに溢れたタイトでスリリングなバンド・サウンドが堪能できる。レインボー初代ヴォーカリストであるロニーのヴォーカルは私の好みとは少し違うが決して嫌いではないし、コージーの爆裂ドラミングに触発された御大のスリリングなリフと独特のソロ・フレーズのアメアラレ攻撃がこのアルバムのクオリティーを大いに高めている。
 このアルバムはジャケットも素晴らしい。レインボーの、いや、パープル・ファミリーの全アルバム中でも最高傑作ではないか? 虹をつかむ手の力強さがダイレクトに伝わってくるようなそのイラストはアルバムの内容とピッタリ合っていて、そのセンスの良さに唸ってしまう。50年代モダンジャズは半分 “ジャケットを聴く” ようなものだが、ハードロックにおいてもジャケットはとっても重要なのだ。
 収録曲は全6曲。A面も悪くはないが(特に③の「スターストラック」は結構好き...)、やはりこのアルバムは何と言ってもB面に尽きるだろう。このB面の2曲は共に8分を超える大作で、そのどちらもが全く長さを感じさせない名曲名演なのだから恐れ入る。まずはB面の1曲目にあたる⑤「スターゲイザー」だが、“様式美ヘビー・メタル” の典型と言ってもいいようなスケールのデカいドラマチックなナンバーで、初期レインボーの中世ヨーロッパ志向が結実した感のあるその壮大な曲想と重厚なグルーヴに圧倒される。 “なぁ6,6,6,6,6階さわらせて~”の空耳にも大爆笑だ(^o^)丿
【空耳アワー】「6階さわらせて」 Rainbow Stargazer

Rainbow - Stargazer HD


 そしてこれに続く⑥「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」こそこのアルバムの、いや、初期レインボーの最高傑作!!! ハードロックかくあるべし!と言いたくなるような攻撃性を持ったカッコ良いナンバーで、パープルの「ハイウェイ・スター」や「バーン」路線の超疾走系ロックンロールだ。とにかく息つく暇もなく繰り出されるハイ・テンションなプレイの連続攻撃はまさに圧巻の一言で、8分12秒があっという間に過ぎ去っていく。ツインバスを駆使して煽りまくるコージーとアグレッシヴなケンカ・リフで応戦するリッチーの凄まじいバトルが炸裂するスリリングな展開がたまらんたまらん(≧▽≦) 血湧き肉躍るとはこのことだ。真のハードロック好きならこの1曲のためだけにでもこのアルバムを買う価値があると思う。
Rainbow - A Light In The Black ( Los Angeles Mix )
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The Wonderful World Of Sam Cooke

2012-11-04 | Oldies (50's & 60's)
 早いもので今年も残すところあと2ヶ月である。振り返ってみると、音楽面では音壁やマッシュアップ三昧で相変わらず充実していたのだが、仕事の面では4月に転勤になった新しい職場の水が全く自分に合わずストレスが溜まるばかりの毎日で、特に先月なんかもう最低最悪(>_<)  そのうち忍耐のレッド・ゾーンに突入しそうだ。このように仕事で不満が爆発しそうになった時、私は大きな買い物をしてストレスを発散するようにしており、先月は久々に大物を1枚買ってしまった。
 私が海外オークションのeBayを始めた頃の脳内バブル状態(笑)とは違い、さすがにここ数年は2,000円を超えると “高い!!!” と感じる正常な神経になっているのだが、そんな今の私にとっての大きな買い物というのはちょっと値の張るオリジナル盤LP のこと。これまでも「マイ・ジェネレイション」や「ベガーズ・バンケット」、「ミコ・イン・ニューヨーク」のオリジ盤を “自分へのご褒美”(笑) と称してゲットしてきたが、今回の収穫はそれらに勝るとも劣らない入手困難盤、「ザ・ワンダフル・ワールド・オブ・サム・クック」(Keen 8-6016)である。
 キーン・レコードのサム・クックといえばオールディーズ・マニア垂涎の稀少盤で、同レーベルに6枚ある彼のLP(うち1枚はオムニバス盤)の中で最もレアなのがこのレコード。Goldmine のプライス・ガイド本では $350 が相場となっており、実際に eBay で検索してみても $200~$300ぐらいのニンピニン価格(笑)で手も足も出ず、前々からずーっと欲しかったけど半ば諦めかけていた1枚だ。
 そんなレア盤が何と $60 スタート、BUY IT NOW (←ヤフオクでいうところの “今すぐ落札” です...)なら $75 という信じられないようなリーズナブルなお値段で eBay に出ていたのだ。私は一瞬 “いくら何でも話がうますぎるやろ... ヨーロッパで出た再発盤とちゃうんか???” と疑いの目でセンター・レーベルやジャケットの写真、セラーのフィードバックなどを隅々までチェックしてみたが怪しいところはどこにもない。どうやらロスにあるキーンの倉庫から出てきたオリジナル盤のデッドストック100枚の内の1枚らしく、埃だらけながら盤もジャケットもミント状態というからこんなオイシイ話は今後絶対にありえない。このチャンスを逃せば一生買えないと思った私は迷わず $75 で即決。悠長に構えて他人にかすめ取られでもしたら余計にストレスになりそうだし(笑)、$1=78円として約6,000円ならめちゃくちゃ安い買い物だ(^o^)丿
 発送からわずか4日で届いたのにもビックリしたが、それより何より気になっていたのがホンマにオリジ盤なのかどうかということ。ネットの写真だけで “多分大丈夫やろ...” と判断したものの、やはり現物を見るまでは安心できなかったのだ。ドキドキしながらレコードに針を落とすと、 “ひょっとしてパッチモンやったらどうしよう...” という一抹の不安を木っ端微塵に打ち砕くかのようにパワフルなモノラル・サウンドが部屋中に響き渡った... コレはたまらんわ(≧▽≦) 
 キーンの音源は権利関係がややこしくいらしく(←悪名高いABKCO Records が絡んでる???)正規のマスター・テープからリマスターしたCDは出ていないようだ。私が持っているのも NOT NOW (UK) や COMPANION (Denmark) というヨーロッパの妖しいレーベルから出ているCDばかりでレコードから音録りしたのが丸わかりのペラペラな音が哀しかったが、これでやっと良い音で聴けると思うと嬉しくてたまらない。サム・クックのビロードのような艶のある歌声はやっぱりアナログに限りますな...(^o^)丿
 収録されているのは全12曲、両面一気通聴しても約30分だが中身の濃さはハンパない。まずは何と言ってもアルバム冒頭を飾るA①「ワンダフル・ワールド」である。これは他愛のない学生の恋の唄なのだが、 “歴史も、生物学も、科学の本も、専攻したフランス語もよく分からないけれど、僕が君を愛してることはよく分かってるさ... 君も僕を愛してくれるなら、どんなに素敵な世界になるだろう...” と恋する気持ちをストレートに表した歌詞が秀逸で、思わず口ずさんでしまうキャッチーなメロディーに乗せてサム・クック独特の艶のある歌声で聴ける幸せを何と表現すればいいのだろう? 映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」(原題は“Witness”)のカー・ラジオから流れてくるこの曲をバックにハリソン・フォードがアーミッシュの女性と踊るシーンも忘れ難い。
Sam Cooke - Wonderful World [HD]

witness


 ガーシュウィンの名曲を見事に歌い上げたA③「サマータイム」も素晴らしい。実はサム・クックはこの曲を2回レコーディングしており、初演はキーンからのファースト・アルバム「サム・クック」(A-2001)に入っているのだが(←シングル「ユー・センド・ミー」のB面にも収録)、これがアップテンポの大胆不敵なアレンジで、 “Don't cry... no no no no...♪” のパートを前面に押し出しながら自由闊達な節回しを聴かせるサム・クックのヴォーカルがゴスペル・ソングのようなグルーヴを醸し出していて実にカッコ良いヴァージョンなのだ。マニアの間では通称 “Don't Cry Version” とも言うらしい。
 一方このアルバムに収められたヴァージョンはより原曲に忠実なアレンジでテンポも遅く、世間一般にはこちらが “レギュラー・ヴァージョン” として認知されているようだ。因みに1959年にこちらのスロー・ヴァージョンを「サマータイム・パート1」と題してA面に、上記のファスト・ヴァージョンを「サマータイム・パート2」と題してB面にカップリング、シングル(Keen 2101)としてリリースされている。私的にはどちらかというとアップテンポな方が好みなのだが、端正なブラッシュと幽玄な雰囲気を醸し出す女性コーラスをバックにサム・クックが切ないメロディーをジャジーに歌い上げるこちらのヴァージョンも捨て難い魅力を持っている。あなたはどちらが好きですか?
Sam Cooke - Summertime (Slow Ver. / Keen 8-6016)

Sam Cooke - Summertime (Fast Ver. / Keen A2001)


 上記2曲以外では「ユー・センド・ミー」の三軒隣りに住んでいるようなA②「ディザイアー・ミー」、ロジャース&ハートの名曲をソフトタッチで朗々と歌い上げたB②「ブルー・ムーン」、チャキチャキしたリズムに乗ってノリノリのヴォーカルを聴かせるB③「スティーリング・キッシズ」あたりが気に入った。特に「ブルー・ムーン」はナット・キング・コールやジュリー・ロンドンと並ぶこの曲の三大名唱の一つだと思う。
 家宝とも言えるこのアルバムをゲットして、サム・クックのキーン時代のアルバムは残すところ2nd の「アンコール」のみ... これも中々市場に出てこない稀少盤だが頑張って絶対に手に入れてやるぞ~
Sam Cooke (Desire Me)

Sam Cooke - Blue Moon (1959)

Sam Cooke - Stealing Kisses (1960)
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