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ユーロと世界経済の安定に向けて

『グローバル・エコノミー』より ユーロ圏の展開

ギリシャ危機と救済をめぐるユーロ圏の対立

 ギリシャ危機は、文字通りユーロの存在そのものを危険にさらす、ユーロ導入以来最大の危機となった。ギリシャをはじめソブリン危機に遭遇した国々からは、デフォルト(債務不履行)を恐れて資金が流出し、ユーロ圏で一番信用の高いドイツ国債へと流れ込むことになった。前者では、リスクプレミアが急騰する一方、後者では、逆に低下するなど、労働市場と同様、金融市場においても、危機に対する非対称的な反応が鮮明となった。金融統合は進んだものの、危機の発生により、ユーロ圏の国債市場は、信用リスクに応じて国ごとに厳しく峻別されることになった。

 ギリシャ危機への対策を協議する場において、ドイツは、財政規律を蔑ろにし、放漫な財政運営を行って危機に陥った国を安易に救済すれば、財政支援が恒常化し、EMUは送金同盟(TransferUnion)に堕しかねないと、ギリシャの救済に反対しただけでなく、ユーロからの追放の可能性さえ示唆した。これに対して、ルクセンブルクをはじめとする他のユーロ圏諸国は、ユーロ圏の連帯と協調を顧みず、いたずらに危機を助長しているとドイツを厳しく非難、ユーロ参加国の間の深刻な対立が浮き彫りとなった。そのことがユーロの将来に対する金融市場の不安や不信を掻き立て、ポルトガルやアイルランドにもソブリン危機が飛び火することになった。ユーロの導入に際して、成功の追い風となった金融市場の期待が、今や完全な逆風へと転じた。

ユーロと世界経済の安定に向けて

 ユーロは、国際通貨制度におけるドルの覇権ないし非対称性を是正し、平等な権利と負担に基づく安定した国際通貨制度の確立と、世界経済の発展に積極的に貢献することが期待されていた。しかし、ユーロに託されていた期待は見事に裏切られることになった。ユーロは、世界経済の発展や安定に資するどころか、今や世界経済の最大の不安定要因となっている。一方、アメリカ経済の状況もさほど思わしくない。ヨーロッパ以上に大規模で大胆な対策を打ったにもかかわらず、失業率の改善は芳しくなく、力強い回復の兆しは見えない。さらに2008年の米欧における危機の発生以降、世界経済の牽引車となってきた新興国にも、11年後半以降減速の兆しが見られる。その背景には、米欧の景気が上向かないだけでなく、ヨーロッパにおける危機の深刻化により、危機発生以前まで積極的な国際化戦略・融資を展開していたヨーロッパの銀行が、新興国からも融資を回収し資金を引き揚げはじめたことが関係しているといわれる。最悪の場合、第2のリーマン・ショックが起きる可能性すら存在する。

 にもかかわらず、ヨーロッパの危機が一向に収まる兆しが見えないことから、世界の不信と不安の目がヨーロッパ、特にユーロ圏の国々に向けられている。アメリカは、ガイトナー財務長官を何度もヨーロッパに派遣し、事態の収拾を急ぐよう圧力を掛けている。エMFはますます深くユーロ圏における危機の収拾に関与するようになっている。さらには、BRICs諸国も、ユーロの救済はユーロ圏諸国が取り組むべき課題であるとしながらも、支援する用意のあることを表明している。こうした国際的な協調体制の強化が、危機回避の助けになり、かつ今後の世界経済や国際通貨・金融システムの安定につながっていく可能性はある。しかし、他方で危機の収拾に失敗すれば、世界経済にも重大なダメージを与え、それこそ1930年代のそれに匹敵する危機が発生するかもしれない。ソブリン危機が悪化し、それを機に再度大規模な金融危機が起きれば、もはやどの国にもそれに対処する余力は残されてはいない。同時にヨーロッパの凋落、衰退も不可避となろう。その意味で、危機からの脱却とユーロの安定には、ヨーロッパの浮沈、そして世界経済の安定と将来が懸かっているといえよう。
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中華人民共和国憲法 序言

『世界憲法集』より

中国は、世界で歴史が最も悠久な国家のひとつである。中国各民族人民は、輝かしい文化を共同して創造し、光栄ある革命の伝統を有している。

一八四〇年以降、封建的な中国は、半植民地的かつ半封建的な国家へと徐々に変わっていった。中国人民は、国家の独立、民族の解放及び民主と自由のために、前を行く者が倒れれば後の者が続くという英雄的な奮闘を進めてきた。

二〇世紀に、中国では天地を覆す偉大な歴史的変革が起こった。

一九一一年、孫中山〔孫文〕先生が領導する辛亥革命が、封建帝制を廃し、中華民国を建国した。しかし、中国人民が帝国主義及び封建主義に反対する歴史的任務は、いまだ完成していなかった。

一九四九年、毛沢東主席を領袖とする中国共産党が中国各民族人民を領導し、長期の苦難に満ち曲折した武装闘争及びその他の闘争を経た後、帝国主義、封建主義及び官僚主義の統治をついには覆し、中華人民共和国を建てた。このときから、中国人民は、国家の権力を掌握し、国家の主人となった。

中華人民共和国成立以降、我が国の社会は、新民主主義から社会主義に至る過渡を徐々に実現した。生産手段私有制の社会主義的改造はすでに完成し、人が人を搾取する制度はすでに消滅し、社会主義制度はすでに確立した。労働者階級が領導し、労農同盟を基礎とする人民民主独裁は、実質的にはプロレタリアート独裁であり、強固なものとなり、かつ発展している。中国人民及び中国人民解放軍は、帝国主義、覇権主義の侵略、破壊及び武力による挑発に戦勝し、国家の独立及び安全を護り、国防を増強した。経済建設は、大きな成果を得、独立し比較的完備した社会主義工業体系は、すでに基本的に形成され、農業生産は、顕著に向上している。教育、科学、文化等の事業には大きな発展があり、社会主義思想教育は明らかな効果を得た。広範な人民の生活には比較的大きな改善がある。

中国新民主主義革命の勝利及び社会主義事業の成果は、中国共産党が中国各民族人民を領導し、マルクスーレーニン主義、毛沢東思想の手引きのもとで、真理を堅持し、誤りを正し、多くの厭難険阻に戦勝して得たものである。我が国は、社会主義初級段階に長期にわたって位置することになる。国家の根本任務は、中国的特色の社会主義の道に沿って、力量を集中して社会主義現代化建設を進めることである。中国各民族人民は、ひきつづき、中国共産党の領導のもとにあって、マルクスーレーニン主義、毛沢東思想。小平理論及び「三つの代表」という重要思想の手引きにより、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革開放を堅持し、社会主義の各制度を不断に完全なものとし、社会主義市場経済を発展させ、社会主義民主を発展させ、社会主義法制を健全なものとし、自力更正と銭苦のなかでの奮闘とを進め、工業、農業、国防及び科学技術の現代化を徐々に実現し、物質文明、政治文明及び精神文明の協調的発展を推進し、我が国を富強、民主、文明の社会主義国家としていく。

我が国においては、搾取階級は、階級としてはすでに消滅しているが、しかし、階級闘争はいまだ一定範囲において長期に存在し続ける。中国人民は、我が国の社会主義制度を敵視し、破壊する国内外の敵対勢力及び敵対分子に対して、闘争を行わなければならない。

台湾は、中華人民共和国の神聖な領土の一部分である。祖国を統一することを完成するという大業は、台湾同胞を含む全中国人民の神聖な職責である。

社会主義の建設事業は、労働者、農民及び知識分子をよりどころとして、団結できる一切の力量を団結させなければならない。長期の革命及び建設の過程において、中国共産党が領導し、各民主的諸党派及び各人民団体が参加し、すべての社会主義勤労者、社会主義事業の建設者、社会主義を擁護する愛国者及び祖国統一を擁護する愛国者を含む広範な愛国統一戦線は、すでに結成されており、この統一戦線はひきつづき強固なものとなり、発展していく。中国人民政治協商会議は、広範な代表性を有する統一戦線組織であり、過去において重要な歴史的役割を発揮し、今後国家の政治生活、社会生活及び対外友好任務遂行において、社会主義現代化建設を進め、国家の統一と団結を護る闘争において、さらにその重要な役割を発揮していく。中国共産党が領導する多党協働及び政治協商制度は、長期にわたって存在し発展していく。

中華人民共和国は全国各民族人民が共同して創建した統一の多民族国家である。平等団結、互助の社会主義民族関係はすでに確立し、かつ、ひきっづき強まっている。民族団結を護る闘争においては、大民族主義、主には大漢族主義に反対することを要し、また、地方民族主義にも反対することを要する。国家は一切の努力を尽くして、全国各民族の共同繁栄を促進する。

中国の革命及び建設の成果は世界の人民の支持と切り離すことはできない。中国の前途は世界の前途と緊密に結びついている。中国は、独立自主の対外政策を堅持し、主権と領土の完全とを相互に尊重すること、相互に侵犯しないこと、相互に内政に干渉しないこと、平等に互いに利益となること、平和に共存すること、という五原則を堅持し、各国と外交関係及び経済、文化の交流を発展させる。帝国主義、覇権主義、植民地主義に反対し、世界各国人民との団結を強め、被抑圧民族及び発展途上国が民族独立を勝ち取り、それを護り、民族経済を発展させる正義の闘争を支持し、世界平和を護り、及び、人類進歩の事業を促進するために努力することを堅持する。

本憲法は、法律の形式を以て中国各民族人民の奮闘の成果を確認し、国家の根本制度及び根本任務を規定しており、国家の根本法であって、最高の法律的効力を有している。全国各民族人民、一切の国家機関及び武装力、各政党及び各社会団体、各企業、事業組匹は全て憲法を以て根本の任務遂行準則としなければならず、かつ憲法の尊厳を護り憲法実施の職責を負う。
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オランダ 新たな社会への模索

『オランダの歴史』より

このように柱状化社会が変わりつつあるなか、一九七〇年代にオランダはイスラエル寄りの外交政策が裏目に出て、一九七三年と七八年にはアラブの石油戦略の標的にされ、石油危機(オイル・ショック)に見舞われた。オイル・ショック自体は自国産の天然ガスのおかげて切り抜けたが、インフレと高賃金、高い失業率、経済不況に悩まされる。これは西側諸国に共通の現象であったが、オランダでは特に高賃金と高い失業率は〝オランダ病〟といわれるほど深刻であった。そのため一九八〇年代に入ると政府は、この高賃金にメスを入れるために公務員の給与を凍結し、社会保障的性格をもつ最低賃金の引き上げも凍結する。こうして政府は賃金引き下げを可能にする環境を整えるだけに徹して、賃金の決定は労使の自由な協議にゆだねた。労働側も失業問題の解決と投資促進のために賃金の抑制を受け入れ、雇用の増加に結びつけようとした。その結果、失業率は大幅に減少した。一九八四年の一四パーセントから九七年には六パーセントに、二〇〇〇年には二パーセント台に下落)。新たな雇用が三〇万人分以上も創出され、〝オランダの奇跡〟ともいわれた。しかし、その九〇パーセント近くはフルタイムの正規雇用ではなく、パートタイム制を組み合わせたワークシェアリング方式であった。これでたしかに失業率の改善がはかられ、労働時間も大幅に短縮されたため、ワークシェアリングはオランダの看板として世界的にも注目されているが、他方労働者にとっては手取り賃金は労働時間が短くなった分減少し、これをいかに補填していくかが新たな問題になっている。

二一世紀に入って浮上した大きな問題はイスラム系の移民労働者や不法滞在外国人の取り扱いで、その排斥を主張する極右政党が急成長したことである。オランダにはイスラム系の移民はその二世、三世も含めて約九六万人(全人口一六〇〇万人の約六パーセント)いるといわれ、これに加えて不法滞在外国人が三二五万人いるとみられている。そのなかには過激派組織もあるという。

経済が低迷し、失業問題が大きくなると、いきおい移民労働者への風当たりが強まり、オランダでも移民の排斥、強制送還を主張する極右政党が急速に優頭する。そのひとつがビム・フォルタインー派で、リーダーのビム・フォルタインは〝オランダは満員だ〟として巧みな弁舌で人気を集めた。しかし彼は、二〇〇二年七月、総選挙の直前に政治テロで暗殺された。これはオランダでは、一六七二年にときの宰相ヨーハン・デーウィットがハープの民衆によりリンチ殺害されて以来の政治テロであった。こうした不幸もあって同情票が集まったのか、ビム・フォルタイン一派は選挙では約一七パーセントの得票率で、いきなり二六議席を獲得し、連立政権入りを果たした。しかし翌二〇〇三年、連立政権が行き詰まって行なわれた総選挙では八議席に後退し、○六年の総選挙では惨敗し、○八年には解散にいたった。同じ頃、やはりイスラムの排斥を唱え、〝自由党〟を名乗った極右政党も躍進をとげている。こうした動きのなかで二〇〇五年二月には難民認定を却下された外国人二万六〇〇〇人を本国に送還する法も成立し、移民や難民をみる国民の目が厳しくなっていることがあらわになった。

また世界が注目したことのひとつに、オランダで二〇〇一年から安楽死が合法化されたことがある。アメリカのオレゴン州ではすでに合法化されていたが、国としては世界最初である。この問題は一九六〇年代からすでに議論されていたが、世界に先駆けてひとつの方向性を出した点が注目される。すでに売春や、ハッシュ(大麻)、マリファナなどのソフトドラッグが合法化されていることと合わせて、オランダ社会は独自の道を模索しているようにみえる。
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豊田市図書館の28冊

昼になく、夜になく

 昼になく、夜になく。休日の状況です。時間を限定していない。役割分担をしていない。心のままに、勝手に生きている。

 寝たり、起きたり、本を読んだり、チェックしたり、考えたりしている。

環境社会に求められるもの

 環境社会を見れば、今、求められているのか、将来求められるのかのシナリオができるはずです。自分たちだけのシナリオにしているから、ダメなんです。先を見て、考えていないから、とりあえずばかりです。

共通の敵

 今週は、パートナーと一緒に戦っていた感じです。共通の敵が現れると楽しいです。

豊田市図書館の28冊

 336.9『環境経営・会計』地球環境と経済活動の両立は今世紀最大の課題といえます。環境と経営を結びつける手段と結びつける手段としての会計システムを軸に、企業内部での展開、外部への情報発信、社会との関わりを体系的に解説した待望のテキストです。

 014『情報の特性と利用』図書館情報資源概論

 332.1『ゼミナール 日本経済入門』

 C25.3『シェアする道路』ドイツの活力ある地域づくり戦略

 440.4『宇宙をゆく』“地球目線”で宇宙を徹底的に楽しむ!!

 369.4『東ティモールの現場から』子どもと平和構築

 526.54『スカイツリー45の秘密』世界が驚いた! “世界一の電波塔”に隠された伝統のワザ&最新工法が手に取るようにわかる

 335.21『勝つための経営』グローバル時代の日本企業生き残り戦略

 689.5『ディズニー式サービスの教え』

 333.6『グローバル・エコノミー』「経済の国際化」を説明するオーソドックスな国際経済学の理論と「経済のグローバル化」に対応した制度的枠組みについてやさしく解説しています。

 493.12『血糖値を下げる100のレシピ糖尿病を治すハンドブック』

 210.47『世界史のなかの戦国日本』

 019.9『3行でわかる 名作&ヒット本250』話題作からビジネス書、古典まで!「あらずじ」と「見どころ」がわかる!!

 007.3『ウェブらしさを考える本』つながり社会のゆく末

 007.35『僕がアップルで学んだこと』環境を整えれば人が変わる、組織が変わる

 007.35『アップルの未来』ポスト・ジョブズ時代に革新的な製品は現れるのか!?

 699.39『ニュースキャスター』

 116『感性の限界』不合理性・不自由性・不条理性

 335.『1からの経営学』

 670『eビジネスの教科書』

 368.6『地域社会の安全をいかに守るか』

 491.1『解剖生理学がわかる』基礎と基礎からやさしく解説!誰でもわかる解剖生理

 222.9『チベットの歴史と宗教』世界の教科書シリーズ

 235.9『図説 オランダの歴史』

 130.2『西洋哲学史Ⅳ』「哲学の現代」への回り道

 204『ゆがめられた地球文明の歴史』「パンツをはいたサルに起きた世界史の真実

 010.1『二十一世紀の図書館におけるプライヴァシーと情報の自由』

 020.4『図書館学入門』

 本当につまらない本が多い。選ばないといけない。新書判を12冊読んだけど、まるで得るものがない。内容が薄くなっています。

 岡崎図書館でなるべき厚い本を借りてきましょう。
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