真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 平成25年映画鑑賞実績:239本 一般映画:20 ピンク:211 再見作:8 杉本ナンバー:74 ミサトナンバー:4 花宴ナンバー:4 水上荘ナンバー:9

 平成24年映画鑑賞実績:283本 一般映画:17 ピンク:247 再見作:19 杉本ナンバー:69 ミサトナンバー:7 花宴ナンバー:5 水上荘ナンバー:15 >一般映画に関しては基本的に諦めた

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が、“水上荘ナンバー”は御馴染み「水上荘」が、劇中に登場する映画の本数である。


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 哀しい気分のジョークにもならない製作本数の僅少に素直に連動してか、薔薇族除くピンク全作を例年よりも随分早からう、十月第二週には踏破してあつたにも関らず、結局何やかにやとモタモタ手をこまねいてゐやがる内に、結局代り映えしないタイミングでの2011年ピンク映画の私選ベスト・テンとワースト・スリー、裏ランキングその他与太である。如何ともし難い公開ラグに関してはこの際胡坐をかいてしまふと、これでも幾分は早い方である。だ、か、ら、管理人が人並にしつかりしてゐれば、更にもう少しは早くなつたのだが。相変らず粗相ばかり仕出かしては、稀に頂くコメに何故か恐々とする大間抜け管理人のどうでもいい近況としては、ある意味我ながら実に俺らしいが、二十年来の親友から以外には特段の反響も別に無いままに、感想実質千本もそれなりに順調に通過。目下新田栄の感想百本ことハンドレッド・新田栄を当面の目標に、行けるところまで既に一杯一杯のアクセルを、依然踏み続けてゐるものである。壁が越える為にあるものだとするならば、底なんてものは、抜く為にあるんだぜ。

 今年もそんな塩梅でうつらうつらと、11年(昭和換算:79-7年)ピンク映画ベスト・テン

 第一位「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(オーピー/監督:森山茂雄)
 完全に他作を圧倒してゐるやうにしか思へないのだが、世評の高い風情も特に窺へないのは、例によつての小生のバッド・チューニングか。この期に及ばずとも、そんなもの一向に一切構はないが。
 第二位「母娘《秘》痴情 快感メロメロ」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 異形の月が鮮烈なヴィジュアル・ショックを叩き込む並行世界を舞台に、母娘が“再び手に入れる大切なもの”に辿り着くエモーショナルなナベシネマ・オブ・ナベシネマ。伝説のグラマラスクイーン・美咲レイラが、凡そ十年ぶりとなる電撃ピンク復帰を果たすトピックも重要。
 第三位「囚はれの淫獣」(オーピー/脚本・監督:友松直之)
 徒か戯れに醸される物議の陰から撃ち抜かれる、孤独なオタク青年の、誰からも理解されぬエモーション。現し世は夢であり、夜ならぬ小屋の暗がりの中の夢こそ誠。俺は思ふ、これこそが映画だ。
 第四位「女真剣師 色仕掛け乱れ指」(オーピー/脚本・監督:田中康文)
 四年ぶりに本篇に返り咲いた田中康文が、なほも余力を残す鉄板娯楽将棋ピンク。池島ゆたかのドス黒い貫禄は出色。
 第五位「極楽銭湯 巨乳湯もみ」(オーピー/監督:加藤義一)
 マトモな脚本家と組むと矢張り加藤義一は強い。タイトル明けの銭湯ラップに際しては結構本格的なミュージック・クリップを披露、何気に度肝を抜く。
 第六位「人妻旅行 しつとり乱れ貝」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 筆の根も乾かぬ内に何だが、総合的には目下ナベ最強論未だ揺るがず。ナベ・ゴールデン・エイジ第二章の到来に、一体何時まで気付かないつもりか。
 第七位「トリプル不倫 濡れざかり」(オーピー/脚本・監督:関根和美)
 伊豆映画をイイ話に捻じ込む老練の力技に感服。
 第八位「艶剣客2 くノ一色洗脳」(新東宝/監督:藤原健一)
 稲葉凌一が一作目と同じ悪の黒幕役で、兄貴と称して出て来たのには拍手喝采。主役二人の息も合ひ、「くの一媚薬責め」よりは明らかに面白く、思へたのは気の所為か   >何故自信がない
 第九位「白昼の人妻 犯られる巨乳」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 レス・ザン・ドンパチをソリッドなショットで乗り切るピンク・ノワール、日本語で話せ。
 第十位「愛人OLゑぐり折檻」(オーピー/制作・出演・音楽・脚本・監督:清水大敬)
 明後日には兎も角正方向の映画的評価はさて措き、ひとまづ藤崎クロエを嬲り尽くしてみせたエクストリームは圧巻にして天晴。

 と、一段落したところで・・・・うわあ、田中康文が四年ぶりならこちらは三年ぶり、ピシャリと決まるサゲの一言が見事な「となりの人妻 熟れた匂ひ」(オーピー/脚本・監督:後藤大輔)を忘れてた!慌てて次点。後藤大輔が清水大敬より下だとか頭おかしいんぢやねえのか?うつらうつらどころか完全に寝言だろがよ(;´Д`)

 簡略に個別部門、新人賞以外の全部門を森山組が舐めて別に問題もないのだが、撮影賞を飯岡聖英、音楽賞を與語一平が同時受賞。新人賞は管野しずかの一択。帰還賞が、俳優部では十三年ぶりの羽田勝博、では勿論なく、華麗なる大復活を遂げた美咲レイラ。演出部での後藤大輔と田中康文の激突は、田中康文に軍配が上がる。今後の展望としては、エクセスからの越境も望めないものか。

 幸いにも凶悪な破壊力には欠いたワースト・スリーは

 第一位「いんび快楽園 感じて」(オーピー/監督:池島ゆたか)
 蛮勇を拗らせ敢てワースト・ワン。現し世と夜の夢とを秤にかけ、現し世を選び取るやうな物語には、駄々にも似た激しいアレルギーを仕方なく覚えるものである。
 第二位「女囚701号 さそり外伝」(新東宝/監督・脚本:藤原健一)
 漆黒の闇に沈む画面、“外伝”と称してフォーマットから半歩たりとも踏み出ではしない展開、何故かモッサリモッサリしたさそりルック。チャーム・ポイントを探すのにも苦労する一作。
 第三位「淑女の裏顔 暴かれた恥唇」(オーピー/監督・出演:荒木太郎)、か「人妻OL セクハラ裏現場」(オーピー/監督・脚本・出演:荒木太郎)
 どちらでもいい、昔は積極的なアンチであつたが、最早昨今の荒木太郎には殊更に叩く気も失せて来た。

 我慢しきれずワースト次点は「夏の愛人 おいしい男の作り方」(Xces/監督・脚本:工藤雅典)
 呪はれたヒロイン・星野あかり主演で満足な映画を撮れる猛者は居らぬのか。



 裏一位は二年続けてこの人、「性犯罪捜査Ⅲ 秘芯を濡らす牙」(オーピー/脚本・監督:関根和美)
 過積載のツッコミ処、へべれけ極まりない一部始終、そして火を噴く大排泄、紛ふことなきシリーズ最珍作。キャンプな楽しみはもう満腹なので、Ⅳがあれば正方向の面白さをキボンヌ。
 裏二位は「若妻と熟女妻 絶頂のあへぎ声」(オーピー/監督:小川欽也)
 現代ピンクの極北・小川欽也の伊豆映画に対抗し得るピンク映画界のアルティメット・ウェポンといへば、最早新田栄の温泉映画しか残されてはゐないやうな気がするのだが。切札中の切札・城定秀夫の新作もいいけれど、ヨロシク頼むよ、エクセス!
 裏三位は「奴隷飼育 変態しやぶり牝」(オーピー/脚本・監督:山邦紀)
 「ユニバーサル・ソルジャー リジェネレーション」(2009/米/監督・編集:ジョン・ハイアムズ/撮影監督:ピーター・ハイアムズ/出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレン、他)をピンクに翻案してみせた、偉業は確かに買へもするものの。


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 別に目出度くもなければリアクションの欠片も無いことは毎度のこととして、さうはいひつつ虚空を撃ち続ける無為も拗らせ、もとい積もらせてはサウザンド山。感想が実質千本を通過した気紛れな記念に、私的オールタイムのピンク映画ベストテンを選んでみた。正直なところ、浜野佐知や渡邊元嗣等々何れか一本、を固定するのに難い監督も多く、その限りに於いての十傑ではある。

 第一位「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/大蔵映画/監督:関根和美/脚本:金泥駒=小松公典/主演:佐々木基子・町田政則)
 くどいやうだがここは不動。今作よりも優れたものならば兎も角、素晴らしい映画を観た覚えがないのだから仕方がない。忘れてゐるだけなのかも知れないが、細かいことは気にするな。時に必要であるのだ、立脚点といふものは。

 第二位「独身OL 欲しくて、濡れて」(2002/オーピー映画/監督・脚本・音楽:杉浦昭嘉/主演:木下美菜)
 この時確かに、杉浦昭嘉は世界を相手に戦つた。

 第三位「ド・有頂天ラブホテル 今夜も、満員御礼」(2006/Xces Film/監督:松岡邦彦/脚本:今西守)
 聳え立つグランド・ホテル、王道娯楽映画の大傑作。

 第四位「一度はしたい兄貴の嫁さん」(1997/Xces Film/監督:久万真路/脚本:金田敦/主演:彩乃まこと・臼井武史)
 今岡信治と城定秀夫を足して二で、割る必要のない幻の俊英・久万真路超絶の処女作。

 第五位「老人とラブドール 私が初潮になつた時…」(2009/Xces Film/監督:友松直之/脚本:大河原ちさと/主演:吉沢明歩・野上正義)
 “SPP”サイバーパンク・ピンク前人未到の到達点。SPPなる特殊な領域に、どれだけの挑戦者が居るのかなどと問ふ無粋な輩は、黙つてレンタルでもいいから「メイドロイド」を借りて来ればよい、洗はれた心が全てだ。

 第六位「美少女図鑑 汚された制服」(2004/オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/主演:吉沢明歩)
 多分本当に日本一短いエールが滂沱の涙を決壊させる、青春ピンク必殺のマスターピース。

 第七位「変態未亡人 喪服を乱して」(2003/オーピー映画/脚本・監督:山邦紀/主演:川瀬有希子・なかみつせいじ)
 静謐なロマンティックと最大級の奇想とが火を噴く、ヤマザキ・オブ・ヤマザキともいふべき衝撃作。

 第八位「髪結ひ未亡人 むさぼる快楽」(1999/新東宝映画/監督:川村真一/脚本:友松直之・大河原ちさと/脚本協力:森本邦郎/主演:野上正義・久保新二)
 ガミさんと久保チンによる、ピンク映画版「真夜中のカーボーイ」。因みに坂本太の「マル秘性犯罪 女銀行員集団レイプ」(1999/Xces Film/主演:平沙織/裏主演:吉田祐健)は、ピンク版「ガルシアの首」。

 第九位「美肌家政婦 指責め濡らして」(2004/オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:吉行由実/主演:麻田真夕・中村方隆)
 美しく綴られる小屋への愛。平素あれだけ荒木太郎嫌ひの小生が褒めるのだ、真に受けて欲しい。

 第十位「超いんらん やればやるほどいい気持ち」(2008/新東宝映画/監督:池島ゆたか/脚本:後藤大輔/主演:日高ゆりあ・牧村耕次)
 空前絶後の一大正面戦、池島ゆたかが監督作百と一本目に撃ち抜いた超重量級のエモーション。

 厳密にはピンクではない故の次点に、「妖女伝説セイレーンXXX 魔性の悦楽」(2010/新東宝映画/監督:芦塚慎太郎/脚本:港岳彦/主演:まりか・西本竜樹)
 「セイレーン」シリーズなればこそ結実し得た壮絶な純愛映画、櫻井ゆうこが起動する後半の猛加速からが凄まじい。


 流石にこれだけでは何だか物足りないので、戯れを重ねジャンル別ピンク映画のベストファイブ、大雑把にもほどがある。

 第一位:浜野佐知の女性上位映画
 敵陣の本丸ど真ん中、獅子奮迅の雄叫びならぬ雌叫びを終始一貫いまなほ上げ続ける女傑。作家性と商品性との結果的な両立といふ面に於いては、この人は大人になる前のティム・バートンとも互角以上に殴り合へるのではなからうか。

 第二位:渡邊元嗣のファンタ映画
 “無冠の帝王”ナベの全盛期はデビュー数年に止まる、ものでは決してない。近年の充実も著しく、目下断トツで面白い。

 第三位:新田栄の温泉映画
 微温湯の幸福感が最近妙に心地良くて仕方がない、これで案外、娯楽映画のひとつの境地ともいへまいか。あるいは、単なる小生の加齢ないしはより直截には経年劣化に伴なふ気の迷ひかも。

 第四位:深町章の水上荘映画
 兎にも角にも数が甚大、畢竟、当たり外れも馬鹿デカい。

 第五位:小川欽也の伊豆映画
 この期に辿り着いた緩やかな桃源郷、我々はもしかすると、ここで電車を降りるのか。


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 平成24年映画鑑賞実績:283本 一般映画:17 ピンク:247 再見作:19 杉本ナンバー:69 ミサトナンバー:7 花宴ナンバー:5 水上荘ナンバー:15

 平成23年映画鑑賞実績(確定):272本 一般映画:16 ピンク:229 再見作:27 杉本ナンバー:67 ミサトナンバー:10 花宴ナンバー:8 水上荘ナンバー:13 >一般映画に関しては基本的に諦めた

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が劇中に登場する映画の本数である。


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 クリスマスさへ無策に通り過ぎ、2011年の晦日に至つてやつとこさ、2010年ピンク映画の私選ベスト・テンとワースト・スリー、ついでに裏ランキングである。オーピー新作が関門海峡を西に渡るのにほぼ一年を要することに加へ、ヘタレ管理人の経年劣化に伴なふ体力の低下と、日々の糧を食む為の雑業が先月以降忙しくなり専ら苛められてゐたことにも火に油を注がれ、これでもギリギリのタイミングである、鬼が泣くぞ。それはそれとして、例年最後最後といはれ続けながら、吉行由実と加藤義一、去年は二作も製作された薔薇族映画は当方ノンポリののんけにつき、初めから観戦候補には入つてゐないものとしても、加藤義一の「熟女訪問販売 和服みだら濡れ」(四月公開/主演:青山愛)を、先に来た小倉を回避したところが八幡には来なかつた、といふ大失態をやらかし観落としてしまつた、甚だ無念なり。ともあれ、御大小川欽也の監督50周年を二年後に控へた2012年。話はピンクに止まらず全く予断を許さない状況の中、ひとまづは目出度くピンク映画五十周年を迎へようとしてゐる。ひとつ忘れてはならないのは、ピンク五十周年といふことは、即ち元祖御大小林悟の遺作公開十年にも当たるといふ事実。こちらは純然たる余談ではあるが、エントリー本文中にても初めて公言する。質が伴なはぬならばせめて量、実は当サイトは、感想千本を目指してゐる。これは必ずしも広言ではない、既に九百五十本は一応通過した。周年祝ひに詰まらない線香花火にでもコッソリと火を点すべく、パンク寸前の腰に鞭打ちもう少し粘らんと試みるものである。

 そんなこんなでぼちぼち、10年(昭和換算:79-6年)ピンク映画ベスト・テン

 第一位「妖女伝説セイレーンXXX 魔性の悦楽」(新東宝/監督:芦塚慎太郎)
 狭義のピンク映画でないことならば千も承知、それならば広義には含まれるのかといふと、一応ピンクの番線の中に組み込まれ、津々浦々の小屋小屋も巡つてゐるやうなので、辛うじて認められ得るのではなからうか。兎も角、最終的に他作の中に、今作を凌駕する一本が存在しない以上仕方がない。セイレーン・シリーズとしての特色も活かした、壮絶なる純愛映画の大傑作。その内芦塚慎太郎か港岳彦が大成した暁には、世間はこの作品の美しさに手の平を返すに違ひない。
 第二位「いひなり未亡人 後ろ狂ひ」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 ナベが今年も強さを発揮、一見他愛なく見せて実にスマートな、さういふところも娯楽映画らしい娯楽映画。
 第三位「痴漢電車 とろける夢タッチ」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 高密度の情報戦にも完勝してみせた痛快活劇、小生に楽器の嗜みと交友力とがあれば、アジアン・チカンフー・ジェネレーションを組むところだ。
 第四位「色恋沙汰貞子の冒険 私の愛した性具たちよ…」(Xces/脚本・監督、音楽も山内大輔)
 三年ぶりの山内大輔新作は、昨今のエクストリーム・エクセス路線唯一の結実。
 第五位「淫行 見てはいけない妻の痴態」(新東宝/脚本・監督:深町章)
 完璧な構成によつて編まれた他愛もない艶笑譚、深町章ここにあり。
 第六位「聖乱シスター もれちやふ淫水」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 師匠の第五位に続き、ナベシネマ・オブ・ナベシネマ。
 第七位「新婚OL いたづらな桃尻」(オーピー/監督:小川欽也)
 小川欽也×関根和美×久保新二、現代ピンクの完成形。と、いふのは冗談だが、人を小馬鹿にしたかのやうな棚牡丹式のラストは、グルッと一周してアナーキーですらある。
 第八位「性交エロ天使 たつぷりご奉仕」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 大胆不敵なピンク版『さやうならドラゑもん』、潔いオリジナリティーの放棄が、素直に鉄板のダメ人間成長物語をモノにする。
 第九位「未亡人銭湯 おつぱいの時間ですよ!」(オーピー/監督:池島ゆたか)
 裸要員が箆棒に潤沢な、戦闘的ならぬ銭湯的な良品。
 第十位「美尻エクスタシー 白昼の穴快楽」(オーピー/脚本・監督:山邦紀)
 山邦紀縦横無尽、エモーションの大魚は釣り逃がしつつ、里見瑤子のラスト・シャウトが素晴らしい。

 順不同の次点は封切り順に、アクロバティックな構成が意欲的な「痴漢電車 夢指で尻めぐり」(オーピー/監督:加藤義一)・キュートなポートレート映画「喪失《妹》告白 恥ぢらひの震へ」(オーピー/監督・脚本:吉行由実)・愚直な真つ向勝負が胸を撃つ「肉体婚活 寝てみて味見」(オーピー/監督:森山茂雄)、等々。

 個別部門は手短に、音楽賞が「欲望の酒場 濡れ匂ふ色をんな」(オーピー/監督:池島ゆたか)に於いて、佐々木麻由子の超絶歌唱をプロデュースした桜井明弘。助演男優賞に、ベスト・テン第八位作で実写版ジャイアン像を完成させたサーモン鮭山。新人賞は、第一位「セイレーンXXX」中盤以降の猛加速を点火する、最強のダークホース・櫻井ゆうこ。帰還賞が、山内大輔を押さへて久保チンこと偉大なるポルノの帝王・久保新二。もうひとつ、新設のアクション賞に、吉沢明歩のスタント・ダブルを務めた「最後のラブドール 私、大人のオモチャ止めました。」(Xces/監督・共同脚本:友松直之)にて、正しく電光石火の後ろ回し蹴りを炸裂させる亜紗美。
 各作品云々以前に、誤魔化しやうのない衰へ様が正直痛々しかつた大名優・野上正義さんは、昨年末終に帰らぬ人となつてしまはれた。地方在住市井の一矮小ピンクスながら、依然健在ぶりを誇る新版畑でのかつての豊潤な御功績を、常々偲び続けるものであります。

 意外と候補には事欠かないものの、三本に止めるワーストは

 第一位「義父相姦 半熟乳むさぼる」(オーピー/監督・共同脚本・出演:荒木太郎)
 “映画の力”とやらを信じてゐないのは、他ならぬ荒木太郎ではないのか。
 第二位「超スケベ民宿 極楽ハメ三昧」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 竹洞組テイストの自家中毒が頂点に達した―底か―度し難い木端微塵、竹洞哲也の荒木太郎化すら危惧される。
 第三位「新・監禁逃亡 美姉妹・服従の掟」(新東宝/監督・共同脚本:カワノゴウシ)
 何処からツッコめばいいものか途方に暮れかねない、兎にも角にも全てが貧しいネガティブな問題作。



 裏一位は衝撃のサブマリン・ピンクを措いて他になし、「後妻の情交 うづき泣く尻」(オーピー/脚本・監督:関根和美)
 深く静かに潜航せよ。
 裏二位は「人妻教師 レイプ揉みしごく」と、「強制人妻 肉欲の熟れた罠」(オーピー/制作・出演・脚本・監督:清水大敬/後者では音楽も)
 土壇場の瀬戸際といふ認識が、果たしてこの御仁にはあるのか。
 裏三位は謎の主演俳優の頓珍漢フォークが火を噴く、「色情痴女 密室の手ほどき」(オーピー/監督:浜野佐知)
 主役彼女の描き方にも、浜野佐知の直截には疎かぶりが窺へる。


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 平成23年映画鑑賞実績:272本 一般映画:16 ピンク:229 再見作:27 杉本ナンバー:67 ミサトナンバー:10 花宴ナンバー:8 水上荘ナンバー:13

 平成22年映画鑑賞実績(確定):285本 一般映画:18 ピンク:240 再見作:27 杉本ナンバー:73 ミサトナンバー:11 花宴ナンバー:6 >一般映画に関しては基本的に諦めた

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が劇中に登場する映画の本数である。


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 例年通り、その内今年も終るだろ、といふ時期に差し掛かつて漸く、去年のピンク映画の私選ベスト・テンと、返す刀でワースト・ファイブとである。開き直るでもないが、仕方がないものは仕方がない。このタイム・ラグでないと、私が住む―生まれた訳ではない―県にまでは来ないのだ。ところで、全五十三本の新作ピンクの内、外したつもりは毛頭ないのだが、三月公開の「熟女と新人巨乳 したがる生保レディ」(監督:小川欽也/主演:友田真希)だけ何故か観てゐない。まさか前田有楽に来てはゐないのか、あるいは私が派手に仕出かしたか。唯一本観落としたからではなく、普通に猛烈に惜しい。

 気を取り直して09年(昭和換算:79-5年)ピンク映画ベスト・テン

 第一位「老人とラブドール 私が初潮になつた時…」(Xces/監督:友松直之)
 サイバーパンク・ピンクの最高峰にして、プリミティブな恋愛映画の大傑作。頑強に積み重ねられた世界観の先に辿り着くのは、在り来りなメッセージ。但しその一言は、最大限の強度で観る者の胸を撃ち抜く。
 第二位「絶倫・名器三段締め」(新東宝/監督・共同脚本:佐藤吏)
 一見小品にも思へるが、その分全体的な統合力は磐石。クライマックスに於ける、原初的な特撮が火を噴く昇天ショットの威力は比類ない。
 第三位「ハレンチ牝 ひわい変態覗き」(オーピー/脚本・監督:山邦紀)
 狂ひ咲くファンタ、唸るロジック。らしさが轟く快作。
 第四位「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 友松直之の第一位作「メイドロイド」に続く人造人間もの。前年には些か落ちるも、渡邊元嗣依然快調を堅持。
 第五位「折檻調教 おもちやな私」(オーピー/監督:松原一郎)
 オフ・ビートのエロ映画と思はせておいて、最後の最後に狙ひ澄まされたフィニッシュ・ブローが炸裂する鮮烈な一作。吉行由実と酒井あずさといふ2トップも勿論超攻撃的。
 第六位「痴漢温泉 みだら湯覗き旅」(オーピー/監督:池島ゆたか)
 時代にフィットした、南風薫る極楽温泉映画。濡れ場の打点も何れも高い。
 第七位「OL空手乳悶 奥まで突き入れて」(オーピー/脚本・監督:国沢☆実)
 射精が雄叫ぶポップ・チューン。二作に留まりながら、国沢実が復調。
 第八位「誘惑教師 《秘》巨乳レッスン」(オーピー/監督:加藤義一)
 ヒロインが終章タイトルを文字通りブレイク・スルーするショットの一点突破。
 第九位「福まんの人妻 男を立たす法則」(Xces/監督:松岡邦彦)
 松岡邦彦にしては若干弱い。
 第十位「獣の交はり 天使とやる」(国映・新東宝/監督:いまおかしんじ)
 濡れ場の力も借りた奇跡を、奇跡のまま終らせればいいのに。

 順不同の次点は封切り順に、昨今渡邊元嗣が得意とする正攻法による大人の恋愛映画「夫婦夜話 さかり妻たちの欲求」(オーピー/監督:渡邊元嗣)・かすみ果穂×松浦祐也×AYA×倖田李梨の探偵4ショットが非常に魅力的な「人妻探偵 尻軽セックス事件簿」(オーピー/監督:竹洞哲也)・前半まではほぼ完璧だつた「よがり妻」(新東宝/監督:深町章)・濡れ場のクロスカウンターでドラマを牽引する様が素晴らしい「不倫旅行 恥悦ぬき昇天」(オーピー/脚本・監督:友松直之)、等々。

 男優賞には、「わいせつ性楽園 をぢさまと私」(オーピー/監督:友松直之)・「ねつちり娘たち まん性白濁まみれ」の仕事も光る野上正義。新人賞はかすみ果穂以外にあり得ない。カンバック賞に、浜野佐知の「魔性しざかり痴女 ~熟肉のいざなひ~」で針生未知と名義を変へ五年ぶりにピンク帰還を果たした川瀬有希子と、ベスト・テン五位の松原一郎作にて、夫である関根和美に連れられ三年ぶりの銀幕復帰を果たした亜希いずみ。

 五本も選ばなくていいやうな気がしないでもないワーストは

 第一位「いくつになつてもやりたい不倫」(国映・新東宝/監督:坂本礼)
 ヒロインが気違ひでないと成立しない闇雲な物語、且つだとしても、別に面白い訳ではない。
 第二位「本番オーディション やられつぱなし」(新東宝/監督:佐藤吏)
 終盤が自堕落極まりない。
 第三位「痴漢電車 女が牝になる時」(Xces/監督・脚本:工藤雅典)
 凡そ工藤雅典らしからぬへべれけさ。
 第四位「アラフォー離婚妻 くはへて失神」(オーピー/脚本・監督:吉行由実)
 そんな演技指導を施されなかつた主演女優にファックオフ。
 第五位「ねつちり娘たち まん性白濁まみれ」(オーピー/監督・共同脚本:荒木太郎)
 脚本家としての三上紗恵子と組むことを諦めない荒木太郎の、手詰まり感が甚だしい。



 裏一位は、新版公開まで含めると依然圧倒的な小屋の番組占有率を誇らぬでもない、新田栄の最終作となつてしまふのか、「未亡人家政婦 -中出しの四十路-」(Xces/監督:新田栄)
 綺麗な娯楽映画たり得てもゐたところが、卓袱台を床板ごと引つ繰り返してみせた。
 裏二位は「熟女淫らに乱れて」(国映・新東宝/監督:鎮西尚一)
 この時期に如何せん暗過ぎる、北風には吹かれ飽きた。綺麗に丸々切つてしまへる、純然たる濡れ場要員のピンで堂々とポスターを飾つてみせた太太しさは、逆に天晴。
 第三位は「社宅妻 ねつとり不倫漬け」(オーピー/監督・脚本:小川隆史)
 綺麗に空回つたデビュー作。


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 「ユニバーサル・ソルジャー リジェネレーション」(2009/米/提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/日本配給:エスピーオー/製作:ピーター・ハイアムズ、他/監督:ジョン・ハイアムズ/脚本:ヴィクター・オストロフスキー/原題:『Universal Soldier A New Beginning』/撮影監督:ピーター・ハイアムズ/編集:ジョン・ハイアムズ/出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレン、アンドレイ・アルロフスキー、ザハリー・バハロフ、マイク・パイル、コーリイ・ジョンソン、ギャリー・クーパー、クリストファー・ヴァン・ヴァレンバーグ、他)。
 一度死んだ兵士を蘇生させることによる、戦闘マシーン“ユニバーサル・ソルジャー”(以下ユニソル)同士の激突を描いた「ユニバーサル・ソルジャー」(1992/監督:ローランド・エメリッヒ)から十七年。その間に製作された「ユニバーサル・ソルジャー ザ・リターン」(1999)やTV シリーズのことは事実上無きものとして、第一作以来初めてジャン=クロード・ヴァン・ダム(以下JCVD)とドルフ・ラングレンとが再び相見える続篇である。
 SPに物々しく警護されながらも、ロシア首相子息の兄妹がのんびりと博物館の観覧を楽しむ。表に停めた迎への高級車に二人が乗り込まうかとしたタイミングで、画面右から武装兵士を乗せた大型車が強行フレーム・イン、送迎車を大破させる傍ら兄妹を拉致。何故か少々撃たれたところで死なない兵士は、VIPの人質が居るといふのに結構無造作に発砲して来るロシア警察を相手に殆ど市街戦を展開しつつ、最終的には用意しておいたヘリで首相子息の誘拐に成功する。民族主義のテロリスト・トポフ指揮官(ザハリー・バハロフ)が声明を発表、人質の身柄と占拠したチェルノブイリ原子力発電所の原子炉と引き換へに、拘束された政治犯の釈放を要求する。トポフは“農夫に銃を持たせた”と揶揄されもする自身の組織の他に、JCVDの実息であるクリストファー・ヴァン・ヴァレンバーグ演ずる助手を従へた研究者を金で雇ひ、NGU(New Generation Unisol)と呼ばれる新世代型ユニソル(アンドレイ“ザ・ピットブル”アルロフスキー)を手に入れてゐた。ロシアはユニソルの開発元である米軍に協力を依頼、米軍は現存する五体の初期型ユニソルの内、四体をチェルノブイリに向かはせるものの、NGUとの圧倒的な性能差の前にまるで手も足も出せずに全滅。窮した米軍は、人間性の回復を目的とする更正プログラム「フェニックス・プロジェクト」の過程にあつた最後の初期型ユニソルである、リュック・デュブロー(JCVD)に白羽の矢を立てる。
 迂闊な世間は清々しく今作の方を向いてはゐやがらないやうだが、JCVDやドルフ・ラングレンの名前からそこはかとなく漂ふB級映画スメルには反し、結構どころか大分よく出来かつ、熱い思ひも込められた胸を撃ち抜かれる一作である。目につくツッコミ処といへばそこら辺の廃工場を原子力発電所と称してみせる安普請程度で、実際のところ二線級なのは1400万米ドルといふバジェットのみ。オープニング・シークエンスからカー・チェイスに銃撃戦を畳みかけ、以降も戦争アクションや主に新旧ユニソルが激闘を繰り広げる高スペックな格闘戦と、全篇を通して派手な見せ場がふんだんに盛り込まれる中、とりあへず何を特筆すべきなのかといふと、今時のアクション映画にしては画期的ともいへるのではないかと思ふが、劇場最前列で観てゐてスクリーンの中で何が起こつてゐるのか判らないカットが一つも無い、名匠ピーター・ハイアムズの熟練が火を噴く超絶の撮影がまづ比類ない。類型的なプロットを何気なく97分で一息に観させてしまふ為、ウッカリすると通り過ぎてしまひがちになるのかも知れないが、地味に脚本も計算され尽くしてゐる。共にアラフィフのJCVD(1960生)とドルフ・ラングレン(1957生)のことを慮つてか単に拘束時間の問題か、兎も角中盤まではNGUとその他初期型ユニソルに間をもたせ、リュックと、リュックにとつて元々は上官で、ユニソルになつてからは宿敵ともなるアンドリュー・スコット(ドルフ・ラングレン)とを順々に投入する構成が秀逸。人間であつたものが軍の非人道的な計画によりユニソルといふ殺戮兵器にされた出発点から、再び人間への道を苦しみながらも歩いてゐたところで、再び再び他人の都合に翻弄され、ユニソルとして戦地に赴くリュックの姿は、円熟味も増して来た決して馬鹿に出来ぬJCVDの演技力も相俟つて、普通に素のドラマとしてエモーショナル。対して細かくは書かないが、そもそもNGUを有してゐるといふのに、何で又わざわざこの期に戦力では完全に劣る初期型ユニソルの出番となるのか、といつた疑問に対して綺麗に答へてみせる、トポフ側に起動されたスコット軍曹が参戦する段取りの的確な論理性もスマートに光る。しかも自我を摸索して暴走するスコットを事態の霍乱要因に、一旦収束しかけた事件を再加速させる展開には震へさせられる。実は個人的には、JCVDといふよりは寧ろドルフ・ラングレンのファンなのだが、この人は間違つても演技者として表情が豊かなタイプではなからう。そんなドルフ・ラングレンにとつて、何かの弾みでか目覚めてしまつた自我の萌芽を持て余すかのやうに、闇雲に暴れ倒す人間凶器といふ今作に於けるスコットのポジションは、麗しいまでのハマリ役。そしてこれはJCVD、ドルフ・ラングレン双方にいへることだが、いい感じで年嵩も増し、痺れるやうな色気を醸し出す。その他のキャラクターの見所としては、アンドレイ・アルロフスキーと同じく現役のファイターであるマイク・パイル演ずる、軍務に忠実で有能なアメリカ軍兵士・バーク大尉が、最期まで折れることなき強いハートで、生身の人間ながらにNGUに果敢に挑む場面も燃える。そして何よりもイモーショナル(【imotional】、名詞形のイモーション【imotion】は“in motion”からの合成造語で、体が動き出すほどの強い感動の意)なのは、経験と決死を頼りに本来ならば自身よりも戦闘力の高いスコット軍曹やNGUに対する、リュックのクライマックス・バトルも勿論のこととして、なほのこと素晴らしいのは実はその前段。単身チェルノブイリに突入して行くリュックを捉へた、怒涛の長回しが凄まじく素晴らしい。雑魚キャラを駆逐しながら歩を進めるリュックの姿を追つて、まあ長く回す回す、そしてJCVDが猛烈に動く動く。その撮影自体が、戦闘といふ名で呼ぶに値する困難であつたらうことも想像に難くはなく、齢五十にして「俺はまだまだやれるんだぞ」といふJCVDの魂の叫びが聞こえて来るかのやうで、激越に心揺さぶられる。この嘘偽りだらけの現し世の中で、割らないカットの強さは、アクション映画が俺達に見せて呉れる一つの真実だ。一件落着した後は、下手な蛇足のエピソードなど盛り込まうとする色気も見せずに、ある意味淡白ともいへる手短さで幕を引いてしまふ潔さは、却つて深い余韻を残す。久方振りにドルフ・ラングレンの雄姿を銀幕に見たい、程度の軽い気持ちで辺鄙な場所にあるシネコンにまでチャリンコを走らせたものであつたが、思はぬ収穫どころか、JCVDとドルフ・ラングレンそれぞれのキャリアを語る上で第一作と同様欠かすことの出来ないであらう、随分決定的な名作であつた。

 さうかうしてみるとほぼ完璧な傑作であるかのやうにも思へて来るが、映画にとつて必要なもので、今作に欠けてゐるものを強ひて挙げるとするならば、女の裸が足りないといへば確かに欠片も無い。となると、熱い内に打つべく早く作つて欲しい次作に登場する新機軸は、いよいよ女ユニソルか。何だか「エロティック・パーク」系の物件で、既に何時か何処かで馬の骨が勝手にやつてゐさうな気もしないではないが。


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 さて、“ピンク映画は観ただけ全部感想を書く”とやらで、相も変らずひたすらに虚空を撃ち続けてゐたりなんかする昨今である。目安といふかキリがいいところまでとでもいふか、兎も角、実は千本感想を書くといふ目標を目指してゐる。何の為に、だとかそれでどうなるのか等々といつた他愛もないのかあるいは至極全うな問ひを発するのは、男に対しては禁止だ。と、思ふ。ところで、現況はといふとどうにか再来月には七百本を通過、したい。ともあれ、俺が先にデスる分には別に構はぬがさうともいつてゐられない逼迫した、もしくは風前の灯ともいへる状況以前に、別種の、より恐ろしい困難に直面するに至つてしまつた。現実問題として、近隣各小屋のプログラムの中に、必ずしも未見ではなくとも少なくとも感想は書いてゐない、ピンクが少なくなつて来たのだ。今週の地元駅前ロマンは、二週目となる友松直之の「闇のまにまに 人妻・彩乃の不貞な妄想」(2009/厳密にはピンクではないが)と、Vシネ二本。殆ど毎週のやうに遠征を展開してゐる八幡の前田有楽は、月例番組表を確認した時点で不出撃を決定してゐたゆゑ詳細は押さへてゐないものの、兎に角既に感想を書いてゐる三本立て。一方天神シネマはといふと、新田栄の「痴母の強制愛撫 止めないで!」(2007)、浜野佐知の「魔乳三姉妹 入れ喰ひ乱交」(2007)の福岡市初上陸ではある2007年作二本と、AVがもう一本。かうなつたら仕方がない、電話の応対が暴力的に横着なので基本的には気が進まないが、背に腹は代へられぬと小倉名画座に目を向けてみれば、坂本礼の「いくつになつてもやりたい不倫」(2009)に、来月前田有楽に出撃決定済である坂本太の旧作改題。
 小倉まで含めたらどうにかなるかとも思つたが、甘かつた。されど、まだだ、まだ終らんよ。ピンクを観ないピンクスなんぞ概ね、個人的には間違ひなく、ピンクを観ないピンクスなんぞただの社会不適応を拗らせたダメ人間だ。諦めるな、最後の切り札、プロジェク太上映とはいへども未踏のフロンティア・久留米スバル座があるぢやないか!といふ訳で、電話して訊いてみた久留米の番組は国沢実の「美人歯科 いぢくり抜き治療」(2008)、佐藤吏の「本番オーディション やられつぱなし」(2009)と、AVがもう一本・・・・万事もここまで休すると最早鮮やかだ。といふか、八つ当たりするつもりもないが百万歩譲つてVシネならばまだしも、小屋でAVをかける意味がサッパリ判らん。特に天珍なんて、ハッテンすら許容しない強硬な姿勢を取つてゐるのに。別に潔く二本立てで、問題ないやうな気しかしない。
 
 五つも小屋があつて、全部機能しないとなると流石にもうどうしやうもないよな。といふか、内三つはプロジェク太上映ながら、県内に五館もピンク映画上映館の現存してゐることに、改めて驚くべきでもあるのであらうか。ここのほんの一週を、後々悔やむやうな無様な醜態を曝すくらゐならば、頑強にどうにかしたかつたところなのだが、流石に逃げ場なく万策尽きた。仕方がないので、今週は不貞腐れて無駄に体を休める。


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 平成22年映画鑑賞実績:285本 一般映画:18 ピンク:240 再見作:27 杉本ナンバー:73 ミサトナンバー:11 花宴ナンバー:6

 平成21年映画鑑賞実績(確定):218本 一般映画:23 ピンク:180 再見作:25 杉本ナンバー:50 ミサトナンバー:7 花宴ナンバー:5 >一般映画に関しては基本的に諦めた

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が劇中に登場する映画の本数である。


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 出鱈目な日々に追はれながら。とか何とかうかうかしてゐると、本気で年すら跨いでしまひかねない。もう師走だぞ。正直クズはクズなりによく戦つた、未だ一月残つてるけど。あちらこちらを零した心残りに後ろ髪を引かれつつ、仕方がないのでその限りに於いては何処までも暫定的な08年ピンク映画ベスト・テンなんぞ、戯れに捻つてみたりなんかする。別に全部観た上でないと、選んぢやいけない訳でもないか。

 08年(昭和換算:79-4年)ピンク映画ベスト・テン

 第一位「超いんらん やればやるほどいい気持ち」(新東宝/監督:池島ゆたか)
 年間を通しての活躍といふ面では、依然俄然絶好調の松岡邦彦や堅調を維持した渡邊元嗣ならば互角以上の勝負になりさうな気もするが、一作単位としては、今作を矢張り推したい。映画監督の生涯を描いた映画としては、歴史に残り得る傑作とすら血迷へばいへるのではないか。お花畑にロマンティック過ぎる、より直截にいふならば自己陶酔的と見る向きもあるやも知れないが、美しくないものなんて、今既にあるこのありのままの世界だけで十分だ。と、常々心に感じる歪んだ立場からは、このくらゐ臆すること欠片もなくギアをトップのその先にまで捻じ込んでみせるハートは、よしんばそれが蛮勇であつたとて、時に作家には必要ではなからうかと強く賞賛するところである。映画といふエモーションに対する玉砕上等の一大正面戦は、実に天晴ではないか。
 第二位「人妻のじかん 夫以外と寝る時」(Xces/監督:松岡邦彦)
 松岡邦彦四作何れも外れ無し。どの一作を選ぶか非常に迷つたが、終盤の怒涛の突進力に、最も松岡邦彦を感じた。
 第三位「女復縁屋 美脚濡ればさみ」(オーピー/監督:加藤義一)
 加藤義一の本領発揮ともいふべき、とても綺麗な綺麗な娯楽映画。主演女優が心の琴線に触れた点も勿論大きい。
 第四位「桃尻パラダイス いんらん夢昇天」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 太過ぎる穴のことはひとまづ兎も角、大人のSF恋愛映画は考証面にも充実を見せ、深く強い感動を残した。
 第五位「クリーニング恥娘。 いやらしい染み」(Xces/監督:松岡邦彦)
 こちらは松岡邦彦の暗黒面がポップに弾ける痛快作。松岡邦彦も今西守―この人要は、黒川幸則の改名か?―も、手加減といふ言葉を知らない。
 第六位「喪服の女 熟れ肌のめまひ」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 江端英久が実は初めから真実に辿り着いてゐたことを明らかにする場面に於いての、映画的強度の一点突破。美波輝海もさりげなく復活。
 第七位「おひとりさま 三十路OLの性」(Xces/監督・脚本:工藤雅典)
 飯島大介とサーモン鮭山が、側面からソリッドな都会劇の完成を支へる。
 第八位「不純な制服 悶えた太もも」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 倖田李梨の殺し屋と、吉岡睦雄と世志男の生け捕り屋とのカットが震へる程に素晴らしい。
 第九位「痴漢の手さばき スケベ美女の喘ぎ顔」(オーピー/監督:関根和美)
 プリミティブな特撮を駆使した関根和美が唯一作気を吐く。
 第十位「濡れ続けた女 吸ひつく下半身」(新東宝/監督:深町章)
 続篇が放棄されたことが重ね重ね残念なSF巨篇。

 順不同の次点に、穴は最も小さい「ふたりの妹 むしやぶり発情白書」(オーピー/監督:渡邊元嗣)・頑丈なエロ映画「変態シンドローム わいせつ白昼夢」(オーピー/監督:浜野佐知)・途中までは好調に走つてゐた「獣になつた人妻」(新東宝/監督・共同脚本:佐藤吏)・「絶倫老年 舐めねばる舌」(オーピー/脚本・監督:山邦紀)等々。

 未見作の主だつたところとしては、公開順に
 「バツイチ熟女の性欲 ~三十路は後ろ好き~」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 「半熟売春 糸ひく愛汁」(オーピー/監督:池島ゆたか)
 「レズビアン独身寮 密室あり」(Xces/監督:新田栄)
 「養老ホームの生態 肉欲ヘルパー」(Xces/監督:下元哲)
 「浮気相姦図 のけぞり逆愛撫」(オーピー/監督:渡邊元嗣)等々。

 個別部門としては兎にも角にも、御祝儀といふのも何だが、畳んだミニシアター―公式には休館状態―から改装オープンした天神シネマに特別賞を。眠れる35㎜主砲が再び火を噴く日が来たならば、少しは流れも変るだらう。
 男優賞に牧村耕次、女優賞に目出度く本格復帰を果たした酒井あずさ。この人の、時間の流れ方は最早おかしい。助演賞は吉岡睦雄・世志男そして倖田李梨の三人組と、飯島大介。新人賞に浅井舞香をとも思つたが、デビューは2007年か。

 幸か不幸か、突出して凶悪な作品の見当たらなかつたワーストは

 第一位「人妻がうづく夜に ~身悶え淫水~」(オーピー/監督・共同脚本:荒木太郎)
 沖縄で映画を撮つて来ました、おしまひ。
 第二位「性犯罪捜査 暴姦の魔手」か、「兄嫁の谷間 敏感色つぽい」(共にオーピー/監督・脚本:関根和美)
 どつちでもいい、そんな気分になれるルーズな二本。
 第三位「如何にも不倫、されど不倫」(Xces/監督・脚本:工藤雅典)
 自堕落な一作。
 第四位「や・り・ま・ん」(国映・新東宝/監督:坂本礼)
 狙つた訳ではないが、今年も坂本礼がこの位置に。真田ゆかりの扱ひ、といふか放置が無体。
 第五位「女囚アヤカ いたぶり牝調教」(オーピー/監督:友松直之)
 亜紗美の、孤立無援も通り越した四面楚歌。別に亜紗美が悪い訳ではないが。



 裏一位は今作を措いて他に無し、「愛人熟女 肉隷従縄責め」(オーピー/監督:清水大敬)
 何故にこの期に清水大敬なのか。
 裏二位は「喪服の未亡人 ほしいの…」(国映・新東宝/監督:渡辺護)
 今作も矢張り、頓珍漢映画にカテゴライズしてしまつて別に差し支へないやうな気がする。


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 さて今度は、更にこちらのエントリーの続きといふことで。

 当サイトは小屋でのピンク映画観戦―小屋でしか観ないが―に際して、実質的な意味など欠片もないが、戯れに小屋毎に章立ててゐたりなんかする。正しく気紛れ以外の、何物でもありはしない。閉館に伴ひ2006年の五月に終了した「福岡オークラ死闘篇」と、依然頑強に進行中の「駅前ロマン地獄篇」。下手をすると今年中に第百次の節目も迎へかねない勢ひで俄然展開中の「前田有楽旅情篇」に、随時足を伸ばす「小倉名画座急襲篇」。そして、続く新章「天神シネマ新興篇」が、いよいよスタートした。何気に五つの小屋に跨つての歩みをフと振り返つてみると、我ながら少しだけ壮観でもある。そんなに暇なのか、俺は。あるいは底の抜けた馬鹿か。既述した事柄に関しては改めて蒸し返しても徒に煩雑なばかりなので、今回はシネテリエ天神から模様替へした天神シネマに足を踏み入れてみての、実際の雑感を幾つか並べてみようと思ふ。
 タイミング的には土曜日の夕方、客席は十数席は埋まつてゐた。シネフィルぽい穏当な佇まひの方もあれば、如何にもピンクス臭く一癖二癖ありさうな面々も見られたが、その辺りの実情までは軽く眺めてみただけでは勿論与り知れず、ひとまづ関係ないといふ意味では興味も持ち合はせはしない。特に時間も合はせずに飛び込んで、順番としては「連続暴姦」→「闇のまにまに」→「タマもの」といふ順に観たのだが、最も重要なのはいふまでもなく、プロジェク太上映方式による画質である。「連続暴姦」を一見した瞬時の第一印象としては、確かに駅前よりは若干良いものの、大上段から啖呵を切つてみせるほどのものではない。あくまで、幾分マシといふ程度であらう。但し、後述するが駅前に劣るとも勝らない爆弾を抱へてもゐる。一方これが、「闇のまにまに」に入ると格段に向上する。「闇のまにまに」の上映画質に関しては、駅前のプロジェク太を完全に凌駕してゐる。正しく段違ひで最早“プロジェク太”などといふ、私的な一種の蔑称を使用することも憚られるくらゐである。よしんばフィルム上映ではあつたとしても、中島哲也の「嫌はれ松子の一生」や塩田明彦の「どろろ」のやうに腐れた品質のキネコよりは、余程綺麗に見られる色が出てゐる。映画としての出来は兎も角、「闇のまにまに」を感心しながら通過して「タマもの」に突入すると、残念ながら画質は「連続暴姦」時の期待外れの画質に逆戻りしてしまふ。これはプロジェクター自体のパワーなりスペックは同一である以上、的外れな素人考へであるやも知れぬが元データの問題なのであらうか。挙句ここで先程勿体つけた致命傷を蒸し返すと、「連続暴姦」と「タマもの」に至つては、一度ならず上映といふか要は再生が瞬時とはいへ一時停止したり、音声まで含めノイズが入つたりする。何れもどういふ次第でだか、しかも悪いことにクライマックス近くの大事なところに至つて邪魔が入るので、映画を観る分には結構な妨げとなる。駅前も確かに駅前画質で周囲は何時でもハッテン・パーティーではあつたとて、上映がカクカク停止したりはしない。プロジェク太の調子が悪くあまりにもへべれけで、小屋が流石に木戸銭を下げたことすら過去にはあつたが。未だ一度しか敷居も跨いではをらずあくまでその限りでの話といふ前提の上で、確かに「闇のまにまに」の上映画質は素晴らしいとはいふものの、そもそも肝心のピンクが駄目ならダメぢやね?といふのが、偽らざる率直な感想である。個人的には駅前で戦つて来てもゐる身なので決して首を縦に振つて振られないこともないのだが、世間一般的には、正直これでは厳しくもなからうか。
 私が入場した際の客席は男ばかりであつたが、三本立てが一回りしたタイミングで、男女二名づつ計四名の団体客が現れた。私の座る直ぐ後ろの列に陣取つたので、上映開始前の会話に柿の種をつまみつつ耳を傾けたりもしてみると、男一名が知つた風に曰く、東京には女性客で一杯のピンクの小屋があるとのこと。

 ねえよ、タコ。

 何処に常時女だらけのピンクの小屋があるんだよ、そんなアマゾネスな小屋、実在するなら行つて狩られてみたいところだ、モンティ・パイソンのネタか。たとへば今岡信治をかけるポレポレのことだとでもいふのであれば、それはピンクの小屋ではないし、さういふフィールド乃至は文脈で持ち上げられる類のものばかりがピンク映画ではなからうと、私は強く思ふ。林由美香が真に偉大たる所以は、その“さういふフィールドなり文脈で持ち上げられる類のものばかりではない”地平に於いても、変らずに戦ひ抜いて来たところにこそあるのではないのか。
 最後に、息抜き気取りでひとつ目についた点に触れると、ピンクの小屋にも関らず、上映中人の出入りが殆どないことは実に意外であつた。三本立て合間の休憩時に整然と観客が循環する光景は、妙に新鮮に映つた。上映中の場内も、全く平穏無事。この分なら女の一人客であつても、まづ問題はあるまい。

 付記(11/1)< 直接目撃した訳ではないが、三週目にして早くも、天神シネマの火蓋が切られたらしい。さういふことが俄かには可能なロケーションにも思へなかつたが、ex.シネテリエ天神とはいへ、女の一人客は矢張り考へものであるやうだ。


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 予めお断りしておくと、フラグが立つのは小生の日程ね。

 こちらのエントリーの、続報である。
 プロジェク太上映の駅前ロマン―と一応パレス―のみしかピンクの小屋を持たない、シケた地方中枢都市・福岡市。既報通り、さういふ福岡市の(旧姓)親不孝通りに今のところ現存するミニシアター「シネテリエ天神」が、十月十二日(月曜日)を以て休館、といふ形で恐らく事実上は閉館する。因みに十日(土曜日)から三日間限定の最終番組は、今時のジャパニーズ・スラッシャー、あるいは血しぶき切株映画「吸血少女対少女フランケン」(2009/監督:友松直之・西村喜廣)。重ねて因みにこの手の映画はあまり得意ではないので、当方に観戦予定はない。そして間に三日挟んでの十月十六日に、案の定といふか矢張りといふか何が何だか何だかなあ、とでもいふか。さて措き相変らずプロジェク太上映なのだが、新しいピンクの小屋である「天神シネマ」がオープンする。何はともあれ、状況を鑑みれば絶対に目出度いことには変りない。といふ訳で、具体像が少しづつながら見えて来もした、そんな天神シネマに関するあれこれである。
 個人的なシネテリエ納めとして「アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ」を観に行つた折に拾つて来た、チラシにはかうある。
 “「気になるけど入れなかつた。」”
 “「入つてみたいけど恥づかしい。」”
 “「どんな映画か興味ある。」”
 “そんなあたなのための新しいオトナの映画館が”、
 “天神・親富孝通りにオープンします。”(以上、原文は珍かな)
 といふ、コンセプトを鵜呑みにしてみるならば、ライト・ユーザー向けのピンク映画上映館といふ仕様か。ある意味、画期的といへば画期的だ。続いて料金設定としては、三本立てで男性\1,500、女性\1,000。ひとまづ、女客を優遇して呼び込まうといふ姿勢は看て取れる。ピンクの小屋に女が来るのかよ、といふ異論に対しては、とりあへず天神シネマの場合、シネテリエ天神として既に勝手を知られてゐる、といふ点は案外と大きいのかも知れない。スクリーンを上辺として四角形の劇場の底辺部両側に出入り口があり、スクリーンから見て左側の扉を出て直ぐにはモギリのカウンターがあるといふ構造からしても、小屋側が余程野放しにでもしない限り、空間的には無茶をしようにもし辛いやうにも思へる。それが、いいことなのか悪いことなのか、よしんば悪いことではあつても必要なことであるのかは兎も角として。加へて、座席前後間の間隔も、映画を観ること以外には全く何も出来さうにないくらゐに狭い。映画館は映画を観る場所ではないのか、といふ話でもあるのかも知れないが、まあまあ、さういふ野暮はいひない。何をするのかつて?そりやあ決まつてる、ナニさ。ピンクスとして敢ていはう、映画館で映画を観る、そんなことは、女子供にでも出来る。色んな映画がある以上、色んな小屋があつたとていいではないか。
 出鱈目な方向に、筆の滑りゆくままになりかねない。料金に話を戻すと―話の途中だつたのかよ―男千五百円女千円といふのに続いて、番組は土曜替り―オープンの十六日が金曜日であるのは、当日が大安につき―といふ訳で毎土曜日に、初日割と称して\1,000。参考までに駅前は、木戸銭\1,600で金曜替りの番組のゆゑ、金曜日が\1,000となる。即ち、どうしても観たい映画があるけれどもあの魔界に足を踏み入れるには二の足を踏んでしまふ、といふ御仁に対しては、非金曜のウイークデーをお勧めしたい。天神に話を戻して問題といふか巨大に疑問なのは、日金の\1,000といふ夜割が適用されるのが、17時以降といふ点。・・・・それ、上映何時に終るのよ。日勤の勤め人が、仕事終りで小屋に寄つても三本立てを完走出来ないのか?大体福岡市で夕方の五時といふと、真冬でも未だ日が沈まんぞ。“毎週土曜はレイトショー実施”とあるのが、“オールナイト”ではなく“レイトショー”といふのも猛烈に気になる。ここから先は全く極々個人的な文字通りの私情になつてもしまふのは恐縮ではあるが、下手をすると、私はこの小屋では戦へない危険性がある。どうでもいい実情を明かすと、現況の当方の木端微塵な日常が如何なものかといへば、金曜日に、駅前ロマンでピンクを入れる。土曜日に、仕事終りに自宅できのふ観たピンクの感想を書く。週に唯一の休みである日曜日は、普通の時間に起きて八幡か小倉に遠征を展開。初回から突つ込みとんぼ返りで帰福すると、出来るだけウイークデーに持ち越さなくとも済むやうに、書けるだけその日観て来た分の感想を消化する、といふアホな様(ざま)になつてゐる。金曜に駅前でピンクを観ておきながら土曜にも天神に行くとその後のスケジュールが全く成立しないし、かといつて日曜を天神に費やせば今度は遠征に出られないのだ。

 等々と、机の上でゴチャゴチャいつてゐても仕方がない。番組見て、行きたい方に行けばいいではないか。といふことに強ひてして、八幡・北九州の番組は現時点に於いては把握出来ないので、発表済みの十月分の天神シネマはどうなつてゐるのかといふと。 10/16~10/23のオープニング番組は、「吸血少女対少女フランケン」から繋げて友松直之の、直近でいふと城定秀夫の「妖女伝説セイレーンX」や後藤大輔の「新・監禁逃亡」(二作とも2008)と同傾向の、新東宝製作による厳密には非ピンク映画「闇のまにまに 人妻・琴乃の不貞な妄想」(2009)に、林由美香特集といふことでいまおかしんじの「熟女・発情 タマしやぶり」(2004)が、「タマもの 突きまくられる熟女」といふ2008年新版にて。それに、林由美香特集と並んで滝田洋二郎特集といふことで「連続暴姦」(昭和58)。10/23~10/30の二週目は、「闇のまにまに」が二周目と、林由美香特集は女池充の「濃厚不倫 とられた女」(2004)、滝田洋二郎は「痴漢電車 下着検札」(昭和59)。ここまでの五本限りとはいへ、全作が新東宝で占められてゐる辺りが、気になるといへば気になる。そもそも、「吸血少女」から流すにしてもどうせ友松直之ならば、絶賛現在進行形でエクセスオーピー新東宝三社(五十音順)に跨いで活躍を続けてゐる上に、ここはカルト的人気も誇るのか誇らないのか、「コギャル喰ひ 大阪テレクラ編」(1997/大蔵映画)を持つて来て呉れよといふ感も強い。それと林由美香特集は、十一月第一週にももう一本引き続くらしい。この中では、新作の「闇のまにまに」は勿論として、女池充の一般公開時題「ビタースイート」を観た覚えがないか、あるいは完全に忘れてゐる。一方この間の駅前ロマンのラインナップは、十月第三週が関根和美の「人妻援交サイト 欲望のまゝに」(2004)。「濃厚不倫 とられた女」とバッティングする第四週は、渡邊元嗣の「痴漢電車 巨乳をもみもみ」(2000)。確信犯的な無茶苦茶をいふが、これら二作を天秤にかけて「ビタースイート」を選ぶシネフィルよりは、俺は迷はずナベの痴漢電車に突つ込むピンクスでありたいし、現にさうあるつもりだ。さうなると先にも述べた事情につき、一週遠征を潰さねば、天神シネマには中々に足が遠いといふことにもなりかねない。贅沢な悩みともいへるものの、思案に苦しむところではある。そして最も肝心なことは、筆の根も乾かぬ内にといふ気もせぬでははないが、そんな贅沢な悩みも悩み続ける為には、蓋の開いた天神シネマに、何がどうあれなるたけ通ひ続けなくてはならないといふことである。断言する、既に散見もされようが、シネテリエ天神最期の日には、必ずかういふ輩が現れる「昔はよく通つたもんです、いやあ残念ですネ」。貴様が通ひ続けてゐれば、シネテリエは潰れなかつたのだ。「昔は良かつた」そんなことは、クズにでもいへるんだぜ


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 殺人的な今月の日程―三十日しかないのに、十八更新予定とか阿呆ぢやろ―に目の前が真つ暗になる中、藪から棒、あるいは寝耳に水に、驚天動地のニュースが飛び込んで来た。
 故郷といふ訳ではないが、私が現時点で生涯の最も長い期間を暮らす街、福岡県福岡市。旗艦たるべき故福岡オークラ劇場を三年前の六月末に喪つて以来、プロジェク太上映で通常は三本立ての内ピンクは一本きり―残りはVシネ―の駅前ロマンしかピンクの小屋を持たないといふ、切ない政令指定都市である。ところで、そんな当地の(旧姓)親不孝通りに存するミニシアターが十月中旬で休館、といふか要は事実上閉めて、何とそこが

 ピンクの小屋になるらしい。

 但し、矢張りプロジェク太上映の・・・・俺に死ねといふのか?
 とりあへずは、目下のスケジュールを消化するのに手一杯で、そこまで気が回らない。調べてみようといふ、余力も欠片もない。ひとまづは、様子を見たい。ほんでもどうせならさ、フィルム回して呉れんかいな?とも思ひつつ、それでも半歩とはいへ、福岡に限つた話ではなく事態あるいは状況の前進には違ひないと受け取りたい。


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 さて今回は本道のピンク映画の感想ではなく、プロジェク太上映の切ない小屋とはいへ、地元―故郷ではないが―福岡県福岡市に唯一残された牙城、駅前ロマンに関する雑記である。ここは元々は正式なエクセス系列館であつた筈なのだが、現在はナニがアレしてどういふ訳で、新東宝の新作・新版公開と、抜粋しながら順々に消化して来てゐるオーピー旧作が、現在は2004年次に絶賛突入してゐる。さういふピンクが通常は週替りの三本立ての内の一本で、残りはVシネが埋めてゐる。いふまでもなく新東宝の新作製作本数が激減してゐる昨今、番組のメインは、専らオーピー2004年作が占めてゐる。基本はオーピー旧作一本とVシネ二本、そこに新東宝の新作が絡んで来る週には、Vシネが一本になる。さう捉へて頂ければ概ね間違ひないが、稀にVシネ三本立ての週もある。勘弁して欲しい、さうなると流石に回避するが。
 そこでよく判らないのが、先に国沢実の旧作を観に行つた折に、八月の番組表が貼り出されてあつた。荒木太郎の「食堂のお姉さん 淫乱にじみ汁」や竹洞哲也のデビュー作がその中に含まれてゐるのはいいとして、九月に跨ぐ八月最終第五週が、何故か清水大敬の「人妻暴行 身悶える乳房」。・・・・・?これ、2001年の映画なんだけどな。ひとまづ清水大敬とはいへ一応さういふ心積もりで準備は整へておくが、以前にかういふ前科も仕出かしてゐる小屋なので、もう少し推移を見守りたいと思ふ。


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