<馬の難産と奇形胎仔の話で写真もあります。見たくない方は見ないでください>
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「ほぼ予定日どおりだが、朝、お産が始まっていて出血していた。
胎盤は剥がれて出てきている。
子馬の頭は触れず、肢が3本来ている。」
とのこと。
胎盤剥離で胎仔が死んで、そのまま押し出されて来ているのだろう。
破水から時間が経っているだろう。
流産なら胎仔が小さいので出せるかもしれないが、予定日どおりだと失位整復は厳しいかも知れない。
全身麻酔して後肢を吊上げて、胎仔を押し戻して失位整復できなければ、帝王切開するしかないが・・・
と考えて、当番獣医師と実習生を呼び出す。
朝になって帰ったばかりなんだけどね;笑
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全身麻酔する前に、社長に電話をしてもらって、帝王切開までする意向があるか確認する。
18歳で体型も崩れている。
そして異常産だ。
普通には帝王切開までするのはお勧めできない。
全身麻酔した繁殖雌馬の産道に手を入れてみる。
肢が4本来ている。ずっと奥に子馬の口を触る。
・・・・前肢を押し込んで、尾位にして牽引しよう。
ひっぱったり、押し込んだりして、尾位上胎向にして引きだそうとするが、飛節より先は出てこない。
そのうち腸管が見えてきた。
産道損傷?
いずれにしても厳しい。
母馬も助ける方法はない。
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解剖場で剖検した。
子馬は背中で折れ曲がっていた。
鼻面も曲がっている。
これでは失位を整復できないし、失位整復できて牽引しても出ては来ない。
子馬は反転性裂胎だった。
脊柱が折れ曲がり、腹腔が閉じておらず、臓器が体外へ露出している。
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反転性裂胎は、反芻獣、特に牛で見られることがある奇形で、原因はわかっていない。
schistosomus reflexus
馬ではとても珍しい。が、報告はある。
鹿児島大学で牛の奇形を研究しておられた浜名先生がおっしゃるとおり、
発生を記録しておくことがのちのちの病因解析につながるかもしれない。
牛でも、産道から娩出させることはできず、ほとんど帝王切開して異常胎仔を摘出することになる。
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春の妖精。
腹壁破裂だけなら馬でもなんとかなりそうですか?
ここまで大きくなっているけど、ヒトの場合と同じく、異常は早期に起こっていると考えられますか?
せめて母馬を助けるためには何らかの有効なスクリーニングはありますか?
と、質問ばっかり。
この母子のこと、記録がんばってください。
妖精いっぱいですね。
牛ばかり見てる自分ですが
5年に一度程度くらいの頻度であたります
3肢以上が産道にあるときは双子がほとんどですが、いつも可能性として裂胎は考えてます(まず切らないとどうにもならないので;)
脊柱も曲がってるので切胎もできたことがないです
一度遭遇したのは「破水しない」という訳のわからない主訴で、反転した腹壁が袋状に産道に入り込んでいるものでした
メスで切ったら裏側に被毛が生えててさらにその中に手足頭があるというものでまったく理解が難しいものでした
皮膚がひっくり返った状態で閉鎖した?なんてことがあるのでしょうか…
体表からの超音波検査でモニターできると思いますが、確信が持てるか、というのと、結局、帝王切開しか母馬を助ける方法はないかもしれません。
裏返って皮膚に包まれている、というのも奇妙ですね。
発生学、もっと勉強しておけば良かった;涙
そういうと、無形無心胎なんてのもあるのでしたか・・・思えば、まともに発生する方が不思議で、ときどき失敗があるのが当たり前かもしれませんが。
ヒトでは臍帯ヘルニアというのがあって、染色体異常に伴うことが結構あるみたいですから、そういうところを確認しておく必要はあるのかも知れません。
胎生期の外力でも起こりうるとは思いますけどね。
サラブレッドの世界は双子のクラッシュって結構やられているのですが、生き残った片割れに異常が多いということはないようです。
胎盤構造でも反転確率変わってくるのかな。
イマジネーションの範疇ですけれど。
確かに潰してますね。
もしかすると反転は潰せるステージの後に起きているのかも知れません。
超音波で確認する月齢で反転性裂体を疑ったらそれこそどの動物でも報告ものだと思います。
腹腔が創られて閉じるのはどのステージなのでしょうかね。発生学、すでに記憶のかなたです。解剖学のとっかかりに教わりましたけど、臨床的重要性を説明してから授業してもらいたかったです。
まるっと反転して仕舞えば皮膚被毛が内側になり、腹膜が骨格を包んでしまうわけですが。
裂胎の臍帯がどうなっているのか詳細な観察をすることが発見につながりそうな気もします。
まともに育つ、というのは何ごとにもよらず、難しいことのようです。