来日間近のオバマ大統領が、一つのハードルを越えた。賛成220に対し反対215と小差ながら、米下院で医療保険制度改革の関連法案が可決される。民主党からも造反が出る状況で、企業の飼い犬が揃う上院での審議は予断を許さないが、<資本主義独裁国>が世界と良識を共有することを願ってやまない。
さて、本題。「日めくりタイムトラベル」(7日/NHK衛星2)で、俺が生まれた1956年が特集されていた。ネタに困った時の〝プレイバックシリーズ〟を1年9カ月ぶりに復活させるが、もちろん俺に当時の記憶はない。
「日めくり――」最初の特集が石原兄弟で、兄慎太郎の芥川賞受賞をめぐる文壇大御所たちの闘論を、半藤一利氏(当時文芸春秋編集部)が証言していた。自らの受賞に強硬に反対した佐藤春夫について、「谷崎潤一郎と妻を交換した人に公序良俗を問う資格はない」と語った石原都知事だが、当時PTAから蛇蝎のように嫌われた当人も、今やすっかり豹変している。スパルタ教育を称揚し、都教育委員会の思想統制をバックアップするなど、〝不良の面影〟はどこにもない。
「日めくり――」第2の特集は黒田福美による水俣病のリポートで、患者たちの深刻な病状を伝える映像は、世紀を越えても胸に迫ってくる。水俣は水銀を垂れ流したチッソの城下町だったため、住民の間に自己規制が働き、告発の動きは鈍かったという。それどころか、患者を抱える家族は差別され、村八分状態になる。<大企業=政府=司法=霞が関=マスコミ>がタッグを組み、誰が見ても明らかな原因究明が遅れる。水俣病が公害病と認定されたのは、最初の被害報告から12年後だった。
当時も鳩山首相だった。由紀夫&邦夫兄弟も言葉が軽いきらいはあるが、祖父一郎氏も失言癖があり、自衛隊、憲法関連の発言で物議を醸していた。現在も普天間基地問題を抱えているが、立川基地拡張を画策する日米両国に対し、大規模な抗議運動が展開される(砂川闘争)。流血の闘いに、国民の反戦への強い思いが窺えた。
<よりよい生活をこぞって求めると、最低限の生存権を脅かすことに繋がる。1956年は繁栄と同時に廃墟の時代の始まりでもあった>……。天野祐吉氏の締めの言葉は的を射ていた。以下は番組を離れ、気になったニュースを「昭和史全記録j(毎日新聞社)などから拾ってみたい。
売春防止法が成立したのはこの年の5月だが、国会審議中の吉原を描いた「赤線地帯」が溝口健二監督の遺作になった。ヤクザ映画の最高峰「仁義の墓場」(75年、深作欣二)で渡哲也が演じた石川力夫が府中刑務所屋上から飛び降りたのは、この年の2月である。独房に記した遺書を、「大笑い 三十年の バカ騒ぎ」と印象的な言葉で結んでいる。
スターリン批判⇒トロツキー復権で中ソ間に軋轢が生じる一方、ポーランドとハンガリーで自由を求める反乱が起きた。82人の革命派を乗せたグランマ号がキューバに上陸したのはこの年の12月だったが、政府軍の空襲を受け、生き残ったのは18人だった。もちろんその中に、カストロとゲバラがいた。
エルビス・プレスリー登場もこの年だ。エルビスはジョン・レノンの監視をFBIに進言したほどの保守派だったが、無意識のうちに変化の一翼を担ったと思う。ハンサムな白人の青年が身をもって示したのは、<黒人のように歌い、踊ることは格好いい>である。エルビスは感性の側面で公民権運動を支えたのではないか。
俺なりに1956年を表すと<胎動の時代>となる。変化の兆しが芽吹き、やがて大きなうねりになった。2009年よりエキサイティングだったことは間違いない。
さて、本題。「日めくりタイムトラベル」(7日/NHK衛星2)で、俺が生まれた1956年が特集されていた。ネタに困った時の〝プレイバックシリーズ〟を1年9カ月ぶりに復活させるが、もちろん俺に当時の記憶はない。
「日めくり――」最初の特集が石原兄弟で、兄慎太郎の芥川賞受賞をめぐる文壇大御所たちの闘論を、半藤一利氏(当時文芸春秋編集部)が証言していた。自らの受賞に強硬に反対した佐藤春夫について、「谷崎潤一郎と妻を交換した人に公序良俗を問う資格はない」と語った石原都知事だが、当時PTAから蛇蝎のように嫌われた当人も、今やすっかり豹変している。スパルタ教育を称揚し、都教育委員会の思想統制をバックアップするなど、〝不良の面影〟はどこにもない。
「日めくり――」第2の特集は黒田福美による水俣病のリポートで、患者たちの深刻な病状を伝える映像は、世紀を越えても胸に迫ってくる。水俣は水銀を垂れ流したチッソの城下町だったため、住民の間に自己規制が働き、告発の動きは鈍かったという。それどころか、患者を抱える家族は差別され、村八分状態になる。<大企業=政府=司法=霞が関=マスコミ>がタッグを組み、誰が見ても明らかな原因究明が遅れる。水俣病が公害病と認定されたのは、最初の被害報告から12年後だった。
当時も鳩山首相だった。由紀夫&邦夫兄弟も言葉が軽いきらいはあるが、祖父一郎氏も失言癖があり、自衛隊、憲法関連の発言で物議を醸していた。現在も普天間基地問題を抱えているが、立川基地拡張を画策する日米両国に対し、大規模な抗議運動が展開される(砂川闘争)。流血の闘いに、国民の反戦への強い思いが窺えた。
<よりよい生活をこぞって求めると、最低限の生存権を脅かすことに繋がる。1956年は繁栄と同時に廃墟の時代の始まりでもあった>……。天野祐吉氏の締めの言葉は的を射ていた。以下は番組を離れ、気になったニュースを「昭和史全記録j(毎日新聞社)などから拾ってみたい。
売春防止法が成立したのはこの年の5月だが、国会審議中の吉原を描いた「赤線地帯」が溝口健二監督の遺作になった。ヤクザ映画の最高峰「仁義の墓場」(75年、深作欣二)で渡哲也が演じた石川力夫が府中刑務所屋上から飛び降りたのは、この年の2月である。独房に記した遺書を、「大笑い 三十年の バカ騒ぎ」と印象的な言葉で結んでいる。
スターリン批判⇒トロツキー復権で中ソ間に軋轢が生じる一方、ポーランドとハンガリーで自由を求める反乱が起きた。82人の革命派を乗せたグランマ号がキューバに上陸したのはこの年の12月だったが、政府軍の空襲を受け、生き残ったのは18人だった。もちろんその中に、カストロとゲバラがいた。
エルビス・プレスリー登場もこの年だ。エルビスはジョン・レノンの監視をFBIに進言したほどの保守派だったが、無意識のうちに変化の一翼を担ったと思う。ハンサムな白人の青年が身をもって示したのは、<黒人のように歌い、踊ることは格好いい>である。エルビスは感性の側面で公民権運動を支えたのではないか。
俺なりに1956年を表すと<胎動の時代>となる。変化の兆しが芽吹き、やがて大きなうねりになった。2009年よりエキサイティングだったことは間違いない。
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