酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

フランス大統領選に思うこと

2007-04-24 00:45:27 | 社会、政治
 22日、日本では統一地方選、フランスでは大統領選の投開票が行われた。彼我の政治風土の違いをカレー屋に喩えると、「日本店」は甘口と辛口だけ、大甘から激辛まで10種類以上のメニューを揃えたのが「フランス店」だ。

 フランス大統領選は84・6%という驚異的な投票率で、サルコジとロワイヤルが決選投票(5月6日)に進出した。サルコジはアメリカ型新自由主義の導入を主張し、35時間労働と終身雇用の見直しを訴えた。一方のロワイヤルは、福祉重視と若者の雇用拡大を唱えている。サルコジは経済を、ロワイヤル候補は精神を物差しに、<豊かさの形>を示していた。

 得票順に各党派の主張を日本に当てはめ、党首を想定してみる。

 ①サルコジ前内相(国民運動連合)31・1%=自民の大半と民主右派。安倍晋三党首
 ②ロワイヤル元環境相(社会党)25・8%=社民と民主左派。福島瑞穂党首
 ③バイル元教育相(民主連合)18・6%=自民左派と民主中間派。加藤紘一党首
 ④ルペン党首(国民戦線)10・5%=自民右派。石原慎太郎党首
  
 日本で首相公選制が導入されたら、石原氏が当選する可能性が高い。想像しただけで背筋が凍る。

 極右の国民戦線ばかり話題になるが、フランスでは新左翼(トロキズム)が浸透し、共産党を超える票を獲得している。伝統を重んじる保守派、環境派、農民運動家など候補者は多士済々で、有権者は思想信条のまま一票を投じることができるのだ。
 
 フランスの出生率は2・0を超え、欧州一の水準となる(06年度統計)。ワークシェアリング、学費無料(幼稚園から高校まで)、給付金制度(子供が20歳になるまで)と手厚い政策が奏功した。少子化に悩む日本にとってモデルケースになるかもしれない。

 フランスでは移民問題が深刻化しているが、長いスパンで考えれば国力維持にプラスに働くはずだ。サルコジも移民の一族出身で、父からハンガリー人、母からギリシャ系ユダヤ人の血を引いている。佐高信氏と姜尚中氏の対談集「日本論」で、姜氏はペンタゴンの文書を紹介していた。即ち<外国人労働者を受け入れない日本は少子高齢化が進み、人口は逓減する。必然的に国力は衰退していくだろう>(概略)。

 ペンタゴンの指摘を待つまでもなく、半世紀後の日本は対策を講じない限り、「美しい国」どころか「滅びゆく国」になる。少子化対策と並行し、移民の是非も俎上に載せるべきだ。

 日本では1990年以降、<社会主義は時代遅れ>の号令の下、保守2党化に進んだが、英独仏などアメリカを除く先進国では社民が主流の位置を占めている。格差是正と福祉充実が火急の課題になった今、労働者や市民の側に立つ受け皿党が存在しないのは、「滑稽な悲劇」といえるだろう。

 統一地方選は痛み分けに終わった。政権交代を叫ぶ民主党には官僚出身議員が多く、憲法改正論者が大半だ。自民党と民主党は「唐揚げ」と「竜田揚げ」の違いしかない。サルコジとロワイヤルが対照的なビジョンを掲げて激突するフランスが、羨ましく思えてならない。

コメント (4)
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