エクセル病


D810 + AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED

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インターネットの時代になり、ほとんどの情報がネットを通じて手に入るようになった。
重要な情報を入手して、さらには整理する能力が、一般の人にも要求されるようになった。
この能力に劣る人は、時代に取り残された哀れな情報弱者になってしまう。

ネットを使いこなしている(と自負する)人は、何かを購入する時には、まず最初にネットで検索して情報を仕入れるだろう。
メーカーや専門サイトが提供する欲しい商品の情報を探り、実際に使っている人の評価を読む。
そうして頭の中にデータベースを構築していくのだ。

商品のスペックを教えて欲しいというメールや電話が、時折一般の顧客からある。
この数値はいくつですか? と専門的なことを聞いてくる。
それを聞いてどうするのですか? と問いたくなるような内容だ。

最初は、同業他社かと警戒する。
妙に専門的なことを知りたがるからだ。
しかしよく聞いてみると、ごく普通の一般ユーザであることがわかってくる。

どうやら頭の中にエクセルの表のようなものが出来ているようだ。
表の片側には製品名、もう片側にはスペックの各項目が並んでいる。
要はその表の空欄部分を埋めたいのだ。
隙間無くデータを書き込み、表を完成させたい。

スペックから商品を採点し、最後の行に点数の合計が表示される・・そんなイメージだ。
一番得点の高い商品が、自動的にわかるしくみである。
さらに気の利いた人ならば、各項目が自分にとって重要なものであるか、優先度の得点表ともリンクさせているはずだ。

最高得点の商品を買えば、自分はもっとも正しい選択をしたことになる。
一見非常に合理的だし、自分自身の満足度も高いのだろう。
どれが一番気に入っているかではなく、どれが一番数値が上かで決めるのだ。

数値化して合計で比較する・・・極めてデジタル的な考え方と言えるだろう。
完璧にするには、アナログ的なあやふやな項目はなくし、すべて数値化してしまいたい。
もしかすると、これはある種の病気かもしれない。
エクセル病とでも言うべきか。

日本人は物の価値を判定する場合、数字の大小で判断する傾向が強いという。
現物が目の前にあっても、判定できないというのだ。
欧米人に比べ、どれが自分にとってベストのものであるか、判定する能力が劣っているのだろう。
数字であれば、どちらが大きいか、誰にでも一目でわかる。

実のところ、カタログ上のスペックは、あまり当てにはならない。
メーカーもそれを心得ていて、表記できる数値を上げようと考えるからだ。
別に嘘のデータを書いているわけではないが、都合のよい結果になるよう常に意識している。
時にはこれでは売れないからと、性能的に悪くなっても、見かけ上の数値の大きい方を選ぶ場合もあるかもしれない。

一般にカタログにはこう書かれているようですが、実際にはそう単純なものでもなく、裏にはこういう事情もあるんですよ・・・
そう実情を教えると、面白いことに、それがマイナス要因になることだとしても、ユーザーは喜ぶ場合が多い。
頭の中の表にとっては、条件が揺らいでしまうので、少なからず混乱要因になる。
しかし、誰も知らない情報を得られたことは、それはそれで、この世界では大きな勲章になるようだ。
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