shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Moanin' / Art Blakey & The Jazz Messengers

2010-01-15 | Jazz
 私が “モダン・ジャズ” という言葉を聞いてまずイメージするのはピアノ・トリオや管楽器1本のワン・ホーン・カルテットではなく、いわゆる “二管ジャズ” つまり管楽器2本(たいていはテナーとトランペット)をフィーチャーしたノリノリのファンキー・ジャズである。 “ファンキー” といえばホレス・シルバーの「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ」やジャッキー・マクリーンの「ニュー・ソイル」、それに以前ご紹介したソニー・クラークの「クール・ストラッティン」といった一連のブルーノート・レーベルのアルバムがまず頭に浮かぶが、そんな中でもファンキー・ジャズの極めつけ、代名詞的存在といえるのが今日取り上げるアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」だろう。
 50年代ジャズ・アルバムのジャケットというのはカッコイイものが多く、中でもブルーノート・レーベルのジャケットは別格で、先の「クール・ストラッティン」を筆頭にめちゃくちゃセンスの良いデザインが目白押しだ。それらはすべて、リード・マイルスという名デザイナーがレーベル・オーナーであるアルフレッド・ライオンの意向に沿って作り上げたもので、レコード店のエサ箱を漁っていても BN のレコードは一目で見分けがつくほど個性的であり、ジャズ界のグッド・デザイン大賞をあげたいほどの “ジャケット名盤” が多い。
 このアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」はリーダーのアート・ブレイキーのドアップ写真で、お世辞にもセンスが良いとは言い難いが、逆にコッテコテの黒人ジャズをこれでもかと詰め込んだファンキー・ジャズの決定盤のジャケットとしてはこれ以上のものは考えられない。まさに “音が聞こえてきそうなジャケット” と言えるだろう。メンバーはリーダーのアート・ブレイキー(ds)を筆頭にリー・モーガン(tp)、ボビー・ティモンズ(p)、ベニー・ゴルソン(ts)、ジミー・メリット(b)というジャズ・メッセンジャーズ史上最強の布陣である。
 このアルバムのタイトル曲①「モーニン」(←moan とは “うめき声を出す” という意味で、“朝” のことじゃありません、念のため...)は恐らくジャズメン・オリジナル曲では最も有名かつ人気の高いナンバーだろう。何と言っても61年の初来日で我が国にファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こし、“ソバ屋の出前持ちまでもが口笛でこの「モーニン」を吹いていた” という伝説(?)を生んだくらいのキャッチーなナンバーなのだ。ピアノのティモンズが作ったこの曲はゴスペルのコール・アンド・レスポンスを大胆に導入しており、ピチピチと躍動するモーガンのトランペット、まるで酔っ払いの牧師のように(?)ガンガンとブロック・コードを連打するティモンズのまっ黒けなプレイ、地味ながら堅実にシメる所はキチッとシメるメリットの剛力ベース、そしてフロント陣を鼓舞するブレイキーのワイルドかつ正確無比なドラミングと、まさに絵に描いたような名曲名演だ。コレを聴いて身体が揺れなければ、ジャズはヤメといた方がいいと思う。
 この①以外にも血沸き肉踊るようなノリがたまらない②「アー・ユー・リアル」やゲバゲバ90分のテーマ(←古っ!!!)を思い起こさせるようなブレイキーのドラミングに耳が吸いつく⑤「ブルース・マーチ」など、どこを切っても充実のファンキー・ジャズが飛び出してくる。とにかく聴いていて理屈抜きに楽しいのだ。これでこそファンキーの権化、ジャズ・メッセンジャーズの真髄だろう。この後、ジャズは大衆音楽としての役割を放棄し、迷走した挙句に自滅してしまうのだが、そういったことを鑑みても、このアルバムが出た1950年代後半というのはジャズが最も美しかった時代だと言えるだろう。親しみやすいメロディーとリズムで大衆を魅了したこのアルバム、そのダイナミックなファンキー・サウンドは圧巻だ。

Moanin'-Art Blakey and The Jazz Messengers