shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Here's To Ben / Jacintha

2009-04-17 | Jazz Vocal
 ジャシンタとの出会いは約10年前のことだった。ちょうどスピーカーの買い替えを考えており、オーディオにハマッていた時期である。JBLのバカでかいスピーカーで音楽を全身で浴びるように聴けたら最高やなぁ... なんて考えながら毎日を過ごしていた。そんなある日、たまたま雑誌でオーディオ・フェアの記事を見つけ興味を抱いた私は行ってみることにした。
 会場に着き、アキュフェーズやマッキントッシュといった高級ブランドのブースを廻り終えてブラブラしていると、「JBLスピーカーでのアンプ聴き比べ」をやるというイベント・ルームを見つけたので、早速中に入ってスピーカーの真ん前に座った。正直、アンプによる違いはほとんど分からなかったが、解説のオーディオ評論家が持ってきた試聴用ディスクが凄かった。北斗剛掌波の如き凄まじい音圧に圧倒されたカウント・ベイシー・オーケストラ、ギリギリ軋むベース弦の音が生々しい鈴木勲のスリー・ブラインド・マイス盤復刻xrcd、そしてジャシンタという未知の女性ヴォーカル盤の3枚である。女性ヴォーカルはかなり聴き込んでいたつもりだったが、そんな名前は聞いたこともない。解説氏が言うにはシンガポールを中心に活動しているアジア系ハーフとのこと。タイトルは「ヒアズ・トゥ・ベン」で選曲は「ダニー・ボーイ」だ。なるほど、ベン・ウェブスターへのトリビュートか、などと考えているといきなり無伴奏で「オゥダニボォ~イ」ときた。その後約3分弱アカペラで歌い通すのだが、口中の唾液の動きが聞き取れるほどリアルで鳥肌が立つほどゾクゾクしたのを今でもハッキリと覚えている。そして途中からベースと、ほんの少し遅れてブラッシュが満を持したという感じで入り込んでくる、そのピンと張りつめた緊張感が一瞬フッと宙に消えいくような瞬間がたまらない。歌唱力も抜群で、例えるならホイットニー・ヒューストンの「オールウェイズ・ラヴ・ユー」(映画ボディーガードのテーマ)のジャズ・ヴォーカル版といった感じだった。
 イベント会場を出たその足でミナミとキタのレコード屋を探しまくり、梅田の今はなきLPコーナーでようやく入手。ここは中学の時からビートルズ関係の海賊盤(←懐かしい響き!)でお世話になった大阪の老舗レコード店で、値段が高いのが玉にキズだったが結構掘り出し物にも出会えた貴重なお店だった。毎週レコ屋巡りをしていた頃が懐かしい。ネット時代になってすっかり足が遠のいているうちに気がつけば関西のレコ屋は半減、これも時代の流れなんだろうか?いけない、話が横道にそれてしまった(>_<) このように苦労して手に入れたジャシンタ盤、帰って聴いてみて改めてその素晴らしさを実感した。全9曲中7曲がバラッドなのだが、まったくダレない。①「ジョージア・オン・マイ・マインド」や④「サムホエア・オーヴァー・ザ・レインボウ」で、ローレンス・マラブルがひっそりと擦るブラッシュとテディ・エドワーズの枯れたテナーをバックに水も滴るようなしっとりヴォイスでじっくりと歌い上げるジャシンタがたまらない。そのソフトでシルキー・タッチの歌声はアップ・テンポの②「アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」と⑧「ペニーズ・フロム・ヘヴン」の2曲でも心地よく、めっちゃハッピーな気分にさせてくれる。もしあのイベントに行かなければ彼女のことを知らずにいたかもしれないと思うと、愛聴盤との出会いというのは何とも不思議な巡り合わせやなぁと改めて考えさせられた。

別のアルバムからの音源で、「ワン・レイニー・ナイト・イン・東京」の元ネタとなった「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームズ」をどうぞ↓

Jacintha - THE BOULEVARD OF BROKEN DREAMS

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