ひびレビ

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"氷菓 第11話"をもう一度

2023-10-06 08:09:55 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第11話「愚者のエンドロール」にて今回の話は一区切り。改めて見ても全体的に暗いなぁ……

・摩耶花の指摘とフォロー
 強度を気にしていたザイルを使わないのはおかしいのではないか……摩耶花は本郷案だとすればおかしい点を指摘するのみならず、奉太郎案の面白さも褒めてくれています。飴と鞭というわけではなく、良いと思ったものは良い、違うと思ったことは違うとはっきりと口にしつつも相手を気遣える摩耶花の気の強さと優しさが感じられる良いシーンです。


・視線をこちらに向ける奉太郎
 視聴者に「お前もそう思うのか?」と問いかけているのでしょうか?


・「俺が」(奉太郎)
 何故ザイルの存在を忘れていたのかを自問自答する奉太郎。「俺が」の前には「特別な」がつきそうな言い方をしているのが印象的です。「これが本郷の真意だ」と断定したことと併せて、今回の奉太郎は自分に自信を持ち過ぎている、持つように誘導させられていることが伺えるシーンです。


・里志の指摘
 「奉太郎。本当にそう思ってるのかい?」。
 ホームズを参考書とした本郷に今回のトリックが思いつくはずがない、と里志から告げられてなお必死に食い下がる奉太郎に対し放たれた一言。この時の里志の表情はどこか辛く、寂しそうでした。奉太郎に「期待」していたからこそ、その奉太郎が自分の都合のいいように話を作り上げる様が見ていられなかったのでしょうね。
 加えて、直前のシーンで自分が解答に合わせて問題を捻じ曲げていたことに気づき始めていたにも関わらず、ここでまたしても「本郷はホームズ以外でも推理物に触れていた」と問題を捻じ曲げようとしており、そのことに気づかないのもまた寂しく……


・千反田の「気になること」
 振り返ればただ一人、ずっと本郷のことを考えていた千反田。そんな彼女が気になるのは「本郷を追い詰めたのは何だったのか」。そこには志半ばで筆を折った本郷の無念が、叫びが隠されている……
 状況こそ異なれども、言いたいことを言えないまま表舞台から降ろされたという点においては「氷菓」に思いのたけを込めた関谷さんを彷彿とさせます。次の長編エピソードである「クドリャフカの順番」も遠回しに自分の想いを伝えようとした者の行為であり、「手作りチョコレート事件」や「遠回りする雛」も思いを口に出来ない者たちの物語。アニメ「氷菓」とは、そうした口には出せない想いを抱えた者たちの物語だったのかなと、今更ながらに気づかされます。
 

・「どうも」「ヒントは何だった?」(奉太郎/入須先輩)
 タロットの本から「見方を変える」発想に行きついた奉太郎が、校門前で入須先輩に発した一言。文字にすると何の変哲もない挨拶ですが、実際は軽く怒気をはらんだ声色になっています。
 後半は場所を変えて「自分は探偵役ではなく推理作家だったのではないか」と奉太郎から問われた入須先輩の一言。こちらもそれまで優しく明るめな雰囲気から一転、冷え冷えとした口調に切り替わっています。アンケート結果の「無効票」の理由を言い当てた奉太郎に対する「さすがだな」や「さっきから違うとは言っていない」の高圧的な感じも含め、これまでの入須先輩とは打って変わって「女帝」たる一面が強く発揮されているシーンであり、声ひとつでここまで変わるか!と改めて声優さんの凄さを感じさせられたシーンでした。
 奉太郎が入須先輩の手のひらのうえで踊らされるのが少々苦手な「愚者のエンドロール」編ではありますが、ここからの容赦ない入須先輩、嫌いじゃないです(笑。


・「それを聴いて、安心しました」(奉太郎)
 自分に才能があるといったのは本郷のためか、誰でも自分を自覚すべきだという言葉も嘘か。その問いに対する入須先輩の答えを聴いた奉太郎の一言。「もうこれで勘違いしなくて済む」という意味での「安心」なのでしょうけれども……それでも自分に向けられた言葉は嘘では無かったと信じたかった、自分には才能があると言って欲しかった……そんな「薔薇色」への憧れが彼にこの問いかけをさせたのかもしれません。


・チャット
 本郷の真意はここで明らかになります。元々の事件の展開含め、気は弱いが優しく良い子なんだなと感じられますね。元より脚本のみならず演技も映像も素人である高校生が作った自主製作映画。だというのに、脚本に求められる比重があまりにも大きすぎたのも問題だったと思います。
 そして入須先輩と「あ・た・し♪」のチャットでは、「あのバカ」が気づけなかった入須先輩の真意も明らかに。これを指摘されて、口と指先しか映らないものの、感情的になっている入須先輩が印象的です。ああいう風に本音をさらけ出せる相手も貴重ですね。
 また、入須先輩の本郷を想う気持ちは紛れもない真実でした。結果的に奉太郎を傷つけてしまうことになったものの、それでも守りたかったものは守れた。誰かの犠牲の上に成り立つ成果、という点においても「氷菓」との関連性を感じさせられます。


・本郷の脚本とは
 抜け殻のようになっていた奉太郎を気にする千反田。本郷の脚本がどういったものだったか、推論を交わし合う二人を見ていると、いつものやり取りが帰ってきた!という感じがしますね。
 本郷は、自分を傷つけた者を許す話をどう描こうとしていたのか……タイトルをつけるならば、それこそOPから拝借して「優しさの理由」でしょうか。


 といった感じで締めくくられる「愚者のエンドロール」編でした。で、テレビ放送ではこの後すぐに文化祭へと移りますが、奉太郎がプールの監視員のバイトをする第11.5話があるので、そちらを挟んでから文化祭に移ります。
 また、入須先輩とは喧嘩別れしたような感じになってしまいましたが、「遠回りする雛」で再会した時のやり取りがまた良いんですよね……冷たく接した入須先輩も、ただの先輩として接する入須先輩も、どちらも魅力的な人物です。
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