◉旅行計画

2018年8月17日
僕の寄り道――◉旅行計画

デイヴィッド・J・リンデン著、夏目大訳『脳はいいかげんにできている その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ』河出文庫という本を電子書籍で読んでいる。

「これで、脳の内側から外側まで、それぞれの部位がだいたいどのようなものか、ざっと一通りは話したことになる。」と書かれていて笑った。脳について書かれた本を読むたびに、必ず気味の悪い断面図を見ながらのレクチャーを「ざっと一通り」受けなくてはならない。今あなたはあなたの頭をかち割ると見ることができるこのクルミみたいなものをすり鉢ですり潰してあなたの味噌を練っています…みたいな奇妙な体験である。

書き手によって「ざっと一通り」もさまざまで「またか」と思いつつ読んでいるけれど、アメリカ人が書いた本はそれなりに楽しい。巨大な世界ゆえに豊富な「気の毒な事例」に事欠かないせいもあるだろう。あとは自分の部位を他人事のように自分の部位で論じる能力に長けている。

もう一冊、デイヴィッド・イーグルマン著、大田直子訳『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』ハヤカワ文庫を電子書籍で買ったので、その順で乗り継ぐ旅行計画になっている。

ク ラ イ ン の 壺 を 旅 す る 本 の 窓

(2018/08/18)


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◉風に向かって走れ

2018年8月16日
僕の寄り道――◉風に向かって走れ

 

犬は全身毛だらけなのであえて「犬の髪型」というものを意識したことがない。

昼休みに近所のドラッグストアまで頼まれた買い物に出たら、スーパーマーケットの出入り口脇で飼い主を待ちながら、強風に吹かれている犬がいた。

「風、つええなあ…」
と言っているような毛がかき乱された顔を見ると、犬にも髪型があるんだなぁとあらためて思う。若き日のクリント・イーストウッドみたいでかっこいい。

涼 風 に 髪 か き あ げ ら れ て 雄 犬( お と こ ) 前

(2018/08/17)


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◉甲武信ヶ岳

2018年8月16日
僕の寄り道――◉甲武信ヶ岳

冬の高気圧に覆われて大気が澄み切った朝夕は富士山と丹沢山塊がビルの隙間にちょっとだけ見える。

八月なかばで夏の高気圧に覆われた朝、遠くの山が見えることは珍しい。今朝は北西から乾いた強風が吹いているので、六義園越しに遠くを見たら青い山並みがあった。

地図で確かめると標高 2,475 m 、甲州(山梨県)、武州(埼玉県)、信州(長野県)の境にまたがるのでその名があるという甲武信ヶ岳ではないかと思う。

山 近 し 甲 武 信 ヶ 岳 と 涅 槃 西 風( ね は ん に し )

(2018/08/17)


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◉蜻蛉と気象概況

2018年8月16日
僕の寄り道――◉蜻蛉と気象概況

東京は未明から強風が吹き、ときおり窓にドンとぶつかって大きな音を立てている。北西向きのサッシが鳴るということは南風ではないわけで、気象概況を見たら北風が強く吹き、乾いた空気で日中はさらりとした暑さになり、夜は気温が下がって肌寒いくらいかもしれないという。

六義園内の樹々がゆさゆさ揺れており、しっかりしがみついていないと蝉たちも大変で、枝から跳ねとばされ落ちまいと飛び回っているのではないかと、ベランダに出てみたら樹間にたくさん蜻蛉(とんぼ)が集まっていた。

日差しを避けているのか、強風を避けているのか、ちょっとした木陰で悠々とホバリングしている。

風 乾 き 蝉 落 ち 空 に 蜻 蛉( と ん ぼ )飛 ぶ

(2018/08/17)


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◉蕨手刀

2018年8月16日
僕の寄り道――◉蕨手刀

仕事の合間に柴田弘武『鉄と俘囚の古代史《増補版》 蝦夷「征伐」と別所』彩流社を読み始めたら蕨手刀が出てきて、とりあえず「わらびてがたな」と読んで先に進んだけれどなんども出てくる。

六義公園脇にて(2018/08/16)

間違った読み方の回路が脳内に定着しないうちに修正しておこうと辞書を引いたら、「わらびてとう」や「わらびてかたな」とも読むけれど「わらびてがたな」でいいらしい。こういうこともある。

古 代 史 は 春 の 雨 な り 鉄 匂 う

(2018/08/16)


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◉指の先

2018年8月16日
僕の寄り道――◉指の先

宮本常一の生まれ故郷周防大島で行方不明になっていた幼児が元気に保護されたのも驚いたけれど、発見者が大分から駆けつけた 78 歳のボランティアだったことにも驚いた。

 

渋沢栄一記念館前にて(2018/08/15)

取り囲んだ記者たちに発見当時の様子を語る老人が上げた右手の先に、飛んで来たとんぼがヒョイとまったときには、妻とふたりテレビに向かって拍手した。

「 ぼ く、こ こ 」 と 蜻 蛉( と ん ぼ )も と ま る 指 の 先

(2018/08/15)

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◉象の足

2018年8月16日
僕の寄り道――◉象の足

本物の象をまじまじ眺めたのは小学校の写生大会が初めてで、描くなら象と決めて動物園に行ったが意外に足が長くて驚いた。

同じようにクマも手足が長く、絵本や児童公園の遊具で見たぽっちゃり可愛い漫画化された姿と、プロポーションがずいぶん違うのに驚いた。象で拍子抜けしたので想像していた体型に近いサイを描いたら入選止まりだった。

足の長い象を写実的に描いた米屋の息子の絵が特選で、意外に可愛げのない異様さを異様なままに描いたから評価が高かったのだろうと、絵になっても可愛くない象を眺めて思った。

影 涼 し 意 外 に 長 い 象 の 足

(2018/08/15)


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◉橋

2018年8月15日
僕の寄り道――◉橋

イタリア北部ジェノバで幹線道路の橋が落下した。最高気温が 30 度に満たないくらいの土地なので、猛暑が原因などではなく、そもそも構造の甘さが指摘されていたのだという。橋が落ちるのは怖い。

子どもの頃はよく猛暑でアスファルトが溶け、面白半分に踏んで歩くと靴を汚して叱られた。最近は溶けたアスファルトを見ない。日本の舗装も進歩したのだろう。

駒込橋上にて

貨物引き込みの軌道内で遊ぶと線路が焼けて熱く、鉄の伸縮を吸収する仕組みについて上級生から教えられて感心したものだった。

道路も線路も伸びるので橋も伸びる。猛暑で伸び厳寒で縮み、車両の荷重や地震の歪みでも伸縮する。JR 山手線駒込駅脇の本郷通り駒込橋では伸縮を吸収するための装置交換工事が行われている。

昼休みに飛鳥山博物館まで散歩したら、音無川にかかる橋の上で川面を眺めている人がいた。猛暑が続くけれど、見上げるともう秋の空だ。

空 高 し 橋 の 上 に は 雲 流 る

 

(2018/08/15)


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◉海戦

2018年8月15日
僕の寄り道――◉海戦

NHK 朝ドラの中村雅俊じいちゃんによれば、本当のことを言うと、実は人間は大人になどならないのだという。人間もそうなので人類も当然大人になどならない。

昨夜は録画しておいたテレビ朝日の真珠湾攻撃ドキュメンタリーを見た。今夜は NHK でノモンハン事件の歴史・紀行があるという。

道端に子どもが水遊びした跡があり、ほんのちょっと前まで自分たちも、こんなのを使って
「トラトラトラ、真珠湾には敵戦艦がうじゃうじゃ集結しています。わが軍は特殊潜航艇も作戦開始、どうやら敵の魚雷防御網もないようです」
などと戦争ゴッコ遊びに夢中になっていたもので、いま思えばまだ戦争の記憶も生々しいはずの、昭和三十年代ですらそうだったのだ。

「泣いたりしないで 大人になれない」(S.A.S『さよならベイビー』より)

水 遊 び ア ヒ ル 隊 長 司 令 官

(2018/08/15)


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◉本と時計

2018年8月15日
僕の寄り道――◉本と時計

紙の本を読んでいると版面(はんづら)の外側、天と小口が出会う角あたりに、小さな時計があったらいいなとよく思う。

腕枷(うでかせ)のような時計をしないので、スマホで読む電子書籍は紙面隅にある小さな時計が役に立つ。

紙の本を読んでいるときもついつい余白に時計を探してしまう。
「今何時 そうね だいたいね」(S.A.S『勝手にシンドバッド』より)

時 計 見 る 八 月 半 ば 砂 ま じ り

(2018/08/15)


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◉散漫と集中

2018年8月14日
僕の寄り道――◉散漫と集中

狭山事件、甲山事件などで弁護活動を行った和島岩吉(1905 - 1990)が徳島ラジオ商殺し事件(1953)にも関わっており、開高健が それを題材に『片隅の迷路』という作品を毎日新聞社から出していたことを初めて知った。角川文庫で電子書籍化されていたので、すぐダウンロードし午前中に読み終えた。やっぱり開高健はすごいと感心した。

妻は仕事や趣味のことなどに異様な集中力を発揮するタイプで、過剰に集中している状態から別の現実に連れ戻すのに苦労する。集中しすぎて頭が痺れっぱなしになっているように見える。

自分もまた子ども時代からそういうタイプで母親によく叱られていた。それが三十代をすぎたあたりから急に集中力がなくなり、気を散ぜず集中して本を読むことに四苦八苦するようになり、いささかこれは一種の病気なのではないかなどと思うようになった。

どうもパソコンの時代になって受け取る情報が許容範囲を超えているのではないかと思い、仕事のメールと、情報検索と、日記の読み書き以外、いっさいのネットワークサービスを停止してみたら驚くほど集中力が戻り、本や新聞を読むのが楽しくてたまらない。

そのかわり、一冊の本を数時間で熟読し終えたりすると頭のまわりがジーーンと痺れており、これは妻の過集中状態と同じかもしれないなと思う。集中しすぎることにもまた弊害があるかもしれないので気をつけよう。

線引きした開高健の名文。

「へえ。けどこいつは汚ねえ字だね」
「文句いうな。この署の部長はんが書きはったんや。字のわるい人は出世する」
「わたしは字がうまいからいつまでたっても代書屋かね」
「職に貴賤はないよ。どの桶にも底があるからな。その底でたつより手ない」
(沼津署で連れてきた代書屋に供述書を書き写させながら)

水 漏 れ を な お し て 行 水 桶 の 底

(2018/08/14)


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◉盆雑記

2018年8月13日
僕の寄り道――◉盆雑記

午後から根津の出版社まで新刊書の打ち合わせで出かけた。

根津にて

オフィスに社長がひとりだけいるので、
「社員は全員お盆休みですか」
と言ったら、
「社員も印刷所もお盆休みです。でも初校戻しがお盆休み明けになっているので、僕ひとり出社して仕事しています」
と言うので笑った。

へび道にて

お土産にドイツ産の赤ワインをいただき、藍染川あとのへび道、よみせ通り、谷中銀座とてくてく歩き、さすがに疲れたので日暮里駅から山手線に乗って帰ってきた。根津交差点ですでに空からゴロゴロという音が聞こえていたけれど、帰宅したら激しい雷雨になった。

ボ ン 休 み ド イ ツ ワ イ ン と ゴ ロ 合 わ せ

(2018/08/13)


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◉ホーム寸景

2018年8月13日
僕の寄り道――◉ホーム寸景

ああおもしろかった、と奥付まで読んでページを閉じ本を置いた時の気分は、来客を見送りがてら立ち話をし、列車に乗って立ち去った人によって、ポツンと駅のホームに取り残されたような気分である。

塩見鮮一郎『異形(いぎょう)にされた人たち』河出文庫読了。ノートに書き写したい線引きがたくさんある。

寂しいので文中からあみだくじ読書で亀井トム『部落史の再検討―部落史方法論の崩壊と再建』三一書房を注文した。文庫版あとがきに好きな作家野口武彦の名があって、ああそうかと思う。

な ご り 雪 赤 い ス イ ー ト ピ ー 風 立 ち ぬ

(2018/08/13)

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◉冨士アイスクリーム

2018年8月11日
僕の寄り道――◉冨士アイスクリーム

小学生時代だから昭和三十年代、下り東海道本線が富士駅に停車する夏休み帰省では、よくホームで売り子が売り歩く「冨士アイスクリーム」を親にねだったものだった。当時は今のようにプレミアムアイスが当たり前の時代ではなかったので、記憶の中ではハーゲンダッツよりはるかに濃厚で美味しかったような記憶がある。「冨士」のふた文字も味覚に良い影響を与えていたかもしれない。

インターネットが普及し始めた二十世紀の終わりころ、あの「冨士アイスクリーム」の事が知りたくて検索したが情報がなかった。あれから二十年近い歳月が流れ、ふと思い出したので再検索したら、丹念に情報を集めて構築された『漂流乳業』というサイトがあって、懐かしい『冨士アイスクリーム』の味を思い出した。

冨 士 山 を ス プ ン で 掬 う 夏 休 み

(2018/08/12)


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◉神武紀元と軽自動車

2018年8月11日
僕の寄り道――◉神武紀元と軽自動車

郷土の歴史について書かれた本を読んでいたら西暦表記が間違っており、中世武士たちが明治時代を生きたことになっている。どうしてこういう間違いが見過ごされたのだろうとしばらく考えてから思い出した。その本は戦前戦中に郷土史家たちが書いた本なので西暦ではなく神武紀元で表記されていたのだった。

今日は 520 人が犠牲になった日航ジャンボ機墜落事故、その慰霊の日にあたる。NHK のアナウンサーが「事故の起きた昭和六十年」と言う。昭和六十年って西暦何年だっけと思い、昭和生まれなのでとっさに自分の元号生年を「昭和六十年」から引き、引いた数字を西暦生年に足して 1985 年とわかる。昭和生まれだからいいけれど、平成生まれの若者は換算が大変だろう。

神武紀元から西暦を換算するときは日本独自規格である軽四輪自動車の排気量 660cc を思い出し「神武紀元−軽自動車=西暦」と覚えている。

元 号 を 換 算 し て み る 夏 の 朝

(2018/08/12)


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