<958> 若 葉 雨
大和路は 若葉に慈雨の 日なりけり
穀雨の季節。久しぶりに雨となる。花は散れども若葉は萌える。そんな季節的移ろいが感じられるころ。雨には慈雨の趣が感じられ、やさしい雨に見える。四季の国である「我が国ほどいろんな雨が降る国はない」と、以前、別のブログ「大和花手帖」で触れたことがあるが、この時期に降る雨はそのいろんな雨の中の一つにあげられる。
穀雨とはよく言ったもので、生の息吹を思わせる。稲作による農耕民族であるところから来た言葉であるのが感じられる。この時期に種籾を撒く。その籾には一雨が欲しい。穀雨にはその願いの意が込められているように思われる。別の言葉で言えば、春雨という呼び方がある。どちらもやさしさの滲むこの時期の雨の呼び方であるが、濡れてもよかろう気分は都会的で、同じ雨でも、降る場所の違い、こちらの雨の方が何か粋なところが感じられるから不思議である。
今日の雨は少ししか降らず、お湿り程度ではあったが、草木の萌え出る季節の雨であれば、猛暑のころの雨と違って、お湿り程度でも効用のある雨で、その感覚で見ることが出来る。まさしく、生命の息吹にふさわしい雨であり、濡れることも厭わない雨のやさしさが見られる雨ではある。
で、私には若葉に降る雨の今日の雨で、「若葉雨」の言葉が浮んで来た。二十四節気の「穀雨」は四月二十である。節気は巡り、次は五月初旬の立夏である。この時期の雨と言えば、次の歌が脳裡に浮んで来る。 写真は雨と雨に濡れて瑞々しいバラの若葉。
くれなゐの二尺のびたる薔薇の芽の針やはらかに春雨の降る 正岡子規