▼十四五本

 


 秋の彼岸なので、いつもはひっそりした染井霊園にも線香の煙がうっすらと流れ、墓参りの人々が無数の墓石越しにちらりちらりと見え隠れしている。




左から、本郷通り六義園界隈にて、JR山手線染井橋にて、豊島区駒込『みんなのお庭』にて



 枯れてはいても、いつも花があって誰か訪ねた人の形跡がある墓ではなくて、古びてすり減ってうち捨てられたままになっているような小さな墓に、花と線香が供えられているのを見るとほっとするし、著名な歌人の墓に誰も参った形跡がないのもまた秋の感慨を深くする。
 郷里静岡県清水への墓参りにちょうどよい連休だったが、あれこれ理由をつくって在京で過ごし、静岡市葵区で雑誌編集会議のある30日まで母親には待ってもらうことにした。




『みんなのお庭』にて


 豊島区駒込、旧七軒町にある『みんなのお庭』に寄ったら、猫の額ほどの庭にちゃんとヒガンバナが咲いていて、植木職人町に住む住民の自主管理に込められた深い心配りに感動する。そういえば染井界隈の古びた民家脇にも、この時期になるとひとかたまりのヒガンバナが咲いている事が多い。




豊島区駒込にて



 路地を歩いていたら赤い色が眼の端をかすめたので、ヒガンバナかと振り向いたら鶏頭が咲いていた。

  鶏頭の十四五本もありぬべし  正岡子規

母が好きだった子規の墓はどうなっているかしらとふと思い出したので、連休最終日23日に行ってみようと思う。

   ***

2009年9月23日午後追記。

東京都北区田端、大龍寺にある正岡子規の墓に行ってみたら、やはり鶏頭の花が供えられていた。



左:正岡家の墓所、右:子規墓前にあった鶏頭



 子規の命日は1902(明治35)年9月19日なので、まさに鶏頭の花の盛りにあたっている。

 

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