長い一年


NIKON 1 V1 + 1 NIKKOR 10mm f/2.8

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いい天気であった。
午前中は会社に出て仕事をした。
午後は仕事を抜け出して、家族と待ち合わせて墓参りに行った。
父親の命日が近いのだ。
近所の花屋さんにお願いして、いつものお花を作ってもらった。



昨年のことが思い出される。
父の七回忌を予定していたのだが、その二日前にあの震災が起きた。
世の中が騒然としており、どうするか悩んだが、こういう時だからこそちゃんとやろうという事になった。

お寺に電話したら、予定通りで問題ありませんとの返事。
会食を予約していた銀座の日本料理のお店に電話したら、やはり営業しているのでどうぞという話であった。
そちらはさすがにキャンセルのお客が相次いだようだ。

大き目の余震が、何度と無く発生していた。
しかしみな僕の父親のことを思い、七回忌に集まってくれた。
大きく揺れた時は、思わず天井を見上げることもあったが、不安を口にするような人はいなかった。

散会してから、僕は一人で銀座の時計店に行った。
そこで30代の女性の店員さんに、最新型のオメガを見せてもらった。
説明の最中に余震が発生して、ショーケースの上に置いたオメガが左右に動いた。
しかしその女性は、そのまま表情を崩さずに、手で時計を押さえながら説明を続けた。
凄いプロ根性だなと思った。

少なくとも僕の周りの人たちは、慌てふためくような人はいなかった。
誰もが否応無く死を覚悟せざるを得ない状況に立たされたが、堂々と向き合っていた。
日本人というのは、なかなか強いな・・と感じた。
もっと情けなく騒ぎ立てる人が出ると思ったのだ。
しかし若者を含めて、むしろ人間としての強さを見た思いだった。

あれから一年経とうとしている。
日本はこの一年で大きく変わってしまった。
長い一年であったように思う。

今日はあの日と同じように、タクシーで銀座に出て、加賀屋で食事をした。
下は金沢の名物である鴨の治部煮だ。
とろりと濃厚でとても美味しい。
美味しいと感じることの幸せをかみしめた。

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