shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Boston

2009-04-07 | Rock & Pops (70's)
 これまでの音楽体験の中で、“天地が逆になるくらい衝撃を受けた新人バンドのデビュー・アルバム”というのが数枚ある。ビートルズやゼッペリンは残念ながら後追い聴きだしエイジアは新人とは言い難いので除外するとして、リアルタイムで聴いて腰を抜かすほど衝撃的だったのはヴァン・ヘイレン、ダイアー・ストレイツ、ナック、ポリス、そしてこのボストンである。偶然にもすべて70年代後半にリリースされたアルバムだが、多分ミュージック・シーンの流れにおけるオールド・ウェイヴとニュー・ウェイヴの節目にあたるのがこの時期なのだろう。特にアメリカン・ロックの流れの中でボストンの出現というのは後のアメリカン・プログレ・ハードを標榜する幾多のバンドの台頭への道筋をつけたという意味においてエポックメイキングな出来事だったといえる。
 アメリカ随一の名門であるマサチューセッツ工科大在学中にギターを独学でマスターし、卒業後はポラロイド社に勤めていたトム・シュルツが趣味で作った12トラックのホームメイド・テープがボストンの始まりだった。そのテープに興味を持ったエピックとレコーディング契約を結んだトムは地元で名の知れたミュージシャンを集めてボストンを結成し76年にデビュー、シンセサイザーを一切使わずに(セカンド・アルバムの見開き中ジャケにデカデカと “No Synthesizers Used, No Computers Used” って但し書きアリ)ギターとコーラスだけで壮大なサウンドを作り出したこのアルバムは史上最も売れたデビュー・アルバムとなったのである。
 彼らのサウンドは、ELP型プログレッシヴ・ロックとパープル型ハードロックをしっかりかきまぜて、そこにドゥービー・ブラザーズっぽいノリとイーグルスっぽいコーラス・ハーモニーをたっぷりふりかけ、アメリカ人的な明るいポップ・センスでじっくりと煮込んだような、当時としては非常に斬新なものだった。ファースト・シングルになった①「モア・ザン・ア・フィーリング(宇宙の彼方へ)」は宇宙的な広がりを感じさせるメロディアスなハードロックで、幾重にも重ねられた分厚い音のハーモニーが圧巻だ。まるで曲のテンポを設定しているかのようなハンド・クラッピングも実に効果的に使われている。②「ピース・オブ・マインド」はまるでドゥービー・ブラザーズのようなエッジの効いたシャープなリズム・カッティングと爽快感溢れるコーラス・ハーモニーに涙ちょちょぎれる。これぞアメリカン・ロックといえるカッコイイ曲だ。③「フォープレイ / ロング・タイム」は一転ELPの「タルカス」や「恐怖の頭脳改革」を髣髴とさせるプログレ・サウンドが展開され、初めて聴いた時は①②とのギャップに唖然としたものだ。しかしメドレー後半はちゃんと①と②を足して2で割ったようなサウンドへと収斂していく。トム・シュルツ恐るべしだ。④「ロックンロール・バンド」は題名通りかなりストレートなロックンロールだが、楽曲としては今一歩ツメが甘いかも。⑤「スモーキン」はまるでエディー・ヴァン・ヘイレンの「アイム・ザ・ワン」のようなリフから始まるハードでキャッチーなナンバー。間奏でオルガン・ソロに突入するあたりなんかは完全にディープ・パープルが憑依、こーゆーの、ハッキリ言って大好きです!!! クイーンも真っ青のメロディアスで緻密な音世界が素晴らしい⑥「ヒッチ・ア・ライド」、まさにボストン・サウンドの魅力を濃縮還元したようなキャッチーなアメリカン・ロックの⑦「サムシング・アバウト・ユー」、後のスティクス・サウンドに与えた影響の大きさがわかる⑧「レット・ミー・テイク・ユー・ホーム・トゥナイト」と、まるでアメリカン・プログレ・ハードの原点のような楽曲が並ぶ。かくして幻想飛行に飛び立ったボストン号は後ろを振り返ることなくこの2年後に新惑星着陸を果たし再び大反響を巻き起こすことになるのだが、それはまた別の話。

Boston - More Than A Feeling (Sound Remastered)