アブラゼミ


D2X + Ai AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D

大きな画像

工場の庭を歩いていたら、今年はアブラゼミの抜け殻がやたらに多いことに気付いた。
樹上はもちろん、低い草の裏側や大き目の石の表面、コンクリートの壁・・・地面とつながっているあらゆる場所に、抜け殻がくっついている。
中にはいくつもの抜け殻が、覆いかぶさっているものもある。
どうやらアブラゼミも当たり年らしい。

幼虫の時に地中で数年間過ごす筈だから、周期的に多く発生するのかもしれない。
アブラゼミが何年間地中で生活するのか調べてみたら、どうやら正確にはわかっていないようだ。
7年と書かれた文献が多いようだが、それは間違いらしく、平均5年程度で、環境によって1、2年ずれる・・という説が有力らしい。

樹木に産卵し、そのまま越冬して翌年孵化、地面に下りて地中にもぐり、数年後再び出てきて羽化する。
卵から成虫になるのに、全部で5年ほどかかるということだ。
成虫になった後は、1月ほどで死んでしまう。
一生で一番長いのは幼虫の期間だが、その間ずっと暗い土の中で生活し、根から樹液を吸って生きている。

あの見るからにアブラゼミ・・という風貌も面白い。
ジリジリという、油で炒めるような泣き声から付けられた名前だという。
考えてみれば、羽が不透明で、しかもあんなに強い色をしたセミは他にいない。
普段見慣れているから驚かないが、存在としては珍しい生物かもしれない。

郊外にある工場にはアブラゼミがいっぱいいて、桜の木の下に行くとジジッ・・と鳴いて何匹も逃げていく。
東京の中心では、むしろアブラゼミは少なくて、ミンミンゼミの方が多い。
丸の内のビル街で、突然ミーンミンミン・・という鳴き声が、街路樹から聞こえてくることも珍しくない。

アブラゼミは、場所によって数が減少しているそうだが、その原因も諸説あるようだ。
乾燥に弱く、湿った土を好むため、都市部に住みにくくなっている・・という調査結果があるが、その条件に必ずしも合致しない地域もあるという。
地域によって習性が違うという、捉えどころの無いセミである。
東京の中心部では、かつては大量にいたアブラゼミであるが、急激に見なくなったから、気候の変動も関係しているかもしれない。
しかし、何か他に未知の原因があるような気もする。

Wikipediaによると、野鳥捕食説という面白い説もあるようだ。
アブラゼミは野鳥に襲われた際に、周辺の樹木に隠れようとする習性があり、隠れ場所の少ない都市部では捕食されやすくなるのだそうだ。
一方どこまでも飛んで逃げていくクマゼミの場合は、逆に開けている都市部で有利になり、その結果、地域によってはアブラゼミからクマゼミに入れ替わったというのだ。
実際、天敵である野鳥による捕食率は非常に高く、ほとんどのアブラゼミは野鳥の餌になる運命にあるという。

これだけ身近な生き物でありながら、生態に謎の部分が多いというのが面白い。
地中にもぐってしまうから、研究が難しいのは確かなのだろうが・・・
グロテスクな外観のせいか、秋が近付き死にかけたアブラゼミが、足元で逆さになっていても、気にもかけない。
しかしこうして調べてみると、どこか哀愁を感じさせる生き物である。
コメント ( 13 ) | Trackback ( 0 )