電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
◉この木なんの木2
2018年8月23日
僕の寄り道――◉この木なんの木2
2018 年 6 月 26 日の「この木なんの木」と題した日記を書いた。
保育者向け月刊誌の仕事をしていたら、よく似た木の実が登場したので比較してみたら、これはどうやらナンキンハゼらしい。
放っておくとムクドリ、ヒヨドリ、キジバトなどが実を食べに来るけれど、実を摘んですりつぶし、種を除き、白い粉をガーゼで包んで蒸してから絞る。その絞り汁を型に流し込んで芯となる糸を入れると、それがロウソクになるのだという。仕事の原稿に答えが書かれていて解決。
実 で 遊 ぶ 秋 の 園 児 の お 裾 分 け
(2018/08/24)
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◉おはよう
2018年8月23日
僕の寄り道――◉おはよう
JR 駒込駅、早朝のホームに降りるエスカレーター。この時間帯のホームに立つのは、郷里で一人暮らししていた親の介護帰省、母親が他界して無人となった実家の片付け帰省、年に数度の墓参り、そして編集委員をしている郷土誌で取材の時くらいのものだ。
用事が何かで朝のホームへ向かう気分も違う。
自分に
「おはよう!」
と声をかけてみる。
お は よ う の 声 が 眩 し い 朝 ま だ き
(2018/08/24)
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◉フレンチ食堂
2018年8月23日
僕の寄り道――◉フレンチ食堂
雑誌『季刊清水』の表紙絵が出来上がったそうなので、お借りするため静岡市清水区有東坂の自宅兼アトリエを訪問した。午後からは渋川で訪問インタビューがあるので、その間に昼食を編集長が奢ってくれるという。「近くの『フレンチ食堂』に行きましょう」というので楽しみにしていた。
台風接近の影響か、晴天と土砂降りが繰り返す大荒れの天気で、南幹線沿いのウェルシア薬局で雨宿りしたら通りを挟んだ向かいにその『フレンチ食堂』があって、いいなあと思う。
セレクトランチ:前菜、メイン料理、コーヒー、パンで ¥1.300 のハンバーグにしてみたが、ちょっと感動したので写真でメモしておく。
台 風 に 追 わ れ て 駆 け 込 む 厨 か な
フレンチ食堂
静岡県静岡市清水区平川地5-10
(2018/08/24)
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◉振り向けば
2018年8月22日
僕の寄り道――◉振り向けば
要町から東長崎駅前に続くハイカラな時代の気分を残す古道。『グリルソワール』という小さなレストランがあり、前を通り過ぎてからふと後ろを振り向いたら、妙に気になるので店の前まで戻って写真を撮った。
なぜならこの店の看板には裏側がちゃんとあるからで、表と裏のある看板はとても珍しい。看板は向こうから来る人にも、こちらから行く人にも同じに見えるよう、どちらの面も表面になっていることが多いからだ。
面白いのと、『孤独のグルメ』の主人公のように「おなかがペコちゃん」だったので、昼食に入ってみようかと思ったら、店名通り営業時間は夜だけだった。残念。
振 り 向 け ば 日 は つ れ な く も 秋 の 昼
『グリルソワール』
東京都豊島区長崎1-25-21
(2018/08/22)
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◉池袋モンパルナス
2018年8月22日
僕の寄り道――◉池袋モンパルナス
北池袋の編集事務所で「誤嚥性肺炎」の診断を受けて咳の出る女性編集者と打ち合わせをした。
本人曰く、「誤嚥性肺炎は医者の見立て違いだと思う」と言うので、奇しくも一年前に間質性肺炎の診断を受けた友人を思えば、「誤嚥性肺炎でありますようにと祈ったほうがいい」という意味の話をした。笑わせるとひどく咳き込むのが心配だ。
打ち合わせを終えたあとはいつも山手通りの裏道を歩き、西武池袋線椎名町駅前の『ぎょうざの満州』で冷凍餃子を買って帰ることにしている。ここの素朴な餃子がとても好きだ。
要町から椎名町駅前に続く道は古道らしく、大正の終わりから第二次世界大戦終戦頃にかけ、池袋モンパルナスと呼ばれた場所だった。そんなこともあり、昔はハイカラな商店が並んでいたのだと思う。
地図下部にあるのが西武池袋線、金剛院への参道と鉄道が交わるあたりが椎名町駅前、そこから北へ向かって地蔵堂経由で北荒井方面に続く道がハイカラな古道になる。この大正期の地図を見てわかるように、低地の水田地帯に垂れ下がった鼻のような高台の尾根道が古道になっている。田端文士村もそうだけれど、高台で日当たりが良く、田園風景に程近く、それでいて飲みに繰り出せる歓楽街も近い環境が、当時の画家や文士などを惹きつけたのだろう。
有力な芸術家が夭折したり、国が自滅的な戦争にのめり込んで行ったり、空襲の炎が街を焼き尽くしたはずなので、もちろん戦後以降の面影しか残っていないにしても、街には街の記憶の遺伝があり、この街になおハイカラな香りを残している。
秋 の 日 に 咳 す る 人 の い る 古 道
(2018/08/22)
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◉六義公園埋蔵文化財試掘調査
2018年8月22日
僕の寄り道――◉六義公園埋蔵文化財試掘調査
郵便受けを覗いたら「文京区立六義公園埋蔵文化財試掘調査(終日休園)のお知らせ」という書類が投函されていた。
六義園周辺は発掘調査が行われた場所それぞれに地名を冠した遺跡名がつけられており、縄文時代あたりから巨大貝塚を持つ大きな集落があったらしい。六義園も含めて大きなひとかたまりの遺跡と言ってもいいかもしれない。
「試掘」ということで、公園整備事業は都の庭園や公園の地下にどんな歴史が埋もれているかを探る良いチャンスなのだろう。
秋 旨 し 一 番 搾 り 試 し 掘 り
(2018/08/22)
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◉誤嚥すずめ
2018年8月21日
僕の寄り道――◉誤嚥すずめ
友だちの女性編集者が体調不良で早退し明日は欠勤するという。
そりゃたいへんだとカメラマンのご主人に見舞いメールを書いたら、一週間くらい前から「風邪ひいた」と言いつつ薬も飲まず、咳がひどいわりに鼻水もでず、肺が痛いと言い出したので
「肺炎じゃないの?、病院に行ったら」
とすすめたらなんと誤嚥性肺炎の診断が出たという。
ほんの少し年上だけれど、いよいよそういう老人的病気に注意しなくてはいけない年齢に近づいたのだなと思う。
ご主人がメールに添えて来た自称俳句もどき。
炎 天 下 盆 栽 の 木 陰 に ス ズ メ 2 羽
(2018/08/21)
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◉向き合わない
2018年8月21日
僕の寄り道――◉向き合わない
なぜかひとり長生きしてしまって身寄りがなくなり、老人ホーム入所が決まったのでケアマネにお願いし、レンタカーのミニクーパーを運転し、荷物は首に下げたタオル一本で入所することにした。
ケアワーカーたちに「おじいちゃんの座右の銘を書いて」と色紙を渡されたので、
向き合わない。
過去現在未来と向き合わない
自分自身と向き合わない
生と死とに向き合わない
と書いている夢を見た。
向 き 合 わ な い 夏 の 夜 の 夢 に 向 き 合 わ な い
(2018/08/21)
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◉つぎはぎ連合野
2018年8月21日
僕の寄り道――◉つぎはぎ連合野
脳の本に出てくる連合皮質という言葉とそれが指し示す機能がおもしろいので検索したら大脳皮質連合野とも言うらしい。感覚野や運動野などの連携に高次の役割を果たしている。
コンピューターで仕事をするようになって三十年ほどになるけれど、相変わらずコンピューターという道具は面白い。自分がコンピューターにやらせたいことを論理的に説明できるならば、そういう機能はたいがいすでにプログラム内に備わっているし、なければ自分で定義して自動化できる。
脳の本を読むとコンピューターと驚くほど仕組みが似ている。だから自分の思いを論理的に説明できるならば、そういう考えはたいがいすでに誰かが本にまとめている。みんな同じことを考えている。なければ自分で記憶して活用すればいい。
コンピューターや脳の仕組みについて書かれた本を読むのと並行して、人間がどうしても生み出してしまう「いわれのない差別」について書かれた本を読むのが面白い。差別問題にはたくさんの人たちが苦労している。
論理的に突き詰めて説明していくとぶちあたる人間相互にあるどうしようもない矛盾をのりこえる方法が、論理的対立構造をもう一段高次な観点で論理化することにあると思える。それが、コンピューターや脳の仕組みとひどく似ている気がする。
自分はそんな風にコンピューターと、脳の仕組みと、人類の難問を楽しんでいる。というかそれが日々のやるせなさからの救いになっている。高次の連合によるつぎはぎ的継続のみが人間にとっての肝要と思う。世界はそういう日々としてできている。
ま わ り く る 木 馬 の 鼻 に 萩 の 風
(2018/08/21)
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◉タクシーを呼ぶ
2018年8月19日
僕の寄り道――◉タクシーを呼ぶ
マンション内の交流会に住民友人が外部から参加される事になりパーキンソン病だという。電動車椅子に乗って西池袋から来るそうで、坂の多い東京の道路事情を思い浮かべて心配したが無事到着した。同い年の男性で、すくみ足症状は義父よりずっと重い。
コンパクトな電動車椅子が想像していたよりずっと高性能で驚いた。急な坂道をいくつも上り下りして到着したのに、満充電時の 70% 以上を電力として残していた。飲酒されたので帰りはタクシーを呼び、積み込む作業を手伝ったら軽いのにも驚いた。ずいぶん進歩している。
最近は本郷通りを流しているタクシーを拾うのが難しくなった。困った時こそ進化のチャンスなので、スマホに入れたまま一度も使ったことのない『全国タクシー』というアプリを起動してみた。
暗い歩道に立ち、酔っ払って覚束ない指先で初期設定を済ませたら、タクシーを呼ぶための最終ボタン「今すぐ呼ぶ」が表示され、無事に迎車依頼が完了した。地図に自分の場所、迎えに来るタクシーの現在位置、タクシー会社名、到着予想時刻までの残り分数が表示され、非常によくできている。
神さまが手助けしてくれたとしか思えないのだけれど、やってきたタクシーは背の高いミニバンタイプの次世代タクシーで、黒塗りの車体に 2020 年東京オリンピックマークをつけたやつだった。日本交通の若い運転手も親切で、二人掛かりで車椅子の積み込みも済ませた。
「外出するとみんなに迷惑かける」と恐縮されるので、かつて広島から車椅子の母親を連れて上京してきた友人が「勇気を出して外出した先人が切り拓いてくれた支援の道を辿ってきただけ」と言っていたのを思い出し、それでいいんですと聞いた風な声かけをしておいた。
す ま な い は 迎 車 の 時 に 言 う 言 葉
(2018/08/19)
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◉この点については後ほど詳述する
2018年8月18日
僕の寄り道――◉この点については後ほど詳述する
学生時代の友人が「このおっさん『この点については後ほど詳述する』って書いておいて結局何も触れないことが多いんだぜ」と笑うので、読んでみて「本当にそうだった」と言ったら「なぁそうだろう、ひどいよな」とふたりで大笑いしたことがある。たぶん当時売れっ子の評論家だったのではないかと思う。
住民交流会でよくご一緒した先生の著書にも「この点については後ほど詳述する」が多いなぁと思って読んでいるが、ちゃんと詳述があったかどうかが気にならない。読んでいるうちに「この点については後ほど詳述する」と言われたことを忘れてさせてしまうのも、いつの間にか自然に詳述してしまっている著者の力量によるものだろう。
聖学院脇の坂道と大スダジイ
知 ら ぬ 間 に 詳 ら か な り 空 高 し
(2018/08/19)
◉思い出の夏
2018年8月18日
僕の寄り道――◉思い出の夏
夏の思い出は生きられた回数分の思い出から印象深い部分だけを寄せ集めてできている。
縁台に西瓜があって澄んだ夏空に花火が上がっている。北区中里にある老舗和菓子店『中里』の壁に穿たれた小さな窓から覗く思い出の夏。
過 ぎ た 日 の 花 火 を 覗 く 遠 眼 鏡
(2018/08/19)
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◉銘々の歴史
2018年8月18日
僕の寄り道――◉銘々の歴史
茣蓙(ござ)の下に藁(わら)を詰めて厚みをつけたものを、銘々一枚(=しとね)だけではなく、部屋全体隙間なく敷き詰めることができるようになって、ようやく貧しい日本に座敷というものが誕生する。
そういう大きな座敷で大勢が食事ができるようになったとき、沢山の料理が並んだ大きな御膳を大勢で持ち上げて運んでくるわけにいかないので、一人にひとつずつの御膳を運んでくるようにしたのが銘々膳になる。家庭には箱膳があった。
そのちいさな膳をさらにちいさく凝縮したものが銘々に配られる幕の内弁当である、と言ってみると、むかし汽車旅で膝の上に広げた素朴な駅弁が無性に食べたくなる。
箱 庭 の 空 を 旅 ゆ く 秋 茜
(2018/08/19)
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◉パティ
2018年8月18日
僕の寄り道――◉パティ
週末の老人ホーム面会訪問。
電車内の中吊り広告を見て妻が小声で
「パティって細かく切った牛肉をまとめたもののこと?」
と聞くので
「ううん、牛肉以外でもそう呼ぶと思うんだ」
と自信がないので小声で答える。
アメリカのパティはフランス語のパテ(pâté)なので、肉でも魚でも細かく刻んでまとめたものであるはずなのだけれど、パテとパティでテリーヌとハンバーガーを思い浮かべると大声でそうは答えにくい。
ハンバーガーといえばバンズもパンと同義の bun(バン)のことでで、「バンズってなに?」と聞かれたら「パンの複数形のことだよ」と答えてもいいはずなのだけれど大きな声で答えにくい。
国自体がでかいアメリカが勝手に「バンズ」を三層に切って上から「クラウン」、「クラブ」、「ヒール」と呼ぶ、と言えば自ずから大声で言ったことになるので、アメリカ人がこうだと言えばそうなのだろう。「この広告いっぱいあるけど誰がお金出してるの」と聞くので「アメリカ…。」と省略して答えておいた。まあいい。
帰宅して明日の住民交流会の打ち合わせを終え、晩酌でいっぱいやりながら
「最近ピザのクラストのことをドウって言うけど、ドウは dough なので、ピザの台だけじゃなくバーガーのバン(bun)も、中華まんのバン(bun)も、和菓子屋の酒饅頭のバン(bun)も、その元になる小麦粉を練った生地のことを指してドウ(dough)と呼ぶはずなんだけど」
と全米 400 社以上もある(!)新聞社に赤い顔して反駁するトランプ氏の映像を見ながら付け足した。
こ う 言 え ば そ う い う 事 と 馬 肥 ゆ る
(2018/08/18)
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◉きのこの木
2018年8月17日
僕の寄り道――◉きのこの木
Evernote に連用日記をつけ始めて足掛け五年になる。去年の 8 月 17 日の日記を見たら「東京は 17 日間連続して雨」と書かれていた。
今年は連日猛暑の話題で賑わったので忘れていたけれど、去年は 8 月に入って毎日雨が降り続いていたのだった。
六義園正門脇の樹木にもびっしりキノコが生えて妻が気味悪がるので、園内を歩いたらいたるところに毒きのこが生えてきのこの森になっていたのも去年のことだ。
今年は連日の猛暑で野菜が高騰しているけれど、去年は記録的雨天続きにより、やはり野菜が高騰していたのだった。
夏 野 菜 チ ロ リ ン 村 と き の こ の 木
(2018/08/17)
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