shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Llllloco-Motion / Little Eva

2009-04-10 | Oldies (50's & 60's)
 プレスリーの時にも書いたが、私にはかつてオールディーズのヒット曲をオリジナル盤の生々しい音で聴きたいなどという無謀なことを考え、海外のオークションでせっせと入札を繰り返していた時期があった。60年代といえば今のようにアルバムを完成させてそこからシングルを切るのではなく、シングル・ヒットが何曲か出たからそれらを元にして1枚のアルバムを作ってしまおうという発想が主体だった。ましてや当時はシングル盤を中心に世界が回っており、LPは高級品でまだあまり普及しているとはいえず、売り上げも70~80年代と比べれば桁違いに少なかったので、そーいったレアな盤を40年以上も経って、しかも日本にいながら手に入れようなどというのは今にして思えばとんでもなく天地真理、じゃなくて甘い考えだったのだ。
 そのような悪条件にもかかわらず、レコードに関しては絶対に後に引かない私は難関といわれるロネッツやクリスタルズらのフィレス勢を皮切りにカスケーズ、エンジェルズ、シフォンズ、リトル・ペギー・マーチ、ディオン、ニール・セダカ、デル・シャノン、サム・クックetc 片っ端からイキまくったのだが、そんな中で意外なほど競争が激しくて苦労したのがマーヴェレッツのタムラ盤、パリス・シスターズのサイドウォーク盤、そしてこのリトル・エヴァのディメンション盤だった。
 リトル・エヴァといえば何はさておき「ロコモーション」である。キャロル・キング家のベビーシッターとして働いていた黒人女性歌手リトル・エヴァの唯一にして超特大ヒットとなったこの曲は、まず62年にエヴァのオリジ・ヴァージョンで全米№1、74年には何とあのグランド・ファンク・レイルロードによる痛快無比なハードロック・カヴァーで再び全米№1に輝き、更に88年にはカイリー・ミノーグによる軽快なダンス・ポップ・カヴァーで全米3位をマークするという、まさに絵に描いたような名曲で、日本では“さぁさぁダンスのニュー・モード...♪”で始まる伊東ゆかりのカヴァーで有名だ。作者はもちろんジェリー・ゴフィンとキャロル・キング夫妻の黄金コンビで、元々はディー・ディー・シャープのために書いたのに彼女に気に入ってもらえず歌うのを拒否されたので、エヴァのヴァージョンをレコード化したら大ヒットしたという、オールディーズの世界ではよくあるサクセス・ストーリー(スプリームズとか、ホリーズとか...)だ。バック・コーラスは、この後ゴフィン=キング作の「チェインズ」(ビートルズがファースト・アルバムでカヴァー)をヒットさせたクッキーズというからブリル・ビルディング・パワー恐るべしである。エヴァのパンチの効いた歌声とバックの快活な演奏はパワー・ポップの源流といっていいほどで、この曲のテナー・サックス・ブロウがあのデイヴ・クラーク・ファイヴに多大な影響を与えたという話は有名だ。
 LPには全13曲入っており、「ロコモーション」以外はオマケみたいなモンだが、ニール・セダカの「悲しき慕情」、クリスタルズの「アップタウン」、シュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」あたりの有名曲カヴァーがエエ感じ。拾い物は「プリーズ・ミスター・ポストマン」と「マッシュト・ポテト・タイム」を足して2で割ったような「キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・ベイビー」とゴフィン=キングの隠れ名曲「ヒー・イズ・ザ・ボーイ」で、この2曲は結構気に入っている。それ以外は filler と呼ばれる穴埋め用の退屈な曲で、まぁ売れない頃のクリスタルズみたい、っていえばわかる人にはわかるハズ。
 この後リトル・エヴァはヒットらしいヒットも出せずにフェイド・アウトしてしまったが、彼女は「ロコモーション」一発でオールディーズ・ポップス史に永遠にその名を刻みつけたのだ。

Little Eva The Locomotion