shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

悪女 c/w MELODY / 平山みき

2010-01-23 | 昭和歌謡
 平山みきは実に不思議な魅力に溢れたシンガーである。特に歌唱力があるわけでもないし、その歌声も美しい外見からは想像もつかないようなドライてハスキーなものだ。彦磨呂流に言えば、“昭和歌謡界のスティーヴィー・ニックスやぁ~” といったところか。しかし彼女の歌には聴く者の心を捉えて放さない、抗しがたい魔力が潜んでおり、一旦その魅力にハマってしまうと中々抜け出せない。挙句の果てに彼女の音源を求めて中古盤屋を彷徨い歩き、ネット・オークションに首を突っ込むようになる。しかし彼女の場合、CDアルバムに未収録な音源、それもシングルとして出ていながらアルバムになっていない音源がいくつかあり、それらの中には埋もれさせてしまうにはあまりにも惜しいモノがあるので要注意だ。
 まずはワーナー・パイオニア時代、シングル「マンダリン・パレス」のオリジ・ヴァージョンや「冗談じゃない朝」を含む4曲を追加収録して復刻されたアルバム「魅嬉環劉嬲」は何故かずーっと廃盤のままで鬼のようなプレミアがついている。いくら何でもCD1枚に1万円近い金を払わないと聴けないなんて異常事態もいいところ。又、2001年に “奇跡体験アンビリーバボー” のエンディング・テーマとしてリリースされたCD MAXI盤「パーフェクト・サマータイム」なんかも行き場を失って廃盤一直線だ。しかし一番酷いのが90年代にポリスター・レコードから出た4枚のシングルAB面8曲のうち5曲がアルバム未収録のまま放置されていることで、中でも90年代ミキティーの最高傑作シングル「悪女 c/w MELODY」をアルバム未収録という理由で入手困難なまま放っておくなんてレコード会社は職務怠慢も甚だしい。毒にも薬にもならないような J-POP を出すヒマがあったら、この辺のモノを1枚のアルバムにまとめてちゃんと出してほしいと思う。
 私はミキティーが「悪女」を歌っていると知った時、 “あの声であの旋律” が脳内リピートされ、コレはもう絶対に聴きたい、何が何でも聴きたい、天地が逆になっても聴きたい!と思った。そしてネットで網を張ること半年、念願叶ってアマゾン・マーケットプレイスでゲットできた時はもうめちゃくちゃ嬉しかった。この曲のオリジナルがヒットしていた81年当時、若かった私にはここで歌われている微妙な女心が分からず、もっぱらユニークなメロディー展開が気に入って聴いていたのだが、今の耳で改めて聴いてみると凄い歌詞だ。まさに天才中島みゆきの才気煥発!絶対に彼女にしか書けない大名曲だと思う。そんな “中島みゆき・わーるど” 炸裂の有名曲を絶妙なヴォーカルで歌いこなすミキティーもさすがは歴戦のツワモノだ。多分昔の彼女ならこれほど上手く歌えなかったであろうこの曲をまるで自分のために書かれた曲のように自然体で歌っているところに “進化するミキティー” を感じる。特に “行かないでぇ~♪” の声色変化は絶品だ。「悪女」のカヴァーとしてはクレモンティーヌのアンニュイなフレンチ・ボッサ・ヴァージョンやシルヴィ・バルタンのしっとり系バラッド・ヴァージョンも好きだが、何と言ってもミキティーのこのヴァージョンが私的には断トツの№1だ。
 B面というのか 2nd beat というのか、要するにカップリングされている曲がサザンの「MELODY」というからこれまたビックリだ。そーきたか...(゜o゜) 桑田師匠の書く曲にはいくつかのパターンがあり、私が特に好きなのは「ホテル・パシフィック」みたいな “ラテン歌謡路線” と「そんなヒロシに騙されて」みたいな “昭和歌謡路線” の2本柱なのだが、この曲はそういった次元を遥かに超越して存在する桑田師匠屈指のバラッドだと思う。そんな名曲を強烈な打ち込みビートとブンブン唸るベースに乗って女性が低い声で歌うなんて普通なら考えられない展開だが、彼女のあの個性的な歌声はめっちゃグルーヴしてるし、隠し味的に投入されたアコギのサウンドも効果抜群で、私の感性のスウィート・スポットをビンビン刺激するのだ。
 中島みゆきとサザンオールスターズという邦楽を代表する2組のアーティストの名曲カヴァーをカップリングした超豪華な組み合わせのこの盤、ひょっとして平山みき史上最強のシングルじゃないだろうか?

悪女