「期待してフジバカマ(藤袴)を植えたのにやってこなかった」というブログが知人を含めて何件か拝読した。やってこなかったのは旅する蝶の「アサギマダラ(浅黄斑)」。秋になると吸蜜、栄養補給して南へ旅立つ。県内でマーキングされたアサギマダラが台湾で確認されたことがあるというから、あの姿で何千キロ旅できるのだろう。
その吸蜜する花の一つががフジバカマ、我が家の狭庭では植えることができず公園のそれに寄り道する蝶を待っている。公園内には3カ所フジバカマが咲いている。夫婦で蝶を撮影中の人が、「今日はここだけしか来ていない」という情報で大噴水そばの花壇で粘る。高級カメラやそうでない人、観光で来て偶然出会えたと喜ぶ人などに愛想するかのように舞う。
何年か前にこんな観察をしている。羽は青灰色で半透明、前羽の外縁に沿う部分は黒く、後羽の外周部は鮮やかな濃褐色。羽を開けば、10センチほどもありそうだ。フジバカマの蜜を吸う。一回に吸う時間は長い。カメラを近づけてものぞき込んでも、人を恐れる様子もなく吸い続ける。ほかのチヨウのように羽ばたかず、ふわふわと心地よさそうに飛ぶ。上品な舞のようだ。俊敏さはないのに、あれで何千キロも移動するのかと驚く。
吸蜜しては舞い上がり次の花に、これを繰り返している。吸蜜したものを巣に持ち帰るでもなくみんな体内に蓄えているとしか思えない。それが旅の支度になるのだろう。不思議な謎があるから飛来を待っているのかもしれないと思い、また来いよと言いながらカメラを仕舞う。