shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

キャバレー・ガール / 平山みき

2010-01-20 | 昭和歌謡
 ヒマラヤ・ミキを聴くとどうしても本家の平山みきを聴きたくなってくる。ヒマラヤ嬢の声のカスレ具合なんか私の好みにピッタリで、実は “やや” さんのCDも2枚持っている(笑)のだが、いくら声質が似ていても、いくら名前が面白くても、悲しいことにホンモノだけが持つ圧倒的な存在感が希薄なのだ。ということで今日はホンモノ中のホンモノ、平山みきの降臨である。彼女のキャリアは長く、1970年のデビューから今年で40周年というから、ちょうど私が小学生だった頃から歌っている計算になる。しかし彼女の歌を聴いたのはずっと後になってからのことだった。もちろん “平山三紀” という名前は何度も耳にして、何となくその名前に才能を感じ(←コレが “山田花子” やったら今ほど好きになってなかったかも...笑)、まだ彼女の顔も知らなかったしその歌声すら聴いたこともなかったのに、何故か好感を持っていた。
 やがて時代は21世紀に入り、ネットをするようになって一気に世界が広がったところへ “あの平山三紀がジャズのスタンダード・ナンバーを歌ったアルバムがあるらしい...” という噂を聞きつけ、色々調べてやっとのことで手に入れたのがこの「キャバレー・ガール」である。平山三紀とのファースト・コンタクトが彼女の代名詞とも言える「真夏の出来事」でもなければ「ビューティフル・ヨコハマ」でもなく、87年にリリースされたこの裏名盤的ジャズ・カヴァー・アルバムだったというのが私らしいと言えば私らしい。
 このアルバムにはタイトルが示す通り、場末のキャバレー歌手的なチープな雰囲気が濃厚に立ち込めている。彼女のハスキーな声も投げやりな歌い方もジャズに向いており、アタマの①「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」からアンニュイなムードが全開だ。②「ジョージア・オン・マイ・マインド」は真っ向勝負のストレートなアレンジで、この大スタンダード曲を自分の世界に引き込んで見事に料理している。聴かされてしまうなぁ... (≧▽≦) 我が愛聴曲③「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」はヘレン・メリル・ヴァージョンそのまんまのアレンジで、スカみたいなバックの演奏はメリル版のチープなコピーにすぎないが、ミキティーのヴォーカルの吸引力は圧倒的で、ジャジーな雰囲気が横溢している。まさに平山みきここにあり、と言いたくなる歌声だ。
 ④「サテン・ドール」でウォーキング・ベースのリズムに乗ってスイングするミキティーのカッコ良さ!この曲はイキそうでイカない淡白な展開がちょっと苦手だったのだが、彼女のドスの効いたヴォーカルによって見事に味付けされてちょうど良い感じに仕上がっている。⑤「ステラ・バイ・スターライト」はイントロが長すぎる(1分30秒も!)し、バックを埋めるシンセが耳触りで鬱陶しい。ちあきさんの「港が見える丘」もそうだったが、どーして日本人アレンジャーはこうもシンセを使いたがるのだろう?しかも飛びきりヘタクソな使い方で...(>_<) 彼女のヴォーカルが素晴らしいだけに勿体ないことこの上ない。とにかくこのアホバカ・アレンジだけは絶対に許容できない。ステラの綴りも間違っとるで!
 クラリネットとヴァイオリンをフィーチャーしたインスト曲⑥「アイ・キャント・ライト・ザ・ワーズ」(←別に要らんと思うけど...)に続くのは彼女のヒット曲⑦「フレンズ」のジャズ・ヴァージョン。その軽妙洒脱な歌と演奏はオリジナルの歌謡ポップス・ヴァージョンに勝るとも劣らない出来映えで、筒美メロディーの奥の深さの一端が垣間見れるトラックだと思う。⑧「ベイビー・フェイス」は軽自動車のCMでよく耳にする楽しい曲で、オリジナルはビキニ坊やこと、ブライアン・ハイランドが歌うオールディーズ。彼女もイタズラッぽく歌っている。ただ、エンディングの奇妙奇天烈なアレンジは余計だ。まったく、もう...(>_<) ⑨「ダイナ」で弾むようなピアノに乗って余裕綽々でスイングするミキティーは貫録十分、めっちゃジャジーなヴォーカルを聴かせてくれる。軽やかなクラリネットもエエ味出している。⑩「バイ・バイ・ブラックバード」では又々シンセが出しゃばってきてウザイったらないのだが、そんなマイナス要素を木っ端微塵に打ち砕くぐらい彼女のヴォーカルの存在感は強烈だ。アレンジャーが一流だったら大傑作アルバムになっていただろうに...(>_<)

ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ