変形性関節症 DJD(骨関節炎 Osteoarthritis )でかなり傷んでいる。
反対肢の中手骨に亀裂骨折もある。
(右)
これだけはっきり骨折線が見えるのも珍しいが、ソエ(管骨瘤)とは中手骨皮質の疲労骨折なのだろう。
そして、これだけ骨増勢に覆われてもまだ骨折線が見えていることにも注意が必要だ。
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2歳馬の馬房内事故の剖検。
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当歳馬が馬房内で大腿骨を骨折したとの連絡。
ただ来院を待つわけにはいかない。
内固定器具を滅菌し、大腿骨骨折についての成書を調べる。
大腿骨にアプローチするためには浅臀筋を結節からはずさなければならず、
大腿二頭筋と大腿四頭筋の間を相当はがさなければならず、
大腿四頭筋と大腿筋膜張筋の間も分けなければならい。
単純な斜骨折や横骨折だと整復固定しやすいが、あまりそのようなことはなく、
たいていは骨片があるか、あるいは粉砕している。
治せるとしても競走馬になる期待をするのは厳しいだろう。
折れた肢で負重できるようになるまで反対肢に負担もかかる。
そして、骨癒合したらまた筋肉を分けてプレートを抜かなければならない。
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大腿骨の全長をきちんと写すのはポータブル撮影装置だと厳しい。
近位部は股関節であり、体の中で最も筋肉が分厚い部位だからだ。
大腿骨中位での斜骨折だ。
骨片が1つは確認できる。
(右)
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この方向だとさらにx線量が必要になる。
やはり骨片が1つはとんでいるのが見える。
結局、競走馬になる可能性はほとんどないのであきらめた。
剖検して、2つの骨片が飛んだ斜骨折であることを確かめた。
手術と同様にして骨折端を整復できるかどうかやってみたがとても厳しかった。
大腿骨からかなり筋肉を剥がさないと整復できなかった。
それだけ大きい傷にして、筋肉も傷つけると感染する危険も増すし、骨癒合しても筋肉の損傷が懸念される。
あと100kg、いやあと50kg小さい子馬ならもう少し整復しやすいかもしれない。
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そのあと予定の去勢。
と思ったら陰嚢がない。
陰睾だと言われていたそうだ。
急遽、吸入麻酔して鼠径から腹腔に手を入れて異常に小さい精巣を引っ張り出して去勢した。
やれやれ、世間では3連休初日というのに盛りだくさんの1日だった。
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きょうは爽やかな日だった。
夏の名残と初秋といったところだろうか。
2歳馬。JRAのCM「エマズウィッシュ、、、」の冒頭が染みます。
筋肉へのダメージが少なく整復できることが、大腿骨骨折の内固定による治療においては難関なのですね。
何かにびっくりしちゃってこんなことになったのでしょうか?返す返すも残念なことですねぇ。
小さくて降りてない精巣はおんまさんでは取ったほうがいいのですか?
あ”~っ!オラ君、りんごの木2号に接近ですか?逃げようないからねぇ、木は。
ハラヘッタナ~とか、遊びにいきたいな~とか、でしょうか?
馬の丸いお尻が、大腿骨や骨盤骨折の治療を邪魔するのですよね。それでもいつか大腿骨骨折を治したいと考えています。この症例もそのために生かしたいと思います。
乗馬にするためには、飼養管理や輸送や競技で去勢馬でないと困るのでしょうね。
リンゴ2号はすでにシカにやられて発育不良です。それでも花は咲いたのですが、1本だと実はならないんですね~。
先日のrepairのお話、気になってました。
修復→repair、整復→reduction、と機械的にやってましたが、考えたらreductionが整復ってなんかヘンな感じもします、「減っちゃう」んですもの。
理由は語源を調べてちょっと納得しました。
repairはフランス語経由のラテン語源でre-parareつまりre-prepareってことでこちらは想像通りだったのですが
reduceも同じラテン語からのことばでre-ducere、これはlead backとかbring backといった「取り戻す」というのがもともとの意味で、減らすような意味がでてきたのは19世紀になってからのことだそうです。
(と、ここまでやってそういえば「還元」もreductionだったと思い出す)
使えるように「用意しなおす」のも「取り戻す」のもお医者さんの大事な仕事ですよね。
解説ありがとうございます。骨折端を合わせるのをreductionと言いますし、整復固定することをrepair と表現する人も居るようです。このような語感は母国語としない者には理解不能ですよね。
私も英語の語源は調べられるようにしておきたいなと思っていました。語源辞典のようなものがあるのでしょうか?
100キロ台の馬なら手術の可能性があるというのも・・・!
ミニホースは小さいという点で有利なのでしょうか。
この子馬はどうして骨折したのでしょうか?
・・・こちらで、剖検もできなかった症例ですが、蹄が滑って股裂きになって大腿骨骨折したのではないか、と推定された馬6歳が、皮膚も非常に薄く、際立って!身体が柔らかく、後肢をクロスして立っていたり(特に肢曲がりでもないのに)、騎乗されながら鞭を入れられると真横に横蹴りできていました。hig先生の症例は当歳ということで、大腿骨骨折と靭帯が柔らかいことは関係あるでしょうか?
たぶん馬房の中で立ち上がって肢を捻りながら倒れたのでしょう。不思議なことですが、大腿骨骨折や骨盤骨折のかなりの症例は馬房の中で起こります。サラブレッドとはそういう動物のようです。