別に目出度くもなければリアクションの欠片も無いことは毎度のこととして、さうはいひつつ虚空を撃ち続ける無為も拗らせ、もとい積もらせてはサウザンド山。感想が実質千本を通過した気紛れな記念に、私的オールタイムのピンク映画ベストテンを選んでみた。正直なところ、浜野佐知や渡邊元嗣等々何れか一本、を固定するのに難い監督も多く、その限りに於いての十傑ではある。
第一位「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/大蔵映画/監督:関根和美/脚本:金泥駒=小松公典/主演:佐々木基子・町田政則)
くどいやうだがここは不動。今作よりも優れたものならば兎も角、素晴らしい映画を観た覚えがないのだから仕方がない。忘れてゐるだけなのかも知れないが、細かいことは気にするな。時に必要であるのだ、立脚点といふものは。
第二位「独身OL 欲しくて、濡れて」(2002/オーピー映画/監督・脚本・音楽:杉浦昭嘉/主演:木下美菜)
この時確かに、杉浦昭嘉は世界を相手に戦つた。
第三位「ド・有頂天ラブホテル 今夜も、満員御礼」(2006/Xces Film/監督:松岡邦彦/脚本:今西守)
聳え立つグランド・ホテル、王道娯楽映画の大傑作。
第四位「一度はしたい兄貴の嫁さん」(1997/Xces Film/監督:久万真路/脚本:金田敦/主演:彩乃まこと・臼井武史)
今岡信治と城定秀夫を足して二で、割る必要のない幻の俊英・久万真路超絶の処女作。
第五位「老人とラブドール 私が初潮になつた時…」(2009/Xces Film/監督:友松直之/脚本:大河原ちさと/主演:吉沢明歩・野上正義)
“SPP”サイバーパンク・ピンク前人未到の到達点。SPPなる特殊な領域に、どれだけの挑戦者が居るのかなどと問ふ無粋な輩は、黙つてレンタルでもいいから「メイドロイド」を借りて来ればよい、洗はれた心が全てだ。
第六位「美少女図鑑 汚された制服」(2004/オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/主演:吉沢明歩)
多分本当に日本一短いエールが滂沱の涙を決壊させる、青春ピンク必殺のマスターピース。
第七位「変態未亡人 喪服を乱して」(2003/オーピー映画/脚本・監督:山邦紀/主演:川瀬有希子・なかみつせいじ)
静謐なロマンティックと最大級の奇想とが火を噴く、ヤマザキ・オブ・ヤマザキともいふべき衝撃作。
第八位「髪結ひ未亡人 むさぼる快楽」(1999/新東宝映画/監督:川村真一/脚本:友松直之・大河原ちさと/脚本協力:森本邦郎/主演:野上正義・久保新二)
ガミさんと久保チンによる、ピンク映画版「真夜中のカーボーイ」。因みに坂本太の「マル秘性犯罪 女銀行員集団レイプ」(1999/Xces Film/主演:平沙織/裏主演:吉田祐健)は、ピンク版「ガルシアの首」。
第九位「美肌家政婦 指責め濡らして」(2004/オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:吉行由実/主演:麻田真夕・中村方隆)
美しく綴られる小屋への愛。平素あれだけ荒木太郎嫌ひの小生が褒めるのだ、真に受けて欲しい。
第十位「超いんらん やればやるほどいい気持ち」(2008/新東宝映画/監督:池島ゆたか/脚本:後藤大輔/主演:日高ゆりあ・牧村耕次)
空前絶後の一大正面戦、池島ゆたかが監督作百と一本目に撃ち抜いた超重量級のエモーション。
厳密にはピンクではない故の次点に、「妖女伝説セイレーンXXX 魔性の悦楽」(2010/新東宝映画/監督:芦塚慎太郎/脚本:港岳彦/主演:まりか・西本竜樹)
「セイレーン」シリーズなればこそ結実し得た壮絶な純愛映画、櫻井ゆうこが起動する後半の猛加速からが凄まじい。
流石にこれだけでは何だか物足りないので、戯れを重ねジャンル別ピンク映画のベストファイブ、大雑把にもほどがある。
第一位:浜野佐知の女性上位映画
敵陣の本丸ど真ん中、獅子奮迅の雄叫びならぬ雌叫びを終始一貫いまなほ上げ続ける女傑。作家性と商品性との結果的な両立といふ面に於いては、この人は大人になる前のティム・バートンとも互角以上に殴り合へるのではなからうか。
第二位:渡邊元嗣のファンタ映画
“無冠の帝王”ナベの全盛期はデビュー数年に止まる、ものでは決してない。近年の充実も著しく、目下断トツで面白い。
第三位:新田栄の温泉映画
微温湯の幸福感が最近妙に心地良くて仕方がない、これで案外、娯楽映画のひとつの境地ともいへまいか。あるいは、単なる小生の加齢ないしはより直截には経年劣化に伴なふ気の迷ひかも。
第四位:深町章の水上荘映画
兎にも角にも数が甚大、畢竟、当たり外れも馬鹿デカい。
第五位:小川欽也の伊豆映画
この期に辿り着いた緩やかな桃源郷、我々はもしかすると、ここで電車を降りるのか。
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