◉「しょせき」と「しょじゃく」

2018年1月10日
僕の寄り道――◉「しょせき」と「しょじゃく」

年が明けて三日間の老人ホーム訪問を終え、「正月三が日」という日記を書いて気が緩んだせいか、夫婦揃って風邪をひいてしまい、その後は老人ホーム訪問も取りやめ、枕を並べて臥せって過ごした。とうとう連休が終わって仕事始めになっても熱が下がらないので、新年の診察開始を待って近所の診療所に行った。

小さな待合室は大変な混雑で、ほとんどが風邪ひきのようだった。今年86になるという爺さんが、
「昔の医者は喉ちんこに赤チン塗ってはいおしまいだったが最近はそれをやらないから待たされる」
と文句を言うので笑った。1時間以上待たされて名前を呼ばれたので夫婦揃って診察室に入ったら、「二人揃って予防接種を受けにきて、二人揃って感染したか」と笑われた。

日が暮れる前に病人でも食べられそうなものを買いに出た。

早速昼から服薬を始めたら気分的に調子が出てきたので、妻を先に寝かせて1時間ほど漱石を読んで早めに就寝した。

   ***

書籍と書いて「しよじやく」とルビが振られたのを読んで、書籍に「しょじゃく」という呉音の読みがあるのをはじめて知った。

いまこうして iPhone でメモを取っていても「しょじゃく」と打って「書籍」と普通に変換されるので、自分が無知なだけで、書籍を「しょじゃく」と呉音で読む人も普通にいるのかもしれない。

朝鮮半島や中国南部から「伝わった」古い読み方である呉音を、のちの時代になって中国への留学僧が「持ち帰った」新しい読みに対して区別するため後付けされた名称が「呉音」であり、そういう名付けをレトロニム(再命名)という。再命名といえば「よだかの星」のひどい話をを思い出すけれど、昔ながらの読み方を「呉音」と再命名することには言語に対する差別の意図があったのだろう。

書籍と書いてわざわざ「しよじやく」とルビをふるには「しょせき」と読まれることへの抵抗が感じられて面白い。戒名を考える話が出てきたあたりなのでこだわりが強まっていたかもしれないし、落語のような語り口で知識ひけらかしの与太飛ばし競争をしたりという部分でもあるのだけれど、いかにも漱石らしいのではないかと猫を読んでいて思ったので寝る前にメモした。


コメント ( 0 ) | Trackback ( )
« ◉猫と「なるへ... ◉本を読む姿勢 »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。