『図書館概論』より
1 読書と図書館
図書館の機能のなかで基本的なものとして読書の推進があげられる。
地域住民にとって、本を読みたいと思ったとき、近くに本が手軽に手にとれる図書館があるかないかは大きい(わが国には近世から文庫が発達し、住民にとって身近な読書施設は文庫だった)。図書館は住民の読書と深くかかわり、住民が読書を継続するためになくてはならないものである。
図書館は図書を中心として資料を収集してコレクションを形成している。その図書を読むということがひとりの人間にとって、また社会にとっても重要な意味をもつ。読書を通して人は教養や知識を身につける。現在の社会では、こうした従来から指摘されてきた読書の重要性に加えて、コンピュータ情報通信ネットワークを基盤とした新しい社会が到来する。その社会で生きる人を育てる、あるいはその社会で人々が生き生きと生きていくために、読書が欠かせない、ということも強調されるようになった。西ヨーロッパの諸国が最近10年間ほど公共図書館の充実に力を注いできたひとつの要因にもあげられる。
新しい社会、すなわちコンピュータ情報通信ネットワークを基盤とした社会は、情報が大量に生産され、ネットワーク上に流通する社会でもある。さらに知識もまたネットワークを通して情報と同じくいつでも入手できるようになる。知識と知識、知識と情報、情報と情報がネットワーク上で出会い、そこから新しい知識、情報が次々と生まれる(こうした社会を日本政府の情報政策e-Japan戦略では「知識創発型社会」と呼んでいる)。こうした知識と情報がみちあふれ、いつでも活用できる社会で生き生きと生きていくためには、それらを主体的に判断、評価し、活用できなければならない。そうした人を育てるために、読書(本を読むこと)が不可欠で、読書を通した知識の習得、思考力の育成などが欠かせない。地域の住民がひとしく読書に親しみ、継続していくために図書館が必要である。こうした理解である。そのためには出版業界が質の高い図書を多く供給し、図書館がより質の高いコレクションを形成し、図書館員が図書と住民を結びつける活動を積極的に行うことが必要である。ともあれ、図書館が人々の読書活動の場となり、図書館が読書をすすめる場となるということは、いままでになく重要な意味をもっといえる。
2 知識創発型社会の到来と読書
コンピュータ情報通信ネットワークを基盤とした知識創発型社会が到来しようとしている今日、公共図書館、学校図書館、大学図書館は、読書推進活動を通して、それぞれに、新しい時代にふさわしい人材の育成にかかわる必要がある。
「新しい時代にふさわしい人材」とは、①幅広い教養(新しい時代にふさわしい教養)と豊富な知識、②自らが必要とする知識や情報を収集する力、③それらを評価し、加工・編集して発表・発信する力、④新しい知識・知恵を生み出す力、これらをもっている人といえよう。
そのために読書を生涯にわたる習慣としてもつことは有効といえる。さらに知識や情報を収集する方法や、加工・編集して発表する力量を獲得するために図書館は非常に優れたトレーニングの場といえる。
一方図書館は、利用者にその機能を十分に活用してもらえるような工夫や努力がもとめられる。O歳からでも図書のある空間になじみ、それを出発点として生涯にわたる読書の習慣が身にっくような働きかけをすること、また、メディアリテラシーや情報収集能力などを身につけられるように図書館でのサービスを展開することが必要となろう。
3 読書の重要性--新しい時代にふさわしい人材の育成のために
現在、諸外国、とくにヨーロッパの旧西側諸国は熱心に読書の推進に取り組んでおり、公共図書館の充実につとめている。
イギリスでは、国の公共図書館振興政策構想で公共図書館の一層の充実をめざし、資料費を3倍に倍増させようとしている。フランスでは、1990年代後半から「国民の「公読書」運動に力を入れ、州単位に国が貸出図書館を設立し、下部にはさらに配本所を設けて、貸出し中心の国民へのサービスを始めた」。フィンランドでは、公共図書館の貸出点数の増加をはかり、2007年には、国民1人当たり年間22点を越えるレペルまで到達している。
これらの諸国は、新しい知的な社会、知識創造型社会の到来に備えて読書を推進しているとみて間違いはない。
このように考えると、これからの時代を生きる青少年はとくに、幅の広い読書をしっかりと行い、読書の習慣を身につけて、日常の生活や学習、仕事のなかでもいつも図書を身近に置いて参照する習慣を身につける必要がある。また、成人にとっても生涯にわたる学習を継続していくために、日頃から読書に親しんでいることは必要なことである。
1 読書と図書館
図書館の機能のなかで基本的なものとして読書の推進があげられる。
地域住民にとって、本を読みたいと思ったとき、近くに本が手軽に手にとれる図書館があるかないかは大きい(わが国には近世から文庫が発達し、住民にとって身近な読書施設は文庫だった)。図書館は住民の読書と深くかかわり、住民が読書を継続するためになくてはならないものである。
図書館は図書を中心として資料を収集してコレクションを形成している。その図書を読むということがひとりの人間にとって、また社会にとっても重要な意味をもつ。読書を通して人は教養や知識を身につける。現在の社会では、こうした従来から指摘されてきた読書の重要性に加えて、コンピュータ情報通信ネットワークを基盤とした新しい社会が到来する。その社会で生きる人を育てる、あるいはその社会で人々が生き生きと生きていくために、読書が欠かせない、ということも強調されるようになった。西ヨーロッパの諸国が最近10年間ほど公共図書館の充実に力を注いできたひとつの要因にもあげられる。
新しい社会、すなわちコンピュータ情報通信ネットワークを基盤とした社会は、情報が大量に生産され、ネットワーク上に流通する社会でもある。さらに知識もまたネットワークを通して情報と同じくいつでも入手できるようになる。知識と知識、知識と情報、情報と情報がネットワーク上で出会い、そこから新しい知識、情報が次々と生まれる(こうした社会を日本政府の情報政策e-Japan戦略では「知識創発型社会」と呼んでいる)。こうした知識と情報がみちあふれ、いつでも活用できる社会で生き生きと生きていくためには、それらを主体的に判断、評価し、活用できなければならない。そうした人を育てるために、読書(本を読むこと)が不可欠で、読書を通した知識の習得、思考力の育成などが欠かせない。地域の住民がひとしく読書に親しみ、継続していくために図書館が必要である。こうした理解である。そのためには出版業界が質の高い図書を多く供給し、図書館がより質の高いコレクションを形成し、図書館員が図書と住民を結びつける活動を積極的に行うことが必要である。ともあれ、図書館が人々の読書活動の場となり、図書館が読書をすすめる場となるということは、いままでになく重要な意味をもっといえる。
2 知識創発型社会の到来と読書
コンピュータ情報通信ネットワークを基盤とした知識創発型社会が到来しようとしている今日、公共図書館、学校図書館、大学図書館は、読書推進活動を通して、それぞれに、新しい時代にふさわしい人材の育成にかかわる必要がある。
「新しい時代にふさわしい人材」とは、①幅広い教養(新しい時代にふさわしい教養)と豊富な知識、②自らが必要とする知識や情報を収集する力、③それらを評価し、加工・編集して発表・発信する力、④新しい知識・知恵を生み出す力、これらをもっている人といえよう。
そのために読書を生涯にわたる習慣としてもつことは有効といえる。さらに知識や情報を収集する方法や、加工・編集して発表する力量を獲得するために図書館は非常に優れたトレーニングの場といえる。
一方図書館は、利用者にその機能を十分に活用してもらえるような工夫や努力がもとめられる。O歳からでも図書のある空間になじみ、それを出発点として生涯にわたる読書の習慣が身にっくような働きかけをすること、また、メディアリテラシーや情報収集能力などを身につけられるように図書館でのサービスを展開することが必要となろう。
3 読書の重要性--新しい時代にふさわしい人材の育成のために
現在、諸外国、とくにヨーロッパの旧西側諸国は熱心に読書の推進に取り組んでおり、公共図書館の充実につとめている。
イギリスでは、国の公共図書館振興政策構想で公共図書館の一層の充実をめざし、資料費を3倍に倍増させようとしている。フランスでは、1990年代後半から「国民の「公読書」運動に力を入れ、州単位に国が貸出図書館を設立し、下部にはさらに配本所を設けて、貸出し中心の国民へのサービスを始めた」。フィンランドでは、公共図書館の貸出点数の増加をはかり、2007年には、国民1人当たり年間22点を越えるレペルまで到達している。
これらの諸国は、新しい知的な社会、知識創造型社会の到来に備えて読書を推進しているとみて間違いはない。
このように考えると、これからの時代を生きる青少年はとくに、幅の広い読書をしっかりと行い、読書の習慣を身につけて、日常の生活や学習、仕事のなかでもいつも図書を身近に置いて参照する習慣を身につける必要がある。また、成人にとっても生涯にわたる学習を継続していくために、日頃から読書に親しんでいることは必要なことである。