shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

33 & 1/3 / George Harrison

2010-01-03 | George・Ringo
 年末からビートルズ・ソロ特集みたいな流れで来てるので、今日はジョージ・ハリスンにしよう。私が初めて買ったジョージのレコードは「エクストラ・テクスチャー」(邦題が「ジョージ・ハリスン帝国」って... (゜o゜) 何ちゅーアホなタイトル付けとんねん... スター・ウォーズかよ!)だった。ちょうど洋楽を聴き始めてすぐの頃で、当時ラジオから頻繁に流れていたヒット曲「二人はアイ・ラヴ・ユー」が気に入って、ああいう感じのポップさを期待して買ったのだが、他の曲は思いっ切り暗い雰囲気のばっかりだった(>_<) これはたまたま運が悪かっただけと自分に言い聞かせ、ディスコグラフィーを見ながら次は何を買おうかと迷ったが、大傑作といわれる「オール・シングス・マスト・パス」は3枚組で高くて買えなかったし、「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」と「ダーク・ホース」は抹香臭いジャケットを見ただけでドン引きし、結局シングル盤を何枚か買ってお茶を濁していた。
 そうこうするうちにジョージのニュー・アルバムがリリースされた。タイトルは「33 & 1/3」... LPレコードの回転数とジョージの年齢を引っかけたダブル・ミーニングというのがシャレている。何よりもこのアルバムからの 1st シングル④「ディス・ソング」のキャッチーなメロディーが気に入っていた私は「帝国の逆襲」(笑)と言わんばかりに即買いした。で、結果は大正解!!! 当時のジョージはパティとの離婚、全米ツアーの不評、「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題、そしてワーナーへの電撃移籍でA&Mから訴えられるなど、まさに踏んだり蹴ったりの状態だったのだが、アルバム全体に漂うポジティヴなフィーリングはそれまでのジョージにはなかったものだ。多分オリビアという新しい恋人との出会いが大きかったのだろう。宗教の押し売りみたいな曲がないのも嬉しい(^o^)丿
 アルバムは弾けるようなファンキーなリズムにビックリの①「ウーマン・ドンチュー・クライ・フォー・ミー」で幕を開ける。⑥「イッツ・ホワット・ユー・ヴァリュー」もうねるようなリズムに乗ったジョージのヴォーカルが心地良い(^.^) この2曲は良い意味で私の予想を裏切ってくれて、当時かなり新鮮に響いたものだ。例の盗作騒動を皮肉った④「ディス・ソング」にしても、昔のジョージならもっと自虐的でシリアスなものになっていただろうが、ここではその裁判自体をもパロディーにして笑い飛ばしてしまおうという、何か吹っ切れたような明るささえ感じられるのだ。 2nd シングル⑨「クラッカーボックス・パレス」もキャッチーなナンバーで、まるで生まれ変わったかのように軽快なメロディーを連発するジョージが愛おしい。コレ、私の大好きな曲だ。
 大好きと言えば⑦「トゥルー・ラヴ」、私はずぅ~っとジョージのオリジナル曲だと信じ切っていたのだが、10年ほど前にジャズを聴き始めてからこの曲がコール・ポーター作の有名スタンダード・ナンバーだと知った。こーゆう曲をさりげなくB面2曲目(!)に入れておくジョージのセンスは素晴らしいし、何よりも彼のヴォーカルが見事に曲の髄を引き出している。そしてトドメは⑩「ラーニング・ハウ・トゥ・ラヴ・ユー」、ポール顔負けの流れるようなメロディー・ラインが絶品で、名曲だけが醸し出す品位と風格が漂う、まさに洗練の極みといったナンバーだ。デヴィッド・フォスターのキーボードも実にエエ味を出しており、間奏のギターが醸し出す儚さにも涙ちょちょぎれる。ジョージ屈指の隠れ名曲だろう。
 このアルバムは「オール・シングス・マスト・パス」のようなロック史上に名を残す大名盤でもなければ、「クラウド・ナイン」のような “劇的なカムバック・アルバム” という話題作でもない。しかしジョージのオリジナル作品の中で私が最も愛聴しているのがこの「33 & 1/3」であり、個人的には彼のベスト作だと思っている。

Learning How to Love You - George Harrison