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日常に極端なことを入れよう

日常に極端なことを入れよう

 極端なことをしないと、納得がいかないみたいです。毎朝8時に駅前スタバとか。何しろ、午前中がおかしい。どうにかしないと

4.1「民主主義」

 4.1「民主主義」。出発点を全体主義にします。ここから、私の歴史への関心が生まれた。なぜ、全体を支配できたのか。なぜ、市民は沈黙したのか。全体主義は民主主義の欠陥を補ったもので合法的だったこと。だから、民主主義です。民主主義は人民の表に立つ。そのために共有意識とつながることが必要です。

いかにして統合するか

 アラブの春で共和制の破壊はできたけど、新しい形の民主義ができなかった。何が足りなかったのか。欲しかったのは統合のシナリオです。そこで、自由と平等を取り上げた。民主主義は自由と平等で目指したが、自由が全面に立った。平等は格差になった。国を作ったのは、自由と平等です。

共産主義の狙い

 平等を徹底的に考えたのは共産主義です。それは、民衆のレベルが追いついていなかったために、一点集中というハイアラキーのために今のようなカタチになってしまった。革命が目的になってしまった。革命後の維持は集中型になったために、人は虐げられた。中国のように、単に昔よりはよいというカタチで存在しています。

 一つ一つがシナリオです。一度、崩さないといけない。最初は歴史へのとっかかりと言うことで、全体主義から入ります。

戦間期から入った

 実際に、歴史への認識を始めたのは、戦間期です。なぜ、ああなってしまったのか。私が生まれてくる前の歴史です。

4.2「国民国家」

 4.2「国民国家」。国民国家の意味合いとしては、民主主義がなぜ、限界に来ているのか、なぜ作られたのか。一番大きいのは国家です。自由を保障するために国家を作ったはずです。共和制を経て、国民国家になった。市民が主役になったはずです。

 その結果として、世界大戦を起こしてしまった。そして、大きな変化が襲っています。グローバル化と多様化。これに民主主義が耐えられるかどうか。グローバル化は平等を脅かしています。格差は拡大する一方です。

 多様化は国として一つであることの限界を向かえた。小さくするしかない。小さくして、バラバラにすることは決していいことではない。どうして、統合感を持たせるのか。

4.3「歴史認識」

 4.3「歴史認識」。歴史認識は歴史を流れとしてみたときの課題を全て挙げておきます。だから、ボリュームが大きすぎる。これだけもいいし、一つのジャンルになります。
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ウンマ(イスラム共同体)の掟

『「宗教」で読み解く世界史の謎』より なぜ商人であったムハンマドがイスラム教をひらいたのか?

布教の始まり

 アラー(神)の教えを記すクルアーン(コーラン)は、「声に出して読むことによって身に付けるべき戒律」である。アラビア語の「クルアーン」は、「読誦すべきもの」という意味の言葉である。

 ゆえに現代でも、イスラム教徒はどこの国の者でもクルアーン(コーラン)をアラビア語で声に出して読み上げなければならないとされる。クルアーン(コーラン)は脚韻(詩歌の句の終わりを同じ音にそろえること)を踏んだ美しい韻文の形式をとっており、アラビア語の意味がわからない者でも、その美しい響きに感動する。

 だから日本語などの他の言語に訳されたものは、クルアーン(コーラン)でなく「クルアーンの解説書」として扱われる。またアラビア語のクルアーン(コーラン)であっても、文章にしたものを黙読してしまうと、クルアーン(コーラン)の良さが伝わらないという。

 クルアーン(コーラン)とは、天使ジブリールを介して預言者ムハンマドに授けられたアラー(神)の教えだとされる。これは本来、ムハンマドから弟子たちに、口頭で伝え暗誦させるべきものと考えられた。

 しかしイスラム教の信者が拡大したために、第三代カリフのウスマーンの時代に現在みられるような文字になったクルアーン(コーラン)がつくられた。クルアーン(コーラン)は一一四章から成り、その章の中には二八六節の長いものから、三節の短いものまである。

 メッカに戻ったムハンマドは、毎日クルアーン(コーラン)を誦み上げ、少しも違うことなくそこに記された教えを実行した。質素で慎み深い生活をおくり、あれこれ周囲の人を助けた。これを見たムハンマドの妻ハディージャは、「私の夫は大そう偉い方だ」と感じた。

 彼女も夫を見習ってともにクルアーンを誦え、その教えに従う生活を始めた。ムハンマドが、

  「このアラー(神)の教えを広めたいが、メッカの有力者に反感をもたれるのが怖い」

 と妻に相談したとき、賢いハディージャはこう言って夫を励ました。

  「教えを実行するようになってから、あなたは前より健康で、人々から好かれるようになりました。このような立派な教えは、私たちが独占すべきものではありません。広く人々に伝えて、役立てるべき教えです」

 それでもムハンマドは用心して、四年間は気心の知れた知人だけにアラー(神)の教えを語った。その間にムハンマドの親友で商人仲間のアブー・バクルや従弟のアリーをはじめとする五〇人ほどの者が、イスラム教の信者になった。

 ムハンマドの教えが、ユダヤ教の健康法などの科学知識や社会的規範を取り入れた有益なものだったからである。ようやく、

  「アラー(神)の教えに触れた者の大部分は、アラー(神)を信仰するようになる」という確信を得たムハンマドは、六一四年になってようやくメッカでの本格的な布教を開始した。

 ムハンマドはかれが属したクライシュ族の名門、マフズーム家の青年アルカムが提供してくれた邸宅を拠点に、メッカで布教を始めた。ムハンマドは三九名の弟子をこの邸宅に集めてともにアラー(神)の神を礼拝したのちに、アラー(神)の戒律をていねいに説いた。

 メッカの有力者たちからみればそれは、メッカにいくつもある多神教の信者の集団の一つのように最初はみえた。

 このあとムハンマドのもとに、三十代半ばに満たない若者で上流の下といった階層の者が続々と集まってきた。

 特に有力な家の出ではないが中流の人々より有力な向上心の強いかれらは、ムハンマドから得た生活に役立つ情報を自分の仕事に活かして、地位を上げたいと考えたのだ。

ムハンマド、メディナに遷る

 クライシュ族の族長に疎んじられたムハンマドは、メッカから六〇キロメートルほど東方にあるターイフという小さな町に活動の場を移した。しかしかれはターイフからも追われ、新たな保護者を探してメッカに戻らねばならなかった。

 しかしクライシュ族を敵に回したかれが大っぴらに布教することはできない。このあと傷心のムハンマドのところに、思いもよらぬ助けがきた。六二一年にメッカの北方約四〇〇キロメートルの位置にあるヤスリブ(メディナ)の町から、「ムハンマドを招きたい」という使者が来たのだ。

 ムハンマドとかれの弟子たちは、翌六二二年に、クライシュ族に見つからぬように秘かにヤスリブに移住した。これが、イスラム教の急速な発展のきっかけとなった。

 イスラム教徒は、「ムハンマドのメディナ(ヤスリブ)への移住」を「ヒジュラ(聖遷)」と呼び、ヒジュラが行なわれた年をイスラム暦の元年としている。ヤスリブはオアシスを中心に開けた土地で、住民は主に農業を営んでいた。

 そこの居住者の約半分がアラブ人、残りがユダヤ人であり、ヤスリブのアラブ人はアウス族とハズラジュ族の二大部族に分かれて対抗し合っていた。ヤスリブのアラブ人は、名高いムハンマドが中立の立場でこの争いの調停者となることを期待したのである。

ウンマ(イスラム共同体)の掟

 ムハンマドを迎えたアウス族とハズラジュ族は、そろってアラー(神)の信者になった。このときヤスリブの地名は、メディナと改められた。

 ムハンマドはこのメディナで部族社会を解体し、それに代わってすべてのアラー(神)の信者から成るウンマ(イスラム共同体)を結成するという思い切った改革を行なった。

 イスラム教の「イスラム」とは、「アラー(神)にすべてを委ねて生きること」を意味する言葉である。アラビア語では、その言葉は「イスラーム」と発音される。アラビア語で「ムスリム」の言葉は「アラー(神)に帰依する人」を意味している。「絶対者としてのアラー(神)を信仰して互いに助け合う者」の集団を表わす「イスラム教徒」という概念は、イスラム共同体(ウンマ)結成のときに初めてつくられたと評価できる。

 ムハンマドの指導によって、イスラム共同体の「メディナ憲章」という取り決めがなされた。そこには、次のような規定が定められていた。

  「異教徒からの攻撃があれば、イスラム教徒は互いに助け合って戦う」

  「部族間の争いは、話し合いをひらいて身代金によって解決する」

  「イスラム共同体に従った異教徒には保護を与え、イスラム教徒と平等な商売上の保証をする」

 このメディナ憲章の主旨に従って、ムハンマドは、宗教面での指導権と行政、司法、外交などの最高の決定権をあわせもつウンマ(イスラム共同体)の長とされたのである。

 このようなムハンマドの地位は、歴代のカリフに受けつがれていった。

無血で従えたメッカ

 ムハンマドと同時代に、ローマ帝国の流れをひくビザンツ帝国(東ローマ帝国)やササン朝ペルシアなどの大国があった。これらの国には、武力を用いて強大な権力を握り、思いのままに贅沢をした君主が多くいた。ムハンマドの行動をかれらと比べてみると、比較的質素に過ごしたムハンマドが権力欲を満たすためだけに戦ったのではないことがわかってくる。

 ムハンマドは何度も危機にみまわれながらも、「アラブに平和な世界をつくる」夢のために頑張り抜いた。しかしその平和は、「平和のための戦い」でしか得られないものであった。

  「一つの信仰のもとにアラブがまとまれば、部族間の争いはなくなる」

 このような考えを受け入れる動きは、ムハンマドの時代のアラブ社会の側にも確かにあった。

 しかも豊かな草原が乾燥地になっていったあと、多神教の神々に対する信頼は後退していた。

 さらにアラブの人々は、中近東の各地にみられるユダヤ人が、一神教のもとで争いの少ない安定した社会をつくっているのを見てきた。しかしアラブ人にはアラブ人としての誇りがあり、民族の違うかれらに、

  「ユダヤ教に入信させてください」

 と頼むわけにはいかない。そういったときに、ムハンマドが「アラブ人のための一神教」を起こし、さまざまな立場の者の共存を目指す規則や日常生活に役立つ知識を広めたのだ。

 部族間の対立を超えて団結したメディナの人々はムハンマドの理想に動かされる形で、同一の信仰で結ばれた軍勢を組織してアラブ世界の統一に乗り出した。六二四年にメディナの軍勢は手始めに、メッカのクライシュ族の武装した隊商を襲って勝利した。
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アマゾンと配送

『アマゾンと物流大戦争』より 物流のターニングポイント--ネット通販と宅配便の異変

アマゾンが秘密にする物流センター

 米国サンフランシスコ、バークレーには、現時点(2016年8月時点)でアマゾンがまだ公には存在を表に出していない秘密のフルフィルメント(物流)センターがあります。

 2016年2月下旬に私が訪れた際、看板にはガムテープが貼られていましたが、裏にはしっかりと「Amazon」の文字が書かれていました。これはアマゾンがその存在を秘密にしているからにはかならないでしょう。

 私がこの物流センターに注目した理由は、その立地にあります。アマゾンは現在、物流センターを「消費者立地型」(対極は「生産立地型」。これらは筆者による造語)にシフトしています。消費者立地型とは、物流センターをできるだけ消費者の多い場所の近くに立地させることです。通常、アマゾンの物流センターは消費者が多く集積する大都市と数百キロメートル以上離れていますが、消費者立地型の物流センターの場合、その立地は大都市から100キロメートル以内と距離が大きく縮まります。

 消費者立地型のように、より消費者に近い場所にストックポイントとなる物流センターを設置することにより、2つの利点が得られます。1つは宅配会社に支払う配送費を抑えることができます。もう1つは顧客へ商品を届ける配送のスピードをより上げることができます。

 物流の専門用語に「リンク」と「ノード」というものがあります。リンクはつながり、つまりトラックなどでの配送です。ノードは結び目、つまり物流拠点のことを指します。アマゾンが消費者立地型の物流センターを作った理由は、リンク(配送)のコストが上がってきたので、ノード(物流拠点)に多少お金をかけても、リンクの長さ(配送距離)を短くしたほうが得策だと考えるのは当然でしょう。

 例えば、今までは顧客が注文した商品が近くの物流センターにない場合、ほかの物流センターから取り寄せて配送する必要がありました。でもストックポイントとなるノードを消費者に近い場所に多く設置すれば、リンクを経由するムダがなくなります。消費者立地型の物流センターの設置には大きな投資が必要となりますが、それだけ物流を効率化でき、顧客の利便性も増します。

 アマゾンが消費者立地型ヘシフトを始めたのは2011年頃からです。しかしながら、まさに消費エリア内で稼働する物流センターは、今回のバークレーが初めてとなります。その意味で、バークレーの物流センターはアマゾンの物流戦略を占う上で、大変に重要なマイルストーンになるでしょう。

 新たに稼働するバークレーの物流センターが、自前配送の強化に使われることは間違いありません。また、アマゾンはバークレーの物流センターだけでなく、南サンフランシスコなどのベイエリアに複数の配送デポ(小型の物流センタ-)を稼働させています。これもアマゾンは公にしてはいません。近年になり、アマゾンは確実に消費エリア内で物流センターと配送デポを稼働させる消費者立地型に移行しているのです。

アマゾンのラストワンマイル戦略

 アマゾンが消費者立地型の物流センターを開設し始めただけでなく、UPS以外の宅配方法の模索を始めたのも2011年頃からです。

 私は、全米の累計10か所以上のさまざまなネット通販の物流センターを視察してきました。私の肌感覚になりますが、おおよそ9割以上の荷物は最大手UPSによる出荷でした。ネット通販向けのB2Cホームデリバリー、すなわち宅配のほとんどのシェアをUPSが占めているのです。

 しかし、驚くことに2013年のアマゾンの6億800万個の米国出荷のうち、UPSを使った出荷はわずか30%ほどにすぎません。一番高いシェアだったのはUSPS(United States Postal Service:米国郵便)の35%でした。日本では日本郵便にあたる公共性の高い組織ですが、労働組合が強く、サービスが悪いと評判がよくありません。ほかは地域配送会社が18%、フェデックスが17%でした。

 USPSのような評判の悪い配送会社を使っていて、アマゾンは大丈夫だろうかと少し心配していましたが、そこはアマゾン。PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回すことで継続的に配送品質を改善しているようです。例えば、米国ではUPSやフェデックスでしか実現していなかった日祝配送を、アマゾンがUSPSで実施すると2013年に発表したときには、全米のネット通販事業者が驚きました。

 なぜアマゾンにはそれができたのか。実はUSPSにとって負担になる仕分け作業をアマゾンが肩代わりしているのです。仕分けされた物を配送するところだけをUSPSに任せることにより、日祝配送を実現したのです。そういった事情もあり、USPSはアマゾン以外のEC事業者が日祝配送を依頼しても、受けてはくれません。自然とそこには参入障壁が出来上がるのです。これも、アマゾンのロジスティクスがいかに強い武器になっているかを示すエピソードでしょう。

 また、地域配送会社のシェアも18%ありますが、これはアマゾンが消費者立地型の物流センターを持つようになったから可能になったことです。私はアマゾンが当日配送用に使っている地域配送会社数社をリサーチに訪れましたが、アマゾンは自らその会社の拠点にトレーラーで荷物を持ってくるといいます。リードタイムから逆算すると、アマゾンの物流センターがよほど近くになくては、そこからの当日配送は不可能です。

 このように、米国アマゾンはラストワンマイルを制するために消費者立地型の物流センターを開設することでUPSへの依存を回避し、宅配会社同士の競争を生み、容易に宅配料金を上げられないように手を打っているのです。

広がるアマソンの自前配送

 さらにアマゾンは自前配送を広げているようです。それは、トレーラーを数千台購入したとされる報道や、貨物飛行機(ボーイング767F)を約20機リースしたという報道からもうかがい知れます。物流センターの拠点と拠点を結ぶ輸送を、自前のトレーラーや貨物飛行機で行うことで、配送ネットワークを自社でコントロールしようとしているのです。

 そう考えていくと、序章で登場した「アマソン・プライム・エア」が単なる実験ではないことが見えてくるのではないでしょうか。アマゾンは宅配会社に依存する状況からの脱却を目指して、ドローン配送を試みているのです。

 さらにユニークなものとして、一般の人に自分の車を持ち込んでもらって配送をしてもらう実験や、自動車会社のアウディと組んで、車のトランクに届ける試みも始めています。クラウドソーシングで配送員を一般の人から調達するモデルはすでにありますが、アマゾンのチャレンジはそのはるか先を行っているようです。

 このような先進的な施策は、ただパフォーマンスとしてやっているわけではありません。アマゾンは物流ネットワー・クを自社のコントロール下に置き、機械化を加速することでロジスティクスのさらなる効率化を本気で目指しています。

 今は1・3兆円の配送費を支払うアマゾンが、いつかはUPSのように宅配ネットワークを持つようになるのではないか、という議論が米国で巻き起こりました。小売企業で世界一であったウォルマートの時価総額をアマゾンが超えたように、200以上の国・地域で展開し世界最大級のネットワークを持つ宅配企業のUPSをもアマゾンは飲み込む、という話が真実味を帯びてきたのです。

 米国のシリコンバレーでは、既存産業を壊滅させるという意味の「ディスラプション(Disruption)」」という言葉が流行っていますが、アマゾンが既存小売業界や既存宅配業界を壊滅させるのではないかという話も真剣に語られています。

自走式ロボットを取り込む

 物流センター内の仕組みも進化しています。アマゾンは2012年に物流センター向けのシステム開発を手掛ける「キバ・システムズ(現アマゾン・ロボティックス)」を7億7500万ドル(約650億円)で買収しました。

 キバは物流センター内で使われる自走式ロボットの開発を得意としている会社です。アイロボット社の掃除ロボット「ルンバ」を大きくしたような形をしたロボットです。人間が倉庫の中でピッキングする商品のある棚まで歩いて行く代わりに、商品を載せた棚そのものをロボットを使って人間のいる場所まで運びます。ピッキングしなければならない商品の場所はレーザー光線によって示され、人間はその商品を取ってバーコードをスキャンし、商品が間違えていないかをチェックした上で箱詰めする仕組みです。

 こうした自走式ロボットを使った仕組みは、ペルトコンペアーを使った自動化システムが設置までに12~18か月と時間がかかるのに対して、数週間で設置することができ、商品の売れ行きに応じて棚の配置を臨機応変に変えられるなど柔軟性が高く、さらなる作業効率の向上を目指すことができるというわけです。人間ではなくロボットですので、物流センター内全体に照明や冷暖房をつける必要がなく、光熱費も節約できます。

 二〇一四年に公開された資料によれば、すでにキバのロボットは10か所の物流センターに3万台以上が配備されています。ある調査会社の試算によれば、キバのロボットを1万台配備することで、時給14ドルのスタッフ2万5000人分に相当するそうです。物流センターの運営費を約20%下げたというレポートもあります(ドィッ銀行調査ょり)。機械化により人件費を削減することで、物流コストを削減したいアマゾンの思惑に合致しています。

 キバの創業者で最高経営責任者(CEO)のミックーマウンツは、実は先ほど紹介した「ネットバブル最大の経営破綻」と言われるオンラインスーパーのウェブバンで物流担当をしていました。ウェブバンが倒産した後に、「もっと良いやり方がぜったいあるはずだ」と、マウンツは物流分野に商機を感じ、「個々の商品が作業者のところまで歩いて来てくれれば一番いい。そのためには棚とモーターを分離し、その実現には移動ロボットが使えるという考えに至った」と言います(ウォールストリートジャーナル日本版「米アマゾンの600億円の買い物から垣間見る未来の物流倉庫」より)。

 ウェブバンの壮大な失敗がもたらした自走式ロボットによるピッキングの自動化という成果を、アマゾンが買収により自社に取り入れたと言えるでしょう。
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楽天とネット通販

『アマゾンと物流大戦争』より 物流のターニングポイント--ネット通販と宅配便の異変

楽天が急成長できた理由

 こうした中小のネット通販会社が出店して、ショッピングモールとして1つのまとまりになるのが、楽天市場やヤフーショッピングのようなモール型のECサイトです。アマゾンのように注文から配送までを自前で完結するのではなく、集客から注文までは楽天やヤフーに任せ、その後のピッキングから梱包、配送といった物流作業を各店舗が担うというスタイルです。

 インターネットの登場以後、今までの20年ほどは、モール型ECサイトが優勢でした。楽天の2014年の国内EC流通総額は2兆100億円です。その多くが中核事業である楽天市場の流通総額ですから、1997年のサービス開始からわずか20年弱で急成長を遂げたわけです。

 ネット通販の初期において、楽天市場のようなモール型ECサイトが急成長できたのには理由があります。先ほど示したように、一言で言えば中小のネット通販会社の集合体であったからです。

 楽天は、さまざまなネット通販会社に出店してもらうことで、どこよりも早く充実した品揃えを実現しました。現在の店舗数は4万を超えています。買い物するときには、店舗が点在しているよりも、ショッピングモールのようにIか所に集まっていて品揃えが充実しているほうが便利です。これはネット通販でも同じでした。豊富な品揃えを武器に、たくさんの店舗を巻き込むことで楽天は急成長しました。

 これを裏側から見れば、要するに楽天は物流をそれぞれの店舗に委ねていますので、余計な時間がかからなかったともいえます。繰り返しになりますが、ロジスティクスは積み上げであり洗練されてくるまでに相当に時間がかかるものです。大きな投資をして物流センターを築き、システムを作り、運用のノウハウを積み上げてステップを踏む必要があります。そもそも楽天のようなモール型ECサイトは、ロジスティクスのノウハウを必要としていなかったため、立ち上がりのスピードが速かったのです。

ネット通販における物流機能

 アマゾンのように一社による総合ネット通販と、楽天のように複数のネット通販会社が1つに束ねられたモール型ネット通販を、物流の側面で比較すると図4のようになります。

 総合ネット通販の場合、商品の流れは非常にシンプルです。各メーカーからトラックなどで商品が「入荷」し、物流センターに届いた商品は顧客からの注文があるまで「保管」されます。保管には在庫数など数量と、在庫している場所などロケーションの2つを管理する「在庫管理」という機能が必要とされます。そして顧客からの注文に応じて、商品を「ピッキング」し、ダンボール箱などに商品を入れ破損しないように緩衝材なども入れて「梱包」し、宛先のラベルを貼る作業があります。最後に商品が「出荷」され、委託先の宅配業者などによりそれぞれ配送され、顧客のもとへ商品が届けられるのです。

 一方でモール型ネット通販の場合は、各店舗が「入荷」「保管」「在庫管理」「ピッキング」「梱包」「出荷」という物流機能を担うため、商品の流れが複数に分散されます。また総合ネット通販と比較してメリット・デメリットが出てきます。

 大きなメリットは先ほど述べたように物流センターヘの投資が必要なく、ノウハウも各店舗が持っているのですぐに始めることができるため、立ち上げのスピードを速くすることができる点です。また、たくさんの店舗に出店してもらうことで、いち早く品揃えを充実させることができるため、お客にとって魅力的に見えます。

モール型ネット通販の弱点

 モール型ネット通販のデメリットは3つ考えられます。

 1つ目は、物流品質のバラツキです。物流がそれぞれの店舗に委ねられているため、保管状態が悪い、梱包が雑になる、配送が遅れるなど物流品質に問題が出た場合、改善に時間がかかり効率も悪い点が挙げられるでしょう。物流品質が安定しないと、顧客からの信頼を失いかねません。

 2つ目は、規模のメリットが生じない点です。それぞれの店舗が個別にメーカーから商品を仕入れるため、大量に買うから割引してもらうこと(ボリュームディスカウント)ができません。これは宅配業者との配送料の交渉でも同じです。メーカーにしても宅配業者にしても、1か所との取引でこそ量の割に手間(出荷・集荷コスト)も少なくなり、値引きすることができるのです。

 3つ目は、お客にとって利便性が悪い点です。お客にとっては1回の注文だったとしても、商品をモール内の違う店舗で買った場合は、それぞれの店舗から配送されてくるので、それぞれに配送料がかかってしまいます。

 こうしたデメリットは、アマゾンのような総合ネット通販のロジスティクスが洗練されてくればくるほど、不利に働いてくるものです。総合ネット通販の場合、物流品質は年々向上されますし、売上高が大きくなることで価格競争力も出てきます。物さえ揃えばもちろん配送は一回でまとめて行うことが可能です。

 物流はインフラであり、すぐには品質の違いを認識しづらいものです。しかし、総合ネット通販とモール型ネット通販の差が、近年になりはっきりと現れてきています。注文の翌日の配送はもちろん当日配送での勝負が始まった現在、こうしたモール型ネット通販の不利な面が年々顕在化しているのです。

苦戦する楽天

 2014年以降、楽天は、楽天トラペルや楽天ポイントカード・クレジットカードの取扱高を加えたグループ流通総額しか公表しておらず、比較できる楽天市場だけの数字はありません。しかし、何人かの証券アナリストが指摘するように、私も中核事業である楽天市場が現在のところ、かなり苦戦しているのではないかと予想しています。

 楽天市場が伸び悩んでいるという話題になると、よく「楽天市場のサイトは商品が買いにくい」という話を聞きます。欲しい商品を検索すると複数の同じ商品が表示されたり、送料も店舗ごとに異なるため価格だけで比較することもできず、そもそも店舗によりデザインがまったく違うので使いづらい、というのです。

 しかし、サイトのデザイン自体は昔から大きく変わっておらず、それで売上を伸ばしてきたことを考えると、楽天市場の売上が伸びない理由をサイトのデザインや使い勝手だけで語るのはミスリードでしょう。もちろん、サイトの使い勝手が時代にそぐわないものになってきている側面はあると思います。しかし、苦戦の要因はもっと別のところにあるのではないでしょうか。

 それが先ほど物流の側面から説明した、モール型ネット通販のメリット・デメリットの中にあります。

 1つには、楽天市場の品揃えが優位に働かなくなっている点が挙げられます。序章でアマゾンの売上高の推移をご覧いただきましたが、それだけアマゾンが品揃えを充実してきていると解釈することができます。また2013年10月にはモール型ネット通販で楽天と争うヤフーショッピングが出店手数料の無料化を打ち出したことで、店舗数では34万店と楽天をはるかに上回りました。品揃えがサイトの差別化につながらなくなってきているのです。

 もう1つが商品の価格です。楽天市場に出店しているネット通販事業者は、長期的に見ると価格競争力が高くありません。規模のメリットが生じにくく、物流へ大規模に投資できないため、物流改善によるコスト削減の余地もほとんどありません。さらには、楽天市場に出店するための月額利用料やシステム利用料といった手数料の負担もあります。アマゾンのような総合ネット通販の規模が拡大し、またヤフーショッピングのように出店手数料が無料化された場合、楽天市場の商品価格はほかのネット通販サイトよりも高くなりやすくなってきます。さらにヤフーは楽天に対抗して、ユーザーヘの大胆なポイント還元を打ち出しました。

 かつては圧倒的優位にあった品揃えで追いつかれ、価格競争で不利なモール型ネット通販の楽天は、非常に苦しい状況に置かれているといってよいでしょう。ネット通販は今、ターニングポイントを迎えているのです。その苦境の理由を説明するために必要なのが、ロジスティクスの視点です。

楽天物流の失敗

 その楽天も、こうなるまでに手をこまねいていたわけではありません。2010年に楽天は「楽天物流」という子会社を立ち上げました。出店するネット通販会社の物流品質を上げるため、在庫管理やピッキング、梱包から出荷まですべてを出店企業がアウトソーシングできる物流支援サービスです。北は東北から、南は九州まで日本全国をカバーする5都市に8つの物流拠点を作り、物流ネットワーク構築を目指しました。

 ところが2013年12月期、先行投資のコストがかさみ、楽天物流は債務超過に陥りました。同年7月に親会社の楽天に吸収合併される形で会社は清算され、一部の物流センターが閉鎖されるなどリストラが行われて、新たな物流センターの建設計画も撤回されました。現在も物流支援サービス会社「楽天スーパーロジスティクス」が関東で2か所、関西で1か所と限られた範囲で「楽天フルフィルメントセンター」を運営していますが、計画は大きく縮小されたのです。

 一方でアマゾンも同様の機能を持つ物流拠点を全国に9か所、2016年の秋には10か所目(川崎市高津区)がオープン予定であり、本拠地である米国での展開を見る限り、日本においても今後もロジスティクスヘの投資を続けていくでしょう。序章で、注文から最短1時間で商品を届ける「プライム・ナウ」のサービスを実現するため、アマゾンが専用の小型物流センターを設置している事例を紹介しましたが、アマゾンにとってロジスティクスは他社を圧倒するためのサービスであり、武器なのです。

 ロジスティクスを楽天は短期で買えるもの、つまりコストだと考え、アマゾンは長期で構築する投資だと考えたところに決定的な違いが現れました。楽天物流の設立前に、私自身、物流コンサルタントとして彼らに助言しようとアポイントをとろうとしましたが、かないませんでした。今から思い返せば残念です。こうした戦略の違いの背景には、モール型ネット通販か総合ネット通販かというそもそもの出自の違いもありますが、ロジスティクスが今後の成否を分けることは間違いないでしょう。
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