COLKIDが日々の出来事を気軽に書き込む小さな日記です。
COLKID プチ日記
町並み
D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G
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ドイツから日本に帰ってくると、日本って本当にきれいな国だな・・と思う。
きれいというのは、単に掃除が行き届いている、という意味だ。
空港のロビーも、駅のホームも、とてもきれいに掃除されている。
海外は、もっと埃っぽくて、ベタベタしていて、何だか薄汚い。
でも町並みは、日本は本当に汚い。
何でこんな・・というくらい、建物に統一感が無い。
皆が好き勝手に建ててしまい、町に調和が完全に欠如している。
自分以外の世界は見えていない・・という感じ。
どうしてこうなの?とあちらの人から聞かれたら、何て答えたらいいだろう。
地震や災害で定期的に破壊されて、無秩序状態から作り直すからだろうか。
生きていくだけで精一杯・・という状況に、数十年に一度陥るのが、日本の定めなのだ。
もっともヨーロッパだって戦争で焼け野原になっている。
もしかすると本当の理由は、日本人に近眼の人が多いからかもしれない。
近くしか見えないから、生活空間全体を見渡した設計が出来ないのだ。
ハインリッヒ・ディンケラッカーのRio 3087-0518。
アッパーはフランス・デュプイ社製アニリンカーフのブラック。
ハンドソーンウエルテッド製法。
トリプルソール。
サイズは7。
ハインリッヒ・ディンケラッカー。
ドイツの靴といえば、これである。
無骨そのもの。
黒光りする威容は、ドイツのイメージそのものである。
ドイツに行ったらこの靴を探そう・・と思っていた。
ケルンには靴店が非常に多い。
しかしいざ探してみると、サンダルやスニーカーの販売店ばかりで、本格的な紳士靴を扱うお店はほとんどなかった。
考えてみれば日本でだって、このクラスの靴を扱う店は限られてくる。
ケルンのような地方都市で、ましてや下調べ無しでは、お店を探し出すのは相当難しいだろう。
仕事を終えてから、市内のメイン通りを歩いてみたが、まったくみつからなかった。
紳士靴を扱うお店はあっても、中級クラスのドイツの靴や、米国製のオールデンなどを置いている。
店舗が閉まる時間が近付き、諦めかけたその時、ふと入った路地で小さなブティックを見つけた。
角を曲がって繁華街から外れてみたら、目の前のショーウインドウに靴が並んでいた。
ジョン・ロブ、エドワード・グリーンと並んで、ハインリッヒ・ディンケラッカーも飾られている。
静かな店内に入ると、突然の東洋人の来訪に、怪訝な顔をした女性店員が出てきた。
棚にあるいくつかのディンケラッカーを見せてもらい、その中から黒いウイングチップを手に取った。
これを試着したいと告げた。
クロケットのブーツを履いていて良かった・・と思った。
僕の履いている靴を見て、靴が好きなお客と察したらしく、そこから先は快く対応してくれた。
お店で在庫している一番小さいサイズが7であった。
それでも緩めのフィッティングで、靴下が薄ければもう1サイズ下でもいいくらいだった。
だがこの大きさでも、まあ悪くは無い。
お金を払う段になり、お店のオーナーらしき別の女性から話しかけられた。
僕が真っ先にディンケラッカーを選び、迷うことなく購入したことに興味を持ったようだ。
日本ではこの靴は有名なのか?
それほどポピュラーではなく、まだあまり出回っていないと思うと答えた。
すると、最近東洋人でこの靴目当てに来店する人が多い・・と教えてくれた。
ハインリッヒ・ディンケラッカーは、1879年創業のドイツの靴メーカーである。
実際の製造は、ハンガリーのブタペストの工場で数十名の手縫い職人によって行われている。
実はブタペストは靴作りでは有名で、古靴の世界でも、ブタペスターという名称がよく使われる。
代表的モデルでもあるRioは、分厚いトリプルソールの迫力ある外観を持つ。
うち2枚は手縫いで縫い合わされ、一番下の1枚は接着され釘で固定されている。
恐らく修理の際の作業のしやすさを考えてのことだろう。
引っくり返すと、ご覧のように固定用の釘の多さと、つま先の金属プレートに驚かされる。
このモデルは、60年前から作られているという。
注目すべきは、この無骨なデザインが、合理的な理由を積み重ねた結果、出来上がったものであることだ。
足を入れてみると、意外にもストレス無くスッと入る。
オブリックラスト系の靴で、親指側は真っ直ぐ、小指側がカーブを描くという、足の輪郭をなぞったような形状になっている。
角ばったトウ部分も、足の厚みを無理なく受け入れるためのものだ。
分厚いトリプルソールも、あくまで履いた時の感触の良さを追求した結果の採用である。
インソールにはコルクではなく、あえてウレタンが使われているそうで、それも履き心地を重視してのことだという。
その結果、よく言われる「絨毯の上を歩くような履き心地」が得られているのだ。
まさに合理主義の塊である。
ヒールは意外に小さめで、踵が上手く固定される。
それでいて前述の余裕ある形状ゆえ、指周りは自由で快適である。
装甲車のような外観と分厚いソールから、硬い履き心地を想像していると、いい意味で裏切られる。
しかもこの無骨さが、かえって現代のファッションに上手く合うのが、この靴の面白いところであろう。
おろす前に、何故か何度も眺めてしまう。
見ているだけで嬉しくなるのだ。
そういう強烈なオーラを放つ靴である。
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