shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Eliminator / ZZ Top

2009-04-03 | Rock & Pops (80's)
 ZZ トップの凄さを説明するのは本当に難しい。理屈や理論が通用しないから、身体でその凄さを感じ、理解しなければならない。コンサートに足を運ばせ、凄いライブを見せつけ、レコードを売るというロックの基本ともいえる方法論を地道に実践してきたのが彼らなのだ。何といってもストーンズの73年全米ツアーで前座を務め、全盛期のストーンズを食ってしまったというからライブ・バンドとしての実力は折り紙つきだ。そんな彼らの名を世界中に知らしめた大ヒット・アルバムがこの「エリミネイター」である。
 このアルバムで彼らは特に目新しいことをやっているわけではない。一言でいえば昔ながらの“ブルースに根ざしたハード・ドライヴィング・ブギーとサザン・ロックの融合”ということになる。①「ギミ・オール・ユア・ラヴィン」はまるでこの1曲にZZ トップの魅力を凝縮したような感じで、ビリー・ギボンズのギターが唸り、ダスティー・ヒルのベースが重戦車のようなリズムを刻み、フランク・ベアードのドラムが躍動感あふれるビートを叩き出す… これで身体が揺れなければロックンロールとは無縁の人だ。②「ゴット・ミー・アンダー・プレッシャー」はアップテンポのロックンロールで間奏のギター・ラインがカッコいい。③「シャープ・ドレスト・マン」は①と同じようなノリを持つ豪快なブギー・ロックで、パワフルで分かりやすいZZ トップ・サウンドを絵に描いたような名曲名演だ。ドライブのBGMとしても最高で、ハイウェイを飛ばすドライバー達がガソリン・スタンドやドライブ・インでこのアルバムのカセット・テープを買うことが多かったため、売り上げの半分近くがテープだったというのも頷ける話だ。④「アイ・ニード・ユー・トゥナイト」はブルージーなギターが炸裂するスローなナンバーで、ジミヘンが絶賛したといわれる彼らのブルース魂は80年代に入っても不変といったところか。⑤「アイ・ガット・ザ・シックス」はZZ トップ版ハードロックで、ここでも彼ら独特のノリが威力を発揮、特にシュアーなビートを刻み続けるドラムのプレイが印象的だ。
 ⑥「レッグズ」は全米チャート8位という、シングル・ヒットとはほぼ無縁だった彼らにしては珍しい大ヒットで、ロックンロールの基本とでもいうべきシンプルでストレートなブギー・ロックがめちゃくちゃカッコいい曲。更にそのビデオ・クリップも、毎日イジメられてた女性をZZ トップと謎の美女軍団が助けるという超お約束的な展開ながら、ついつい見入ってしまう非常によく出来た作りになっており、MTVで頻繁にかかっていたのを覚えている。脚の綺麗なオネーチャンたち以外にも、ギターやベース(それも毛付き!)をくるりと回すお得意のパフォーマンスやZZ ダンスなど見所満載だ。ミディアム・テンポの⑦「殺し屋稼業」や⑧「TV ディナーズ」は80年代っぽくシンセを導入して泥臭さをあまり感じさせない洗練された音作りになっているが、いきら着飾ってもその根底に流れているのはあくまでもブルース・ロックというのが伝わってきて微笑ましい。⑨「ダーティ・ドッグ」は⑥の流れをくむノリノリのロックンロールで、シンプルな楽曲が却って彼らの魅力を浮き彫りにしているようなナンバーだ。⑩「イフ・アイ・クッド・オンリー・フラッグ・ハー・ダウン」はスティーヴィー・レイ・ヴォーンが得意としていたようなシャッフル・ナンバーで、テキサス魂爆裂!といえる。⑪「バッド・ガール」はライブ感溢れるロックンロールで、疾走するようなスピード感がたまらない。クールなおっさん3人組が放つ骨太なブギー・ロック、車を運転しながら大音量で聴くには最高のアルバムだ。