「あなたも、ですよ」

2014年10月7日(火)
「あなたも、ですよ」

00
夕暮れの郵便ポストに文庫本、ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』清水徹訳が届いていた。

01
未明に目が覚めたので最初の一編をちょっと読んでみたらおもしろくて、傍線引きと書き込みをしながらもう一度読んでしまった。

02
なんでポール・ヴァレリーを読んでみる気になったかというと、中井久夫が若い頃、医者になるかヴァレリー研究者になるか迷ったという話を読んだからで、中井久夫が迷うほどなら読んでみたいと思ったのだ。

03
ムッシュー・テストはヴァレリーが作り出した自分自身の分身で、自分を二人の人間に分裂させて対話することによって、答えの出ない不可能な思索を可能にしている。

04
 “「ひとりの人間に何ができるか?…… ひとりの人間に何ができるかというんです!……」彼はわたしに言った、「自分が何を言っているのかわかってない、ということがわかっている人間!──そういう人間がひとり、あなたの知り合いなんだ!」 ” (ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』清水徹訳)

05
 “自分が何を言っているのかわかってない、ということがわかっている人間! ” という、人間が神のみぞ知るような究極の真実を突き詰めて考えるとき、必ずぶつかる矛盾が「私と分身」の関係によって乗り超えられているように読めてしまう。

06
 “彼は言いそえた。「照明があの連中をつかまえている」
わたしは笑いながら言った。「あなたも、でしょう?」
彼が答えた。「あなたも、ですよ」
(ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』清水徹訳)” 
うまい方法を考えたものだ。

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