日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

祖父の天気予測

2023年04月25日 | エッセイサロン
2023年04月25日 中国新聞セレクト「ひといき」掲載


 2月15日の朝刊文化面の「散策路」に俳人の宇多喜代子さんが天気予測をテーマに書いていた。それを読みながら、昭和35(1960)年に亡くなった祖父を思い出した。
 祖父は毎朝、私たち孫が小学校に登校する一足先に庭へ出て四方の空を見回していた。時々、「今日は傘を持って行け」と降雨の予測を告げていた。どのくらい的中したか分からないが、何度かは、ぬれずに下校できたと記憶している。
 当時の天気予報はラジオだけだった。わが家は山口県東部にあり、受信できるのはNHK広島放送局だった。祖父は必ず聞いており、広島県西部の予報が山口県東部と同じになると言っていたようだ。ラジオの情報と朝の空模様から身に付けた予測法だったのではないだろうかと推察する。
 気象観測技術の長足の進歩で今では、自分で天気予測をしなくなった。気象予報士は予報のほか、自然災害発生の見分け方や備え、寒い日の外出時の服装、花粉症への対策など生活の細部までも、映像を交えて分かりやすく伝えてくれる。 
 祖父が亡くなって半年後、わが家にテレビが登場した。その後、気象放送も進化した。祖父が最近の番組を見たらどんな感想を口にするだろうか。
 寒い日の朝、祖父は庭でたき火をして、登校前の私たちに「よう温まって行け」と暖を取るひとときを与えてくれていた。当たり前のように感じていたぬくもりも今思えば、当時の生活の知恵でもあったのだ。

 (今日の575) 今ならば予報士並みの祖父の勘
コメント (1)
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