馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

蹄支・蹄叉を切っていいのか?

2008-01-21 | 蹄病学

P1170005 P1170006 とある牧場の明け1歳馬。

外人の装蹄師さんが、削蹄しているそうだ。

蹄叉も蹄支も蹄底もまったく切っていないようだ。

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「蹄叉も蹄支も、切ってしまって良いんだ」と日本人の装蹄師さんが言うのを聞いたことがある。

しかし、研究者によれば蹄支は地面からの力を受け、蹄踵を広げる作用をしているらしい。

それが本当だとしたら、蹄支を切ってしまうと蹄踵がつぶれたり巻き込む要因になるのではないか?

うまく蹄機(蹄が荷重を受けて拡がることで、クッション性を発揮し、血行も良くなること)が働かなくなるのではないか?

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むかし、蹄叉は地面にちょうど当たるように切らなければならないと考えていた人もいたようだ。

しかし今は多めに切られることが多いように思う。

蹄葉炎のときは、蹄叉にパッドを当てて蹄底で支えようとするのだけれど、正常なときは蹄叉で力を受けさせなくていいのだろうか?

 生き物は進化の結果、生き残るために理想的な体を手に入れているという考えがある。

馬が人の手を借りずに生きていくなら、蹄叉や蹄支・蹄底は地面に触れる程度につぶされ、蹄骨を裏から柔らかく支え、保護する働きを本来するものではないだろうか?

切ってしまっていいのか?

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Pa170043 これ知ってますか?

右のようにして使います。

Pa170044 Pa170045腹筋にめっちゃ効きます。

私は膝をつかないとできません。

いつか膝をつかないでもできるように・・・・・・ならないな。


7 コメント

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hig先生こんにちは。 (ペーパードクターK)
2008-01-22 08:27:17
hig先生こんにちは。

この記事に嬉しくなってコメントいたします!

それにしても、すごい削蹄ですね、蹄壁はきれいにそろえてあるのに、蹄底、蹄叉は切られていない…。
蹄支でもしっかり体重を支えられそうで、蹄支は蹄壁の続きなのだ、ということがこの写真ではよく分かります。

私も、蹄支はあまり切らない方がいいのではないか、と考えた事があります。

昔のことですが、ある装蹄師さんが、”蹄底はきれいなお椀形に切る、そうしないと挫石する”という持論でした。
しかし、最初しっかり開いていた蹄が、いずれもだんだん狭窄していくようで、いったい何が原因かみな悩んでおりました。
一方、別の装蹄師さんで”蹄踵は切らない!”という持論の方がいまして、常に半鉄のような短い蹄鉄をつけて、蹄踵はむき出しの装蹄をする人がいました。(これもまた極端な話で、特に障害を飛ぶ馬ではnavucular diseaseが心配ですが…)
そちらの装蹄師さんにしてもらうと、狭窄していた蹄が大きくなる、という評判でした。
私は、蹄支を切りすぎる事が狭窄蹄の原因になるのではないか、と考えまして(たしかルーニーの本にもそういうことが書かれていたように思います)、最初の装蹄師さんに蹄支をあまり切らないで下さい、と言ったところ、、、「獣医は蹄のことに口をだすな!」と。。。(私の人生こんなのばっか~、とほほです…)

しかしその後も見ておりますと、狭窄した蹄を広げようと、蹄叉側溝の部分を大きく刮削し(たしかに私のならった獣医の教科書でも、狭窄蹄の対処法としてそう書かれていたように思います)、結果的に蹄支をほとんど切り取ってしまい、ますます蹄が狭窄する、という悪循環のように感じられました。

私のならった教科書と、ルーニーでは正反対のことが書かれていたように思いますが、狭窄蹄に関してはルーニーに軍配が挙がったように私には感じられました。(今の教科書ではどうなっているのでしょうね?)

蹄は獣医と装蹄師の仕事が重なる部分で、そのあたり、人間関係も難しいです。。。
しかし蹄は、馬が動物として特殊な部分で、非常に興味がつきません。(その割に勉強しておりませんが、恥!)

最近『カリスマ装蹄師西内荘の競馬技術』(城崎哲、競馬王新書)という本が面白かったです。

記事違いですが、蹄葉炎を超音波ドプラ機能でみるというのはおもしろそうですね、development phaseとacute phaseの波形の違いとか、蹄葉の傷害の程度の判定とか、興味があります。

大寒だった昨日の朝はこちらでも雪が積もり、子供らおおはしゃぎでした。




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>ペーパードクターKさん (hig)
2008-01-22 20:31:31
>ペーパードクターKさん
 同じことを感じている人がいるんですね。ペーパードクターKさんはそう考えながら観察してこられたので、たぶん正しい結論へ至ったのでしょう。

 「獣医は蹄のことに口を出すな!」は最低です(笑)。

 

 
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写真に見られる陳旧化した蹄底の角質は人為的に操... (zebra)
2008-01-22 21:01:14
写真に見られる陳旧化した蹄底の角質は人為的に操作されなければ環境により相当質&量とも変化し、これにもクッションの様な機能が与えられているのではないかと私も想像します。
蹄鉄の装着は一見蹄底を負面から遠ざけているようであるけれども、地面を掘るような状況では負面として重要になるのだろう等々考えると、バランスが重要で絶対的な解はない技術なのかとも考えが及んでしまいます。
装蹄はどれほどの観察眼が問われる技術であるのか私には想像もつきません。。
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以前、蹄葉炎を蹄鉄なしで治療するホームページを... (蛭川徹)
2008-01-23 00:25:29
以前、蹄葉炎を蹄鉄なしで治療するホームページを紹介させて頂いた、なんちゃって装蹄師の蛭川です。私はこの削蹄方法には、一般的に馬たちが置かれている飼育環境を考えると反対です。蹄叉はともかくとして、蹄支はある程度人為的に整えるべきだと考えています。野生の馬が、24時間群れで草原、水場、岩地などの様々な環境の中1日に20kmほどの移動を続けていれば、写真にある蹄もひびの入ったところから蹄支が自然にあるべき長さまで剥がれ、適切な状態を維持すると考えられますが、夜間は馬房、昼間は整備された放牧地のみの馬たちでは、充分なcleaningが行われず、体重の有る成馬では圧迫が予想されます。体重の軽い明け1歳でも、あのヒビからの砂のぼりが起きる可能性は小さくないと思います。

-生き物は進化の結果、生き残るために理想的な体を手に入れているという考えがある。

馬が人の手を借りずに生きていくなら、蹄叉や蹄支・蹄底は地面に触れる程度につぶされ、蹄骨を裏から柔らかく支え、保護する働きを本来するものではないだろうか?

きっとその通りだと思います。しかし、一般的に馬たちの置かれている飼育環境は自然のそれとはかけ離れており、有る程度人為的に手をかけないと、野生馬の蹄は作れないと思います。

http://www.barefoothorse.com/

http://www.ironfreehoof.com/trimming.htm

これらのホームページは野生馬タイプの削蹄方法を載せていますが、cleaning bars の項目で蹄支の扱いについて触れています。昨年の9月よりこの、野生馬タイプの削蹄方法(Natural Hoofcare) を自分の馬4頭とご理解有るお客さんの馬数頭で実験中です。いまだ100%の確信とは言いがたいですが、手ごたえは感じています。今年は1日2回の蹄浴実験を考えています。
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PS 一つ目のホームページ Barefoot for Soundn... (蛭川徹)
2008-01-23 00:35:27
PS 一つ目のホームページ Barefoot for Soundness のなかでは、Do Trimの項目の中の 5. Trim the bars で蹄支について詳しく書かれています。
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>zebraさん (hig)
2008-01-23 05:13:28
>zebraさん
 「バランスが重要で絶対的な解はない」。その通りかもしれません。馬を飼っている目的、運動量、地面の硬さ、不整地かどうか、この季節なら雪や氷のあるなし。それらにあう蹄の形状も削蹄方法もあるのでしょう。
  
 ひどく伸びて裂蹄した蹄を見るに見かねて削蹄しようとしたら、氷の上ですべる(ホントカ?)から止めてくれと言われたことがあります(笑)。
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>蛭川徹さん (hig)
2008-01-23 06:02:50
>蛭川徹さん
 専門家の意見ありがとうございます。

 写真で紹介した削蹄も、たまたま来院した1歳馬を撮ったもので、装蹄した人がいつもこうしているのかどうかも知りません。

 Natural Hoofcareの考えは興味深いです。削蹄・装蹄についてコペルニクス的転回をしなければならない部分もあります。慢性蹄葉炎の管理についても、鉄をはずす。深屈腱の切断?そんなことはしてはいけない!という主張は、一概には賛同できませんが、勉強になりました(謝)。

 進化の結果の馬という動物を考える時に、野生馬がどうなのかということをしばしば考えます。Natural Hoofcareも哲学としてそこにスタンスがあるように思います。ただ、人が飼っている装蹄していない馬の蹄と野生馬の蹄は違うのかもしれないとも思います。
 また、速く走らせたいとか、馬車を曳かせたい、だから装蹄したい。という目的にあった蹄は野生馬の蹄とは違っているかもしれませんね。

 すぐに考えなければいけないのは、競走用サラブレッドにする馬の蹄踵をどう管理するかなのですが・・・・・蹄叉、蹄支、蹄底を切らないというのは極端にしても、蹄支や蹄叉を切ってしまうのは問題がありそうです。

 HPゆっくり読んでみます。なかなか手強いですが。

 
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