shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

It's Time For Tina / Tina Louise

2009-04-11 | Jazz Vocal
 今から約10年ほど前に私が白人女性ヴォーカルに本格的にハマッてブイブイいわしていたある日のこと、いつものように京阪神CDハンティングを終えて難波にあるジャズ専門店“しゃきぺしゅ”に流れ着いてコーヒーをごちそうになっていた時、たまたま壁に掛ってあった1枚のレコードに目が止まった。それはその筋では超有名なティナ・ルイスの「イッツ・タイム・フォー・ティナ」の日本盤LPで、私はジャケットのティナと思わず目が合ってしまった。その目が「買ってぇ~」と訴えかけているように思えた私は次の瞬間、店のご主人に「ちょっと見てもいいですか?」と言いながら壁に掛けてあるジャケットを手にとっていた。うーん素晴らしい... もちろんCDで持ってはいたけれど、やはりLPのジャケットには勝てない。ご覧いただければ一目瞭然、顔やスタイルが美しいのは言うまでもないセクシー系ジャケット(専門用語でcheesecakeって言います)の最右翼と呼べる逸品であり、右手を豊かな金髪にあてている腕の線が綺麗な、いわゆる“腕美人”ジャケットでもある。ここで買わねば男がすたる(なんでやねん!)と思った私はその時はまだLPレコードを聴けるアナログ・プレイヤーを持っていなかったにもかかわらず、その日が給料日で気が大きくなっていたこともあって衝動買いしてしまったのだ(←アホや)。その時はインテリアとして部屋に飾るのに3,400円なら安い買い物だ、ぐらいの気持ちだった。それ以前からアナログLPへの誘惑には必死で抵抗していたのだが、ティナの視殺線にコロッと参ってしまい、とうとうLPの世界に足を踏み入れてしまったという次第。しかし一旦ハマると後はとことんまでイッてしまうコレクターの哀しい性ゆえか、家に帰ってティナのLPジャケットを眺めながらCDを聴いてシアワセな気分に浸っているうちに(←これって最高の贅沢かも...)無性に他のLPも欲しくなってきて、美人女性ヴォーカルをLPで集めようと心に決めた。その後は女性ヴォーカル→インスト・ジャズ→オールディーズ→ビートルズ→その他のロック/ポップスと、好きな盤はすべてオリジナル・アナログLPで集めたのだが、そういった諸々すべてはこのティナ・ルイス盤との出会い(←不純な動機やけど...笑)から始まっており、私の猟盤人生の上で非常に重要な1枚なのだ。
 何だかセクシーなジャケットの話ばかりになってしまったが、中身の歌の方もコールマン・ホーキンスをはじめとする超一流ミュージシャンたちのツボを心得た伴奏をバックにまるで耳元で囁くようにしっとりと歌うティナの艶っぽい歌声がムード満点で、まさにジャケットのイメージ通りの音がスピーカーから聞こえてくる。全12曲、曲想の似通ったナンバーばかりをすべてバラッド・テンポで歌い切っており、普通なら途中で飽きてくるところだが、しっかりとした歌唱力に裏打ちされたその歌声にグイグイ魅き込まれ、43分がアッという間に過ぎていく。特に⑦「イッツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム」で聴かせる蕩けるような歌声は、ペギー・リー、ドリス・デイ、イヴ・ボスウェル、キティ・カレンらの名唱に比肩する素晴らしさだし、⑤「アイム・イン・ザ・ムード・フォー・ラヴ」でホーキンスの絶妙なオブリガートをバックに聴かせる“ため息”ヴォーカルにはフニャフニャと腰砕け状態になってしまう。とにかく冒頭の“トゥナァ~イ♪”からラストの“グッナァ~イト♪”に至るまで、どの曲もメロディーの一音一音を大切にした素直なヴォーカルで、歌詞に込められた想いがダイレクトに伝わってくる歌い方がめっちゃエエ感じ。ただの“悩ましさ”をウリにしたお色気ヴォーカルとはワケが違う。
 “コンサート・ホール”という通販専門のマイナー・レーベルから発売されたオリジナルLPは軽く数万円はするという超希少盤。こーなってくるともう骨董的価値のある絵画を買うようなレベルだが、その値段がこの盤にそれだけの価値があることを逆説的に証明している。ジャケ良し歌良し演奏良しのこのアルバム... 女性ヴォーカル・ファンなら必聴の1枚だ。

Tina Louise - It's Been A Long Time (1957)
コメント (2)