栗は柿とともに秋の代表的な果実といえる。栗は万葉集にも詠まれているというから日本人の生活には欠かせない果実の一つかもしれない。栗はトゲのある皮の中で大きくなる。これを毬栗(いがぐり)という。毬栗がはじけて実がのぞくのが笑栗(えみぐり)、毬栗から落ちたものが落栗でこれを拾うのが栗拾い。
子どものころ菜園のそばに栗の木が1本あった。祖父がどんな手入れをしていたか知らないがその季節になると栗は生っていた。落栗を拾うのと合わせ、落ちた毬栗から実を取り出す楽しみがった。長靴を履き足元を武装する。手には火箸を持ち、毬栗の左右を長靴で抑え、次に外側に開くように踏むと笑栗のようになり火箸で取り出していた。
収穫すれば次は食べる。焼栗、茹栗、栗ご飯などは普通にある。栗饅頭も良く知られている。最近は栗の産地ではこれを加工して特産品として販売する6次産業にもなっている。市内北部地区では岩根栗という1個30から40㌘という大きさに特徴ある栗が知られている。大きさだけでなく味も一品。この栗は、平家の落人が作りあげたというがその話は別の機会にしよう。
我が家には生り物の木はない。今秋も複数回いただいた栗で茹栗、栗ご飯そして渋皮煮で秋を堪能させてもらった。毎年のことだが、渋皮煮は冷凍保存し、間食も含めて通年楽しませてもらっている。「のどに詰まらせるな」、祖母はそう言いながら茹栗の皮をむいてくれたことを思い出すが、それは終戦直後で食料難のころだった。