shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Ventures Play the Batman Theme

2009-04-06 | エレキ・インスト
 以前“苦手な名盤”について書いたことがあった。世評はめっぽう高いのに自分にはまったくその良さが分からない困った盤のことである。逆に何でこんなエエ盤が話題に上らへんねやろ?と思わず首をかしげたくなるような、いわゆる“自分だけの名盤”も多い。私にとってそんな私的名盤の1枚がこの「バットマン・テーマ / ベンチャーズ」である。
 ベンチャーズの名盤と言えばまず頭に浮かぶのが「ライブ・イン・ジャパン」であり、スタジオ録音盤なら「ウォーク・ドント・ランVol.2」、「ノック・ミー・アウト」といった中期の傑作だが、この「バットマン・テーマ」だって負けてはいない。しかしこのアルバムを褒めるどころか話題にするレビューや感想にすらお目にかかったことがないのだ。それは何故か?考えられる理由は3つ:(1)「ラップ・シティ」「ウォーク・ドント・ラン'64」「10番街の殺人」といった“この1曲!”と呼べる超有名曲が入っていない、(2)“TV番組のテーマ・ソング集”ということで軽視or無視されている、(3)トホホな超手抜きジャケットがチープ感を更に増幅している... そんなところだと思う。私だって実際に聴いてみるまではこの盤の存在など歯牙にもかけなかった。たまたま「EPコレクション」で聴いた「秘密諜報員」が気に入ってこのCDを買ったのだが、聴いてビックリとはこのことだ。とにかく収録されている楽曲群の充実度は上記のアルバムに引けを取らないと思う。
 ①「バットマン」は原曲が単調なメロディーの繰り返しなので女性コーラスやキーボードを多用するなどアレンジに工夫が見られるが、わざわざベンチャーズがやらなアカンほどの曲とは思えない。マーケッツで十分ではないか。まぁ曲の知名度だけは高いので一種の話題作りだろう。②「ゾッコ」はどっかで聴いたリズム&メロディーやなぁ...と思ったらゼッペリンの「移民の歌」(日本ではブルーザー・ブロディーのテーマとして有名?)にそっくりやん!ジミー・ペイジがベンチャーズの大ファンやというのは知ってたけど、これほどとは(゜o゜) ③「ジョーカーズ・ワイルド」は007のテーマにそのまま使えそうな曲。だだし時折挿入される変な笑い声は不要だと思う。④「ケープ」はチャンプスの「テキーラ」みたいなリズムに乗せてスパイ映画の主題歌みたいなメロディーが奏でられる不思議な曲。メル・テイラーの律儀なドラム・プレイが爽快だ。⑤「007-0011」は文字通りジェームズ・ボンドの007とナポレオン・ソロの0011を合わせたようなカッコイイ曲想がたまらないキラー・チューンで、個人的には全ベンチャーズ曲でトップ3に入るほど愛聴している。過小評価されがちなベンチャーズの作曲能力の高さを改めて思い知らされる1曲で、本盤収録の他のTVテーマ曲が霞んでしまうほどのクオリティーだ。⑥「ナポレオン・ソロのテーマ」は①と同様単調なメロディーをごまかすための女性コーラス・フィーチャーがミエミエで、LPならA面ラストということでまだ救いがあるがCDで聴くと⑤と⑦に挟まれて間延びした印象しかない不憫な曲。⑦「秘密諜報員」はノーキー・エドワーズの縦横無尽なギター・プレイが堪能できる文句なしのロックンロール。単なるTVドラマ主題歌をここまで見事なロックンロール・ナンバーに昇華させたベンチャーズの手腕には脱帽だ。⑧「ホット・ライン」、待ちに待った“テケテケテケ...”がついに出たぁ!!! これだけでもうメシ3杯は喰えそうだ(笑) ⑨「ヴァンプキャンプ」は「ミナミの帝王・エンディング・テーマ」の原型とおぼしきイントロから始まるミディアム・スローなロック曲。演奏はエエねんけど、③と同様に気持ち悪いサウンド・エフェクトは不要だ。⑩「若さでジャンプ」はドン・ウィルソンのリズム・ギターがカッコいい。⑪「それ行けスマートのテーマ」は何か②と⑨を足して2で割ったような感じ... ということはゼッペリンの元ネタをたどっていくと... あかん、考えんとこ(>_<) ⑫「グリーン・ホーネット’66」はアルバムの最後を飾るに相応しいノリの良い演奏で、ここでは女性コーラスも効果的に使われている。
 このようにいいことづくめのアルバムなのだが、日本盤CDはマスターテープ不良のためか数曲で明らかに音がこもる箇所があるので×、東芝EMIはCCCDに固執して姑息な策を弄してる暇があったらまずこーいった不手際を正せと言いたい。

The Ventures - Secret Agent Man (1984)