例年通り、その内今年も終るだろ、といふ時期に差し掛かつて漸く、去年のピンク映画の私選ベスト・テンと、返す刀でワースト・ファイブとである。開き直るでもないが、仕方がないものは仕方がない。このタイム・ラグでないと、私が住む―生まれた訳ではない―県にまでは来ないのだ。ところで、全五十三本の新作ピンクの内、外したつもりは毛頭ないのだが、三月公開の「熟女と新人巨乳 したがる生保レディ」(監督:小川欽也/主演:友田真希)だけ何故か観てゐない。まさか前田有楽に来てはゐないのか、あるいは私が派手に仕出かしたか。唯一本観落としたからではなく、普通に猛烈に惜しい。
気を取り直して09年(昭和換算:79-5年)ピンク映画ベスト・テン
第一位「老人とラブドール 私が初潮になつた時…」(Xces/監督:友松直之)
サイバーパンク・ピンクの最高峰にして、プリミティブな恋愛映画の大傑作。頑強に積み重ねられた世界観の先に辿り着くのは、在り来りなメッセージ。但しその一言は、最大限の強度で観る者の胸を撃ち抜く。
第二位「絶倫・名器三段締め」(新東宝/監督・共同脚本:佐藤吏)
一見小品にも思へるが、その分全体的な統合力は磐石。クライマックスに於ける、原初的な特撮が火を噴く昇天ショットの威力は比類ない。
第三位「ハレンチ牝 ひわい変態覗き」(オーピー/脚本・監督:山邦紀)
狂ひ咲くファンタ、唸るロジック。らしさが轟く快作。
第四位「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
友松直之の第一位作「メイドロイド」に続く人造人間もの。前年には些か落ちるも、渡邊元嗣依然快調を堅持。
第五位「折檻調教 おもちやな私」(オーピー/監督:松原一郎)
オフ・ビートのエロ映画と思はせておいて、最後の最後に狙ひ澄まされたフィニッシュ・ブローが炸裂する鮮烈な一作。吉行由実と酒井あずさといふ2トップも勿論超攻撃的。
第六位「痴漢温泉 みだら湯覗き旅」(オーピー/監督:池島ゆたか)
時代にフィットした、南風薫る極楽温泉映画。濡れ場の打点も何れも高い。
第七位「OL空手乳悶 奥まで突き入れて」(オーピー/脚本・監督:国沢☆実)
射精が雄叫ぶポップ・チューン。二作に留まりながら、国沢実が復調。
第八位「誘惑教師 《秘》巨乳レッスン」(オーピー/監督:加藤義一)
ヒロインが終章タイトルを文字通りブレイク・スルーするショットの一点突破。
第九位「福まんの人妻 男を立たす法則」(Xces/監督:松岡邦彦)
松岡邦彦にしては若干弱い。
第十位「獣の交はり 天使とやる」(国映・新東宝/監督:いまおかしんじ)
濡れ場の力も借りた奇跡を、奇跡のまま終らせればいいのに。
順不同の次点は封切り順に、昨今渡邊元嗣が得意とする正攻法による大人の恋愛映画「夫婦夜話 さかり妻たちの欲求」(オーピー/監督:渡邊元嗣)・かすみ果穂×松浦祐也×AYA×倖田李梨の探偵4ショットが非常に魅力的な「人妻探偵 尻軽セックス事件簿」(オーピー/監督:竹洞哲也)・前半まではほぼ完璧だつた「よがり妻」(新東宝/監督:深町章)・濡れ場のクロスカウンターでドラマを牽引する様が素晴らしい「不倫旅行 恥悦ぬき昇天」(オーピー/脚本・監督:友松直之)、等々。
男優賞には、「わいせつ性楽園 をぢさまと私」(オーピー/監督:友松直之)・「ねつちり娘たち まん性白濁まみれ」の仕事も光る野上正義。新人賞はかすみ果穂以外にあり得ない。カンバック賞に、浜野佐知の「魔性しざかり痴女 ~熟肉のいざなひ~」で針生未知と名義を変へ五年ぶりにピンク帰還を果たした川瀬有希子と、ベスト・テン五位の松原一郎作にて、夫である関根和美に連れられ三年ぶりの銀幕復帰を果たした亜希いずみ。
五本も選ばなくていいやうな気がしないでもないワーストは
第一位「いくつになつてもやりたい不倫」(国映・新東宝/監督:坂本礼)
ヒロインが気違ひでないと成立しない闇雲な物語、且つだとしても、別に面白い訳ではない。
第二位「本番オーディション やられつぱなし」(新東宝/監督:佐藤吏)
終盤が自堕落極まりない。
第三位「痴漢電車 女が牝になる時」(Xces/監督・脚本:工藤雅典)
凡そ工藤雅典らしからぬへべれけさ。
第四位「アラフォー離婚妻 くはへて失神」(オーピー/脚本・監督:吉行由実)
そんな演技指導を施されなかつた主演女優にファックオフ。
第五位「ねつちり娘たち まん性白濁まみれ」(オーピー/監督・共同脚本:荒木太郎)
脚本家としての三上紗恵子と組むことを諦めない荒木太郎の、手詰まり感が甚だしい。
裏一位は、新版公開まで含めると依然圧倒的な小屋の番組占有率を誇らぬでもない、新田栄の最終作となつてしまふのか、「未亡人家政婦 -中出しの四十路-」(Xces/監督:新田栄)
綺麗な娯楽映画たり得てもゐたところが、卓袱台を床板ごと引つ繰り返してみせた。
裏二位は「熟女淫らに乱れて」(国映・新東宝/監督:鎮西尚一)
この時期に如何せん暗過ぎる、北風には吹かれ飽きた。綺麗に丸々切つてしまへる、純然たる濡れ場要員のピンで堂々とポスターを飾つてみせた太太しさは、逆に天晴。
第三位は「社宅妻 ねつとり不倫漬け」(オーピー/監督・脚本:小川隆史)
綺麗に空回つたデビュー作。
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