裏側


D800E + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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アメリカに早撃ちの天才と言われたセル・リードという人がいる。
子供の頃から、次から次に新記録をマークするので、マーク・リードとも呼ばれた。
いまだに早撃ちの世界では神様のような存在である。

そのリードは、アンディ・アンダーソンが作ったガンファイターリグ(ガンベルトのこと)を愛用していた。
そのリグの裏側には、表と同じように、革のスムースな面が張られている。
別にリードのリグでなくとも、一般にガンベルトの裏側には、表と同じ材質か、あるいは少し質を落としたスムースレザーが使われる場合が多い。
これは通常のズボンベルトでもそうであろう。

裏側に、スエードのような起毛処理を施した素材を使用したベルトもある。
ものとしての見栄えは悪くなく、実際僕もそういうベルトをいくつか持っている。
しかし実際に使ってみると、意外に使いづらいことがわかる。
スエード表面の摩擦抵抗でベルトが引っかかり、体にくっつくような不快感があるのだ。

裏側がスムースレザーだと、体との接触面が滑る。
その方が感触としてはよく、ズボンベルトのバックルを留める時には、キュッとスムースに締まってくれる。
ガンベルトの場合も、体との間で適当に滑ってくれることで、結果的に腰の一定の位置にベルトが納まるのだ。

リードも、この適度に滑る感触を好んだようだ。
神業のような早撃ちをする人なので、当然リグの位置決めは極めてシビアであろう。
その人がこのようなアバウトさを好むのだとしたら、非常に興味深いことである。

曖昧さというのは、意外に重要である。
なぜこんなことを書いたかというと、今までに靴擦れを起こした靴を見ると、すべて肌との接触面は革のラフアウト、つまり裏側を使っているのだ。
トリッカーズのモンキーブーツも、ジャラン・スリウァヤのロングウイングチップもそうだ。
もちろんサイズがマッチしていないことが、まず第一の理由ではあるのだが、そのラフな表面と摺れて肌が痛めつけられることで、靴擦れが発生している。

本来滑りを止めたくて、そういう仕上げにしたのだろう。
しかし中途半端に固定しようとして、結局また靴連れを起こしてしまう。
個人的には、靴の踵部分のように、完全にフィットさせることが難しく、どうしても摺れが発生する箇所は、むしろスムースレザーなどで程々に滑らせたほうがいいような気がしている。
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