shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Tango In The Night / Fleetwood Mac

2010-01-25 | Rock & Pops (80's)
 フリートウッド・マックは1982年に「ミラージュ」という素晴らしいアルバムでその健在ぶりをアピールした。リンジー、スティーヴィー、クリスティンという個性豊かなソングライター3人の傑出した作品がバランス良く収められ、アルバム全体がキラキラとポップな輝きに満ちていたが、それは又、この3人がソロ活動を通してそれぞれメインを張れるほど大きな存在になったことを意味しており、3つの大きく異なった個性をこれ以上1つのバンドの枠内にとどめておくことは至難の技に思われた。案の定、その後メンバーのソロ活動が活発になり、特にスティーヴィーはアルバムもシングルも大ヒットを連発してすっかりソロ・アーティストとしての地位を確立、マック解散説が流れる中、バンドは大いなる眠りについてしまった。
 それから約5年の月日が経った 1987年4月のこと、毎週聴いていたケイシー・ケイサムのアメリカン・トップ40で突然マックの新曲①「ビッグ・ラヴ」がチャート・インしてきた。これがもう5年のブランクなど瞬時に吹き飛ばしてしまうようなカッコ良い曲で、私の耳はスピーカーに釘付けになってしまった。トットコ トットコするマック独特のリズム(←コレ、結構ハマリます...)に乗ってリンジーの力感漲る歌声が炸裂、エキゾチックなメロディーも涙ちょちょぎれる素晴らしさで、まさにリンジー・バッキンガムここにありと言いたくなるような斬新さと攻撃性を前面に打ち出したキラー・チューンだ。その翌週、タワレコへこの曲の12インチ・シングルを買いに走ったのは言うまでもない。(久しぶりに聴こうと思ったらどこにいったのか分からへん...泣) 下にアップしたこの曲のPVも、エンディングに向けて逆再生で加速していく映像と唸りを上げるリンジーのギターが完璧にシンクロし、そこにミック・フリートウッドの怒涛のようにたたみかけるドラミングが絡んでいく様がめっちゃスリリング! リンジーの目ヂカラも強烈だ。この曲は全米5位まで上がったが、私の中ではそれ以上のインパクトがあった。
 少し遅れてリリースされたアルバムも当然買った。まずは内容云々よりもジャケットがセンス抜群でカッコ良い(^o^)丿 しかし左下に映っている白鳥を見た瞬間、コレはマックのスワン・ソング(最後の作品)なのか?という思いを強く抱かざるを得なかった。中身の方は表層的には相変わらずのマック・サウンドながら、それまでのアルバムとは微妙に雰囲気が違っていて、どこか達観したようなムードが漂っている。バラバラになっていたメンバーがもう一度再結集してバンドの最後にふさわしいアルバムを作ろうとしたように感じられるのだ。「噂」がマックの「ペパーズ」なら、さしずめこの「タンゴ」は「アビー・ロード」みたいなもんか。
 2nd シングルになったスティーヴィーの②「セヴン・ワンダーズ」は彼女にしては可もなし不可もなしといった平均点レベルの作品で、そのせいかチャート・アクションも鈍く、全米19位がやっとだった。全体的に見て今回は3人の中ではスティーヴィーの影がやや薄いが、ソロで頑張り過ぎた疲れが出たんかな?
 上記の 1st シングル①と比肩するほど素晴らしい出来なのが 3rd シングルになったクリスティンの⑦「リトル・ライズ」(全米4位)だ。私はマックを聴き始めた当初はスティーヴィーの妖艶な魅力にハマッていたのだが、前作あたりからクリスティンの温か味のある歌声に魅かれ始め、この「リトル・ライズ」で完全に彼女の魅力に参ってしまった。この歌声にはホンマに癒される。そしてお家芸の美しいコーラス・ハーモニー多重唱(←コレたまりません!)の後にさりげなく入るスティーヴィーの合いの手が、料理の甘みを引き出す微量の塩のような見事な効果を上げている。とにかく洗練の極みとでもいうべきこの⑦は非常にクオリティーの高いポップ・ソングであり、まさに絵に描いたような名曲名演だと思う。
 4th シングルの③「エヴリウェア」(全米14位)もクリスティン... もう大活躍だ。私には70年代の彼女よりも年齢を重ねてからの方が内面から滲み出るようなその美しさに磨きがかかったように思える。まるで年月を経て味わいが増すワインのようだ(^.^) 今の私は “クリスティン萌え” 状態(笑)なので彼女の歌声が聴けるだけで嬉しい。流れるようなメロディー・ラインは彼女ならではのものだし、彼女の歌に不可欠な美しいコーラス・ワークも存分に堪能できて言うことナシだ。そしてラストの⑫「ユー・アンド・アイ・パート2」、ウキウキするような曲想のこの曲をこんな風に小粋なポップスに仕上げられるのは世界広しと言えどもマックだけだろう。絶妙な味わいのコーラス・ハーモニーも聴きものだ。
 このアルバムの後、リンジー、スティーヴィー、クリスティンの3人は出たり入ったりを繰り返し、5人が鉄壁のチームワークでマック黄金時代のような傑作アルバムを作ることはなくなってしまったが、そういう意味でも稀代のスーパー・ポップ・バンド、フリートウッド・マックのスワン・ソングとして忘れられない1枚だ。

追記:ジャケットの鳥は白鳥ではなくサギとのことです。確かに、よ~く見ると白鳥とはちゃいますね(笑)

Fleetwood Mac - Big Love (Official Music Video)


Fleetwood Mac - Little Lies (HQ)


Fleetwood Mac - You And I (Part 2)
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