shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ルージュ / ちあきなおみ

2010-01-11 | 昭和歌謡
 この3連休、ちあきなおみが止まらない。演歌調の曲を除いてコンプリートを目指す勢いだ。彼女のオリジナル・ヒット曲は「しんぐるこれくしょん」1枚でほぼ事足りるし、外国曲カヴァーは昨日の「Another World」で OK なのだが、邦楽カヴァーが難関で、中々一筋縄ではいかない。
 彼女のキャリアの原点である70'sコロムビア時代は3つの期間に大別できる。1969年のデビュー~1974年の “昭和歌謡路線” 時代が【前期】、1975年~1976年の “演歌路線” 時代が【中期】、そして1977年~1978年の “ニューミュージック路線” 時代が【後期】である。
 前期の昭和歌謡モノに関しては、かなりの数のベスト盤やコンピレーション盤が発売されているにもかかわらず、どれもこれも帯に短しタスキに長しで中途半端なモノばっかりだ。かといって1万円を超えるボックス・セットを買っても各ジャンルから万遍なく選曲されているため漏れ落ちも多く、コスト・パフォーマンスが悪いことこの上ない。ではどーすればいいのか... オリジナル盤に手を加えずにそのまま出してくれればいいのである。ヤフオクを見ていてもビッドが集中するのは “ちあきなおみアーカイブス・アルバム復刻これくしょん” と呼ばれるシリーズのオリジナル復刻盤ばっかりで、レコード会社のディレクターがテキトーに選曲したと思しきコンピ盤など数百円でも誰も買わない。CDが売れないと言って嘆く前にレコード会社はもっとファンのニーズに敏感になるべきだ。特に昭和歌謡の名曲カヴァーを多く収録した「恋と涙とブルース」、「愛は傷つきやすく」、「愛の旅路を」といった初期の名盤のCD化を切に望みたいと思う。
 中期の演歌モノはいくらちあきさんの歌でも私にはムリ(>_<) 何でも担当ディレクターが変わって演歌路線に舵を切ったということらしいが、ホンマに迷惑なハナシだ。ちあきさんも内心鬱陶しかったのではないか... その証拠に演歌調のシングルを数枚出すと、 “こんな辛気臭い歌なんかもう唄ってれれないワ!” とばかりにニューミュージック路線に方向転換、それまでの陰々滅滅たる演歌路線は何やったん?と言いたくなるような快作を連発し始める。そんなコロムビア後期の1977年にリリースされたのが、ちあきさんのオリジナル・アルバムの中で私が最も好きな「ルージュ」である。
 このアルバムはA面で中島みゆき、B面で井上陽水と因幡晃の作品を取り上げたもので、それまでの彼女からは考えられないような斬新な企画といえるものだが、アルバムの出来も期待を裏切らない素晴らしいものだ。まずA面の中島みゆき作品群を聴いて驚いたのは、歌い方から声質までちあきさんが “中島みゆき化” しているということ。④「帰っておいで」なんか中島みゆきの未発表ヴァージョンで通ってしまいそうなぐらいソックリだ。これはモノマネとかそういう次元の低い話ではなく、それだけ彼女が作者である中島みゆきの世界を正しく理解してその中に深く深く入り込んで歌っているということだろう。歌の世界に自分を特化させ、なおかつこれだけのズバ抜けた表現力で聴き手を魅了してしまう... ホンマに凄いシンガーだ。①「ルージュ」と⑤「あばよ」は中島みゆきの「おかえりなさい」で作者本人のヴァージョンを何度も聴いてきたが、このちあきさんヴァージョンも甲乙付け難い素晴らしい出来映えだと思う。
 ②「雨が空を捨てる日は」では山口百恵~中森明菜へと受け継がれる “一聴クールでありながらハートウォーミングなヴォーカル” が楽しめる。③「流浪の詩」はイーグルスの「テイク・イット・イージー」を思わせるような軽快なカントリー・ロック調で、ちあきさんのレパートリーの中では実に希少価値のあるナンバーだ。それにしてもこの人、ホンマに何でも歌いこなしてしまう天才やね(^.^) 
 B面の井上陽水作品では⑦「氷の世界」と⑨「断絶」であの独特の “陽水節” を再現しているのが凄い。聴いているとまるでちあきさんがサングラスをして歌っている(笑)かのような錯覚を覚えてしまうくらい “女陽水” している。これ、ホンマに面白いです(^o^)丿 因幡晃の⑩「わかってください」は当時ラジオで頻繁にかかっており、あの甲高い声も女々しい歌い方も(←好きな方、ゴメンなさい)生理的に合わなかったのだが、このちあきさんのヴァージョンは最高!主人公の切ない気持ちがビンビン伝わってくる。聴く者の心を震わす名唱だ。それにしてもこれだけ個性の強いシンガー・ソングライターたちの歌世界に入り込み、変幻自在に歌いこなしてしまうとは... 彼女こそ洋邦問わず最高のシンガーの一人だと思う。

ちあきなおみ   あばよ


わかって下さい ちあきなおみ(因幡晃カバー曲)  Chiaki Naomi

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