shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Wild Heart / Stevie Nicks

2010-01-27 | Rock & Pops (80's)
 1983年の夏、私は大学の長期休みを利用してアメリカへ遊びに行った。もちろん留学とか語学研修などという眠たい旅行ではない。文字通り遊びに行ったのだ。ちょうどその前年に奈良へ観光に来ていたテリーという音楽好きのアメリカ人とたまたま知り合って意気投合し、 “次はアンタがアメリカへ遊びにおいで!” と言ってくれていたからだ。当時私はアメリカン・トップ40 の楽しさ溢れる80'sポップスにハマリまくっていて “いつかはアメリカに行ってみたいなぁ...” と思っていたが、当時のレートは $1=250円 という今からは信じられないような超円安だったので、貧乏学生だった私にとってホテル代も食事代も浮くこのお誘いは渡りに船だった。テリーの住んでいるフロリダのデイトナ・ビーチをメインにし、後は単純思考の私らしくニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ホノルルといった大都市をハシゴしてアメリカを横断した。
 デイトナにいる間はテリーが車であちこち連れて行ってくれたのだが、何よりも嬉しかったのは、ハイウェイを飛ばしながらFMラジオから流れてくるヒット曲の数々を聴けることだった。DJのリズミカルな英語のお喋りに続いて好きな曲のイントロが流れてくる瞬間のゾクゾクするような感覚を味わった私は “やっぱりアメリカはエエわぁ” と大喜び(^o^)丿 中でも超へヴィー・ローテーションで1時間に1度と言っていいくらい頻繁にかかっていたのがスティーヴィー・ニックスの⑥「スタンド・バック」だった。とにかく曲のテンポ、リズムがハイウェイ・ドライヴの BGM にピッタリで、あのイントロが聞こえてくるたびにコーフンしまくっていた(←アホ!)。車を運転される方は一度この曲をかけながら時速80kmぐらいで流してみて下さい。結構エエ感じですよ。因みに車線変更しまくって他車を抜いていく “一般車スラローム” をやる時はマイケル・ジャクソンの「ジャム」がオススメです。何のこっちゃ!
 この曲は彼女のセカンド・アルバム「ザ・ワイルド・ハート」からの第1弾シングルで、シンセのイントロにドラムのビートが絡んでいく瞬間がたまらない、もう絵に描いたような80年代サウンドだ。私は基本的にシンセのサウンドはあまり好きではないのだが、これほど巧く使われるともう参りましたと言うしかない。結局全米チャートでは5位まで上がったが、私の中ではマイケルの「ビリー・ジーン」、「ビート・イット」と並ぶ1983年度トップ3であり、80年代通しでもトップ10入り確実なスーパー・ウルトラ愛聴曲だ。 2nd シングル②「イフ・エニーワン・フォールズ」はシングルとしてのインパクトには欠けるかもしれないが、繰り返し聴くうちに彼女の術中にハマり、気がつけば1日に1回どころか何回も聴かないと禁断症状を起こしてしまいそうな麻薬的な魅力を持ったアブナイ曲。彼女のアンニュイな魅力を見事に捉えたPVもファンは必見だろう。
 このアルバムはプロデューサーも参加メンバーも基本的に前作「ベラ・ドンナ」と同じなのだが、サウンド面ではカントリー色の強かった前作とは大きく異なり、シンセを多用しビートを強調した80年代っぽい音作りを推し進め、 “コケットリーな妖精” から “危険な薫りをふりまくロック・ディーヴァ” へと変貌を遂げており、アップテンポの曲が増えたのが何よりも嬉しい。①「ワイルド・ハート」はアタマから気合十分、 “このアルバムはロックでいくわよ宣言” みたいに響く力強いナンバーだし、④「エンチャンティッド」もノリノリのウエストコースト・ロックでライヴ感一杯だ。私この曲大好きですねん!(^.^)
 「スタンド・バック」みたいなイントロで始まり、コーラス面での工夫などその後の展開に結構ヒネリが効いていて思わず聴き入ってしまう⑤「ナイトバード」、トム・ペティーとのデュエットで、曲想も雰囲気も「嘆きの天使」そっくりな⑦「アイ・ウィル・ラン・トゥ・ユー」、彼女のロック・スピリットがビンビン伝わってくるミディアム調のロック・ナンバーで、このアルバム中でもひと際ワイルドな雰囲気を持った⑧「ナッシング・エヴァー・チェンジズ」と、ウエストコースト・ロックを巧く消化して自分のサウンドに昇華させている。⑨「セーブル・オン・ブロンド」はフリートウッド・マックを彷彿とさせるサウンドで、「噂」のスタジオ・アウトテイクだと言われたら信じてしまうかもしれない。ここまでガンガンやってきて、最後はスロー・テンポで切々と歌う⑩「ビューティ・アンド・ザ・ビースト」でアルバムをシメるなんて、実にニクイ演出だ。この余韻がたまりません。
 このアルバムはオリジナル・アルバムでありながらまるでベスト・アルバムみたいな感じで聴けてしまう捨て曲なしの超愛聴盤で、ウチの家には英米日それぞれの初版LPと独WEA盤CDが1枚あるが、残念ながらCDはカッティング・レベルが低くて音がヘタレなので、一番音の良いイギリス盤LPで聴いている。出来ることなら 24ビット・リマスターで再発してくれへんかなぁ...

いつもより余計に回っております↓
stand back. stevie nicks.


Stevie Nicks - If Anyone Falls (Official Video)
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