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COLKID プチ日記
嗜好
2019年08月04日 / 靴
Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
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同じドレスシューズ好きの中でも、ヨーロッパ系とアメリカ系では、方向性にかなりの違いがある。
それぞれを好むオーナーのセンスや性格にまで違いがあるように思う。
欧州の靴を専門とする人から、アメリカ靴を徹底的に否定する意見を聞かされ、驚いたことがある。
僕自身は雑食系で両方好きであるが、中にはもう一方を受け入れられない人もいるようだ。
ヨーロッパの靴は、一部の例外を除いて、何よりも品質が価値の基準になっている。
もちろん他の国の靴もそれは同じなのだろうが、欧州の一流のものには洗練された品質感がある。
高級品は革の質がきめ細かく、ミシンの縫い目が揃っており、製品としてカッチリと作られている。
量産品の定規で線を引いたような無機質さではなく、長年技術を磨いた職人にしか作れない高度な品質感であるところが魅力である。
そしてそのクオリティによってブランドの序列もはっきりと決められている。
靴とはこうあるべきという明確な思想があり、履く者はそれを受け入れる必要がある。
一方アメリカの靴は、その品質を追い求める流れから逸脱しているところが、逆に魅力になっている。
もちろん米国人なりに品質の向上を目指しているのだろうが、そもそもの感覚のビット数自体に違いがあるように見える。
細部を見れば、ミシン目が乱れていたり、形が左右で不揃いであったり、接着剤がはみ出ていたり、染みがあったりする。
しかしそんなことは気にしない大らかさがあり、またそこが男らしいカッコよさに繋がっている。
一方で合理的で実用性が重視されており、柔らかい素材で履きやすく作られており、押しつけがましさが無いのも魅力である。
ただ自国生産のメーカーがオールデンやアレンなど数社に限られるのが残念なところではある。
同じ白人の作るものでこれだけ違いがあるところが興味深い。
それぞれの国の文化や歴史が、靴作りに滲み出ているのだ。
日本のように、技術をとことん突き詰める性格の国民が作ると、ヨーロッパ系の靴の方向を向きがちになる。
黙々と修行して技術を積み上げていき、クオリティコントロールを繰り返すことで、どんどん製品の完成度を高めていく。
むしろ日本人の方が米国人より欧州人に近い性格に見える。
この方向だと品質は向上するが、米国靴のようなアナログ的な製品は作れない。
欧州の靴には追いつけても、米国の靴の「荒っぽさ」の真似はどうしてもできない、という結果になる。
そのため逆にアメリカ靴が魅力的に見えるというのも皮肉な話ではある。
自分たちに無い部分に惹かれる人も多いという事だ。
僕自身は品質の高い物は素晴らしいと思うが、一方でそれを自分の生活に取り入れるのはあまり好まない。
自分自身がものを作る人間であるだけに、これだけの品質のものを作り上げる苦労を思うと、肩がこってしまうのだ。
どちらかと言うと、靴は荒っぽく使う事の出来る「優れた道具」である方が嬉しい。
僕は欧州製、米国製、どちらの靴も買うが、そのため普段好んで使うのはアメリカの靴の方が多い。
お店の人もそれを分かっているのか、僕にはアメリカ靴の方が合っている、と言われたことが過去に何度かある。
お客さんの性格がヨーロッパタイプとアメリカタイプに分かれることを靴店も分かっているのだ。
僕のように大雑把な人間は、見るからにアメリカタイプだと思われるのだろうが、案外その方が嬉しかったりもする(笑)
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