ひびレビ

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”氷菓 第1話”をもう一度

2023-08-29 07:38:25 | 2012年アニメ
 アニメ「氷菓」が放送されて早10年。放送当初から原作小説を読むぐらいに好きだった作品ですが、以前再放送されて以来、事あるごとに見返すようになりまして。

 主人公は神山高校一年生・折木奉太郎。「やらなくてもいいことはやらない。やらなければいけないことなら手短に」を信条とする折木奉太郎が、古典部入部をきっかけに知り合った千反田えるとの出会いから、彼女の好奇心に手を取られ、様々な謎に身を投じることになる物語。

 さて第1話「伝統ある古典部の再生」は古典部に入部することになった奉太郎と千反田の出会い、後半は千反田相手に不慣れな奉太郎の様子が描かれています。

<前半>
・薔薇色と灰色
 今でこそ灰色の奉太郎。それは省エネ主義故のものでもありますが、かといって薔薇色を毛嫌いしているわけではないことは第2話の謎が解けた時の描写で伝わってきますね。

・「特別棟の4階。最果てだな」(奉太郎)
 古典部の立地が悪いことが説明されています。ここでは「省エネ主義の奉太郎が、わざわざ最果ての部室にまで足を伸ばす」ことで、「古典部入部は彼にとってやらなければならないこと」だと伝える程度でしょうけれども、この配置が後々重要な意味を持つことになろうとは。

・初対面……?
 奉太郎の顔を見るや否や、クラスと名前を言い当てる千反田。会話もしていない相手の名前を把握する好奇心旺盛っぷりはさすがですが、対する奉太郎も千反田のクラスを聴いてすぐに「選択科目か?」と思い至れるあたり、頭の回転が速いのが伺えるシーンですね。

・「お前」と「千反田さん」
 ほぼ初対面の千反田を相手に「お前」呼びは失礼だと感じ、すぐさま「千反田さん」と言い直す奉太郎。ですが「何故鍵がかけられた部室に、鍵を持たない千反田はいたのか」という謎を前に目を輝かせ、ぐいぐいと迫って来る千反田相手に「お前」呼びに戻っています(笑。瞬く間に奉太郎の素を引き出せる、距離を詰められるのは千反田がなせる技なのかなと。
 また、鍵の謎を解いている最中再度「千反田さん」呼びをしていますが、これは推論を立てている最中に冷静さを取り戻したから、でしょうか。まぁ、振りむいたら千反田の顔が思ったよりも近くて動揺するのですが(笑。

・桁上がりの四名家
 十文字家、百日紅家、千反田家、万人橋家……うち十文字家は物語に登場し、万人橋家も会話の中で登場しますが、百日紅家って出てきたことありましたっけ……?

・「私、気になります!」(千反田)
 帰ろうとする奉太郎の手を取り引き留める千反田。ここで彼女の頬が若干赤くなっています。気になることがあるからといって、異性の手を取るのは彼女にとってそれ相応に勇気がいることだったのかもしれません。
 しかし、今は好奇心が勝る時。奉太郎のみならず、部屋中至るところに髪が伸び、絡み、その所々で鮮やかな好奇心の花が咲く。今は鍵の謎が最優先ですが、至るところに好奇心の種が蒔かれている……そんなイメージに感じられました。

・奉太郎は部長に打ってつけ?
 帰り際「部長は誰にするか」を話している際、千反田は奉太郎がうってつけだと思ったと話しています。里志はすぐさま否定しますが、実際のところ部長職を与えられたら「部長としてやらなければならないこと」を手短に済ませようとする可能性も考えられます。実際「文集を探すために学校中を歩き回る」という状況に陥りかけた時には、それを回避するべく行動していましたから、千反田の見立ても的外れでは無いのかもしれませんね。


<後半>
・奉太郎の筆の進み具合と作文の内容
 「ピアノの謎」が千反田から里志に伝わったと知るや否や、それまで遅々として進んでいなかった奉太郎の筆が一転して速さを増すと同時に焦りも見せています。いつ千反田がやってくるか分からない、里志に頼んだ「女郎蜘蛛の会」に食いつくかも分からない。そんな焦りの中で、奉太郎はどうにか作文を書きあげますが……
 「古典部の再興に尽力」「粉骨砕身」など、奉太郎に似つかわしくない言葉が並んでいますね。言い方は悪いですが「大人受けが良さそうな文章」だと感じました(苦笑。タイトルと話の流れからして、「入学して一カ月経って、部活が活発なのに驚いた」的な話が前段に書かれているのかな?

・千反田の友人が所属する占い研究会
 部活動の多さは「クドリャフカの順番」で大きな意味を持つことになりますが、この時点で「アカペラ部」「占い研究会」は出ていたんだなと。個人的にアカペラ部から盗まれたものの改変は上手いなと今でも思います。

・「女郎蜘蛛の会」の勧誘メモ
 字体がカクカクしているのは奉太郎によるものだとバレないための細工でしょう。千反田は奉太郎直筆の入部届を受け取っていますから、気づかれる可能性が無いとは言い切れません。そこを問われたら「秘密クラブ故に筆跡を隠している」という最もな理由もでっち上げられますし、一石二鳥ですね。
 
・「あれは現状に対するただの保留だね」(里志)
 奉太郎自身、千反田を拒絶するかのような己の行為に複雑な心境を抱いていましたが、里志のこの言葉をきっかけにパッと表情が変わります。「保留」という言葉はさながら雨の日に差された傘の如く、雨を遮るアーケードの如く、奉太郎の心を守ってくれました。
 今はまだ、何故千反田をそっけなく突き放すことが出来ないのかは分からない。そんな奉太郎が最終回で自分の感情に行きつく瞬間の、何とも鮮やかな「薔薇色」たるや……少しずつ明るさを増していく灰色の第1話と、鮮やかに咲き誇る薔薇色の最終回は対になるように描かれていたのかなと。


 といった感じの第1話でした。いやー何回見ても良い作品ですねぇ!奉太郎の落ち着いた語り口調は安心できるし、千反田は大人しいかと思いきや活発で可愛らしいし……私が一番好きなのは奉太郎と千反田しか出てこない第19話「心あたりのある者は」なんですが、里志や摩耶花も好きなんですよね……文化祭後のやり取り、良いよね……

 というわけで、今後もちまちま振り返っていこうと思います。
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