電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【キューポラのある街】
【キューポラのある街】
仕事でキューポラのある街へ。
埼玉県川口市、キューポラ(鋳物工場でコークスを燃料とし鉄を溶かす円筒形の炉)はもうもうないけれど、駅構内の地図を見ると「鋳工場」がいくつか見つかる。
川口の鋳物というと東京オリンピック(1964年)国立競技場の聖火台を思い出す。そして1962年の日活映画、吉永小百合を一躍有名にした映画『キューポラのある街』も思い出深い。
「働くこと」がすなわち「生きること」であるという意識は、東京オリンピックを小学生で迎えたわが世代にもまだ揺るぎないものだった。月々数百円の学級費や給食代が払えない家庭があった時代である。
Data:MINOLTA DiMAGE F100
鋳物工場の職を失った父親を持つジュン(吉永小百合)は中学三年生。父親は酒に溺れ、僅かな退職金もギャンブルにつぎ込んでしまう。母親の出産費用にも事欠き、自身の修学旅行のお金さえあてにできないジュンは、公立高校進学費用を「自分で稼ぐ」ためにパチンコ店でアルバイトを始めるのである。
川口駅東口に巨大なライオンのブロンズ(風)像を屋上にのせたビルがあって驚いた。いかにも鋳物の街だなぁと思い、ちょっと品のない都市景観ではあるけれど、勇ましいライオンの像が地域住民に誇りと希望を与えるとの目的で、行政が設置したのかと微笑ましく、激しい雨降りだったので駅前から撮影しておいた。
Data:MINOLTA DiMAGE F100
帰宅後、インターネットで「川口 駅前 ライオン」と入力して検索したら、なんとパチンコ屋だった。40 年後の『キューポラのある街』でジュンのような娘が増え続けていないことを願いたい。
( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2003 年 6 月 27 日、19 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)
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