shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Scene Changes / Bud Powell

2010-01-16 | Jazz
 “ブルーノートの1500番台” といえばジャズ・ファンの間では泣く子も黙る名盤の宝庫と言われている。すべてのジャズ・レーベルの中で断トツの人気を誇るブルーノート・レーベルの中でも特に1955~57年頃に録音されたものに歴史的な大傑作アルバムが集中しており、それらのレコード番号が1500番台だったということだ。しかしその呼称がいつの間にか独り歩きし始め、オークションでの価格も 1500番台というだけで付加価値が付き、アホみたいに高騰するようになってしまった。確かに超の付く歴史的名盤がゴロゴロしているし好きな盤も多いが、世間はあまりにも “栄光の(?)1500番台” を神格化というか、過大評価しすぎだと思う。
 そんな私がブルーノートの中で私が最も愛聴しているのは1500番台に続く4000番台の最初の頃(←1600番台は既にシングル盤で使われていたので不可、しゃーないので移転したばかりの新オフィスの電話番号に因んで4000番台にしたらしい...)、時期的に言うと1958年から60年頃に録音された盤である。ちょうどジャズがヒップな音楽として大衆に受け入れられ始めたのがこの4000番台シリーズ開始の頃で、昨日取り上げたアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」(BLP 4003)がその切り込み隊として大ブレイクしたというワケだ。単なる数字の連続の区切りに過ぎない1500番台や 4000番台に何となく固有のイメージがあるのは、ちょうど昭和歌謡や平成J-Popsのようにその時代の空気を敏感に反映してのものと言えるかもしれない。
 そんな4000番台アタマの盤で私が大好きな1枚がバド・パウエルの「ザ・シーン・チェンジズ ~ジ・アメイジング・バド・パウエル・第5集~」(BLP 4009)である。そもそもこのパウエルという人は “ジャズ・ピアノ・トリオ・スタイルの創始者” と言われる超大物で 1940年代後半から50年代初めにかけて緊張感に満ちたスリリングなプレイを聴かせていたが、その後は精神疾患による入退院を繰り返し、そのせいか50年代中盤以降は好不調の波が激しくなり晩年なんかはボロボロのプレイもなくはない。このあたり、同じように天国と地獄を味わった天才レスター・ヤングとイメージがダブってしまうのだが、彼に「プレス・アンド・テディ」という晩年の名盤があるように、パウエルにも「ザ・シーン・チェンジズ」という超人気盤があるのだ。
 このアルバムは1958年録音ということで、初期の “ピアノ・プレイング・マシーン” みたいなパウエル(←コレも大好きなんやけど...)とは別人のような、人間味を感じさせるハート・ウォーミングなプレイが楽しめる。中でもCMに使われるほどの人気曲①「クレオパトラの夢」のエキゾチックなメロディー・ラインは絶品だ。ポール・チェンバースのベースとアート・テイラーのブラッシュが生み出す盤石のリズムに乗って、時には唸り声を上げながら気持ち良さそうに歌心溢れるプレイを連発するパウエルが素晴らしい(^o^)丿
 私は名盤と駄盤の違いはアルバム中の名曲含有率だと信じている。私の経験ではジャズでもロックでもお目当ての1曲を頼りにアルバムを買って聴いてみると他の曲は???... みたいなパターンが結構多い(←そういう意味でもビートルズって傑出してますね!)のだが、この「ザ・シーン・チェンジズ」は①以外の曲もキャッチーでスインギー、親しみやすいメロディーに溢れた全9曲ハズレなしという非常に稀有なアルバムなのだ。このレコードはパウエルがヨーロッパへ移住する直前に吹き込んだということで、B面曲のタイトル⑥「クロッシング・ザ・チャネル」、⑦「カミング・アップ」、⑧「ゲッティン・ゼア」、⑨「ザ・シーン・チェンジズ」(海峡を越え→新天地に近づき→そこに着いたら→景色が変わる)を見れば一目瞭然なように、パリへの憧憬で心底ウキウキ気分だったのではないか。必殺の①も聴きようによってはシャンソンの「枯葉」をパウエル的に高速回転させたようなモンやし...(笑)。全体的に日本人好みのマイナー調の曲が多いが、どこか溌剌としていて躍動的な感じがするのはそのせいかもしれない。
 とにかくこのアルバムはピアノ・トリオというフォーマットの一つの理想形と言ってもいいくらいのスインギーな演奏が楽しめる。小難しいジャズが大嫌いな私がロック/ポップス・ファンにも絶対の自信を持ってオススメできる、メロディー良し、リズム良し、演奏良しと3拍子揃ったピアノ・トリオ・ジャズの金字塔だ。

Cleopatra's Dream - Bud Powell Trio

Moanin' / Art Blakey & The Jazz Messengers

2010-01-15 | Jazz
 私が “モダン・ジャズ” という言葉を聞いてまずイメージするのはピアノ・トリオや管楽器1本のワン・ホーン・カルテットではなく、いわゆる “二管ジャズ” つまり管楽器2本(たいていはテナーとトランペット)をフィーチャーしたノリノリのファンキー・ジャズである。 “ファンキー” といえばホレス・シルバーの「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ」やジャッキー・マクリーンの「ニュー・ソイル」、それに以前ご紹介したソニー・クラークの「クール・ストラッティン」といった一連のブルーノート・レーベルのアルバムがまず頭に浮かぶが、そんな中でもファンキー・ジャズの極めつけ、代名詞的存在といえるのが今日取り上げるアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」だろう。
 50年代ジャズ・アルバムのジャケットというのはカッコイイものが多く、中でもブルーノート・レーベルのジャケットは別格で、先の「クール・ストラッティン」を筆頭にめちゃくちゃセンスの良いデザインが目白押しだ。それらはすべて、リード・マイルスという名デザイナーがレーベル・オーナーであるアルフレッド・ライオンの意向に沿って作り上げたもので、レコード店のエサ箱を漁っていても BN のレコードは一目で見分けがつくほど個性的であり、ジャズ界のグッド・デザイン大賞をあげたいほどの “ジャケット名盤” が多い。
 このアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」はリーダーのアート・ブレイキーのドアップ写真で、お世辞にもセンスが良いとは言い難いが、逆にコッテコテの黒人ジャズをこれでもかと詰め込んだファンキー・ジャズの決定盤のジャケットとしてはこれ以上のものは考えられない。まさに “音が聞こえてきそうなジャケット” と言えるだろう。メンバーはリーダーのアート・ブレイキー(ds)を筆頭にリー・モーガン(tp)、ボビー・ティモンズ(p)、ベニー・ゴルソン(ts)、ジミー・メリット(b)というジャズ・メッセンジャーズ史上最強の布陣である。
 このアルバムのタイトル曲①「モーニン」(←moan とは “うめき声を出す” という意味で、“朝” のことじゃありません、念のため...)は恐らくジャズメン・オリジナル曲では最も有名かつ人気の高いナンバーだろう。何と言っても61年の初来日で我が国にファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こし、“ソバ屋の出前持ちまでもが口笛でこの「モーニン」を吹いていた” という伝説(?)を生んだくらいのキャッチーなナンバーなのだ。ピアノのティモンズが作ったこの曲はゴスペルのコール・アンド・レスポンスを大胆に導入しており、ピチピチと躍動するモーガンのトランペット、まるで酔っ払いの牧師のように(?)ガンガンとブロック・コードを連打するティモンズのまっ黒けなプレイ、地味ながら堅実にシメる所はキチッとシメるメリットの剛力ベース、そしてフロント陣を鼓舞するブレイキーのワイルドかつ正確無比なドラミングと、まさに絵に描いたような名曲名演だ。コレを聴いて身体が揺れなければ、ジャズはヤメといた方がいいと思う。
 この①以外にも血沸き肉踊るようなノリがたまらない②「アー・ユー・リアル」やゲバゲバ90分のテーマ(←古っ!!!)を思い起こさせるようなブレイキーのドラミングに耳が吸いつく⑤「ブルース・マーチ」など、どこを切っても充実のファンキー・ジャズが飛び出してくる。とにかく聴いていて理屈抜きに楽しいのだ。これでこそファンキーの権化、ジャズ・メッセンジャーズの真髄だろう。この後、ジャズは大衆音楽としての役割を放棄し、迷走した挙句に自滅してしまうのだが、そういったことを鑑みても、このアルバムが出た1950年代後半というのはジャズが最も美しかった時代だと言えるだろう。親しみやすいメロディーとリズムで大衆を魅了したこのアルバム、そのダイナミックなファンキー・サウンドは圧巻だ。

Moanin'-Art Blakey and The Jazz Messengers

Passion Mina in N.Y. / 青江三奈

2010-01-14 | 昭和歌謡
 ちあきさんにハマッて以来昭和歌謡をよく聴いている。私の音楽人生は、ビートルズは別格としてそれ以外のジャンルに関しては、ある時はオールディーズの懐かしいメロディーに浸りきり、ある時は胸毛系ハードロックでヘッドバンギングし、ある時はイエイエに萌え(笑)、又ある時は昭和歌謡で日本人の血に目覚める、といったことの繰り返し。そんな行ったり来たりの振幅の中で未知の盤に出会いながら新鮮な感動を味わっている。やはり私には洋邦問わず昔の音楽が合っているようだ。
 ということで今日は青江三奈でいこう。以前このブログで彼女のジャズ・アルバム「ザ・シャドウ・オブ・ラヴ」(93年)やブルースに回帰した「レディ・ブルース -女・無言歌-」(90年)を取り上げたことがあったが、 “90's 三奈3部作” の残る1枚がこの「パッション・ミナ・イン・NY」(95年)である。このアルバムは、マル・ウォルドロンらバリバリのジャズメンを迎えて制作された前作「ザ・シャドウ・オブ・ラヴ」が好評だったのを受け、ジャズの本場ニューヨークに乗り込んで行われたチャリティー・ディナー・ショーの模様を収録したライヴ盤で、バックを固めるのはすべて現地のジャズメンたち... ルー・ソロフやデヴィッド・スピノザ(ポールの「ラム」やジョンの「マインド・ゲームズ」にも参加した腕利きギタリスト!)という凄いメンツだ。いやはや、バブリーというか、ホンマにエエんかいな...(笑)
 まずはニューヨークの喧騒の SE に続いてアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの代名詞とも言える「モーニン」のテーマに乗せて歌手生活30周年を迎えた彼女を紹介する英語のMCが入り、 “おぉ、いきなり「モーニン」かよ!めっちゃ雰囲気あってエエなぁ(≧▽≦)” と思っていると、「モーニン」から実にスムーズに①「伊勢佐木町ブルース」に切り替わり(1分27秒)、例の溜め息ヴォーカルが炸裂... お、面白すぎる!NY摩天楼に響き渡る “ドゥドゥビ・ジュビ・ドゥビ・ジュビドゥヴァ~♪” が圧巻だ。あ~腹筋痛い(>_<) 私なんかこのオープニングだけでメシ3杯は喰えますわ(^o^)丿 
 アットホームな雰囲気の中、②「長崎ブルース」、③「夜の池袋」、④「国際線待合室」と彼女の十八番を連発、いわゆるひとつの “歌謡曲のブルース” は聴きようによってはクッサクサなのだが、そこがまたファンにはタマランのよね(^.^) このままコテコテ路線でラストまで突っ走るのかと思いきや、流れてきたピアノのイントロは何とビリー・ジョエルの⑤「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」、中々ニクイ選曲である。雰囲気だけで聴かせてしまうところなんか、さすがはクラブ・シンガーで鍛えただけの事はある。年季が違いますわ(^.^) 
 アメリカ人にもなじみの深い⑥「上を向いて歩こう」はあえてレゲエ調にアレンジして歌っているのだが、コレが結構面白い。正直、最初は違和感があったのだが、何度も繰り返し聴くうちにハマッてしまった。⑦「ラヴ・イズ・フォーエヴァー~いつかまた~」、⑧「白樺の小径」、⑨「淋しい時だけそばにいて」、⑩「恍惚のブルース」と、又々コテコテ路線が続き、彼女の日本人としてのアイデンティティーが強い説得力で迫ってくるが、本場ニューヨークのジャズメンが真剣な表情で歌謡ブルースの伴奏をしているところを見てみたかった(笑)。
 ラストの⑪「女とお酒のぶるーす」ではスピノザのゲンスブールなフレーズに大爆笑、テナーもこれで最後と吹っ切れたのか、「アンダー・ファイアー」のガトー・バルビエリみたいにブヒバヒ吹きまくり、そこに彼女の濃厚にして芳醇なハスキー・ヴォイスが絡んでいくという、ちょっと他では味わえないような妖しさがたまらない。そして最後は取って付けたような「モーニン」のテーマへと戻って幕となる。いやぁ~、コレは私も含めてその筋系(?)の音楽が好きな人間には堪えられない痛快な1枚ですわ(≧▽≦) 

青江三奈-オープニング "MOANIN"~伊勢佐木町ブルース

自家製第2弾 “ちあきなおみ、昭和をうたう” (笑)

2010-01-13 | 昭和歌謡
 ちあきなおみの昭和歌謡カヴァーの編集盤にこれぞ!という決定版がない云々という趣旨のことを一昨日のブログに書いた。しかしだからといってハイそーですか、と既存のコンピ盤で妥協したくはない。となれば “関西のジョージ・マーティン”(笑)がやるしかない。ということでちあきなおみ・ウイーク(?)のシメは、「リアル・ダブル・ファンタジー」に続く自家製シリーズ第2弾... 「ちあきなおみ、昭和をうたう」の制作だ。
 音源はすべてコロムビア時代の5枚のアルバム「愛の旅路を」、「愛は傷つきやすく」、「恋と涙とブルース」、「円舞曲」、「そっとおやすみ」から、誰もが一度は耳にしたことがありそうな有名なカヴァー曲を厳選し、通して聴いて違和感のない流れになるように並べてみた。
 ①ブルーライト・ヨコハマ(いしだあゆみ) from「愛は傷つきやすく」
 ②アカシアの雨がやむとき(西田佐知子)  from「恋と涙とブルース」
 ③あなたならどうする(いしだあゆみ)   from「愛は傷つきやすく」
 ④人形の家(弘田三枝子)         from「愛は傷つきやすく」
 ⑤赤坂の夜は更けて(西田佐知子)     from「愛の旅路を」
 ⑥恋の奴隷(奥村チヨ)         from「愛は傷つきやすく」
 ⑦喧嘩のあとでくちづけを(いしだあゆみ) from「愛は傷つきやすく」
 ⑧ちあきの夢は夜ひらく(藤圭子)   from「恋と涙とブルース」
 ⑨カスバの女(エト邦枝)         from「恋と涙とブルース」
 ⑩赤いグラス(アイ・ジョージ&志摩ちなみ)from「恋と涙とブルース」
 ⑪東京ブルース(西田佐知子)       from「恋と涙とブルース」
 ⑫新宿ブルース(扇ひろ子)       from「愛の旅路を」
 ⑬涙のかわくまで(西田佐知子)      from「愛の旅路を」
 ⑭ベッドで煙草を吸わないで(沢たまき) from「そっとおやすみ」
 ⑮たばこのけむり(ちあきなおみ)     from「そっとおやすみ」
 ⑯経験(辺見マリ)           from「愛は傷つきやすく」
 ⑰愛は傷つきやすく(ヒデとロザンナ)   from「愛は傷つきやすく」
 ⑱知りたくないの(菅原洋一)      from「恋と涙とブルース」
 ⑲五番街のマリーへ(ペドロ&カプリシャス)from「円舞曲」
 ⑳あなた(小坂明子)          from「円舞曲」
出来上がったCD-Rを一気通聴してみると、一度聴いたら忘れられないような濃厚なメロディーを持った曲が多いことに改めて気づかされる。これこそ昭和の空気というヤツだろう。又、当時は何の違和感も感じなかったが今の耳で聴くと、⑥で顕著なように、何もそこまで卑下せんでも...と思うぐらい男尊女卑的な歌詞が目立つ。まぁあの頃とは社会が大きく変わったということだろう。昭和は遠くになりにけりである。そんな “濃ゅい” 楽曲の数々を1曲1曲絶妙なヴォーカルで“自分の歌”として表現し、聴き手をちあき・わーるどへと誘う彼女のシンガーとしての懐の深さが堪能できる。特に⑤「赤坂の夜は更けて」はこの曲の屈指の名唱だと思うし、間奏の乾いたギターやむせび泣くサックスもたまらない(≧▽≦) 尚、⑮はカヴァーではないが、⑭のアンサー・ソングのような感じでこの2曲をセットで聴くと雰囲気抜群なのであえて選んでみた次第。ジャケットは既製のモノを流用しよう(笑)。
 とまぁこんな感じのコテコテ選曲になってしまったが、カーステでこれを聴きながら真っ赤なRX-7で阪奈道路を流していると気分はすっかり菅原文太、トラック野郎な毎日だ(^o^)丿

赤坂の夜は更けて


ちあきなおみ アカシアの雨がやむとき


カスバの女
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「朝日のあたる家」特集

2010-01-12 | Cover Songs
 「朝日のあたる家」はアメリカのトラディショナル・フォーク・ブルースで、様々なアーティストによって取り上げられているが、私が初めてこの曲を聴いたのはもちろんアニマルズのヴァージョンだった。そう、「朝日のあたる家」といえば何はさておきアニマルズなんである。この歌には何種類か歌詞が存在することを当時の私は全く知らず、アニマルズ・ヴァージョンの歌詞が “多くの貧しい少年達の堕落の場所” となっていたので私はてっきり少年刑務所の歌だと思っていた。
 その後かなり経ってから、この曲の歌詞は元々 boys ではなく girls で、娼婦に身を落とした女性が自らの半生を懺悔する歌だったと知った。本当は “朝日があたる” 家ではなく、“朝日楼” という名の売春宿のことだったのだ。そう考えると後半部の “私のようになってはいけない... 人生を罪悪と哀しみで汚して... 朝日楼の中で” という歌詞がよりリアルに響いてくる。とてもじゃないがヒット曲云々の世界ではない。
 大晦日に見たちあきなおみのBS特番で最もインパクトが強かったのが、彼女が瞬き一つせずに歌うこの「朝日のあたる家(朝日楼)」だった。女の情念を見事なまでに表現したそのヴォーカルはまさに鳥肌モノ。私は1年365日音楽漬けの生活を送っているが、これほど凄まじい吸引力を持ったヴォーカルに出会った記憶がない。凄い、いや、凄すぎる... 日本にこんなソウルフルなシンガーがいたなんて... (゜o゜) この曲で私は完全にちあきなおみにハマッてしまったのだ。ということで今日は手持ち盤の中からオススメの「朝日」をご紹介:

①Animals
 彼ら以前にもジョーン・バエズやボブ・ディランがこの曲を歌っていたが、ロック/ポップスの世界でこの曲を一躍有名にしたのはアニマルズである。オルガンを効果的に使ったR&B色の濃いプレイがインパクト大で、3週連続全米№1も当然だろう。
The Animals - House of the Rising Sun (1964) High Definition [HD]


②ちあきなおみ
 いきなり第一声の “あたぁ~しがぁ~♪” で一気に彼女の世界に魅き込まれ、その後はもう画面から目を逸らすことができない。浅川マキが訳して歌った「朝日楼」をこれほどまでにドラマチックに表現するとは... (≧▽≦)  声の高低、強弱を自在にコントロールし、フッと声を止め、囁くように歌うなど、 “間の芸術” を活かした細やかな感情表現が絶品だ。魂で歌うシンガー、ちあきなおみの最高傑作!!!
朝日楼(朝日の当たる家) ちあきなおみ the house of the rising sun chiaki naomi


③Klaus Weiss Trio
 この曲のジャズ・ヴァージョンで一番好きなのがコレ。グルーヴィーなピアノに力強いベースが絡んでいくという、ピアノトリオ・ジャズの理想的な展開が楽しめる。ebay でこの曲の入ったアルバム「グリーンスリーヴス」のオリジナル盤を手に入れた時は嬉しくてたまらなかった(^o^)丿
クラウス・ワイス・トリオ


④Marie Laforeit
 マリー・ラフォレがトツトツと歌うこのヴァージョン、私はなぜか粉雪舞い散る極寒のシベリアを連想してしまうのだが、えもいわれぬ哀愁がそこはかとなく漂ってきて思わず聴き入ってしまう。彼女にしか出せないこの独特のムードがたまらない。
マリー・ラフォレ


⑤Ventures
 ベンチャーズはこの曲をアルバム「ウォーク・ドント・ラン64」で取り上げているが、やはり決定版は「ライブ・イン・ジャパン」だろう。インスト・ロックの生命線と言うべきメロディー・アレンジの巧さは傑出しており、数多い “テケテケ朝日” の中でも断トツの素晴らしさだ。
The Ventures - The House Of The Rising Sun

ルージュ / ちあきなおみ

2010-01-11 | 昭和歌謡
 この3連休、ちあきなおみが止まらない。演歌調の曲を除いてコンプリートを目指す勢いだ。彼女のオリジナル・ヒット曲は「しんぐるこれくしょん」1枚でほぼ事足りるし、外国曲カヴァーは昨日の「Another World」で OK なのだが、邦楽カヴァーが難関で、中々一筋縄ではいかない。
 彼女のキャリアの原点である70'sコロムビア時代は3つの期間に大別できる。1969年のデビュー~1974年の “昭和歌謡路線” 時代が【前期】、1975年~1976年の “演歌路線” 時代が【中期】、そして1977年~1978年の “ニューミュージック路線” 時代が【後期】である。
 前期の昭和歌謡モノに関しては、かなりの数のベスト盤やコンピレーション盤が発売されているにもかかわらず、どれもこれも帯に短しタスキに長しで中途半端なモノばっかりだ。かといって1万円を超えるボックス・セットを買っても各ジャンルから万遍なく選曲されているため漏れ落ちも多く、コスト・パフォーマンスが悪いことこの上ない。ではどーすればいいのか... オリジナル盤に手を加えずにそのまま出してくれればいいのである。ヤフオクを見ていてもビッドが集中するのは “ちあきなおみアーカイブス・アルバム復刻これくしょん” と呼ばれるシリーズのオリジナル復刻盤ばっかりで、レコード会社のディレクターがテキトーに選曲したと思しきコンピ盤など数百円でも誰も買わない。CDが売れないと言って嘆く前にレコード会社はもっとファンのニーズに敏感になるべきだ。特に昭和歌謡の名曲カヴァーを多く収録した「恋と涙とブルース」、「愛は傷つきやすく」、「愛の旅路を」といった初期の名盤のCD化を切に望みたいと思う。
 中期の演歌モノはいくらちあきさんの歌でも私にはムリ(>_<) 何でも担当ディレクターが変わって演歌路線に舵を切ったということらしいが、ホンマに迷惑なハナシだ。ちあきさんも内心鬱陶しかったのではないか... その証拠に演歌調のシングルを数枚出すと、 “こんな辛気臭い歌なんかもう唄ってれれないワ!” とばかりにニューミュージック路線に方向転換、それまでの陰々滅滅たる演歌路線は何やったん?と言いたくなるような快作を連発し始める。そんなコロムビア後期の1977年にリリースされたのが、ちあきさんのオリジナル・アルバムの中で私が最も好きな「ルージュ」である。
 このアルバムはA面で中島みゆき、B面で井上陽水と因幡晃の作品を取り上げたもので、それまでの彼女からは考えられないような斬新な企画といえるものだが、アルバムの出来も期待を裏切らない素晴らしいものだ。まずA面の中島みゆき作品群を聴いて驚いたのは、歌い方から声質までちあきさんが “中島みゆき化” しているということ。④「帰っておいで」なんか中島みゆきの未発表ヴァージョンで通ってしまいそうなぐらいソックリだ。これはモノマネとかそういう次元の低い話ではなく、それだけ彼女が作者である中島みゆきの世界を正しく理解してその中に深く深く入り込んで歌っているということだろう。歌の世界に自分を特化させ、なおかつこれだけのズバ抜けた表現力で聴き手を魅了してしまう... ホンマに凄いシンガーだ。①「ルージュ」と⑤「あばよ」は中島みゆきの「おかえりなさい」で作者本人のヴァージョンを何度も聴いてきたが、このちあきさんヴァージョンも甲乙付け難い素晴らしい出来映えだと思う。
 ②「雨が空を捨てる日は」では山口百恵~中森明菜へと受け継がれる “一聴クールでありながらハートウォーミングなヴォーカル” が楽しめる。③「流浪の詩」はイーグルスの「テイク・イット・イージー」を思わせるような軽快なカントリー・ロック調で、ちあきさんのレパートリーの中では実に希少価値のあるナンバーだ。それにしてもこの人、ホンマに何でも歌いこなしてしまう天才やね(^.^) 
 B面の井上陽水作品では⑦「氷の世界」と⑨「断絶」であの独特の “陽水節” を再現しているのが凄い。聴いているとまるでちあきさんがサングラスをして歌っている(笑)かのような錯覚を覚えてしまうくらい “女陽水” している。これ、ホンマに面白いです(^o^)丿 因幡晃の⑩「わかってください」は当時ラジオで頻繁にかかっており、あの甲高い声も女々しい歌い方も(←好きな方、ゴメンなさい)生理的に合わなかったのだが、このちあきさんのヴァージョンは最高!主人公の切ない気持ちがビンビン伝わってくる。聴く者の心を震わす名唱だ。それにしてもこれだけ個性の強いシンガー・ソングライターたちの歌世界に入り込み、変幻自在に歌いこなしてしまうとは... 彼女こそ洋邦問わず最高のシンガーの一人だと思う。

ちあきなおみ   あばよ


わかって下さい ちあきなおみ(因幡晃カバー曲)  Chiaki Naomi

Another World / ちあきなおみ

2010-01-10 | 昭和歌謡
 今日もちあきさんである。とにかく今年に入ってからはビートルズとちあきさんしか聴いていないと言っていいぐらいハマっている。彼女のレパートリーは大きく分けて、 (1)オリジナル・ヒット曲(歌謡曲と演歌)、(2)邦楽のカヴァー(歌謡ポップス、ムード歌謡、昭和初期の叙情歌、フォーク、ニューミュージック)、(3)洋楽のカヴァー(ジャズ、シャンソン、そしてポルトガル民謡のファド)の3つに分けられると思うが、私が特に魅かれたのは(2)(3)の膨大な数のカヴァーである。もちろんオリジナル・ヒット曲もエエのだが、彼女のシンガーとしての表現力、そして聴き手を魅きつける吸引力が最も顕著な形で発揮されるのが誰でも知っている名曲のカヴァーなのだ。今日はそんな彼女の外国曲カヴァーばかりを集めた2枚組「Another World」をご紹介したい。
 ちあきさんはデビューした1969年からコロムビア・レコードに在籍していたが、1978年に “ヒット曲を追うのではなく、自分が歌いたい歌にじっくり取り組みたい” と休業を宣言、3年間の充電期間を経てビクターに移籍し、1981年にはフランスのシャンソンをカヴァーした「それぞれのテーブル」、1982年にはアメリカのジャズ・スタンダードをカヴァーした「THREE HUNDREDS CLUB」、そして1983年にはポルトガルのファドをカヴァーした「待夢(たいむ)」と、“日本の歌を見つめ直すため” に外国曲を独自の解釈でカヴァーしたアルバムを年1作のペースで発表していく。そしてこれらの “外国曲カヴァー3部作” の集大成として1985年に昭和初期の流行歌を斬新な(?)アレンジでカヴァーした「港が見える丘」をリリース、その中に収録されていた「星影の小径」はCMソングとしてお茶の間に流れていたのでご存じの方も多いかと思う。その後、彼女は1988年にテイチクへと移籍し、再び歌謡曲の世界へと戻っていくのだが、そういう意味でも彼女の80's ビクター時代というのはポップス系のちあきさんが好きなファンの狙い目なのだ。
 この「Another World」は新星堂の自社レーベル、オーマガトキからリリースされた2枚組CDで、上記の「それぞれのテーブル」、「THREE HUNDREDS CLUB」、「待夢(たいむ)」を完全収録し、更に「港が見える丘」からタイトル曲と「星影の小径」の2曲を加えた32曲入りの超お徳用盤なのだ。残念ながら現在廃盤で入手困難らしく、定価3,990円だったものが7,000円以上で取引されているようなのだが、私は元旦の真夜中に Google で検索しまくり東京の歌謡曲専門店の通販リストに3,000円で出ているのを運良く発見、思わずクリックする手が震えそうになるほどコーフンしてしまった。ホンマに新年早々ツイてるわ(^.^) 
 このアルバムは全30曲すべてにオリジナルの日本語詞が、そして曲のタイトルも歌詞の内容を的確に表した日本題が付けられている。ここで展開されているのは演歌のエの字もないソフィスティケーションの世界であり、クールでありながらふくよかで温か味を感じさせる彼女のヴォーカルが絶品だ。雰囲気としては「いい日旅立ち」や「美・サイレント」の頃の山口百恵を更に大人っぽくしたような感じで、洗練されたちあきさんの世界、アナザー・ワールドが堪能できる。とにかく小手先の技巧をひけらかすのではなく、全身全霊で自分の歌世界を表現しているのが凄い。その極めつけと言えるのが上記の「星影の小径」で、その透明感溢れる歌声は1949年に小畑実が歌ったこの古い流行歌に新たな生命を吹き込み、まるで彼女のオリジナル曲のような印象を聴く者に与える。特に唄い出しのアカペラ一人多重コーラスなんかもう鳥肌モノ。カヴァーがオリジナルを超える瞬間が実にスリリングだ。因みにこの曲は1986年にマキシムコーヒーの、1992年にアウディの、そして2006年にキリン五穀茶と、20年間で3度もCMに起用されている。彼女の歌声がそれだけ多くの人々にアピールしたという何よりの証だろう。
 超一流アーティストによるカヴァーはオリジナルを凌駕する。ビートルズしかり、エルヴィスしかりである。そんなことを考えながら、再度「星影の小径」や「黄昏のビギン」を聴くと彼女がいかに凄い存在かを改めて痛感させられる。ちあきなおみの真髄はカヴァーにあり、なのである。

Audi ファーレンネットワーク ちあきなおみ① 1999


ちあきなおみ 星影の小径

ちあきなおみ・しんぐるこれくしょん

2010-01-09 | 昭和歌謡
 今日は久々に昭和歌謡だ。この数ヶ月というもの、ほとんどビートルズ・オンリーに近かったものが何で又いきなりちあきなおみやねん、と思われるかもしれないが、大好きなモンはしゃあない(^o^)丿 私はバリバリのロック/ポップス好きを自認しているが、ちあきさんの歌にはジャンルの壁を軽く超越して心に訴えかけてくる強烈な説得力がある。歌謡ポップスやムード歌謡の楽曲を歌っていながらもその歌声は全然バタくさくなく、モダンな響きを持ったザ・ワン・アンド・オンリーな世界を作り上げてしまうところが凄い。彼女こそあの美空ひばりに比肩する、日本の音楽史上最高の実力派シンガーの一人なのだと言い切ってしまおう。
 とまぁこのように今でこそ自信を持ってこう断言している私だが、お恥ずかしいことについ最近まで、彼女については名前を知っている程度でその代表曲「喝采」ですらフル・コーラス聴いたことがなかったという情けなさ(>_<) 正直、 “コロッケのモノマネに出てくる演歌系歌手” “タンスにゴン!の CM でエエ味出してたオモロいオバサン” という認識しかなかった。
 そんな私に彼女の素晴らしさを教えてくれたのが職場の同僚であり、大親友の KGちゃんだった。“あれは3年前~♪”、じゃなくって1年ほど前のこと、仕事の休憩時間に平山みきがすべっただとか、いしだあゆみが転んだとか言って私が盛り上がっていると “その辺の歌手が好きやねんやったら shiotch 絶対ちあきなおみ気に入ると思うでぇ!” と言ってちょうどツタヤでレンタルしてきたばかりのCDを貸してくれた。それがこの「ちあきなおみ しんぐるこれくしょん」である。
 私は“ちあきなおみ? いくら昭和歌謡が好きやっちゅーても、演歌は趣味ちゃうわぁ” と内心思いつつも、彼女のコロムビア時代(1969-1978)の全シングルのA面27曲(+B面18曲)を時系列に沿って並べたその2枚組CDを借りて帰った。しかしその頃私はマヌーシュ・スウィングに凝っていてそっちに頭が行ってしまっていたので、せっかく貸してもらった CD もながら聴きで、真剣にスピーカーに向って聴いてはいなかった(←反省!)。結局 Disc-1 前半に収められた歌謡ポップスの楽しさ全開の「雨に暮れた慕情」、「朝がくるまえに」、「四つのお願い」、「X+Y=LOVE」や日本人の心の琴線をビンビン刺激する「別れたあとで」、「私という女」、「しのび逢う恋」、「今日で終わって」、「恋した女」といった楽曲群を聴いて“へぇ~ ちあきなおみって結構エエやん” と思った程度で、 Disc-2 になると「矢切りの渡し」、「恋挽歌」、「さだめ川」といったド演歌な世界が展開されており、“コレはやっぱりキツイわ...” となり、その時はそれ以上彼女を深く追求してみようという気にならなかった。
 それから数ヶ月が経ち、大晦日に BS で彼女の特番があることを知って KGちゃんに教えてあげたのだが、ビートルズ漬けだった私も気分転換に見てみようと思ってテレビをつけた。最初は軽~い気持ちで見ていたのだが、番組が進むにつれて彼女の歌の世界にグイグイ惹き込まれていき、番組が終わる頃にはすっかり彼女のファンになっていた(←単純!)。洗練の極みとでもいうべき「星影の小径」の粋な一人多重唱、そして凄味さえ感じさせる「朝日のあたる家(朝日楼)」の入魂ヴォーカル... 彼女がこんなに素晴らしいシンガーだったとは!!! 私は大晦日から元旦にかけてネットで彼女のディスコグラフィーを徹底研究し、アマゾンやヤフオクで CD を買いまくった。
 後日、仕事始めで顔を合わせた KGちゃんに “ちあきさん見たでぇ~... めっちゃ良かったわぁ... もうバリバリのちあきさんファンやし。一気に CD 8枚も買うてしもぉたわ。今ちあきなおみの自家製べスト作ってんねん(^o^)丿 何やったら「ちあきなおみ・レア・トラックス」っていうのも作ったろか?” って言ったら大笑いされてしまった。

↓彼女の代表曲「喝采」の激レア英語ヴァージョンです。この歌声、タマランよ... (≧▽≦)
目を閉じて彼女の世界に浸ってみてください。
Chiaki Naomi "Kassai 喝采" English Version
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The Best Of George Harrison (Pt. 2)

2010-01-08 | George・Ringo
 ジョージはビートルズの実質的ラスト・アルバム「アビー・ロード」で①「サムシング」、③「ヒア・カムズ・ザ・サン」というレノン=マッカートニーに比肩するようなスーパー・ウルトラ大名曲を2曲も提供し、一気に注目を集めた。それまでジョンとポールという二人の天才の陰に隠れがちだったジョージは積年のうっ憤を晴らすかのように一気にその才能を大爆発させ、フィル・スペクターと組んで3枚組大作「オール・シングス・マスト・パス」を70年にリリース、そこから 1st シングルとしてカットされ4週連続全米№1を爆走したのがジョージ屈指の名曲⑧「マイ・スウィート・ロード」だった。
 イントロの “ジャンジャン ジャジャジャ~ン♪” というアコギのリズム・カッティングを聴いただけでこれから素晴らしい音楽が始まりそうな期待感に胸がワクワクしてくる。続いてジョージの至芸ともいえるスライドギターがたまらんメロディーを奏で、スペクターお得意の分厚いサウンドにサポートされてジョージのヴォーカルが登場、単純な歌詞の繰り返しがえもいわれぬ高揚感を生み、宗教嫌いの私ですら思わず “ハァ~レェ~ ルゥ~ヤ♪” と口ずさんでしまうという必殺のキラー・チューンだ。盗作騒動?論理的に考えても、ジョージほどの富と名声を得た人が自らのキャリアを危険にさらしてまで盗作せなアカン理由がないやん... それに確信犯的パクリと無意識アダプトは違うし。シフォンズは「マイ・スウィート・ロード」の大ヒットのおかげでタダで「ヒーズ・ソー・ファイン」の宣伝ができたんやから感謝こそすれ告訴するなんて、何とまぁケツの穴の小さい連中なんや(>_<) “ビートルズのメンバーに使ってもらえて光栄です” ぐらい言えんのか?
 翌71年に出された 2nd シングル⑬「ホワット・イズ・ライフ」(邦題:美しき人生)も明るくてノリの良いナンバーで、まるで目の前に輝ける道が広がっているような、非常にポジティヴな雰囲気を湛えており、全米10位のスマッシュ・ヒット。オリビア・ニュートン・ジョンも72年のアルバム「オリビア」でカヴァーしている名曲だ。様々な楽器が適材適所で使われており、繰り返し聴くうちに “おっ、こんな所にこんな音が入ってたんか!” と、何かしら新しい発見があって実に楽しい。細部に至るまで徹底的に作り込んでいくスペクター・マジックの真髄を垣間見れる1曲だと思う 。
 71年夏に開催された “バングラ・デシュ・コンサート” と同時期にリリースされた⑪「バングラ・デシュ」(スタジオ録音)は文字通りバングラ・デシュ難民救済のためのチャリティー・シングルで、偉大なる前2曲に比べてしまうとどうしても小粒というか、ポップさに欠けるというか、楽曲としての大衆へのアピール度が弱く、全米23位が限界だった。私も最初聴いた時は “何か重苦しい曲やなぁ...” (←そもそも貧困の現状を訴える内容なので曲調も重苦しくて当然なのだが...)と思ったが、何度も聴くうちにジョージの魂の叫びのような歌声が心にグイグイ食い込んできていつの間にか惹き込まれていた。
 73年にはアルバム「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」から⑨「ギヴ・ミー・ラヴ」がシングル・カットされ全米№1をゲット。ジョージお得意のスライド・ギターはまさに変幻自在と言ってよく、聴く者に鮮烈な印象を与えてくれるのだが、素のメロディーも実に綺麗でエエ曲やと思う。まさかこの時点で彼が次に№1を取るまで15年もかかるとは誰も予測していなかったと思うが、チャート的にはこの頃から徐々に失速していく。やはりアルバム1枚からキャッチーなシングルを2~3枚切っていかないとキツイのだろう。そういう意味で、74年のアルバム「ダーク・ホース」のタイトル曲⑫は、渋~い曲で私は結構好きなのだが(←特に隠し味のフルートなんてエエ味出してると思うんやけど...)シングルとしてはインパクトが弱く、ジョージの声もかなり荒れてて結局15位止まり。この73~74年の2枚のアルバムがもう少しポップな出来だったらその後の流れも変わっていたように思うのだが...(>_<)
 75年のアルバム「エクストラ・テクスチャー」からの 1st シングル⑩「ユー」(邦題:二人はアイ・ラヴ・ユー)は元々ジョージがロニー・スペクターのために書いたがボツになっていたものを引っ張り出してきたもので、私にはこの曲だけアルバム中でポツンと浮いているように聞こえたものだ。どことなく「ホワット・イズ・ライフ」を思わせるキャッチーなナンバーで、コレが「ギヴ・ミー・ラヴ」の前後に出ていたらと思ってしまうが、一度狂った歯車は中々元へは戻らず、この曲は20位になるのがやっとだった。結局このアルバムを最後にジョージはワーナーへと移籍、心機一転して傑作「33 & 1/3」を作り上げるのだが、それはまた別のはなし... (^.^)

What Is Life - George Harrison

The Best Of George Harrison (Pt. 1)

2010-01-07 | George・Ringo
 昨日でリンゴ3連発も一段落し、ビートルズ・ソロ特集も一応終わりにしようかと思ったが、よくよく考えてみるとまだジョージだけソロ時代の総括をやっていなかった。オリジナル・ソロ・アルバムは又別の機会に譲るとして、とりあえずリンゴ同様ベスト盤で大まかな流れを整理しておこうと思う。
 ジョージのベスト盤と言えば去年 “レーベルを超えたオールタイム・ベスト” という触れ込みで「レット・イット・ロール」が出たが、あまりにもアホな選曲に呆れてモノも言えなかった。「ディス・ソング」も「クラッカーボックス・パレス」も「二人はアイ・ラヴ・ユー」も「ダーク・ホース」も「バングラ・デシュ」も入っていないベスト盤って何なん?しかもその代わりにバングラ・デシュ・コンサートからビートルズ時代の彼の代表曲3曲のライヴ・ヴァージョンを入れるという、 “とにかく売れたらそれでエエやん” 的精神丸出しの暴挙!オリビアが選曲したと謳っているが、ホンマかいな?私がひねくれているだけかもしれないが、ファン目線の選曲基準とはとても思えない。ジャケットがめちゃくちゃカッコエエだけに返す返すも残念だ。そういえば「ベスト・オブ・ダーク・ホース1976-1989」という盤もあったなぁ... いくら「セット・オン・ユー」が1位になったからっちゅーて、アレはないわ。個人的には好きな曲が多いけど、一般ウケとは程遠い内容だった。
 そこで登場するのが76年にアップルとの契約切れに伴ってレコード会社が最後のアブクゼニ稼ぎとばかりに発売した「ザ・ベスト・オブ・ジョージ・ハリスン」である。選曲はジョージに無断でレコード会社がやったということだが(←アーティストの側に拒否権ないんかな?)、この盤はA面にビートルズ時代の代表曲、B面にソロになってからのヒット曲というイビツな構成になっており、いかにも “アンタはソロ・ヒットだけではベスト盤1枚作れへんよ” と言ってるみたいでジョージに失礼だ(←ジュリーのベスト盤に「シーサイド・バウンド」入れへんでしょ?)。「イズント・イット・ア・ピティ」とか、「ディン・ドン」とか、「イフ・ノット・フォー・ユー」とか、いくらでもエエ曲あるやん!しかもそれに追い打ちをかけるかのようなこのトホホなジャケット... このジャケ見て購買意欲が湧きますか?
 ボロクソついでに言うと、カッティング・レベルが低いせいか情けないくらい脆弱な音で、「マイ・スウィート・ロード」や「ホワット・イズ・ライフ」といったスペクター・サウンドすら迫力に欠け、 “音の壁” どころか “音のカーテン” と言った方がいいくらいの薄っぺらいサウンドだ。ジョージと同じくアップル離脱ということで同時期に発売されたジョンの「シェイヴド・フィッシュ」やリンゴの「ブラスト・フロム・ユア・パスト」といった元ビートルのベスト盤と比べても、選曲、ジャケット、サウンドと、すべての面でこのジョージ盤だけが不当な扱いを受けているように思う。実際、私がこの盤を買ったのも、「バングラ・デシュ」のシングル・ヴァージョンが入ってるからで、あまりちゃんと聴いていなかった、
 で、今日久しぶりに①「サムシング」から⑬「ホワット・イズ・ライフ」まで一気聴きしてみたのだが、LP時代には納得いかなかったAB面分割構成もCDで通して聴くと、グループとかソロとか関係なしにジョージ・ハリスンという一人のアーティストの足跡が辿れて違和感なく楽しめるのだ。CDフォーマットの恩恵か、それとも私の感性が変化したのだろうか?とにかくこのアルバム、安心ラクチン格安パック・ツアーでジョージのヒット曲を楽しめるという点では大いにアリだと思う。70年代前半のヒット曲についてはパート2で... (つづく)

マイ・スウィート・ロード/ジョージ・ハリスン My Sweet Lord/George Harrison
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Photograph - The Very Best of Ringo (Pt. 3)

2010-01-06 | George・Ringo
 リンゴのソロ・キャリア総括も後半戦に突入だ。元ビートルズのメンバーが参加し、クオリティーの高い曲を揃えた前作「リンゴ」の大ヒットですっかり自信をつけたリンゴはその路線を踏襲したアルバム「グッドナイト・ヴィエナ」を74年にリリース、元ビートルズの参加がジョンのみというのが寂しいが、それでもエルトン・ジョンやハリー・ニルソン、ビリー・プレストンといった錚々たるメンツを揃え、前作の勢いをかって3曲のトップ40シングルを生み出すヒット・アルバムになった。
 このアルバムからの 1st シングルは1955年のプラターズの大ヒット曲をカヴァーした⑦「オンリー・ユー」だ。ノスタルジックな曲調とリンゴのトボケたヴォーカルが絶妙にマッチして全米6位まで上がったが、私はどうもこの曲が苦手なんである。決して悪い曲ではないが、何となく間延びして聞こえると言うか、気だるすぎるというか... そういえば中学生の頃に参加した “ビートルズ復活祭” のソロ PV コーナーで、ジョンの「スリッピン・アンド・スライディン」やポールの「ジェット」、ジョージの「ディス・ソング」といったノリノリの曲が続いた後に、空飛ぶ円盤がキャピトル・レコード屋上に飛来するこの曲の PV がスクリーンに映し出されると会場全体がザワザワし始め、何とも言えない気まずい空気が流れたっけ。私の場合、更に悪いことにこの曲を聴くとどうしてもカップヌードルの CM “オンリー 湯~♪” を思い出してしまうので始末が悪い(>_<) 何かネガティヴなことばっかり書いてしまったが、ジョンが弾く “スタンド・バイ・ミーな” アコギのリズム・カッティングは快感の一言に尽きる(^.^) 顎が落ちそうなリズム・ギターとはこういうのを言うのだろう。「ジョン・レノン・アンソロジー」収録のジョン・ヴァージョンとの比較も一興だ。
 2nd シングル⑪「ノー・ノー・ソング」は一転してネアカなポップ・ソングで、どことなく「オブラディ・オブラダ」をひっくり返して漂白したような(?)浮遊感漂う軽やかな雰囲気がウケたのか、全米3位の大ヒット。 “マリファナもコカインも密造酒もいらないよ...ノーノーノーだ...” という歌詞が面白い。B面になった⑩「スヌーカルー」(←イギリスではこっちがA面、ってややこしいなぁ...)はエルトン作の疾走感溢れるロックンロールで、リンゴもノリノリで歌っている。 “オンリー 湯~♪” のリンゴしか知らない人が聴いたらビックリするだろう。私ならコレを絶対 1st シングルに切るけどなぁ...(>_<)  
 ジョンが書いたアルバム・タイトル曲⑫「グッドナイト・ヴィエナ」は 3rd シングルとしてカットされ全米31位になったが、この曲はチャート成績なんてクソクラエと思えるぐらいカッコイイ、メリハリの効いたリズミカルなロックンロール。思わず身体が揺れてしまうようなグルーヴ、音楽が前へ前へと進んでいく快感、ハンド・ラッピングを多用したノリの良さ... すべてが圧巻だ(≧▽≦)
 キャピトルを離れポリドールへの移籍第1弾アルバム「リンゴズ・ロートグラビア」からは⑭「ア・ドゥス・オブ・ロックンロール」(全米26位)と⑬「ヘイ・ベイビー」(全米74位)がシングル・カットされたが、既に前作までの勢いはなく、当時リアルタイムで聴いた私もエアチェックで済ませる程度で、LP を買って聴き込むまでは至らなかった。しかし今の耳で聴くとこの2曲、どちらも古き良き時代のオールディーズを思わせるような楽しさに溢れ何度も繰り返し聴きたくなるスルメ・チューンで、思わず知らず “へェ~ エェイ、ベイベッ!” と口ずさんでしまう(笑)。これだから音楽は面白い。
 コレ以降の曲⑮~⑳はアルバムを持っていないので知らない曲ばっかりだ(>_<) そんな中ではポップな⑮「ウエイト・オブ・ザ・ワールド」とジョージに捧げた⑰「ネヴァー・ウィズアウト・ユー」がそこそこ良かったように思う。
 とまぁこのようにビートルズ解散後のリンゴの足跡を駆け足で辿ってみて、改めて彼の魅力を再発見できて大満足(^o^)丿 音楽ブログやってて良かったなぁと思うのは、こんな風に一つのテーマに沿って徹底的に聴き込むキッカケになることやね。これからはポリドール期のリンゴ盤も少しずつ集めて聴いていこうと思う。

Ringo Starr & Elton John - Snookeroo

Photograph - The Very Best of Ringo (Pt. 2)

2010-01-05 | George・Ringo
 今日はリンゴのベスト盤を使って彼のヒット曲を時系列に沿った形で整理してみたい。彼の初ソロ・シングルは70年にリリースした趣味丸出しのC&Wアルバム「ボークー・オブ・ブルース」のタイトル曲⑧で、あまりにもロック/ポップスとかけ離れたカントリー・ソングだったため全米87位という悲惨な成績に終わったが、翌71年に出した②「イット・ドント・カム・イージー」(邦題:明日への願い)は全米4位という大ヒット。いきなりイントロから “アビー・ロードな” フレーズを繰り出すジョージに涙ちょちょぎれる。リンゴの自作曲ながら「オクトパス・ガーデン」同様ジョージがアレンジ面でも協力しており、フィル・スペクターみたいな分厚い音作りのプロデュースでリンゴのソロ曲中一二を争う名曲名演に仕上げている。B面になった⑨「アーリー 1970」(邦題:1970年代ビートルズ物語)は曲そのものは平凡なカントリー・ソングなのだが、ポールとリンダ、ジョンとヨーコ、ジョージとパティを示唆する代名詞がバンバン登場する歌詞がビートルズ・ファンの琴線に触れまくる。特に “町に行ったら3人みんなに会いたいな” というパートは彼の人柄を表わしていて心が和みます。リンゴってホンマにエエ人やなぁ...(^.^) 
 72年の④「バック・オフ・ブーガルー」は②と同じく “リンゴ作でジョージのプロデュース” というパターンで全米9位の大ヒット、舎弟(?)のマーク・ボランを意識して作ったというからリンゴの作曲能力もたいしたものだ。リンゴにしてはハードな作風で彼の重厚なドラミングが曲全体を支配、ジョージの “バングラデシュな” ギターも大活躍で、私の大好きな曲だ(^o^)丿
 ジョン、ポール、ジョージの3人がそれぞれ曲を提供し、別々とは言えレコーディングに参加したことで大きな話題になった73年のアルバム「リンゴ」からの 1st シングル①「フォトグラフ」はジョージとの共作で、全米№1に輝いた大ヒット。のどかな雰囲気の曲調が温か味のあるリンゴの歌声にピッタリ合っているし、隠し味のカスタネットも効いている。プロデューサー、リチャード・ペリーの慧眼というべきだろう。 2nd シングルの③「ユア・シックスティーン」は1960年のジョニー・バーネットのヒット曲をカヴァーしたものだが、何とコレが①に続いて全米№1に輝くという快挙を達成、元ビートルズでは断トツと言っていいチャート成績だ。間奏で聞けるカズー笛はポールで、これがまた実にエエ味出してるんよね(^o^)丿 ハリー・ニルソンの多重コーラスも絶品で、私的にはアルバムのベスト・トラックだと思う。
 調子に乗ってリリースした 3rd シングル⑥「オー・マイ・マイ」はノリはいいがメロディーは単調で、曲としてはそれまでのシングルに比べるとクオリティー・ダウンの感は否めないが、コレも全米5位まで上がったというから勢いというのは恐ろしい。私はこの曲のタイトルを聞くとどーしてもスパゲッティを連想してしまう(笑)。ジョンが作った⑤「アイム・ザ・グレイテスト」はこの傑作アルバムの冒頭を飾ったミディアム・テンポのナンバーで、シングル・カットこそされなかったが、リンゴ、ジョン、ジョージの3人にビリー・プレストンとクラウス・ヴアマンというメンツはゲット・バック・セッションを彷彿とさせるモノがあり、そのビートリィなサウンドに涙ちょちょぎれる。歌詞にもビリー・シアーズが登場、ペパーズばりのSEを被せるなど、ビートルズ・ファンの秘孔をズバリ突いてくる。ここはもう “ヒデブッ!” と言って砕け散るしかない(笑)。いや、砕け散ってこそ真のビートルズ・ファンといえるだろう(←何のこっちゃ!)。74年以降のリンゴはパート3で...(つづく)

Ringo Starr - It Don't Come Easy (The Concert For Bangladesh)

Photograph - The Very Best of Ringo (Pt. 1)

2010-01-04 | George・Ringo
 ビートルズ・ソロ特集の最後はリンゴ・スターだ。そーいえばブログを始めてもう1年以上も経つというのに、元ビートルズのソロ作品でリンゴだけまだ取り上げていなかった。ゴメンね、リンゴm(__)m
 70年代前半に限って言えば、4人の元ビートルズの中で最もヒット・チャート上の成績が良かったのは何を隠そうこのリンゴである。政治的な言動が目立ったジョンやインド信仰に肩入れしすぎたジョージはともかく、 “ヒット曲製造機” と言ってもいい20世紀最高のメロディー・メーカー、ポールよりも多くのヒットを飛ばしていたというからオドロキだ。ビートルズの中にあってその唯一無比のドラミングは絶対的不可欠なものではあったが、ことリード・ヴォーカルということになると、あのユルい声質にノホホンとした歌い方はどうヒイキ目に聴いてもロックというよりはカントリー向きだったし、実際に「アクト・ナチュラリー」や「ホワット・ゴーズ・オン」といった C&W 色の濃いナンバーがレパートリーの中心だったリンゴ。しかも作曲能力に関しては他の3人に比べるべくもない。だからシングルはともかく、ソロ・アルバムとなるとどーしてもリンゴのは後回しになってしまう。
 洋楽を聴き始めた当時の私にとっては何よりもまずビートルズの全アルバムを揃えるのが先決だったし、雑誌広告に載っている海賊盤も妙に気になって仕方がなかった。レッド・ゼッペリンやディープ・パープルといったハードロックにも入れ込んでいたし、クイーン、キッス、エアロスミスの御三家も全盛期だ。結局貧乏学生だった私が買ったのは彼のベスト盤「ブラスト・フロム・ユア・パスト」(←ハトが豆鉄砲を食らったようなジャケットのヤツ)1枚きりで、当時の新作「リンゴズ・ロートグラビア」もFMエアチェックで済ませていた。ホンマにゴメンね、リンゴm(__)m
 その後80年代に入り、リンゴの作品はシングル、アルバム共に Top 40どころか Hot 100 にすら入らないという大苦戦を強いられるようになる。ジョンが逝き、ジョージは沈黙、70年代には飛ぶ鳥を落とす勢いだったポールも失速し、リンゴも低迷と、80年代は元ビートルズにとっては暗黒の時代だった。しかし80年代も終わりに近づくと、まずポールとジョージが復活、90年代には一連の「アンソロジー」怒涛のリリース・ラッシュで大盛り上がりとなり、私もLP時代に買いそびれていたビートリィな名盤「リンゴ」と「グッドナイト・ヴィエナ」を購入、ベスト盤に漏れてた曲にもエエのが一杯あることを知って大いに反省した次第。特にジョンの「グッドナイト・ヴィエナ」とエルトンの「スヌーカルー」のカッコ良さにはブッ飛んだ。調子に乗って、リンゴの歌う「バイ・バイ・ブラックバード」や「スター・ダスト」、「慕情」といったスタンダード・ナンバーも聴いてみたれと「センチメンタル・ジャーニー」も買ってはみたが、さすがにコレはキツかった(>_<) キャピトルを離れて以降のいわゆる “低迷期” の盤は相変わらずの手つかず状態。ホンマのホンマに... もうエエか(笑)
 とまぁこんな風に、決してリンゴの良い聴き手ではなかった私が2年ほど前に久しぶりに買ったのがこの「フォトグラフ~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・リンゴ・スター」... またまたベスト盤である。ネットで見つけていつものように衝動買いした1枚だ。で、届いた CD を聴いたらコレがもうめっちゃエエんですわ(≧▽≦) 私は70年代前半をリアルタイムで経験したワケではないので、彼の快進撃も “元ビートルズ” の肩書きで売れたんだろうと思っていたが、それはとんでもない誤解だった。ジャケットもカッコ良いし(←何か絵的に昨日の盤とダブるなぁ...)、リマスターされているのか、音も抜群に良くって(←私の持ってた盤の音がショボかっただけかもしれないが...)コレは買って大正解!収録曲についてはパート2で... (つづく)

Ringo Starr - "Goodnight Vienna"

33 & 1/3 / George Harrison

2010-01-03 | George・Ringo
 年末からビートルズ・ソロ特集みたいな流れで来てるので、今日はジョージ・ハリスンにしよう。私が初めて買ったジョージのレコードは「エクストラ・テクスチャー」(邦題が「ジョージ・ハリスン帝国」って... (゜o゜) 何ちゅーアホなタイトル付けとんねん... スター・ウォーズかよ!)だった。ちょうど洋楽を聴き始めてすぐの頃で、当時ラジオから頻繁に流れていたヒット曲「二人はアイ・ラヴ・ユー」が気に入って、ああいう感じのポップさを期待して買ったのだが、他の曲は思いっ切り暗い雰囲気のばっかりだった(>_<) これはたまたま運が悪かっただけと自分に言い聞かせ、ディスコグラフィーを見ながら次は何を買おうかと迷ったが、大傑作といわれる「オール・シングス・マスト・パス」は3枚組で高くて買えなかったし、「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」と「ダーク・ホース」は抹香臭いジャケットを見ただけでドン引きし、結局シングル盤を何枚か買ってお茶を濁していた。
 そうこうするうちにジョージのニュー・アルバムがリリースされた。タイトルは「33 & 1/3」... LPレコードの回転数とジョージの年齢を引っかけたダブル・ミーニングというのがシャレている。何よりもこのアルバムからの 1st シングル④「ディス・ソング」のキャッチーなメロディーが気に入っていた私は「帝国の逆襲」(笑)と言わんばかりに即買いした。で、結果は大正解!!! 当時のジョージはパティとの離婚、全米ツアーの不評、「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題、そしてワーナーへの電撃移籍でA&Mから訴えられるなど、まさに踏んだり蹴ったりの状態だったのだが、アルバム全体に漂うポジティヴなフィーリングはそれまでのジョージにはなかったものだ。多分オリビアという新しい恋人との出会いが大きかったのだろう。宗教の押し売りみたいな曲がないのも嬉しい(^o^)丿
 アルバムは弾けるようなファンキーなリズムにビックリの①「ウーマン・ドンチュー・クライ・フォー・ミー」で幕を開ける。⑥「イッツ・ホワット・ユー・ヴァリュー」もうねるようなリズムに乗ったジョージのヴォーカルが心地良い(^.^) この2曲は良い意味で私の予想を裏切ってくれて、当時かなり新鮮に響いたものだ。例の盗作騒動を皮肉った④「ディス・ソング」にしても、昔のジョージならもっと自虐的でシリアスなものになっていただろうが、ここではその裁判自体をもパロディーにして笑い飛ばしてしまおうという、何か吹っ切れたような明るささえ感じられるのだ。 2nd シングル⑨「クラッカーボックス・パレス」もキャッチーなナンバーで、まるで生まれ変わったかのように軽快なメロディーを連発するジョージが愛おしい。コレ、私の大好きな曲だ。
 大好きと言えば⑦「トゥルー・ラヴ」、私はずぅ~っとジョージのオリジナル曲だと信じ切っていたのだが、10年ほど前にジャズを聴き始めてからこの曲がコール・ポーター作の有名スタンダード・ナンバーだと知った。こーゆう曲をさりげなくB面2曲目(!)に入れておくジョージのセンスは素晴らしいし、何よりも彼のヴォーカルが見事に曲の髄を引き出している。そしてトドメは⑩「ラーニング・ハウ・トゥ・ラヴ・ユー」、ポール顔負けの流れるようなメロディー・ラインが絶品で、名曲だけが醸し出す品位と風格が漂う、まさに洗練の極みといったナンバーだ。デヴィッド・フォスターのキーボードも実にエエ味を出しており、間奏のギターが醸し出す儚さにも涙ちょちょぎれる。ジョージ屈指の隠れ名曲だろう。
 このアルバムは「オール・シングス・マスト・パス」のようなロック史上に名を残す大名盤でもなければ、「クラウド・ナイン」のような “劇的なカムバック・アルバム” という話題作でもない。しかしジョージのオリジナル作品の中で私が最も愛聴しているのがこの「33 & 1/3」であり、個人的には彼のベスト作だと思っている。

Learning How to Love You - George Harrison

“自家製ダブル・ファンタジー” を作ってみた(^o^)丿

2010-01-02 | John Lennon
 ジョン・レノンの遺作となった「ダブル・ファンタジー」はジョンとヨーコの曲が交互に出てくるので、多分ほとんどのファンがやっていたと思うが、私もジョンの曲だけをピックアップしてカセットテープ(!)に入れて聴いていた。しかしジョンが亡くなって以降かなりの間、ショックが大きすぎてどうしてもこのアルバムを聴こうという気になれなかった。その後、未発表音源集「ミルク&ハニー」がリリースされ、更に「ジョン・レノン・アンソロジー」BOXで多くの別テイクが日の目を見たが、そこには公式ヴァージョンを凌ぐようなテイクが数多く含まれており、改めてジョン・レノンのロックンローラーとしての凄みを見せつけられた思いだった。
 それから更に月日が流れ、去年ビートルズ・マラソンで「ジ・オルタネイト・リヴォルヴァー」の “別テイクでアルバムを1枚作る” という発想に瞠目、続いてジョン・レノン・ウイークで「アンソロジー・BOX」のDisc 4 を取り上げた時に “自分だけの「ダブル・ファンタジー」を作ろう!” と思い立った。ジョンが亡くなって今年で30年、そろそろ前へ進まなくてはいけない(>_<) “ジョンの遺作” という発想はもう捨てよう... “愛と平和の人” としてでもなければ “良き家庭人” としてでもなく、ただただ最高のロックンローラーとしてのジョンをプロデュースしてみよう... と決意、気分はすっかりジョージ・マーティンだ(笑)。
 私は古いタイプの人間なので未だに十数曲70分近く詰め込まれたCDフォーマットに馴染めないでいる。アレはベスト盤を作る時に出来るだけたくさんの曲をブチ込むのにはピッタリだが、1枚のアルバムを作るならやはりA面とB面に分かれ、片面5~6曲20分程度のアナログLPフォーマットがしっくりくる。ということで早速 “自家製ダブル・ファンタジー” の制作にトライ、まずはA面こんな感じでどーでしょう?(DF は Double Fantasy 、 JLA は John Lennon Anthology 、 M&H は Milk & Honey のことです)
 A-1「(Just Like) Starting Over」(from DF)
 A-2「I'm Losing You」(from JLA)
 A-3「Cleanup Time」(from DF)
 A-4「Nobody Told Me」(from JLA)
 A-5「Every Man Has A Woman」(from M&H)
A面の目玉はシングルになった①④ではなく、チープ・トリックを従えてハードにロックする②から凄味さえ感じさせるヤクザなヴォーカルが圧巻の③へと続く流れだ。う~ん、めっちゃカッコエエわぁ(≧▽≦) ジョンにはやっぱりロックが似合う。⑤はここ以外に行き場がない(笑) それでは続いてB面!
 B-1「I Don't Wanna Face It」(from JLA)
 B-2「Woman」(from DF)
 B-3「Watching The Wheels」(from JLA) 
 B-4「I'm Stepping Out」(from M&H)
 B-5「Grow Old With Me」(from JLA)
B面アタマにはノリ一発のコレがピッタリ。盤を裏返していきなりユルい曲なんてNGだ。②⑤は絶対にこの位置しかないと決めていた。ロック・アルバムにおけるスロー・ナンバーの位置ほど大切なものはない。③→④→⑤の流れも気に入っている。
 とまぁこんな感じで結構楽しめる。昔と違って今はパソコンに取り込んで簡単に編集できるので本当にありがたい。自家製アルバムのプロデュース、皆さんも一度やってみてはどうですか?

John Lennon with Cheap Trick- I'm losing you
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